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人材マネジメント編④~10.360度評価(多面的評価) 11.インセンティブ

KNOW-HOW

組織の基本となるもの、それは「人」にほかなりません。優れたチームを築くために、組織を活性化させるために、人を活用する術を身に付けることはとても大切なことです。

 

「人材マネジメント」編では、メンバーとの接し方や教育・育成の基本となるスキルを紹介します。良好なコミュニケーションと働きやすい職場をつくるために必要なことを学びましょう。

 

今回は「360度評価(多面的評価)」「インセンティブ」の2つの要素について理解を深めてみましょう。

 

10.360度評価(多面的評価)

上司以外の関係者による評価を反映する人事評価手法が360 度評価です。より客観的な評価をおこなうことと、どのようにみられているかを被評価者にフィードバックしてさらなる成長を促すことが目的です。

 

 

360 度評価は、多面的評価ともいわれます。被評価者の職務行動をよく知る立場にある複数の人間が観察と評価をおこない、その評価データをフィードバックする人事評価手法です。評価する人物は、一般的には毎日顔をあわせる上司・同僚・部下などですが、顧客を評価者とすることでさらに多次元的な評価をめざすケースも増えつつあります。

 

360 度評価のメリットには以下のようなものがあります。

 

  • コンプライアンスが推進できる
    評価活動をおこなうためにお互いをよく観察する習慣が生まれるので、よい意味での緊張感が保たれ、不正がおこなわれにくい環境が醸成されます。

 

  • より実態に近い評価ができる
    複数の人物によって具体的な日常の職務行動を観察し評価するので、個人では見えないところまで網羅することができ、より実態に即した評価ができます。

 

  • 客観的で納得性の高い評価ができる
    複数名が評価をおこなうことにより、感情的な評価や恣意的な評価が排され、偏りのない客観的で納得性の高い評価を得ることができます。

 

  • 自己認知の深化と弱点の把握ができる
    他者の目を通して自分では気付けなかった特性や弱点を知らせることができ、自己の役割や行動を変革するためのきっかけが与えられます。

 

360 度評価において、客観的な評価と並んで重要な意味を持つのが、フィードバックです。評価される人物にとって、一緒に仕事をしている上司・同僚・部下から「どのようにみられているか」を知ることは、それだけで大きなインパクトがあります。自己を振り返るきっかけとして、これ以上のものはないでしょう。自律的な自己変革とさらなる成長を促す、非常に効果的な手法です。

 

最近の新たな動きとしては、360 度評価項目をコンピテンシーと連動させる例が増えています。

 

コンピテンシーとは、社内で継続的に高い成果をあげ続ける社員(ハイ・パフォーマー)の行動特性を抽出し、これを昇給・昇進・人事異動などの有力な評価要素にしようとするものです。360 度評価は、日常の業務行動を多面的に観察する手法なので、ハイ・パフォーマーの行動特性の抽出に優れています。

 

また、360 度評価の項目に抽出された行動様式を盛り込むことで、組織が望む具体的な行動パターンを、評価する側もされる側も簡単に理解できるというメリットもあります。客観的・公平であるだけでなく行動の指針も示せるこの評価方法は、今後さらに多くの企業で導入されるでしょう。

 

11.インセンティブ

社員のやる気を引き出すためのしくみがインセンティブです。報奨金やストックオプションといった金銭的なものが代表的ですが、褒めたり認めたりすることもインセンティブの1つです。

 

 

インセンティブとは、ある人の意欲(モチベーション)を引き出すために、外部から与える刺激のことです。成果主義における報酬の形態として導入されることが多いため、「報酬制度」といわれることもあります。物質的、評価的、人的、理念的、自己実現的の5つのタイプがあります。

 

  •  物質的インセンティブ
    金銭的インセンティブともいいます。歩合制の給料や業績に応じたボーナスの支給、ストックオプション、一時金といった具体的・定量的でわかりやすい報酬です。単に「インセンティブ」という場合にはこのタイプをさすことが一般的です。

 

  • 評価的インセンティブ
    従業員の行動を評価し、地位や権限、名誉などを付与するものです。社内での高い評価や大きな権限委譲がこれに相当します。日常の中での褒め言葉といった「認められている」という達成感を与える手法もあります。

 

  • 人的インセンティブ
    人格的に優れた上司や気心の知れた仲間など、人間性によって刺激を与えるものです。カリスマ的存在とチームを組むなど、人脈・社会関係を広げていくのもこれに該当します。

 

  • 理念的インセンティブ
    企業の理念によって心を刺激するものです。自らの理想と組織のめざすところが一致していると感じるとき、使命感が原動力となって仕事に取り組むことがあります。経営者が理念や哲学を頻繁に語ることによって与えられます。

 

  • 自己実現的インセンティブ
    仕事を通して自分の理想像に近づくための機会や環境の提供をさします。多くの人は理想像を持っており、教育研修やキャリアパスといったかたちでそれに近づくための場が与えられることにより、モチベーションが向上します。

 

この5種類はアメリカの心理学者A・マズローが提唱した欲求5段階説に対応していると考えることもできます。1.生理的欲求、2.安全・安定欲求、3.社会的欲求、4.自我的欲求、5.自己実現欲求の数字が大きくなるにつれてレベルが上がっていくとする考え方で、低次のものが満たされると1つ上の段階の欲求が生じるとされます。

 

生理的欲求には物質的インセンティブ、社会的欲求には評価的インセンティブと、求めるところに応じたものを与えることが効果的といわれています。しかし、一番効果が高いのは5種類を偏りなくミックスしてバランスの取れたかたちで提供することです。人間の欲求は多くのもので構成されています。あらゆる角度から適度に刺激を与えるのが、実態に即したアプローチといえるでしょう。

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