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人材マネジメント編③~7.ホウレンソウ 8.MBO(目標管理制度) 9.ハロー効果

KNOW-HOW

組織の基本となるもの、それは「人」にほかなりません。優れたチームを築くために、組織を活性化させるために、人を活用する術を身に付けることはとても大切なことです。

 

「人材マネジメント」編では、メンバーとの接し方や教育・育成の基本となるスキルを紹介します。良好なコミュニケーションと働きやすい職場をつくるために必要なことを学びましょう。

 

今回は「ホウレンソウ」「MBO(目標管理制度)」「ハロー効果」の3つの要素について理解を深めてみましょう。

 

7.ホウレンソウ

ホウレンソウは「報告・連絡・相談」をまとめてあらわした言葉です。積極的におこなうことでコミュニケーションと情報共有が促進され、組織全体の力を向上させる効果を発揮します。

 

ホウレンソウは、仕事をうまくすすめるためには不可欠な、コミュニケーションと情報共有のために使われる「報告・連絡・相談」を縮めたものです。ビジネスパーソンとして働き始める際にまず覚えるべきルールであり、マナーです。部下が上司に対しておこなうものと思われがちですが、実際にはあらゆる関係でおこなう必要があります。特にマネジャーやリーダーがメンバーに対して積極的に実施することで、コミュニケーションがより緻密になり、組織力の向上につながります。

 

ホウレンソウには押さえるべきポイントがあり、ただやみくもに情報を発信すればいいというものではありません。

 

■報告
仕事について現状や問題点、あるいは結果を伝えることで、指示命令された仕事が終わったとき、改善提案や変更を求めたいとき、ミスを犯したときなどにおこないます。公式な形をとることが多いため、しっかりと準備する必要があります。わかりやすくするために要点を整理し、必要に応じて資料や図表を用意することも求められます。

 

■連絡
関係者に事実を伝えることです。伝える相手に行動を促す目的があるため、スピードと正確さが重要となります。そのため「What(何を)、Why(なぜ)、When(いつ)、Where(どこで)、Who(だれが)、How to(どうやって)、How much(いくらで)」の5W2H を確認する必要があります。

 

■相談
業務や個人的な事柄について発生している問題について伝え、解決策を求めることです。何を相談したいのかを明確にし、自分なりの答えを用意してからおこなうと、スムーズにすすみます。

 

これらの要点を押さえて「すぐに、こまめに、必要な相手におこなう」というのが基本となります。マネジャーやリーダーは、自分から積極的におこない、うるさく思われるくらいがちょうどよいのです。遠慮して大事な情報を共有し忘れては一大事です。

 

また、ホウレンソウをしやすい環境を整えることも大事です。マネジャーやリーダー側からメンバーへのホウレンソウを徹底し、きちんと話を聞く態度をとることで雰囲気は大きく変わります。忙しそうにしないこと、どんな内容であっても怒ったり不機嫌になったりしないこと、といったことも忘れてはいけません。風通しのよい組織と活発なホウレンソウがそろえば、自然と好循環が生まれ、組織全体の力を向上させてくれるのです。

 

8.MBO(目標管理制度)

MBO は「Management by Objectives」の略で、多くの場合「目標管理制度」と訳されます。一人ひとりが自らの目標を設定し、自律的に取り組み、その達成状況を評価する制度です。

 

MBO は人材マネジメントの手法の1つです。1954 年にP ・F ・ドラッカーが出した著書「現代の経営」の中で提唱した概念で、日本でも実施している企業はかなりの数にのぼります。バブル期には古典的な手法とみなされていましたが、最近になって、成果を客観的に測定して業績評価制にリンクさせるという使い方が、生産性の向上に効果的であると再評価されています。

 

MBO の特徴は、個人が業務行動の目標を自ら設定し、業務管理についても自分でコントロールし、自覚的に目標を達成するべく業務を遂行していくことにあります。ここで重要になるのが、適正な目標設定がおこなえるかどうかという点です。自分で設定するとはいえ、個人の目標達成と会社の目標達成との間に連動性がなければ意味がありません。そのために、会社のビジョン・戦略とその達成のために各部門が担うべき目標、そして部門目標を達成するために各担当者が貢献すべき役割を明確にする必要があります。上位の目標を知ることで目標設定に一定の方向性が生まれ、目標が連鎖した状態となって強固な連動性が確保されるからです。

