教育業界の常識にQuestionを投げかけるメディア

創考喜楽

オペレーション・マネジメント編③~7.JIT 8.SCM 9.SFA

KNOW-HOW

組織は、少しの工夫で劇的に改善され、効率的に動く可能性を秘めています。そのために必要なものは、「どうしたいかという目標」と、「それに到達するための手法」です。

 

「オペレーション・マネジメント」編では、多くの企業で導入されている効率的な組織運営の手法を取り上げ、無駄をなくしたり、情報を共有するための方法論などを学んでいきます。

 

今回は「JIT」「SCM」「SFA」の3つの要素について理解を深めてみましょう。

 

7.JIT

 

必要なときに必要なものを必要なだけ必要な場所に。これを実現したのがJIT(Just in Time)です。プロセスからムダを削ぎ取ることで生み出されたこの手法は、高い生産性が特徴といえます。

 
 
JIT とはジャストインタイムの略で、生産工程において「必要なときに必要なものを必要なだけ必要な場所に」届ける生産マネジメント手法のことをいいます。在庫を少なくする一番の手段は完全受注生産ですが、これではリードタイムが長くなりすぎてしまい、営業機会損失やコストの増大などデメリットが多く、大量生産品については現実的ではありません。そこでトヨタ自動車がスーパーマーケットを参考にして編み出したのがJITです。
 
 
今では業種を問わず世界中に広まったこの方式は、トヨタ生産方式の基本的な考え方である「徹底したムダの排除」にのっとっています。ここでいうムダとは「付加価値を高めない、いろいろな現象や結果」をいい、「7つのムダ」というものに集約されています。
 
●7つのムダ
  1. つくりすぎのムダ
    顧客が必要とする以上のものをつくってしまうこと。在庫のムダの直接原因です。
  2. 手待ちのムダ
    作業中の待機時間など、前工程との連携が取れていないこと。
  3. 運搬のムダ
    必要以上のものを動かすこと。余計な運搬によってモノが傷むリスクも上がります。
  4. 加工そのもののムダ
    工具や製品に内在する初期不良のこと。目的が不明確な作業もこれに相当します。
  5. 在庫のムダ
    過剰在庫のこと。置き場所、管理のためのリソースなどが必要となってしまいます。運搬のムダの直接原因です。
  6. 動作のムダ
    付加価値を生み出さない行動のこと。
  7. 不良品をつくるムダ
    不良品によって引き起こされる、本来なくて済むはずの作業のこと。
 
 
JIT は主につくりすぎのムダを削減するために開発されましたが、「7つのムダ」すべてに効果のある手法として定着しました。
 
JITの運用の要となるのが、「かんばん方式」です。「かんばん」はいわば生産指示票のようなもので、前工程と後工程の間を往復します。たとえば、組み立てライン(後工程)で部品を消費したら、使った分の数を記入して生産部門(前工程)に発注票として出します。それを受け取った生産部門は「かんばん」に記載された数量だけ部品を納め、納品書として「かんばん」を戻すというように使われるのです。使った分を発注して納めてもらうので、生産部門のつくりすぎのムダと組み立てラインの手待ちのムダをおさえ、運搬のムダと在庫のムダを削減し、短いリードタイムを同時に実現できる優れたシステムです。
 
 

8.SCM

サプライチェーン・マネジメントは物流を効率的に管理することで顧客満足を追求する生産管理手法です。事業活動の一連の流れを管理するために、情報技術の活用が必須となります。

 

今の市場は、消費者が求めるものを「必要な分だけ、必要なときに、なるべく安く」提供できる体制を整えていないと勝ち抜くことが難しくなっています。この状況に対応するために開発されたのが、サプライチェーン・マネジメント(Supply Chain Management)です。これは、顧客に価値をもたらしている製品・サービス・情報提供などのプロセスを統合する生産管理手法です。
 
取引先との受発注、資材の調達から在庫管理、製品の配送、エンドユーザーへの提示まで、事業活動の川上から川下までを総合的に管理して全体最適を推進するというこの手法は、誕生したのはアメリカですが、トヨタ生産方式をそのルーツにしているといわれ、めざすところも似通っています。効率的な経営をおこない、それによって「必要なものを必要なときに、なるべく安く、スピーディーに」顧客に届けることで、満足度を追求していくことが目標となっているのです。
 
