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オペレーション・マネジメント編②~4.シックス・シグマ 5.見える化 6.PERT

KNOW-HOW

組織は、少しの工夫で劇的に改善され、効率的に動く可能性を秘めています。そのために必要なものは、「どうしたいかという目標」と、「それに到達するための手法」です。

 

「オペレーション・マネジメント」編では、多くの企業で導入されている効率的な組織運営の手法を取り上げ、無駄をなくしたり、情報を共有するための方法論などを学んでいきます。

 

今回は「シックス・シグマ」「見える化」「PERT」の3つの要素について理解を深めてみましょう。

 

4.シックス・シグマ

 

シックス・シグマは、ビジネス・プロセスを極めてバラツキの小さい状態にすることを目的とした品質管理手法です。平均値ではみえてこない問題を改善することで、より高い品質の実現が可能になります。

 

「シグマ(σ)」とは、統計で用いられる標準偏差のことです。標準偏差はデータの散らばり具合を示したもので、値が大きいほどバラツキが大きいということになります。バラツキが大きいほど精密性に欠け、不安定要素が多いことを意味します。たとえばAとBという2つのそば屋があり、どちらも出前にかかる平均時間が「注文を受けてから30 分」だとします。しかし、A店の場合は「つねに30 分」、一方B店は平均でこそ30 分ですが、10 分で届くこともあれば、1時間かかることもあります。この場合、A店よりB店の方が標準偏差が大きいとなり、安定しているという意味で高いサービスレベルを提供しているのはA店ということになります。

 

シックス・シグマは、これまで平均値だけが重視されがちだった経営や事業目標の中に、バラツキの概念を取り込み、低く抑えることでより高い品質の実現をめざす手法です。ノーミスという理想目標ではなく計測可能な数値目標を設定することで、現実的で達成可能な課題を提示することができ、具体的な行動もとりやすくしています。

 

しかし現実的で達成可能な数値目標とはいえ、シックス・シグマは100 万個に対してエラーが3個という非常にハイレベルな状態を意味します。そこで、これを実現するために開発された手法がMAICです。

 

●MAIC
M(Measure:測定)、A(Analyze:分析)、I(Improve :改善)、C(Control :定着)の4つを継続的に回しながら品質を向上させるマネジメントサイクルです。Mの前にD(Define :定義)というプロセスを導入している企業もあります。測定や分析という現状把握と問題発見の段階を重要視している点が特徴です。これを全社で横断的に実施することでバラツキの元となるプロセスを発見して改善をおこない、品質が一定になるように働きかけます。そして、改善の際にとった対策がどれだけの効果をあげたか測定することで、さらに上の段階へと発展していくのです。実際の運用はブラックベルトと呼ばれるプロジェクトリーダーが中心となって推進します。

 

また、シックス・シグマでは目標設定の指標をVOC(Voice of Customer :顧客の声)に置いています。プロセス改善に使えるリソースは無限ではありません。シックス・シグマでは、VOC を重要な判断基準とすることで、品質向上と顧客満足の向上を同時に図ることができます。

 

 

おぼえておきたい関連用語 VOC(Voice Of Customer :顧客の声)
顧客の満足を得られる製品やプロセスを設計、開発するための貴重な材料としてシックス・シグマ以外の品質管理でも使われる。アンケートや苦情、インタビュー、市場調査結果などから収集されるもの。大量のデータとなるので、集約と分析のシステムが必須となる。

 

5.見える化

 

「見える化」は、もともとはトヨタ生産方式の用語。みえない問題をみえる状態にして解決するためのしくみとして、多くの企業が取り入れている経営管理手法です。

 

 

「見える化」が重要になってきている理由は、経営の三要素である「ビジョン」「競争戦略」「オペレーション」のうち、3番目の「オペレーション」を強化できる手法だからです。

 

オペレーション、つまり「組織としての問題解決能力」を向上するために必須なのが、問題を常にみえるようにして、早期発見・解決を促進することです。問題がみえなければ、何をどうしていいかわからないため解決ができません。

 

