教育業界の常識にQuestionを投げかけるメディア

創考喜楽

リスク・マネジメント編④~10.インサイダー取引 11.コア・コンピタンス

KNOW-HOW

リスク・マネジメントとは「危機的状況をコントロールする手法」のことです。単にリスクを避けるだけでなく、その実態を把握したうえでの対策と、適切な問題の対処が求められます。リスク・マネジメント編では、企業が持つべき理念や、経営に関わるさまざまなリスクを取り上げ、必要なシステムや対策について、基礎から学んでいきます。

 

今回は「インサイダー取引」「コア・コンピタンス」の2つの要素について理解を深めてみましょう。

 

10. インサイダー取引

 

上場会社の役員や大株主などが、株価に影響を与える会社の重要な情報を公開される前に知り、それを元に株式を売買することをインサイダー取引といいます。インサイダー取引は身近で起こりうる問題です。

 

インサイダー取引は、投資家の投資判断に影響を及ぼすような会社の重要情報を知った人が、その情報が公開される前に株式等の売買をすることをいい、内部者取引ともいわれています。重要情報とは、会社の合併、株式の発行、分割、決算の情報など、株価に影響する情報が含まれます。

 

たとえば、ある会社の役員が2 ヵ月前に退職しましたが、退職前に今期公表していた予想値に比べて、実際の売上高が40 %減少する見込みであることを聞いていたとします。このとき元役員が、その情報が公表される前に自社株を売ることは、インサイダー取引にあたります。

 

その他にも、取引先の社長が大企業と提携する話をしているのを聞いたり、知り合いから、ある会社が薬品の新しい効用で特許を取ったという情報を手に入れたうえでそれらの会社の株を購入することも同じです。

 

インサイダー取引が放置されれば、内部情報を知ることのできない一般の投資家が不利になります。そこで証券取引法の第166 条により、インサイダー取引が規制されるようになりました。

 

その内容は、会社関係者が上場会社の業務等に関する重要情報を知った場合、その重要情報が公表された後でなければ株式の売買をしてはいけないというもの。もし違反した場合は5年以下の懲役もしくは500 万円以下の罰金、またはその両方が科されます。法人については、5億円以下の罰金が科されます。

 

それに加えて上場会社の役員や、特定の部署の従業員帳簿閲覧権を持っている株主、法令に基づく権限を持っている人、またその会社と契約を締結している人には、株式売買報告書の提出義務、短期売買による利益返還、空売りの禁止などの制限が設けられています。

 

しかし、経済活動やIT環境が多様化するなか、株価に影響を及ぼす会社の内部情報や、その情報を得られる人をすべてあげ、規制することは難しいのが実態です。今まで取り上げられた事件以外でも、無数のインサイダー取引がおこなわれている可能性は否定できません。

 

インサイダー情報は案外身近なところにあります。必要以上に敏感になることはありませんが、自社の情報の扱いについては慎重におこなうよう指導しなくてはなりません。

 

●インサイダー取引に関わる重要情報の例
・会社の合併、解散
・新製品、新技術の開発
・主要取引先との取引停止
・業績予想の大きな変動

 

11. コア・コンピタンス

コア・コンピタンスとは、他社では顧客に提供できないような独自のスキルや技術、サービスのことです。自社のコア・コンピタンスを明確にし、それを経営の強みにしていくことが必要になります。

 

自社の中核(コア)となる強み(コンピタンス)を明確化し、活用することで世の中のニーズに対し最適な製品・サービスを提供する戦略が重要視されています。また、自社が得意とする分野に経営資源を集中し、経営の効率を高める戦略をコア・コンピタンス経営といいます。

 

日本は他のアジア各国などに比べて、人件費などのコストが膨らみがちです。こうしたコストは商品やサービスの価格に影響するので、価格競争で海外の企業にたちうちできません。

 

海外製品を上回る価格になってしまったとしても、その値段に見合う商品やサービスを追求することが重要です。逆にとらえると、それを可能にするコア・コンピタンスを持つことが企業にとって生き残りの必要条件なのです。自社だけの個性や特徴を持たない企業は、他の企業に追い抜かれてしまう可能性があります。

 

コア・コンピタンス経営を取り入れるためには次のような手順が必要です。

 

1. コア・コンピタンスの確認
自社がすでに持っている独自のコア・コンピタンスを確認します。顧客がひとりでもいる企業には、必ずコア・コンピタンスがあると考えられます。顧客がその会社を選択している何かしらの理由があるはずです。

 

2. 有用なコア・コンピタンス経営の計画
1で確認したコア・コンピタンスを有効に活用できる経営戦略、方向性を考えます。自社の得意分野だけに注力し、不得意分野は他企業に依頼してしまうのも有効な経営手段です。

 

3. 計画の実行とコア・コンピタンスの維持
思い描いたコンピタンス経営を実行するための努力をします。

 

基本的な手順は以上の3つですが、コア・コンピタンスは一度確立したからといって安心していると、すぐ他社に追いつかれてしまいます。

 

たとえば新しい分野に初めて進出した企業があるとします。他に競合がいない分野なので、この企業のコア・コンピタンスは「新しい分野で経営活動をしている」ということになります。しかし、時間が経つにつれてもっと価格を下げた商品や、さらにきめ細かいサービスを提供する他の企業が進出してくるはずです。そこで今まで通りの経営をしていたら、生き残ることはできません。

 

企業が成長を続けていくためには、常に新しいコア・コンピタンスを求めていくことが大切なのです。

 

おぼえておきたい関連用語 ドメイン
ドメインとは事業領域とも呼ばれ、企業として競合他社とたたかう領域又はたたかわない領域を明らかにすること。製品やサービスなどにおける自社の強みから定義することが多く、定義の仕方が企業のその後を大きく左右することになる。

連載一覧

Copyright (C) IEC. All Rights Reserved.