その実現には、一企業による部分的な効率化だけでなく、サプライチェーンに関わるサプライヤ(供給者)が共通の認識を持って、互いに理解しながら連携を取ることが重要となります。
 
 
商品・サービスがエンドユーザーに届くまでの流れから、物流コストなどの「ムダ」を徹底して取り除くことで付加価値を高めるためには、タイムリーな情報共有が不可欠です。
 
 
その鍵を握るのが情報技術です。グローバル規模で顧客と企業をつなぐインターネットや、在庫や生産などの経営資源を管理するためのERP、正確な売上データをリアルタイムで蓄積するPOS、収集した情報を需要予測や各種プランニングに反映するためのBI といった情報技術の活用が必須となります。
 
また、サプライチェーン・マネジメントによって在庫を抑えることは、キャッシュフロー改善という観点からも注目されています。在庫が増えるということは、それだけ仕入れに資金が必要なのでキャッシュフローを圧迫してしまいます。この状態は、実際にその在庫が売れるか、もしくは売掛金が回収されるまで続くので、その間の資金力を低下させる足かせとなってしまいます。
 
在庫を最小限に抑えるということは、仕入れのための支払いが少なくなり、資金に余裕が出るという意味でキャッシュフローの改善にとても大きく貢献するのです。
 
 

おぼえておきたい関連用語  プル生産方式
生産の起点を後工程においた生産方式。部品が消費され、発注のオーダーが来てはじめて製造と供給をおこなうため、ムダが出ないのが特徴。供給側がある程度のレベルに達していないと、効果的な運用が難しくなる。トヨタ生産方式はプル型である。従来の方式は予測に基づいて計画生産される方式でプッシュ型という。

 

9.SFA

 

SFA は、日本では一般的に「営業支援システム」といわれています。その名の通り営業活動を改善するために開発され、おもに顧客情報管理や、営業担当者の育成に使われています。

 

SFA とは「Sales Force Automation」の略で、日本では一般的に「営業支援システム」といわれています。ニーズが多様化する社会において、顧客数を増やし営業コストを下げるといった、営業活動全般を改善するために開発された手法です。アプローチの仕方はさまざまですが、特にIT を活用したスピードアップに重点が置かれています。顧客の動きやマーケットの動向、競合他社の動きなどをつかむ「顧客情報管理機能」、そういった動きに対して、自社の営業担当者がどのような対応をしているかをつかむ「営業管理機能」、さらに顧客の動きと自社の動きを日々修正しマッチングさせる「日次スケジューリング機能」などを一元管理するIT システムをさすことが一般的です。

 

近年のIT 機器の低価格化によってSFA 導入はすすんでいますが、ツールを用意しただけでは目にみえるほどの効果は期待できません。ITにできることは、事務作業の効率的な処理やデータを参考にした分析といった「自動的」「科学的」な支援だからです。あいまいなプロセスがまかり通っていたり、属人的な部分が多すぎると、IT の利点が生かしきれないのです。SFAがその機能を十分に発揮するには、ワークフローの見直しや営業マインドの変革も必要になります。

 

また、顧客に関する情報を担当者どまりにせず、組織全体で共有することも、SFA を運用する際のポイントです。多様化がすすむ社会の中で正確にニーズをつかむためには、何よりも情報が必要です。良質の情報を大量に集め、さまざまな立場から検証することで顧客ニーズは浮かび上がってきます。情報を共有することで、顧客のためにチームとして知恵をしぼり、よりよい提案を実現していくためのツールとしてSFAは機能するのです。

 

他にも、CRM(Customer Relationship Management)を実現するためにSFA を導入するケースも増えてきています。CRM とは、顧客満足を第一に考え、さらには顧客が期待する以上のサービスを提供することによって利益につなげていくという経営方針です。その中でSFA は、顧客との密接な関係を維持するためのツールとして位置付けられています。具体的には、営業をはじめとするさまざまな場面で得た顧客情報の一元管理と情報連携の強化に使われているのです。営業力強化のカギを顧客満足の向上と考える企業にとって、SFA はますます重要性を増しています。

 

おぼえておきたい関連用語  ソリューション営業
提案型営業ともいい、深く顧客の状況を理解して問題を解決するという、営業アプローチ手法。顧客のニーズがより多様化する中にあって、決め手となるのは営業担当者の提案力。SFA をはじめとする情報システムは提案力を高めるためのものでもある。

連載一覧

Copyright (C) IEC. All Rights Reserved.