複数の人間が集まって構成されている組織の特性を把握したうえで、いかに効果的に組織を運営していくかは、マネジャーの役割の中で重要なことの1つです。
「組織マネジメント」編では、組織マネジメントの種類を紹介し、マネジャーが組織を運営していくうえで不可欠な、数々のテクニックを学んでいきます。
今回は「組織開発」「マトリックス組織」「学習する組織」の3つの要素について理解を深めてみましょう。
組織開発とは、OD とも呼ばれ、組織の業務効率を高め、理解と変革と開発をすすめるためのさまざまなテクニックの総称です。たとえば、チームビルディング、サーベイフィードバックなどが、OD に該当します。
組織開発とは、従業員を変える方法を一括して呼ぶときに使われる言葉です。英語でいうとOrganizational Development と訳され、その頭文字からOD とも呼ばれています。組織開発は、組織の業務効率や健全性を高めたり、環境の変化に対応していくために、組織のメンバーの価値観や態度、風土、人間関係などをよりよい方向に変革するためのさまざまなテクニックをさします。
組織開発が重要ととらえる条件は以下の通りです。
要するに組織開発とは、組織の改変や制度、手続きの変革に重きを置くのではなく、メンバーが持っている力を発揮し、相乗効果によって大きな成果をあげられるような組織風土づくりをめざすことに焦点を置いた活動といえます。
一般的な組織開発には、サーベイフィードバック、チームビルディング、およびグループ相互の開発などのテクニックがしばしば使われます。
チームビルディングとは、グループをチームとして機能させるための技法で、メンバー間の信頼と開放性をアップさせるテクニックです。サーベイフィードバックとは、組織のメンバーの態度を評価したり、メンバー間の受け止め方の食い違いを確かめ、食い違いが生じていることが明らかな場合は、解決するという方法です。
たとえば、組織のメンバーに慣例的な意思決定の方法、コミュニケーションの有効性、各部門間の協力などのアンケート結果を元に、特定の部署に関するデータと組織全体に関するデータを比較する表をつくり、従業員に配布します。
アンケートから得られたデータは、従業員の潜在的な問題を明らかにする手がかりです。データをもとにディスカッションをおこない、アンケートの結果の意味を参加者全員が理解して結論を皆で導き出します。
このような組織開発は、グループ間の対立によって機能不全に発展する可能性のある場合などに特に効果を発揮するマネジメントスキルといえます。
複数の異なる組織構造を混合し、指示命令系統を多次元的に構成した組織のことをマトリックス組織といいます。マトリックス組織のメリットは、少人数の専門家を、部門を越えてフル活用できるという点にあります。
マトリックス組織とは、ある部署で働いている専門家が、専門や部署を超えたチームでも働くことができるようにする組織構造のことです。ピラミッド型の組織に代わって、1980 年代の後半には、多くの多国籍企業がマトリックス組織を採用し、今日でも多種多様な業界で採用されています。
●マトリックス組織の特徴
●マトリックス組織のメリット
●マトリックス組織のデメリット
複数の上司が存在することで、意思統一が図られず、部下に対する指示命令が矛盾すると、組織が機能不全に陥ってしまいます。そのため、一方の上司には大きな権限を与えるなど、与える権限や役割を差別化することで、混乱を防ぐという方法が一般的に取られています。
個人が学ぶのと同じように組織も学びます。「学ぶ」ということが、組織が存続し続けるために必要だからです。要するに「学習する組織」とは、あらゆる状況に適応できる能力を身に付けていく組織のことをいうのです。
これまで、たいていの組織が、「シングル・ループ学習」と呼ばれる方法で学んできました。これは、間違いを発見した際に、過去の慣例と現在の方策に頼って解決するという方法です。
これに対して「学習する組織」は、「ダブル・ループ学習」をおこなっています。この方法は、過ちが発見されると、組織内の根強い慣習や規範に流されることなく、従来とは大きく異なる問題解決や飛躍的な改善をおこなうものです。
学習する組織には以下のような5 つの基本的特徴があります。
●基本的特徴
学習する組織は、リスクを犯す行動、開放性、成長などを重視し、独特の文化を持っています。また、階層化と細分化によって生み出された障壁を壊し、「無境界性」を求めます。学習する組織は、意見の不一致、建設的批判、職務上の争いを支援し、共有するビジョン実現のために変化をもたらすリーダーを求めています。
では、学習する組織にするためにマネジャーには、どのような行動が求められているのでしょうか。学習する組織を語るうえで欠かせない人物がピーター・M・センゲです。センゲは、学習する組織を実現するための要素を5つ挙げています。
●実現するための要素
絶えず学習し続ける組織の実現へ向けて、強いリーダーシップによって行動を実践し続けていくことが、マネジャーには求められています。