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財務マネジメント編③~7.ROI(投資利益率) 8.収益管理 9.原価計算

KNOW-HOW

企業が経営活動を行う中で、その活動の結果・成果をもっとも具体的に示すのは“数字”です。予算、売上、利益など、さまざまな数字から帰郷の状況を把握することが、効果的な活動につながります。

 

「財務マネジメント」編では、基本である決算書から近年重視されているROA・ROEといった指標まで、財務に不可欠な要素をピックアップして解説します。これらの要素から企業の何が見えるのか、財務マネジメントの基礎に触れていきましょう。

 

今回は「ROI(投資利益率)」「収益管理」「原価計算」の3つの要素について理解を深めてみましょう。

 

 

7. ROI(投資利益率)

 

ROI(投資利益率)とは、投資をおこなう際に、十分な利益をあげられるかどうかを算出し、投資の無駄をなくすための戦略的指標です。

 

ROI は、ROA ・ROE と同様、企業の収益性を図るためのものであり、投下した資本に対して、どれだけの利益をあげられているかという「投資利益率」をあらわしています。「投資収益率」や「投資対効果」とも呼ばれます。

 

企業は株主の影響力が強いほどROEを重視する傾向がみられ、米国企業などはROEの数値によって評価されることが多いのですが、日本の企業、中でも中小企業は株主の影響がさほど大きくなく、融資を受ける銀行や、取引先に対して収益力を示すことに重点を置いています。そのため、このROIを算出することは非常に重要であるといえます。ROIは10~20%程度になるのが一般的ですが、日本の上場企業のROIは平均10%に満たない程度で、まだまだ効率的な投資をおこなっているとはいえないのが現状です。

 

ROIを算出する計算式は、

 

 

とあらわされます。たとえば、1000 万円を投資した事業で1 0 0 万円の利益があがった場合、ROI は10 %になります。さらに、ROI からは、その投資を何年で回収可能かという「資金回収期間」も割り出すことが可能です。この場合、0.1の逆数である10年で資金の回収が可能ということになります。年100 万円の利益で1000 万円を回収しようとすれば、10 年かかります。

 

また、ROI の特徴として、さまざまな対象に応じて投資の効果を算出することが可能な点が挙げられます。事業やプロジェクト単位から、商品1 つひとつまで、目的によって計算式にあてはめる数字を変えながら利用できます。

 

近年、経営者の投資に対する考え方はシビアになってきており、特にIT への投資に関しては費用対効果が測定しにくく、判断が難しいものとされています。そこで、PC やIT インフラなどの情報システムを導入する際には、客観的な評価の手法としてROI が利用されます。システム自体は直接的に利益を生み出すものではありませんが、そのシステムを導入することによって、利益に対してどれだけの支援効果があるのかが投資のポイントになります。企業はさまざまなROI 計算プログラムを使って、財務的な観点から投資の効果を測定しているのです。

 

このように、現在はあらゆる投資に対して厳しい目が必要とされています。企業が右肩上がりで成長を続けているときは、利益のうちのある程度の範囲内であればよかったものですが、さらなる競争力を問われている今、無駄な投資を極力避けることが勝ち残るポイントなのです。

 

おぼえておきたい関連用語  TCO(Total Cost Of Ownership)
TCO とは、米ガートナーグループが提唱した、情報システムの導入から管理までの運用にかかるすべての経費をあらわす指標のことをさす。ソフトのライセンス料やシステム開発費など、情報システムの運用には目に見えないコストがかかる。そのすべてをTCO として割り出し、意思決定に活用するもの。

 

 

 

8. 収益管理

 

売上をあげることが難しい時代には、収益性を高めることが企業成長の鍵となります。収益管理は収益の最大化を図るためのものであり、消費者それぞれの需要に合わせた販売価格を設定します。

 

収益管理とは、端的にいえば、“最も利益を得られるように価格設定などを管理すること”です。市場を顧客のタイプごとに分類し、それぞれのミクロな市場が持っている値段に対する感覚に合わせて価格を設定することで、考えうる最大限の収益を得られるようにします。市場の値段に対する感覚は、商品に対する需要によって変動するものです。よって、収益管理においては、細分化した市場それぞれに存在する消費者の行動を予測することが重要になります。

 

