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マーケティング・マネジメント編③~7.セグメンテーション 8.ターゲティング 9.ベンチ・マーキング

KNOW-HOW

マーケティング・マネジメント編では、マーケティングの基本的な考え方を解説します。難しそうと感じる人もいるかもしれませんが、役職につくことの醍醐味は、マーケティングを含めた会社経営に触れていくことといえるかもしれません。ただ知識を取り入れるだけではなく、実際の戦略や戦術立案に活かしてみてください。

 

今回は「セグメンテーション」「ターゲティング」「ベンチ・マーキング」の3つの要素について理解を深めてみましょう。

 

7. セグメンテーション

 

セグメンテーションとは、顧客を性質などによってグループ化すること。似た性質を持つグループは、購買においても似た行動様式を示すため、戦略の立案に有効です。

 

顧客は当然一人ひとり異なる好みや考えを持っており、そのニーズは多岐にわたります。しかし、ある程度似た傾向を持つグループに分けることは可能です。類似の性質を持つ人々が集まったグループは、似た購買欲求を持つことが多いのです。そこで、セグメンテーションは、自社のターゲットとなる層を割り出すなどのマーケティング戦略に有効な手法となります。

 

最も基本的なセグメンテーションをおこなう場合、セグメンテーションの基準は個人の属性です。たとえば性別という属性を用いるのであれば、一般的に男性、もしくは女性の2 種類のセグメントに分けられます。

 

他には、個人の属性ではなく、取引内容によるセグメンテーションなどが考えられます。たとえば、オフィス街にあるファミリーレストランチェーンの1 店舗では、来店客個人個人が誰であるかを特定することはできません。しかし、取引や接客の内容からある程度のセグメンテーションが可能です。朝であれば朝食をとりに来る顧客、コーヒーを飲みに来る顧客、出勤前に新聞を読みながらタバコを吸うために来店する顧客が存在することなどが割り出せます。

 

こうしたセグメンテーションをおこなえば、取引データからそれぞれのセグメントの来店客数や、来店客の平均単価なども分析できるはずです。また、付近にショッピングモールができた、安いランチを提供する店ができた、などの周辺環境が変化したことによって導かれる、取引セグメントの変化も見出すことができます。

 

さてここで、個人個人に視点を戻してみましょう。もしかすると、朝食と昼食の両方で利用している顧客がいるかもしれません。その顧客は、朝食セグメントと昼食セグメントの、それぞれに該当する取引を発生させているということになります。

 

つまりここでのセグメンテーションは、その個人の、時間によって異なる行動属性をセグメント化した結果になってきます。なお、普通は、朝食と同じメニューを昼食時に注文しません。このように、必ずしも1 来店=1 人の顧客、というようには考えないほうがいい場合もあります。戦略に応じたセグメンテーション、またセグメンテーション結果に応じた戦略の検討をおこなう必要があります。

 

 

おぼえておきたい関連用語  セグメンテーション型広告

セグメンテーション型広告とは、登録情報連動型広告とも呼ばれているもので、セグメンテーションの概念を応用したウェブサイトなどで主に利用されている広告のこと。ユーザー登録型のWeb サイトで、年齢や性別、職業、趣味などの情報を登録時に入手し、情報をもとにユーザーに適した広告を掲載し、よりターゲットを絞って効果的に広告を表示することができる。

 

8. ターゲティング

 

ターゲティングとは、どのセグメントを対象顧客にするかを選定していくことをいいます。大きくはセグメントに適した戦略を立案していく方法と、戦略方針に沿ったセグメントを選択していく方法に分かれます。

 

セグメンテーションが完了したら、戦略立案のための分析をさらに一歩すすめ、ターゲティングに移ります。ターゲティングとはすなわち「ターゲットにすること」ですから、「どのセグメントを対象顧客にするか」を選定していくことです。

 

実際にターゲティングをおこなっていくとき、その方法は大きく分けて2 種類です。1 つは、まだ戦略・戦術が決定されていない場合に取る方法です。この場合、各セグメントについての分析をおこない、その結果を理解し、実行するべき戦略と戦術を決定します。そしてもう1 つは、実施する戦術が既に決定されていて、その意図に合致することが予測される顧客セグメントを導き出す場合の方法です。

