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人材マネジメント編①~1.OJT 2.コーチング 3.アサーション

KNOW-HOW

組織の基本となるもの、それは「人」にほかなりません。優れたチームを築くために、組織を活性化させるために、人を活用する術を身に付けることはとても大切なことです。

 

「人材マネジメント」編では、メンバーとの接し方や教育・育成の基本となるスキルを紹介します。良好なコミュニケーションと働きやすい職場をつくるために必要なことを学びましょう。

 

今回は「OJT」「コーチング」「アサーション」の3つの要素について理解を深めてみましょう。

 

1.OJT

 

OJTとは、On the Job Training(オンザジョブトレーニング)の略で、人材育成の手法の1つです。実業務の中で教育するという手法なので、必要な知識や技能を効率的に教えることができます。

 

 

人材育成は、Off-JT とOJT の2通りに分けられます。Off-JT は、セミナーや体験学習など職場の外での教育活動ですが、OJT は職場の中で実際の仕事に携わりながらおこなわれるものです。多くは先輩と後輩のマンツーマン形式で、職務を遂行するにあたって必要な知識や技能を教え、しっかりと身に付けさせる教育課程として運用されています。他の人材育成手法に比べてより実態に即しているため、以下のようなメリットがあります。

 

●OJTのメリット

 

  • きめ細かい指導
    研修などの集合教育と違い、マンツーマンが基本。相手の顔がみえるので、きめ細かな対応ができます。
  • いつでも実施できる
    日常の中でおこなうということから、OJTの実施には、特別に場所や時間を設定する必要がありません。
  • つねに先の目標設定ができる
    1つのことができるようになったらさらにその先の課題を設定し、継続して育成がおこなえるのが特長です。

 

仕事の状況や成長ぶりにあわせてフレキシブルな対応ができるという点が一番の特長ですが、無計画に「やってみようか」ではOJT の効果はありません。相手が理解できるように教える、という基本スタンスのもと、次に挙げるマネジメント・サイクルにしたがってすすめる必要があるのです。

 

  1. 話して聞かせる
    本人と話し合って目標の設定をし、やるべき仕事の目的や位置付け、やり方などを説明します。質問をおりまぜて確認しながらすすめていきます。
  2. 自らやってみせる
    どれだけ説明を聞いていても、実行できなければ意味がありません。口で指示をするだけでなく、自らやって見せて理解させます。ただ漫然と見せるだけでなく、あらかじめポイントや注意点を説明し、特に重要なところはメモを取らせると効果的です。
  3. 本人にやらせてみせる
    やらせるうえで大事なのは、すぐに口をはさまないことです。本当に重大なミスを起こしそうな場合でなければ、最後まであたたかく見守ります。
  4. 成果を振り返る
    やらせっぱなしでは、効果も半減です。うまくいったときには褒めて、そうでない場合はその原因を明らかにすることで、効果的に成果をあげることができます。ただし、一方的に厳しく評価してしまっては逆効果です。

 

2.コーチング

 

コーチングとは相手の能力を引き出し、開花させる指導法です。さりげなく気付きに導いたり、部下の決断を認めて支持することで、自発的に成長への意欲を促します。

 

コーチングの目的は、その相手が最大限の職責を果たして業績をあげるために、その人の持つ可能性を開花させることです。その考え方は、「その人が必要とする答えは、すべてその人の中にある」という原則に集約されます。答えを教えるというよりも、自発的に学習させて自分で気付くように支援するスキルなのです。

 

支援という考え方は「ぐいぐいと引っ張って先導する」リーダーシップとはまったく異なるアプローチです。なぜなら、上司と部下を上下関係ではなく対等なパートナーであるととらえるからです。協力してベストなやり方を探し、部下を信頼して報告だけを受ける、というスタイルは、相互理解と合意形成を促すファシリテーションにも通じるものがあります。

 

相手の意欲を引き出すコーチングの実践には

 

  1. 傾聴
  2. 承認
  3. 質問

 

