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思考法・自己開発編②~4.演繹法と帰納法 5.KT法 6.ブレーン・ストーミング

KNOW-HOW

ビジネスのなかでは、社員のキャリアアップにはどの方法をとるのが一番よいのか、また、業績をあげるために企業はどのような策をとればよいかなど、さまざまな問題が発生してきます。そこで、思考法・自己開発編では、判断ミスをせず、ビジネス上で発生するさまざまな問題の、原因究明や問題解決ができる方法を紹介します。

 

今回は「演繹法と帰納法」「KT法」「ブレーン・ストーミング」の3つの要素について理解を深めてみましょう。

 

4. 演繹法と帰納法

 

経験豊富な人は推論から結果を導き出す演繹法を、時間に余裕がある人は事象から一般的原理へと導く帰納法を使うことで、効果を発揮します。また、状況に応じて両方を使い分けることで、より効果が期待できます。

 
 
演繹法とは、一般的原理から論理的推論により、順序だてた仮説を立て、最終結論を導き出す思考法です。演繹的論理展開とも呼ばれ、やるべき課題が設定されており、その課題を成し遂げるために必要な項目を探していきながら、作業をすすめていくやり方ととらえることができます。既に知っている情報と新しい情報を組み合わせて結論を出すという、最も自然な思考法です。
 
(例)
・「猫は鳴く」
・「タマは猫である」
・「タマは鳴く」
 
この場合、「猫は鳴く」というのが一般論となり、「タマは猫である」というのが事実・観察事項になります。その結果、「タマは鳴く」という結論が導き出されます。これは、演繹法の代表例ともいえる三段論法です。
 
演繹法の欠点は、1 つずつ順序立てをしていくので、1 つでも理論が破綻したら、結論へはたどり着けなくなってしまうということです。また、演繹法は経験がものをいうことになるので、経験の浅い人が演繹法で課題を整理し仕事をすると、漏れやミスが生じることもあります。しかし、仮説を1つずつ事実かどうか確かめながら検証していくので、導き出された結論は、強い説得力を持ちます。演繹法は、時間的に余裕がない場合は有効な手法となるので、自分だけでなく上司にアドバイスをもらいながら結論を出していくのがよいでしょう。
 
帰納法とは、さまざまな事実・現象など、観察されるいくつかの事象を集積し、整理しながら、結論である一般的原理を導き出す思考法です。この理論法は、整理すべき対象がわかっているので漏れを減らすこともできますし、作業の繋がりが明確になり、段取りが立てやすくなるので、やるべき仕事のアイテムが多く、何から始めてよいのかわからないときに有効です。
 
(例)
・「タマ(猫)は鳴く。ミケ(猫)も鳴く。クロ(猫)も鳴く」
・「猫だから鳴く」
・「猫は鳴く」
 
この場合、「タマ(猫)は鳴く。ミケ(猫)も鳴く。クロ(猫)も鳴く。」というのが事例の収集となります。「猫だから鳴く」は因果関係(本質的結合関係)となります。その結果、「猫は鳴く」という結論(一般的原理)が導き出されます。帰納法は、演繹法と比較し、結論を導き出すには想像と知識が必要となる場合が多く、事象を整理する時間がかかるので、時間に余裕があるときにおこなうと有効です。ただし、帰納法は、前提が正しくても結論の正当性は保証されません。
 
両者は対立するものではなく、状況により適した方を使い分けてこそ、より効果を発揮します。
 
 

5. KT 法

 

問題を解決するためには、まず考える手順を明確にする必要があります。KT法とは、4つのプロセスに基づき、問題解決や意思決定の手順を明確にするためのツールです。

 
 
KT法とは、アメリカの社会心理学者のケプナーと、社会学者のトリゴーが考えた「ケプナー・トリゴー・ラショナル・プロセス」のことで、問題解決や意思決定の思考の手順を明確にする技法です。
 
人は、問題を解決しようとするとき、先入観にとらわれる、いきなり原因や対策から考えようとする、自説に固執する、考えるべきことは何なのかという定義を明確にせず議論に入るなど、悪いくせが見られます。これではいくら考えても問題解決には至りません。考える手順を明確にする必要があるのです。
 
