教育業界の常識にQuestionを投げかけるメディア

創考喜楽

財務マネジメント編④~10.予算管理 11.日本版SOX法

KNOW-HOW

企業が経営活動を行う中で、その活動の結果・成果をもっとも具体的に示すのは“数字”です。予算、売上、利益など、さまざまな数字から帰郷の状況を把握することが、効果的な活動につながります。

 

「財務マネジメント」編では、基本である決算書から近年重視されているROA・ROEといった指標まで、財務に不可欠な要素をピックアップして解説します。これらの要素から企業の何が見えるのか、財務マネジメントの基礎に触れていきましょう。

 

今回は「予算管理」「日本版SOX法」の2つの要素について理解を深めてみましょう。

 

10. 予算管理

 

予算とは目標として立てるだけのものではありません。予算をもとに活動をコントロールし、結果を分析して次に生かすという運営そのものが重要になります。

 

企業が設定した具体的な経営目標を、数字として予め算出したものが「予算」です。この目標としての予算を実現するための運営を「予算管理」といいます。予算管理を理解するうえで重要なのは、そこには「PDCA サイクル」のマネジメントがあること。すなわち、予算設定から行動の統制、実際の業績との比較による評価、そして評価結果を以後の行動にフィードバックする、という一連の流れがあることを理解する必要があります。単に予算を目標として設定しただけでは予算管理とはいえないのです。

 

予算は、企業の状態、過去の実績、市場の状況など、あらゆる情報を集約して設定されるものであるため、それを管理・統制し、評価することは経営の現状を分析するうえで非常に有用です。予算と結果に差が生じた場合は、きちんとその要因を分析して、次の予算の精度を高めなければなりません。精度を高めるためには、短いスパンでの適宜修正も必要ですので、月次レベルでサイクルを回し、月次決算をもとに月次予算の補正をおこないます。

 

本来的な意義でいえば、予算管理はすべての企業が確実に目標を達成するために必要なものですが、上場企業、こと大企業にとっては、重要度が格段に増大します。というのは、上場企業は、「決算短信」という形で投資家に対して企業の状況を適時開示しなければならず、投資家はそこに示された業績予測=予算をもとに投資するか否かを判断するからです。東京証券取引所では、決算短信で公示された業績予測から、売上高で10 %以上、経常利益、当期純利益で30 %以上の誤差が予想される場合には、業績の修正を求められます。

 

予算はいわば「これだけの業績をあげます」という、投資家に対して企業がおこなう約束ととらえられるので、あまりにも予算の精度が低いと、投資の対象として認められないのです。

 

こうした側面から、未上場企業が株式の公開を希望する場合、予算管理の体制が株式公開するレベルに達しているかを審査されます。この審査において、まだ十分なレベルに達していないと判断された場合、その企業の株式公開は延期されます。

 

このように、株式公開をめざす企業にとっても、予算管理は重要です。公開以前に予算管理体制を整備しておかなければ、投資家の信頼を得られるような精度の高い予算設定は不可能です。全社員が予算に対する意識を持ち、企業としての予算管理体制を確立して、適切な予算管理をおこなえるような環境づくりが求められます。

 

 

11. 日本版SOX法

 

日本版SOX 法とは、金融商品取引法の一部規定の俗称であり、米国の「サーベンス・オクスリー法(SOX 法)」に倣っていることからこう呼ばれています。企業の会計不祥事防止やコンプライアンスの徹底のため、会計監査制度の充実や内部統制の強化などを求める内容となっています。これは、証券市場を健全化し、投資家からの信頼を回復するのが目的です。対象となるのは上場企業約300 社と、その連結企業やグループ企業、重要な取引先などです。

 

2009 年3 月期の決算から適用され、企業は、内部統制に関わるプロセスを文書化し、内部統制の整備ができているということを証明しなければならなくなりました。その際、内部統制に欠陥や不備が発見された場合、株価の下落や上場の廃止もありえます。草案では、内部統制を大きく6 つの要素に分類しており、各企業はこれらを踏まえてプロセスの整備に取り組んでいます。

 

  1. 統制環境
    組織の気風を決定し、組織内すべてのものの統制に対する意識に影響を与えるとともに、他の基本的要素の基礎となるもの。
  2. リスクの評価と対応
    組織の目標の達成に影響を与えるすべてのリスクを識別、分析、評価し、そのリスクに対応するための一連のプロセスのこと。
  3. 統制活動
    経営者の命令や指示が適切に実行されるために定められる方針や手続きのこと。
  4. 情報と伝達
    必要な情報が組織や関係者に適切に伝えられることを確保すること。
  5. モニタリング(管理活動)
    内部統制の有効性を、継続的に監視、評価するプロセスのこと。
  6. IT(情報技術)
    内部統制の他の基本的要素が、有効かつ効率的に機能するために、業務に組み込まれている一連のITを活用すること。

 

中でもITは、内部統制を整備するために不可欠な要素として、有効性の判断基準と位置付けられています。ITシステムの導入によって業務プロセスを標準化することは必須ですが、その導入や管理などに大きな投資と十分な準備が必要となります。

 

おぼえておきたい関連用語 サーベンス・オクスリー法
エンロン事件やワールドコム事件など、相次ぐ不正会計問題に対処するため、米国で定められた法律。内部統制、監査制度の改革を目的とする。

連載一覧

Copyright (C) IEC. All Rights Reserved.