の3つが欠かせません。特に“質問”のスキルは、自発性を促すためにとても重要なものとなります。人にとって、他者からの問いかけはひらめきを得るための大きなきっかけです。しかも自分でひらめいたアイデアは、他者から与えられた解決法に比べて、圧倒的にモチベーションが高いのが特長です。しかし、思いつくままに質問を投げかけては話に脈絡がなくなってしまいます。「OPEN 法」にのっとって、わかりやすく論理的に対話をすすめていきましょう。

 

OPEN法

  1. Objectives(目標、ゴール)
  2. Process(手順、計画)
  3. Elements(構成要素)
  4. Necessary-Action(まとめ、確認)

 

上記の流れに沿って、説明を求めます。「達成すべき目標は何か」「そのためにはどういった計画を立てるといいのか」「その計画はどれだけの資源と時間を要するか」「具体的に必要なものは何か」と、「はい・いいえ」では答えきれない簡潔な質問をたくみに投げかけていきます。

 

コーチングを実施する際は、自分の方法論を押し付けてはいけません。相手が自分で出した答えを認めることで、その人はこれからも考えて答えを出すように努力を重ねるようになります。

 

  • 答えは部下の中にある
  • 部下の味方になる
  • 部下の自発的な行動を促す

 

このコーチング三原則を念頭に置いたうえで指導にあたることで、部下一人ひとりが自立するようになり、ひいては組織の活性化にもつながるのです。

 

3.アサーション

自分の意見を全面的に抑えたり、他人の主張を一切受けつけない対話は、円滑なコミュニケーションとはいえません。アサーションとは、他者に配慮しつつ、自分の意見をおだやかに表現するスキルです。

 

アサーションを直訳すると、自己主張や断言となります。しかし単に「主張」としてしまうと、相手に配慮しつつ適切にいいたいことを伝えるというニュアンスが薄れてしまうため、あえて訳さない言い方が広まりました。そして、お互いに相手のことを考えてコミュニケーションしている様子を「アサーティブ」といいます。

 

アサーションの基本は、相手のことを尊重し真摯に考える誠実さです。どうすればお互いにとってためになるだろうかと、懸命に考える姿勢が大切になります。また、「ノー」を恐れるあまり深く考えないで「YES」と返答してしまうことは、むしろ誠実さに欠けるという意識を持つことが必要です。

 

そのうえで自分の気持ちや考えを率直に、その場にふさわしい方法で表現します。ケースバイケースですが、丁寧な言葉づかいを心がけて自分を主語にして話すと、相手に受け容れられやすくなります。

 

しかし、どんなに誠実かつ率直に表現したとしても、それが相手に受け容れてもらえるとは限りません。お互いが率直な意見を出し合えば、相手の意見に賛同できないことも出てきます。

 

その際、攻撃的になったり相手に合わせたりするのではなく、互いに歩み寄ることがアサーティブなあり方なのです。

 

そうはいってもなかなかいいたいことをうまくいえないという状況は多いものです。そんなときには「DESC 法」という、話を整理するためのテクニックが役に立ちます。

 

DESC 法

  1. Describe(描写する)
    現在の状況を客観的に描写します。ここでは相手の心情や動機といった内面の部分には立ち入りません。
  2. Express(表現する)、Explain(説明する)、Empathize(共感する)
    「D」で描写した状況を、自分の気持ちや状況と合わせて説明します。相手の気持ちに共感することも必要です。
  3. Specify(具体的に述べる)
    状況を変えるための具体的な解決策・妥協案を提示します。
  4. Choose(選択する)
    「S」での提案が受け容れられた場合と受け容れられなかった場合を想定し、それぞれ次にどうするか考えて選択します。受け容れられなかった場合を想定することで、そういった事態にも余裕を持って対処ができるようになります。

 

DESC 法はお互いに納得できる妥協点を見つけるための手法です。相手を動かそうとするのではなく、自分から近づいていくという姿勢で臨みましょう。

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