 

また、必ず達成できるような低い目標を設定されてしまうと、MBO は形骸化してしまいます。つまり、メンバーの能力にみあった目標かどうかをしっかり精査することを心がける必要があるのです。

 

適正な目標設定がクリアできたら、次に大事なことは「自分でコントロールしながら仕事をすすめる」という部分です。つまり、業務活動のほとんどについては自らの責任となります。目標が達成されていれば、仕事のすすめ方や努力の度合いも十分だったとみなされ、逆に目標が達成できなければ、仕事のすすめ方に問題があったか、努力が足りなかったと評価されることになるのです。この評価が自らの業績として反映されるので、仕事の過程を各自の責任に任せても、誰も手を抜いたりごまかしたりすることはありません。

 

目標設定と評価を「計画(P l a n )・実行(Do)・検討(Check)・調整(Act)」のマネジメント・サイクルに重ね合わせ、これを循環させることによって、MBO は運用されます。各ステップにやる気を生み出す源泉が内在されているので、モチベーションを維持することが容易なのです。

 

たとえば、Plan に相当する「目標の共有と連鎖」は、組織に貢献するという使命感を、Do に相当する「自分でコントロールしながら仕事をすすめる」過程は創造性を、Check にあたる「評価」は達成感を生み出します。

 

つまり、目標管理をうまく機能させることで、一人ひとりの中に高い意欲が醸成され、組織にとって素晴らしい効果が発揮されるようになるのです。

 

 

9.ハロー効果

 

ハロー効果は人事評価をゆがめてしまう評価エラーの1つです。1つのよい点や悪い点が先入観となって、他のあらゆる点でも同様だと評価してしまう心理現象のことをいいます。

 

適正で公平な人事評価というものは、簡単にはできません。職務行動の特性や長所・短所を的確に把握するだけでも難しいのに、人の心理がさまざまなフィルターをかけて、評価にゆがみを生じさせることがあるからです。そのゆがみを引き起こすものの1つが、「ハロー効果」です。

 

ハローとは“halo”、つまり後光のことです。肖像画は誰をテーマとしたものかわからなくても後光が描かれていれば聖人画として認識されます。これと同じように、ある人やモノを評価するとき、目立つ特徴に引きずられて他の部分についての評価がゆがめられてしまうことをさして、ハロー効果といいます。何か1つよい点があると全体的によく見えたり、また逆に一部が悪いとすべて悪く見えてしまうという心理現象です。

 

日常の中でよくあるケースとしては、有名な大学を卒業した人に接して「たぶん、この人は優秀な人物なのだろう」と思ってしまうことが挙げられます。また、同じ内容であっても優秀な人物が発言した場合とそう思われていない人物が発言した場合とでは、説得力に違いがあるように感じてしまうこともハロー効果によるものといえます。

 

このようにある一面からイメージを固めてしまって、まったく関係がない分野にもそれをあてはめる「先入観」ができあがると、ハロー効果というかたちであらわれてくるのです。

 

人事評価に際してハロー効果は、際立った業績を1つあげたことにこだわるあまり、他の部分も高く評価してしまったり、ミスに気をとられて関連性のない分野まで低く評価してしまうというかたちであらわれます。つまり1つの事実を過大に評価したり、複数の評価項目に援用してしまっているのです。これは、客観的な評価基準がないために印象や感覚に頼りすぎていること、評価者の考えすぎや論理的類推が原因と考えられています。

 

これを回避するためには、まず被評価者に対する先入観や偏見、特別な感情をなくして努めて冷静に見据えることが第一です。そのうえで、行動や業績といった評価に必要な事実を記録して、具体的な判断材料を抽出する必要があります。また、評価をする能力に合わせてきちんと評価基準を設けることも重要です。

 

そして設定した基準に具体的事実を照らし合わせることで、適正で公平な人事評価をおこなうことができるのです。

 

■おぼえておきたい関連用語 極端化傾向
ハロー効果と同じく、評価エラーの1 つ。部下の機嫌を損ねたくないあまりに評価を極端に甘くしたり、仕事に対して厳格に臨む姿勢から極端に厳しく評価をつけてしまうことをいう。

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