ハラスメント

ハラスメントの種類を徹底解説!3大ハラスメントや企業側の対処法も

ハラスメントの解説と対処法とは

ハラスメントは、他人に対する嫌がらせやいじめなどの迷惑行為を指す言葉です。代表的なハラスメントには、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなどが挙げられます。時代とともにハラスメントの種類も多様化してきており、近年ではテクノロジーハラスメントや時短ハラスメントといった新しい言葉も生まれています。

当記事では、3大ハラスメント(パワハラ・セクハラ・マタハラ)の特徴や、職場で注意したいハラスメントの種類を紹介しますので、ぜひご一読ください。

ハラスメントの基本的な意味

ハラスメントの基本的な意味は、人に対する「嫌がらせ」や「いじめ」といった迷惑行為のことです。ハラスメントに該当する迷惑行為は身体的・精神的の両方があり、相手の人格や尊厳を傷つけます。

中でも職場で発生するハラスメントは、企業や従業員にさまざまな悪影響を与える行為です。悪影響の例としては、ハラスメント発生によって職場環境が悪化し、従業員の生産性が低下します。ハラスメントに遭った被害者が退職・休職するリスクもあり、人材が定着しません。また、ハラスメント発生が世間に広く知れ渡ると、企業イメージの低下にもつながります。

職場におけるハラスメントの悪影響などは、下記のページで詳しく解説しています。

『ハラスメントとは?定義や種類・企業における影響と対策を解説』について詳しくはこちら

職場で発生しやすい代表的な3つのハラスメント

職場で発生しやすいハラスメントは、「パワーハラスメント(パワハラ)」「セクシュアルハラスメント(セクハラ)」「マタニティハラスメント(マタハラ)」の3つです。

パワーハラスメントは、「上司から部下へ」のように職場内での地位の優位性を背景にして行われるハラスメントです。セクシュアルハラスメントとマタニティハラスメントは、どちらも女性が被害者となりやすい傾向があります。

2020年の厚生労働省委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、過去3年間に相談があったと回答した企業の割合は、下記の通りとなっていました。

【過去3年間に相談があったと回答した企業の割合】

パワハラ48.2%
セクハラ29.8%
顧客等からの著しい迷惑行為19.5%
マタハラなど5.2%

※調査対象:全国の従業員30人以上の企業・団体|回答数:6,426

※厚生労働省「令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査 報告書」

パワーハラスメントが最も多く、次いでセクシュアルハラスメント、顧客等からの著しい迷惑行為、マタハラなどの順となっています。いずれのハラスメントも、被害を受けた従業員の心身が傷つき、職場環境を害する大きな問題です。

以下では、職場で発生しやすい3大ハラスメントを詳しく説明します。

パワーハラスメント

パワーハラスメントとは、職場内における優越的な関係を背景として、業務上の適正な範囲を超えた言動により、労働者の就業環境を悪化させる行為のことです。


厚生労働省は職場におけるハラスメントの中でも、パワーハラスメントの代表的な言動を6つに分類して公開しています。

【パワーハラスメントの代表的な言動の類型6つ】

①身体的な攻撃殴打、足蹴りを行う。相手に物を投げつける。
②精神的な攻撃人格を否定するような言動を行う。
必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う。
他の労働者の前で、大声で威圧的な叱責を繰り返し行う。
③人間関係からの切り離し特定の労働者を仕事から外し、長時間別室に隔離する。
1人の労働者に対し、同僚が集団で無視をし、職場で孤立させる。
④過大な要求新入社員に必要な教育を行わないまま、到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し、厳しく叱責する。業務とは関係のない私用な雑用の処理を強制的に行わせる。
⑤過小な要求管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせる。
気に入らない労働者に対する嫌がらせのために仕事を与えない。
⑥個の侵害労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりする。
労働者の機微な個人情報について、本人の了解を得ずに他の労働者に暴露する。

※引用:厚生労働省「ハラスメントの類型と種類」 引用日2023/07/26

職場におけるパワーハラスメントの具体例は、下記のようなケースです。

・「態度が気に入らない」という理由をつけて、上司が部下を足蹴にする
・「お前はそんな性格だから仕事ができないんだ」のように、本人の性格や個性と業務遂行能力を結び付けて罵倒する
など