解決するためには、コスト上の無駄はどこにあるか、改善の余地がどこにあるかなどを明確にしなければならないのです。問題が明らかになれば対応が可能になり、取り組む意欲も湧いてきます。この問題の開示・発見から、チームでの問題解決までの一連の流れを強化するのが「見える化」です。

 

企業における「見える化」は、大きく次の2つに分類できます。

 

  1. 管理の「見える化」
    経営の問題をみえるようにし事業を最適化する。
  2. 現場の「見える化」
    現場が自分たちの問題を自主的に解決できるようにする。

 

トヨタ自動車は昔からこの作業に熱心に取り組み、強い企業へと成長しました。生産ラインで問題が発生すると担当者が「あんどん」をつけて、問題を早期に知らせ迅速な対応を可能にする「あんどん方式」や、必要なときに必要なものを必要なだけ用意したりつくったりする生産方式=JITを運用するうえで不可欠な「かんばん」は、トヨタが編み出した現場の「見える化」の好例といえます。

 

気を付けなければならないのは、「見える化」は単純な情報共有ではないということです。まず、みる努力をしなくても自然に事実や問題が「見える」状態をつくる必要があります。このとき、すべてをみえるようにしようとする必要はありません。ポイントをわかりやすく整理すればそれで足りるのです。

 

また、問題を発見し解決するためのものなので、不都合な情報がみえていなかったり、タイムリーにみえていなかったりすると、その本質は失われてしまいます。

 

そして何よりも重要なのは、問題を発見した後にきちんと解決に向けて行動することです。組織の問題点がみえていながら、何もやらなければみえないのと同じです。

 

「見える化」のめざすところは、問題解決に向かって、共通認識を創造して全員が共有することです。同じ情報を持っていても認識がばらばらでは問題解決には到達できません。共通認識を確立してはじめて、組織は目標に向かって一致団結ができるようになるのです。

 

6.PERT

プロジェクトをすすめるにあたっては「何を」「だれが」「どんな手順で」「いつまでに」おこなうかを明らかにする必要があります。それらを計画的に管理していく手法が「PERT」です。

 

「PERT」とはProgram Evaluation and Review Technique の略で、プロジェクトのスケジューリング手法の1つです。施行管理や生産計画、ソフトウェア開発といった大型プロジェクトの管理に利用されています。アメリカ海軍が戦略計画を推進する中で開発・採用したこのスケジュール管理手法は、プロジェクトをすすめるにあたって各工程にどれだけの時間がかかるかをネットワーク図を使ってわかりやすくするというものです。複雑に絡み合う行程を整理し、重要なポイント発見や効率的なルート策定と、全体所要時間を把握するために用いられます。

 

ネットワーク図はアローダイヤグラムともいい、いくつかの円とそれをつなぐ矢印で構成されます。円には各作業内容(アクティビティ)が書かれ、矢印には所要時間や人員数が書き込まれます。これを先頭からたどることで、各作業の相関関係が明確になり、プロジェクトを遂行するために必要な時間やすすめ方を明らかにすることができるのです。

 

ネットワーク図を作成するためには、まず作業をこまかく分解してそれぞれの実行順序や前後関係を明確にします。そして作業ごとに所要時間を見積ります。ネットワーク図として描くのは、こういった構成要素を準備してからです。

 

そしてネットワーク図ができあがったら、クリティカルパスを探します。クリティカルパスとは「重要な経路」という意味で、一番時間がかかり、その流れが滞ると完了日程が必ず遅れてしまう経路です。特に複雑なプロジェクトでは工程管理が重要となるため、管理に必要なリソースをどこに配置するかの指標となります。クリティカルパスを見きわめることは、スケジュール遵守の前提となる作業なのです。

 

また、納期を短縮するためにはクリティカルパスを短縮する必要があります。余裕があるところで短縮化をおこなっても、クリティカルパスが変わらなければ全体としての納期に変わりはありません。平均的に効率をあげるよりは、クリティカルな部分に力を入れて作業短縮をおこなうことが、全体としての効率化につながるのです。

 

さらに、1つひとつの作業にかかる時間を短縮するにはいくらの費用がかかるかを把握することで、最も安い出費で納期を短縮する方法を導き出すことも可能です。これをPERT/CPM(クリティカル・パス・メソッド)といいます。

 

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