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リスク・マネジメント編②~4.バランス・スコア・カード 5.パワー・ハラスメント 6.メンタルヘルス

KNOW-HOW

リスク・マネジメントとは「危機的状況をコントロールする手法」のことです。単にリスクを避けるだけでなく、その実態を把握したうえでの対策と、適切な問題の対処が求められます。リスク・マネジメント編では、企業が持つべき理念や、経営に関わるさまざまなリスクを取り上げ、必要なシステムや対策について、基礎から学んでいきます。

 

今回は「バランス・スコア・カード」「パワー・ハラスメント」「メンタルヘルス」の3つの要素について理解を深めてみましょう。

 

4. バランス・スコア・カード

 

バランス・スコア・カードとは、財務、顧客、業務プロセス、学習と成長という4つの視点から、経営戦略を具体的な業務へ落とし込み、これを評価していく業績評価システムのことをいいます。

 

バランス・スコア・カード(以下BSCとする)は、組織戦略・経営戦略を4つの視点から整理し、それを評価する経営管理システムをいいます。経営戦略を明確にすることで、財務数値にあらわされる業績だけではなく、財務以外の経営状況や経営品質から経営を評価し、バランスのとれた業績評価をおこなうことができます。

 

BSC を経営に導入するためには、まず戦略を財務、顧客、業務プロセス、学習と成長の4 つの視点から分析し、戦略目標を評価するための具体的な業績評価指標も同時に設定しておきます。

 

1. 財務の視点
従業員や株主など利害関係者の期待に応えるために、財務的な目標の達成をめざす視点です。具体的には営業利益(売上総利益から販売費や一般管理費を引いた分)や資本利益率(株主資本に対して、どのくらい利益が
還元されたかを示す指標)などを基準に、経営戦略を評価します。

 

 

2. 顧客の視点
戦略を達成するために、顧客に対してどのような行動をするかという視点です。具体的には、顧客満足度、顧客定着率や対象市場におけるマーケットシェア(市場占有率)、新規顧客獲得数、クレーム発生率などで経営戦略を評価します。

 

3. 業務プロセスの視点
株主と顧客を満足させるために、適切な業務プロセスをおこなう視点です。具体的には、開発効率(売上高に対する研究開発費の比率)、在庫回転率(製品の在庫が、一定期間に何回入れ替わったかを示す指標)、生産リードタイム(企画から販売までのトータルの開発期間)、改善施策提案数などで経営戦略を評価します。

 

4. 学習と成長の視点
戦略を達成するための能力や環境を、どう維持するかという視点です。具体的には、資格保有率、従業員満足度、新技術開発数、特許出願数などの社員の能力開発や、会社全体の知的資産(人材、技術、組織力、経営理念など目に見えない企業の資産)がどれだけ蓄積されたかで経営戦略を評価します。

 

ここでは、主に4 つの視点を紹介していますが、数や種類を限定することなく、その企業の戦略の達成のために適した視点を選択することが大切です。

 

BSC の一番の強みは、経営戦略が「見える」ことです。BSC を導入することで、自分たちの戦略の進行状況を確かめながら、企業の組織力・成長力・競争力を強化することができます。

 

 

5. パワー・ハラスメント

 

パワー・ハラスメントとは、上司が職場内での立場を悪用して部下に嫌がらせを繰り返し、精神的苦痛を与えることをさします。これは社員の能力発揮を妨げ、企業の社会的評価の低下にもつながる問題です。

 

 

パワー・ハラスメント(以下パワハラとする)とは、上司が部下に言葉や態度による暴力をふるったり、応えられない要求をしたりするなどで精神的に苦痛を与えることです。ここで使われる「パワー」とは、権力など、人間関係における強制力のことをさします。セクシュアル・ハラスメント(相手を不快にさせる性的な言葉、行為)に関しては、2007 年4 月1 日に改正男女雇用機会均等法が施行されてから企業の対策の強化が求められることになりましたが、パワハラについても法制化への動きが出てきています。

 

達成が困難な目標を掲げさせ、あるいはノルマを与えて達成しなかった場合、徹底的に追い詰める、些細なミスを必要以上に責める、仕事ではなく人格に関する攻撃的な言葉で叱りつけるなどが、パワハラの例として挙げられます。