パワーハラスメントについては下記のページでより詳しく解説しています。

『パワハラとは?定義や6つの分類・事例・防止方法などを簡単に解説』について詳しくはこちら

セクシュアルハラスメント

セクシュアルハラスメントとは、労働者の意に反する性的嫌がらせによって就業環境が害されたり、労働条件で不利益を受けたりすることです。

セクシュアルハラスメントは男性・女性どちらも被害者になり得るものの、特に女性が被害に遭う傾向が多いと言われています。

職場におけるセクシュアルハラスメントの具体例は、下記のようなケースです。

・昇進を条件として、女性従業員に性的関係を迫る
・女性従業員のデスク近くにヌードのポスターを貼る
など

また、本人の性的指向や性自認を差別する言動なども、セクシュアルハラスメントに含まれます。

セクシュアルハラスメントについては下記のページで解説しているので、ぜひ参考にしてください。

『セクハラとは?職場におけるセクハラの種類・定義・予防法などを紹介』について詳しくはこちら

マタニティハラスメント

マタニティハラスメントとは、女性従業員の妊娠・出産・育児に関連する嫌がらせによって、就業環境が害されることです。妊娠・出産を理由として減給や解雇をされたり、本来の業務とは異なる雑務ばかりをさせられたりするケースがマタニティハラスメントに該当します。

職場におけるマタニティハラスメントの具体例は、下記のようなケースです。

・育児休業を申請したら、「今は休まれると困る」と言って断られた
・「妊娠しているといつ休まれるか分からない」という理由で仕事をさせてもらえない
など

マタニティハラスメントは、妊娠・出産への理解が不足している男性社員や、支援設計ができていない会社で起こりやすい傾向があります。

職場で注意したいハラスメントの種類を一覧で紹介

3大ハラスメント以外にも、職場ではさまざまな種類のハラスメントが発生する可能性があります。職場で注意したいハラスメントを把握する前に、まずは下記の「職場」の定義について確認しましょう。
【職場とは】
職場とは、企業に雇用されている従業員が業務を行う場所のことです。普段から業務を行う場所以外であっても、従業員が業務を行っている場所と判断されれば「職場」に該当します。
また、勤務時間外の懇親の場として使用される飲み会や、通勤中の電車内なども、職務との関連性などを考慮した上で職場と判断されるケースがあります。

以下では、職場で注意したい14種類のハラスメントを紹介します。

モラルハラスメント

モラルハラスメントは、倫理や道徳に反した嫌がらせ・いじめを行い、相手に精神的苦痛を与える行為を指します。モラルハラスメントは物理的な暴力行為を伴わず、言葉や態度によって相手を追い詰める点が特徴です。
また、モラルハラスメントは本人の性別や職務上の地位とは関係なく行われます。誰もが被害者になり得るハラスメントです。

【モラルハラスメントの具体例】

・挨拶をしてもいつも無視される
・有給休暇明けに「忙しいのに休みを取るなんて」と嫌味を言われる
・経験の浅い社員がいきなり重要なプロジェクトのリーダーを命じられる

パタニティハラスメント

パタニティハラスメントは、育児休業や育児時短制度を利用しようとする男性に対して、嫌がらせや不利益な扱いをする行為です。「マタニティハラスメント」の男性版と考えると分かりやすいでしょう。
パタニティハラスメントは、男性の育児参加に理解を示さない従業員が多い企業で発生しやすい傾向があります。

【パタニティハラスメントの具体例】

・上司に「育児休業を取得するなら昇進は諦めて」と言われた
・時短勤務を理由に、別の部署への異動を命じる
・常日頃から「男の育児休業なんて非常識だ」と言い、制度利用を制限している

ジェンダーハラスメント

ジェンダーハラスメントは、性別についての固定観念などにもとづく嫌がらせや差別のことです。「男性は力強く、仕事を担う役割がある」「女性は非力で、家庭を守る役割がある」といった固定観念から、ジェンダーハラスメントに該当する言動や態度が生まれます。

【ジェンダーハラスメントの具体例】

・上司が労いのつもりで「女性なのによく頑張ってるね」と発言する
・「男なら残業くらい当たり前だ」と残業を強いられる
・身体は女性だが性自認は男性の従業員に、「女性はスカートをはいて」と強要する

テクノロジーハラスメント

テクノロジーハラスメントは、パソコンやスマートフォンといったIT機器の操作を苦手としていたり、IT知識が乏しかったりする人に対するいじめや嫌がらせのことです。
テクノロジーハラスメントは、ITに強い人物がITに弱い上司に対して行う点が特徴です。年齢や職位の上下関係にかかわりなく、誰もが加害者・被害者となる可能性があります。

