企業が経営活動を行う中で、その活動の結果・成果をもっとも具体的に示すのは“数字”です。予算、売上、利益など、さまざまな数字から帰郷の状況を把握することが、効果的な活動につながります。
「財務マネジメント」編では、基本である決算書から近年重視されているROA・ROEといった指標まで、財務に不可欠な要素をピックアップして解説します。これらの要素から企業の何が見えるのか、財務マネジメントの基礎に触れていきましょう。
今回は「決算書」「P/L」「B/S」の3つの要素について理解を深めてみましょう。
決算書は企業の成績表。代表的なものとして、「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」などがあります。企業の状況を知るため、そして知ってもらうために欠かせないものです。
決算書とは、企業の業績を記録した書類です。企業の一年間の会計期間、いわゆる年度の経営活動を決算としてまとめた経営成績や財政状態が記載されており、会社が儲かっているのか、借金は許容範囲か、資産をうまく運用しているか、といった情報を客観的に理解できるメリットがあります。
決算書はいくつかの計算書類の総称であり、利用する目的に応じて書類の名称も変わります。基本的には「損益計算書(P/L)」、「貸借対照表(B/S)」、「営業報告書」、「付属明細書」、「利益処分案」などで構成され、近年では米国にならって「キャッシュフロー計算書(C/F)」が加えられています。中でも、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書の3 つはそれぞれが違った視点から企業の状況をあらわしており、決算書の根幹を成すものです。
財務諸表との違いなどがわかりにくいですが、税法では決算書、証券取引法では財務諸表、商法では計算書類と、呼び方が変わっているだけで、どれも損益計算書と貸借対照表を基本としているため、実質的には同じものと考えて差し支えありません。
決算書を作成する目的は、大別すると主に2つあります。
●情報開示
企業に関係する機関や投資家に対して情報を開示するためです。商法では、株式会社は決算をおこない、その結果を公開しなければならないと定めています。関係する機関とは、たとえば銀行や税務署です。銀行から融資を受ける際には、以前は担保の有無で判断されることが多かったのですが、近年では決算書をもとに融資可能かどうかを審査されます。税務署へは税務申告をおこなう際の添付書類として提出する義務があります。また、投資家に対しては、投資に際しての判断材料として、情報を提供しなければなりません。最近では、ほとんどの上場企業が、自社のホームページに公開しています。
●情報把握
経営的な視点から会社の情報を把握するためです。マネジャーとして自社の状況を知ることは、以後の経営計画や事業の戦略を策定するために欠かせません。また、取引先の企業の決算書を見て、その企業がどのような状況であるのかを知ることも、営業担当が取引をしたり、企業を経営するうえでは大切なことです。同様に、自社の決算書を材料にして、取引先の企業も信頼性などを計っているわけですから、お互いに自分の会社を端的に紹介するためのツールとして機能しています。
このように、決算書は作成・公開することを主な目的としていますが、自社、他社の状況を正確に判断するために、その内容を読み解くことも重要です。
P/Lは損益計算書のことであり、決算書の中でも重要な書類の1つ。ある一定期間において、企業がどれだけ利益をあげたかを判断する指標となります。
P/LとはProfit and Loss Statementの略で、損益計算書のことです。企業のある一定期間の活動を通じて増加した資産を「収益」、そのために減少した資産を「費用」として、その差額によって経営成績をあらわしています。P/Lではこの収益と費用を、会社の主たる経営活動による区分で分けて表示します。長期間おこなっている活動によって生じた損益を「経常損益の部」、それ以外の活動によって生じた損益を「特別損益の部」に分類。以下ではP/Lを構成する項目を簡単に紹介します。
●売上高
商品やサービスの提供などから得た収益。
●売上原価
売上にかかった原価。売上にかからなかった分(製品在庫など)は含まず、資産に計上します。
●売上総利益
売上高と売上原価の差額。
●販売費及び一般管理費
製品の販売や管理にかかった費用。
●営業利益
企業の本業によって生じた収益。
●営業外収益
利息や配当金など、金融上の収益。
●営業外費用
利息の支払いなど、金融上の支出。
●経常利益
営業利益と営業外収益を足したものから営業外費用を差し引いたもの。
●特別利益
その年度のみの臨時的な収益。
●特別損失
災害など、その年度のみの臨時的な損失。
●税引前当期純利益
経常利益に特別利益を足したものから特別損失を差し引いたもの。
●法人税住民税及び事業税
事業にかかった税金。
●当期純利益
税引前当期純利益から税金額を引いたもの。
●前期繰越利益
前期から繰り越された利益。
●当期未処分利益
当期純利益に前期繰越利益などを加えたもので、損益計算書の最終値。
B/Sは貸借対照表のことで、P/Lと対になる決算書の重要な書類です。左右に分けた記述形態を取り、左に資産状況、右に負債を書きます。表の左右は一致するため、資産の流れがわかり、財務面の状況を把握できます。
B/SとはBalance Sheet の略であり、貸借対照表のことです。「負債」「純資産」「資産」の3項目によって、企業のある一定時点における財政状態を的確に把握するためのものです。
「貸方」として表記される負債と純資産は、資金の「調達源泉(調達元)」のことであり、債権者から借り入れて調達したものを負債、返済義務のないものを純資産に区分しています。一方、資産は「借方」として表記され、それらの資本の使い道をあらわす項目です。現金・証券から建物・設備までその使い道は多種多様です。
B/Sではこれら使い道の性質によって、区分して表示されます。資産の区分は「流動資産」「固定資産」「繰延資産」の3 つです。
●流動資産
流動資産は文字通り換金性の高い資産形態です。この区分に該当するには企業会計原則の2つの基準を満たしていることが必要です。1 つは「(正常)営業循環基準」。これは、「売掛金」、「受取手形」などの売上債権や、商品などの資産を流動資産に区分する基準です。もう1 つは「1年基準」。これは、1 年以内に現金での回収が見込まれる資産を流動資産に区分する基準です。売買を目的とした有価証券などが該当します。
●固定資産
反対にこれらの基準にあてはまらない資産が固定資産となります。具体的には、建物や機械、設備といった有形固定資産、各種権利などの無形固定資産、投資その他の資産が該当します。
●繰延資産
繰延資産は、すでに支払を完了した費用の中で、その後も長期にわたって利益をもたらすと期待されるもののことです。利益が予想される期間内で分割し、経過的に資産計上します。企業会計上は、繰延資産として計上されるのは会社法で定められたもののみであり、その他は無形固定資産や投資などとして処理されます。現在の会社法で定められている繰延資産は、創業費、開業費、開発費、株式交付費、社債発行費です。
負債に関しても、資産と同様の基準により流動負債と固定負債に区分されます。純資産(自己資本)は、株主から調達した株主資本、評価・換算差額等(損益として当期未処理の資産の評価差額)、新株予約権、少数株主持分の4項目で構成されます。