 

いつも命令している立場の人は、「上司・部下」という関係はビジネス上のものという感覚が薄れてしまい、仕事上の権限を超えて命令をしてしまう場合があります。これがパワハラの原因になっています。

 

また、パワハラをおこなっている加害者自身が他の権力者(さらに上の役職にある人物など)によって過剰なストレスを与えられていて、その焦りや恐怖心からパワハラに走る場合もあるようです。

 

パワハラの問題点は、他の人からは、上司が部下に指導や業務上の命令をしているようにみえるため、表面化しにくいということです。

 

パワハラが起こった場合は、企業側は当事者の社員(加害者・被害者双方)に対して、会社の相談窓口担当者などの第三者による事実の確認と、被害者である社員の要望を確認することが大切です。そのうえで、再発防止に向けての活動が必要になります。

 

パワハラを防止するには、人権問題、メンタルヘルス問題、職場環境整備問題、労務管理問題など、さまざまな側面からパワハラをとらえた正しい理解が必要です。具体的な防止策としては、アンケートなどにより社員の意識調査を実施し、結果に応じて社内教育などの活動をおこなうのも1 つの方法です。

 

職場のパワハラは、個人的な問題ではありません。社員の能力発揮を妨げるばかりでなく、企業の社会的評価を著しく低下させることにもなりかねない問題です。責任ある企業として、パワハラに対する明確な方針を提示し、その防止策やフォロー体制をしていかなければなりません。

 

●職場におけるパワハラの例
・「解雇するぞ」と脅す
・必要以上にミスを追及する
・残業を強要する
・仕事を与えない 
・退職を要求する など

 

6. メンタルヘルス

メンタルヘルスという言葉は、心身ともに充実した健康状態をめざすことをさします。メンタルヘルスは個人だけの問題ではないので、組織全体が正しい知識を持ち、対策を講じていくことが重要です。

 

メンタルヘルスのメンタルとは「心の・精神の」、ヘルスは「健康・保健」という意味を持ち、一般的には「心の健康」と訳されています。

 

健康であるということは、身体はもとより心の問題も含めて健全であるということです。メンタルヘルスの目的は、心身ともに充実した健康状態をめざすことだといえます。

 

とりわけ企業では、リストラやIT化による業務内容の変化、成果主義の浸透によって職場環境が変わったこと、複雑な人間関係や長時間労働のストレスなどにより、メンタルヘルスに不調をきたす人が増えています。ひどくなると自殺にまで追い込まれてしまう人もいます。

 

メンタルヘルスの悪化は、企業の生産性の低下だけにとどまりません。ミスやトラブルによる事故の発生、欠勤者発生によって他の社員の労働量が過重になるなどの悪循環、治療費や職場復帰に要する費用の拡大など、企業の致命傷となりうるような結果をもたらしていることに注目する必要があります。

 

職場のメンタルヘルス対策は、「予防」と「早期対応」が重要です。具体的な方法としては以下の通りです。

 

  1. 定期的なストレスチェックの実施
    社員それぞれのストレスチェックを定期的におこない、社員一人ひとりが自分のストレスに気付くきっかけを設けます。
  2. 相談体制の確立
    問題が重大な状況に陥る前に、外部のカウンセラーに相談できる体制をつくるということです。社内の誰かに相談するのも手ですが、プライバシーの問題や人事評価の観点からみると、外部の専門家に相談する方がいいでしょう。
  3. 社内セミナーによるメンタルヘルス教育
    メンタルヘルスについての知識を社員一人ひとりが身に付け、その対策を組織全体で考えていく環境づくりをすることが大切です。
  4. 職場復帰支援プログラムの策定
    職場復帰が難しいとされる心の病のフォローを組織でしていくためにプログラムを策定するということです。

 

メンタルヘルス対策をきちんとおこなうことによって、会社の生産性の低下を予防するとともに、社員が安心して働ける職場づくりをしていくことが大切です。

 

●メンタルヘルスの不調による症状例
・常に疲れを感じる
・肩こりや頭痛がひどい
・食欲がない
・ぐっすり眠れない、眠りが浅い
・飲酒や喫煙量が増える
・以前はできた仕事ができない
・欠勤や遅刻が増える
・人付き合いがわずらわしい

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