【テクノロジーハラスメントの具体例】

・ITシステムの操作説明中に「こんな簡単なこともできないの?」と侮辱する
・パソコン操作が苦手な人に、故意にパソコン作業を大量に割り振る
・相手に専門知識がないことを知りながら、わざとIT用語を多用して話す

リモートハラスメント

リモートハラスメントは、在宅勤務などのリモートワーク中に発生するいじめ・嫌がらせのことです。Webカメラに映るプライベートの情報を執拗に指摘したり、画面越しで性的な言動をしたりする行為がリモートハラスメントに該当します。
リモートハラスメントは、リモートワークのルール整備が進んでいない企業に起こりやすい傾向があります。

【リモートハラスメントの具体例】

・部屋に置いてある私服を見て「ちょっと着てみせてよ」と言う
・宅配便の受け取りに離席すると「業務中になぜ離席するのか」と叱られる
・画面越しに見えるように、わざと股間を触る仕草をする

リストラハラスメント

リストラハラスメントは、リストラ対象者となっている従業員に対していじめ・嫌がらせを行い、従業員の自主退職を促す行為です。従業員から仕事を取り上げたり、窓際部署に配置転換したりするなどの行為がリストラハラスメントに該当します。
リストラ対象者の候補となりやすい管理職は、リストラハラスメントに遭いやすい傾向があります。

【リストラハラスメントの具体例】

・忙しい部署の中で特定の従業員にのみ仕事を割り振らず、精神的に追い込む
・仕事の失敗を理由として「無能だからリストラ候補になるんだ」と責める
・自主退職を拒む従業員を何度も呼び出し、自主退職を強要する

時短ハラスメント

時短ハラスメントは、職場において経営陣や上司が労働時間の短縮を強要するというハラスメントです。残業時間の削減を課題として抱えながらも具体的な方策を定めず、単に「労働時間を短くする」ようにプレッシャーをかけることが、時短ハラスメントに該当します。

【時短ハラスメントの具体例】

・業務量は従来のまま、「業務を早く切り上げて帰宅しろ」と言われる
・労働時間を短縮した結果、業務ノルマを守れなかったことを厳しく責められる
・残業禁止を設定しながらも、サービス残業をしなければ達成できない業務量を押し付けられる

セカンドハラスメント

セカンドハラスメントは、ハラスメントの被害を周囲に相談した結果、二次的に被害を受けることを指します。相談内容が周囲に筒抜けになっていたり、ハラスメントの責任を相談者に押し付けたりする行為がセカンドハラスメントに該当します。
セカンドハラスメントは、ハラスメントの相談体制が整っていない企業で発生しやすいハラスメントです。

【セカンドハラスメントの具体例】

・「セクシュアルハラスメントに遭った人物」と職場内で噂される
・ハラスメント被害を上司に相談しても信じてもらえない
・ハラスメント相談をしたことが加害者側に伝わり、嫌がらせ行為がエスカレートする

コロナハラスメント

コロナハラスメントは、新型コロナウイルス感染症に関連していじめや嫌がらせをする行為のことです。新型コロナウイルス感染症に罹患した従業員が回復後に嫌がらせを受けたり、職場で咳をしただけで陰口を言われたりする行為が、コロナハラスメントに該当します。

【コロナハラスメントの具体例】

・症状が回復したにもかかわらず、同僚に「感染するから近づくな」と言われた
・体調不良のため早退を届け出したら、上司に「コロナか?」と執拗に聞かれた
・配偶者が新型コロナ病棟で働いていることを理由に、出社制限を受けた

ワクチンハラスメント

ワクチンハラスメントは、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種に関連して嫌がらせや差別的な対応などを行うことです。
ワクチン接種をするかしないかは、本人が自由に決められる選択です。本人の意思を無視し、会社側の方針などを理由として接種を強要する行為が、ワクチンハラスメントに該当します。

【ワクチンハラスメントの具体例】

・ワクチンを接種していないことを理由に、退職を強要された
・社内報にワクチン非接種者の名前が掲載された
・「ワクチンを接種していない人とは話さない」と職場内で仲間外れにされた