ケプナーとトリゴーは、意思決定には情報の収集・分析・評価・判断過程で、共通した要因があることを発見しました。その思考過程を体系化し、ツール化したものがKT法で、世界中の企業戦略に適用されています。
 
KT法は、次の4つのプロセスから成り立っています。
 
(1)状況分析プロセス(状況把握)
・何が問題か
・その問題はいまどうなっているか
・その問題を解決するには何をすればよいのか
・何から始めればよいのか
(2)問題分析プロセス(原因究明)
・何がいけないのか
・何が起きているのか、また、何が起きていないのか
・何が違うか
・考えられる原因は何か
(3)決定分析プロセス(最適案選択)
・何のために何を決めるか
・具体的な目標は何か
・複数の方法を考慮したか
・それをおこなうとどんなまずいことがあるか
(4)潜在的問題プロセス(実施結果の保証)
・いつまでに何をすればよいか
・考えられるリスクは何か
・リスクが起きないようにするにはどうするか
・リスクが起こったとき、どのように対応するか
 
KT 法をおこなううえで、(1)が重要になります。状況把握は、大きなテーマや概要が定まらない状況から、具体的な取り組み課題を設定するための論理的思考です。まず状況把握をし、自分が抱えている問題の重大さなどから、(2)、(3)、(4)を使い分けますが、問題解決においては、何が問題で、どうしたいのかを明確にすることが重要になるので、ここが明確にならないと、(2)、(3)、(4)も定まりません。
 
マネジメントを効率よくおこなうためには、思考業務を効率よくおこなうということが重要となり、そのために論理的に構築された思考プロセスを習得する必要があります。KT 法は、そのような思考法の訓練を身に付けることも期待できます。
 
 

6. ブレーン・ストーミング

ブレーン・ストーミングとは、いくつものアイデアから連鎖的に新しいものを発見したり、他のアイデアを改良・結合する中で新たなものを生み出す方法です。発言の内容よりも、その回数が重要となります。

 
 
ブレーン・ストーミングとは、少人数のグループで、全員が思い付くまま自由にアイデアを出し合い、それを整理して1 つの案にまとめたり、互いの発想を利用し、討議していく過程で連鎖的に新しいアイデアを生み出していくという集団的思考の技法です。アメリカのA・F・オズボーンが考案し、世界的に多く活用されています。日本の企業では、主に企画会議や、プロジェクトマネジメントにおいて、起こりうるリスク要因を考える場合などに利用されます。
 
ブレーン・ストーミングは、アイデアをまとめたり、新しいアイデアを発見できるほかに、他の参加者が考えていることや、自分と共通する点、異なる点がみえてきます。これは、グループが結成されたばかりのときに、メンバー同士が打ち解けるきっかけにもなります。
 
基本的なブレーン・ストーミングは、5 ~10人程度の少人数グループでおこないます。すすめ方としては、まず、リーダーと記録係をそれぞれ1 名ずつ決めます。次に、リーダーが問題やテーマを提起します。そして、参加者に意見を出してもらいます。意見は、思い付いた人から発言する方法でも、リーダーが順に当てていく方法でもかまいません。前者の場合、リーダーはなかなか発言できない参加者に気を配らなくてはいけません。はじめは順に発言し、2 ~3周したところで、自由に発言してもらうという方法も有効です。出された意見は、記録係が黒板や模造紙にすべて書き出していきます。
 
アイデアを出すときには、以下のルール「オズボーンの4原則」を意識しておこないます。
 
(1)出されたアイデアに対して、よしあしの批判をしない。
(2)各自が自由奔放にアイデアを出すことを歓迎する。それが問題から離れていても歓迎する。
(3)他人のアイデアを、修正、改善、発展させることを歓迎する。2 つの意見を組み合わせることも歓迎する。
(4)発言の数を求める。アイデアは多いほうがよい。
 
オズボーンの4 原則は、通常の会議では堅苦しい雰囲気があり、なかなかアイデアを出せないということから考えられました。ブレーン・ストーミングは、楽しみながらおこなうことで、たくさんのアイデアが出され、その効果を発揮します。ですから、ブレーン・ストーミングをおこなう際は、オズボーンの4 原則を参加者全員が理解し、緊張せずに実践できる環境を整えることが重要になります。

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