この管理手法は、ある期日が来ると価値が失われてしまう商品を扱う業種で、特に有効に機能します。わかりやすい例としてよく挙げられるのがチケットの価格です。たとえば、航空機では、同じ飛行機に搭乗する人達であっても、購入するチケットの価格はさまざまです。航空機のチケットは、その便が飛び立ってしまえば商品価値はゼロになりますから、空席が出て収益がまったくあげられなくなるよりは、大幅にディスカウントしてでも購入してもらい、最大限の収益を確保する必要があります。また、航空機を利用する顧客は幅広いですから、市場を細分化して、それぞれの需要に応じた価格設定が必要になるのです。

 

比較的時間に余裕があり、「いつでもいいからできるだけ安く利用したい」と考える顧客の市場と、「高くてもいいから、必ずこの便に乗りたい」と考える顧客の市場、といったミクロな市場ごとの消費者行動をあらかじめ予測し、過去の実績データをもとに最適な供給価格のパターンを決定していきます。

 

こうした商品に限らず、一般的なモノの販売においても同様に利用されます。発売されたばかりの商品については、「とにかくいち早く購入したい」という需要がありますし、ある程度時間が経てば、「新しくはないけれど手頃な価格でよいものを」という需要に移り変わっていきます。

 

賞味期限が迫っている食品、たとえば惣菜や刺身などがディスカウントされるのも、売れないよりは賞味期限が切れる前に、より安いものを求めている顧客に販売して最大限の利益をあげようとする販売方法です。

 

顧客一人ひとりの視点に立ってみれば、1つの商品が持つ価値は実に多様です。こうした目に見えない部分を踏まえて、「適正な価格で適正な顧客に」販売するためには、精度の高い予測を立てなければなりません。消費者の行動はめまぐるしく変化していきます。常に新しい販売実績をデータに蓄積し、マクロ市場の需要にフィットさせていくことが求められるでしょう。

 

 

9. 原価計算

 

生産活動にかかったコストを算出する原価計算は、企業活動に必要不可欠な原価情報を提供します。算出される原価には、「実際原価」「標準原価」「直接原価」「全部原価」などがあります。

 

 

商品やサービスを生産するためにかかった費用のことが「原価」であり、会計上その原価の集計を取ることを「原価計算」といいます。原価には、商品を製造するための材料費などの他、管理費や輸送費など、さまざまな費用が含まれるため、原価計算は企業全体の会計に関わり、企業がコストを管理・削減して利益を追求するためには必要不可欠なものです。

 

売上と利益の基本となる原価計算は、企業活動のさまざまな目的で利用されます。P/L、B/Sに記載する原価を計算する「財務諸表作成目的」、販売価格を決定するために原価を計算する「価格計算目的」、経営者がコストダウンや原価の統制をするために必要な資料を提供する「原価管理目的」、予算編成と管理のために必要な資料を提供する「予算編成目的」、経営計画の決定のために必要な資料を提供する「特殊調査」。

主に上記のような目的で原価計算はおこなわれています。つまり、企業経営において必要な原価情報を提供するための計算が原価計算だといえるでしょう。

 

また、原価計算には、その算出方法によっていくつかの種類があります。その中でも基本的なものを以下に紹介します。何を算出したいかによって適切なものを選択しましょう。

 

●実際原価
原価計算で最も基本的なものです。製品を製造するために実際にかかった材料費、労務費、製造経費をもとに算出します。

 

●標準原価
科学的分析や統計データから算出するもので、文字通り標準となる原価です。分析の結果から求められた基準であるため、製造以前に見積を立てたり、実際の原価が適正か否かを判断したりする場合に役立ちます。

 

●直接原価
製品の製造にかかった費用のうち、売上高によって増減する費用を変動費といいます。対して、つねに一定の金額で発生する費用を固定費といいます。変動費には直接材料費などが、固定費には機械の減価償却費などが含まれます。直接原価計算は、そのうち変動費のみを原価として計算したものです。固定費は期間費用として処理されます。売上高に比例して発生するコストのみを反映しているため、利益を管理するのに有効ですが、日本では外部公表用のデータとして認められていません。

 

●全部原価
変動費のみを計上する直接原価に対して、変動費、固定費をすべて含めて計算するのが全部原価です。財務会計上の計算方法で、比較的簡単に算出できますが、損益構造の把握が困難なため、管理にはあまり適していません。

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