 

これらの2 つの方法は、バランスよく採用されなければなりません。というのも、顧客層を無視した戦略立案も、自社の方向性からかけ離れたターゲティングも、回避するべきだからです。

 

まず、セグメンテーション結果を分析する方法をみていきましょう。ある属性条件に基づいてセグメント化されている各セグメントは、その指定された属性条件以外に、どのような特性があるかを調べます。

 

また、その特性が時間軸の変化にともなって、どのような変化傾向にあるかもみておきましょう。次は、そのセグメントが持つ行動パターンをみます。当然ながら同一セグメントにおいてもそれぞれの個人が同じ行動パターンを取るとは限りません。パターンの集中度合いと分散度合いを理解することが必要です。

 

最初にセグメントを選択(セグメントのターゲティング)する基準は、以下の4 つです。

 

  1. セグメントの規模と成長性に妥当な大きさがあるか
  2. セグメントから妥当な収益が見込めるか
  3. 自社の目標とセグメントの方向性は合致しているか
  4. そのセグメントに参入するための資源が自社にあるか

 

さらに、ここから導かれる5つの項目に沿って、重要な要素をターゲティングします。

 

  1. 他の業者が新規参入する可能性がないか
  2. 自社製品の競争相手になりそうな、代替製品がないか
  3. どの地域に買い手が存在するのか
  4. 重要な販売先はどこか
  5. 有力な競合他社がないか

 

ターゲティングでは、こういった要素を総合的に判断していきます。

 

おぼえておきたい関連用語 ポジショニング
顧客の頭の中で自社の商品・サービスをどうイメージさせ、どう位置付けさせるか、という戦略のことで、他社商品と差別化するためにおこなうもの。

 

9. ベンチ・マーキング

 

「ベストに学べ」をモットーとして、業界問わず最高水準の経営結果をあげている企業を自社のあるべき姿として設定。自社との比較検討結果を活かして業務改善をおこなうのがベンチマーキングです。

 

「ベストに学べ」をモットーとするベンチ・マーキングにおいては、経営や業務・ビジネスプロセスの非効率な部分を改善するために、他分野で優秀な成績をおさめている企業などのケースを、ベストプラクティスとして見つけ出して分析します。そしてそれを指標(ベンチマーク)として設定、自社の活動を測定・評価する基準として、変革をすすめていくということです。

 

ベンチ・マーキングは、アメリカ・ゼロックス社がおこなった業務改善がベースとなっています。同社は1960 年代後半から、すでに競合他社の製品提供プロセス分析などをおこない、その製品やサービス、製造プロセス、財務指数をベンチ・マーキングしていました。1980 年代に入ると、日本企業に奪われた市場シェアを取り戻すため、全社的におこなわれていたのです。

 

ベンチ・マーキングではまず、自社の「あるべき姿」としての目標になる企業を見つけ出す必要があります。異業種であれ、最高の業績をあげている企業で取られている優れた方法を積極的に学んでいきます。比較検討を業務プロセスに絞れば、業界の差異は問題にならないはずです。企業内の組織やグループ組織内で優れたやり方を見つけ出して導入するベンチ・マーキングから始めてもかまいません。また競合企業の優れた方法論を取り入れてもよいでしょう。

 

初期のベンチ・マーキングでは比較対象となるベストプラクティスを見つけ出し、分析する作業に時間がかかりました。しかし近年では「APQC ビジネスプロセスモデル(下図)」のようなリファレンスモデルが整備されており、さまざまな組織で積極的に実行されています。

 

APQC ビジネスプロセスモデルとは、米国生産性品質センターが、業務プロセスのベストプラクティスを調査して、ベンチ・マーキングするための基準として定義した、標準的な業務プロセス分類のフレームワークです。現在では、業務分析や経営改革をおこなう際のリファレンスモデルとなっています。

 

業務を大きく13 に分類した上位モデル(7 つの基幹業務プロセスおよび6 つの支援業務プロセス)と、これをさらに細分化した下位モデル(92 の基幹業務プロセスと123 の支援業務プロセス)、およびそれらの機能、性能を評価する評価基準で構成されています。

 

 

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