アルコールハラスメント

アルコールハラスメントは、お酒に関連する嫌がらせや酔ったことによる迷惑行為を指します。歓迎会や忘年会といった飲み会や、社員旅行でのお酒の席などでアルコールハラスメントが発生する可能性があります。
アルコールハラスメントは被害者に不快感を与えるだけではなく、急性アルコール中毒にさせる恐れもあるハラスメントです。

【アルコールハラスメントの具体例】

・お酒を飲めない従業員に無理やりお酒を飲ませる
・「大人にもなってお酒を飲めないの?」とからかう
・お酒に酔って服を脱ぎ、女性従業員に対して性的言動を取る

スメルハラスメント

スメルハラスメントは、ニオイによって相手に不快感などの精神的苦痛を与えるハラスメントです。口臭や体臭、タバコのニオイ、香水のニオイ、柔軟剤のニオイが、スメルハラスメントの主な原因に挙げられます。
ニオイは加害者本人が気付いていないケースも多く、スメルハラスメントは解決が難しいハラスメントです。

【スメルハラスメントの具体例】

・上司の口臭がひどく、面と向かって会話をすることにストレスを感じる
・同僚の従業員がつけている強烈な香水のニオイをかぐたびに頭痛を覚える
・オフィス内にいつも柔軟剤のニオイがただよっていて、吐き気を催すことがある

スモークハラスメント

スモークハラスメントは、職場内で喫煙者が非喫煙者に対して、喫煙の強要やタバコのニオイ・煙などで不快感を与える行為です。受動喫煙によって健康被害・健康不安を与えるケースもスモークハラスメントに該当します。

【スモークハラスメントの具体例】

・打ち合わせ中に上司が喫煙をしていて、内容に集中できない
・隣のデスクからタバコの煙が流れてきて咳き込んでしまう
・飲み会で上司から喫煙を強要される

スイーツハラスメント

スイーツハラスメントは、職場内で配られたり食べたりするお菓子に関連して、嫌がらせやいじめを行うことです。特定の人にだけお菓子をわざと渡さなかったり、無理やりお菓子を食べさせたりするなどの行為が、スイーツハラスメントに該当します。

【スイーツハラスメントの具体例】

・職場内で配られていたお菓子を自分だけもらえず、仲間外れにされる
・ダイエット中なのにお菓子を食べることを強要される
・旅行したことを職場で話したら「お土産用のお菓子は買ってないの?」と聞かれる

企業がさまざまな種類のハラスメントへ対処するには?

さまざまな種類があるハラスメントに対して、企業は適切な対処をしなければなりません。最後に、企業が取れる主なハラスメント防止措置・対処法を3つ紹介します。

・社内規定などを決めて周知する
まずは社内規定などでハラスメントに関するルールや対応を決めて、従業員に周知しましょう。ハラスメント対策は全社的に取り組むべき課題であると周知することによって、企業方針が明確化し、従業員のハラスメントに対する意識が高まります。従業員への周知は、説明会を開いたり、社内報を配布したりする方法があります。

・セミナーを実施する
近年はハラスメントの問題が広く知られるようになっているものの、社員の中にはハラスメントの判断基準や該当する言動がよく分からない方もいます。社内のハラスメント意識を高め、ハラスメントをしないための正しい知識を身につけるには、セミナー・研修の実施が大切です。

・相談体制を整備する
ハラスメントの被害に遭った従業員が相談できるよう、相談体制を整備することも重要です。ハラスメントの相談体制としては「相談窓口の設置」が挙げられます。2020年に成立した改正労働施策総合推進法により、大企業と中小企業(中小企業は2022年から)に対して相談窓口の設置が義務化されました。まだ相談窓口を設置していない企業は、早急に対応する必要があります。

株式会社アイ・イーシーでは企業やコミュニティなどで想定されるハラスメント対策として、動画で学べるハラスメント対策「Gap Graph」も用意しております。

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まとめ

ハラスメントは、他人に対して「嫌がらせ」や「いじめ」などの迷惑行為をすることです。職場で発生しやすい代表的なハラスメントには、パワハラやセクハラ、マタハラなどがあります。ハラスメントにはさまざまな種類があり、テクノロジーハラスメントやリモートハラスメント、時短ハラスメントといった新しい言葉も生まれています。

企業がさまざまな種類のハラスメントへ対処するには、社内規定などを決めて従業員に周知するほか、相談窓口を設置することが大切です。従業員が正しい知識を身につけられるよう、セミナー・研修を行うこともおすすめです。

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