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セクハラとは?職場におけるセクハラの種類・定義・予防法などを紹介
セクシャルハラスメント(セクハラ)とは、端的に言うと「性的な言動による嫌がらせ」です。万が一職場でセクハラが発生すれば、従業員のモチベーション低下や職場環境の悪化につながる可能性もあります。企業側は、職場におけるセクハラの定義・基準を理解した上で予防的措置を取り、セクハラ発生時には迅速かつ適切な対処を行うことが大切です。
当記事では、職場におけるセクハラの種類、定義・基準、セクハラ対策が重要な理由などを紹介します。「セクハラが企業・従業員に及ぼす悪影響を知りたい」「セクハラがない職場づくりを目指したい」という方は、ぜひご一読ください。
セクハラとは?
セクシャルハラスメント(セクハラ)とは、簡単に言うと性的な嫌がらせです。「必要がないのに身体に触れる」「不快になる性的な言葉かけをする」などもセクハラの1つです。
身体への接触や性的な言葉かけをした側に悪気がなかったとしても、された側が不快に感じたり傷付いたりすればセクハラとみなされる可能性があります。
セクハラは性別を問わず起こる可能性があります。セクハラがない職場づくりを目指すには、従業員と監督者がセクハラについて正しく理解し、事前に対処法を考えておくことが大切です。
職場におけるセクハラの種類
セクハラと一口に言っても、種類はさまざまあります。職場で起こるセクハラへの対応方法を考えるために、まずはどのような種類があるのか知っておきましょう。
職場におけるセクハラの種類は、主に「対価型」「環境型」の2つです。以下では、それぞれの概要と具体例を解説します。
対価型のセクハラ
対価型のセクハラの概要と具体例は、以下の通りです。
対価型セクハラとは | 加害者が自分の立場を利用して性的な嫌がらせをするケースです。性的な言動を拒否されたり抵抗されたりすると、被害者にとって不利益になる対応をします。 |
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対価型セクハラの具体例 | ・人事担当者に性交渉を受け入れないと内定を取り消すと言われた ・上司から身体を触られ拒否したら評価を下げられた ・経営者から愛人関係を強要されて断ったら解雇された |
対価型のセクハラは、密室や人目に付かない場所で起こりやすいことが特徴です。加害者は、自分よりも立場が弱い人に対して断りにくい条件を提示してセクハラをする傾向にあります。
環境型のセクハラ
環境型のセクハラの概要と具体例は、以下の通りです。
環境型セクハラとは | 加害者からの性的な嫌がらせにより、被害者が仕事に支障をきたすケースです。セクハラによる苦痛が原因で、重大な悪影響が生じる可能性があります。セクハラによる影響が長期的に続くことも少なくありません。 |
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環境型セクハラの具体例 | ・職場に性的なポスターやグッズが飾ってあり苦痛から仕事が手に付かなくなった ・上司から身体を触られる恐怖から仕事への意欲が低下した ・同僚が性的な内容を含む情報を意図的に社内に流したことが原因で出社できなくなった |
環境型のセクハラは、被害者の就業環境が悪くなることが特徴です。「出社できない」「能力を発揮できず業務が滞る」など、仕事に大きな支障をきたす原因になります。
職場におけるセクハラとは?
職場におけるセクハラには、いくつか定義や基準が設けられています。発生した事案がセクハラか見極めるにも、定義や基準を正しく理解しましょう。
ここでは、職場におけるセクハラの定義と基準、職場で発生しやすいセクハラの言動を解説します。
職場におけるセクハラの定義・基準
職場におけるセクハラは、主に人事担当者・上司・同僚など従業員の間で起こります。
職場におけるセクハラは、労働条件や上下関係も影響するため、個人間の問題として捉えるのではなく、雇用管理上の問題であると捉えなければなりません。
※出典:厚生労働省「職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!!
職場におけるセクハラの定義は、以下の通りです。
【定義1】職場で発生したものであるか |
オフィスはもちろん、出張先や取材先、取引先の事務所や取引先の接待の席も職場に含まれます。勤務時間外であっても、業務に関連する場や職務の延長と考えられる場は職場とみなされます。仕事後の懇親会・送別会など飲酒を伴う場は、特にセクハラの発生が多いことが特徴です。 ●職場に含まれる場所の例 出張先/取材先/取引先の事務所/業務上使用する車の中/顧客の自宅/取引先と打ち合わせをする飲食店などのお店(接待の席も含む) |
【定義2】労働者の意に反しているものか |
加害者から受けた言動が労働者の意に反するかどうかも、職場におけるセクハラの判断基準の1つです。加害者の言動に不快感や嫌悪感があり、就業環境が害されている際は、セクハラとみなされる可能性があります。労働者は、正規労働者だけでなくパート・契約社員などの非正規労働者も対象です。 |
【定義3】性的な言動であるか |
加害者の言動に性的な要素があれば、セクハラとみなされます。性的な言動とは、性的な内容の発言または性的な行動のことです。性的な言動は性別や立場などにかかわらず、言葉かけや行動によるもの、視覚によるものなどがあります。 従業員の意に反する性的な言動は、従業員が働く上で能力の発揮などに悪影響を及ぼす可能性があります。 |
セクハラは、異性に対するものだけとは限りません。性別を問わず、セクハラの加害者・被害者になる可能性は誰にでもあります。
職場で発生しやすいセクハラの言動
セクハラの加害者の中には、セクハラの自覚がない方もいます。職場のセクハラを防ぐためにも、具体的にどのような言動がセクハラとみなされるのか、具体的に理解しておくことが大切です。
職場で発生しやすいセクハラの具体例は、以下の通りです。
【職場で発生しやすいセクハラの言動の例】
性的な内容の発言 | ・身体的な特徴を話題にする ・卑猥な冗談を言って反応を見てからかう ・性生活や性体験に関する質問をする ・「男のくせに」「女らしく」と性差別する ・性的な噂を広める |
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性的な行動 | ・不必要な身体への接触をする ・性的な関係を強要する ・プライベートな食事にしつこく誘う ・卑猥な雑誌やポスターを目に付く場所に置く ・カラオケでデュエットを強要する |
性差別によるセクハラは、男女問わず加害者になる可能性が高いと言えます。「おじさん」「おばさん」「お嬢さん」など、人格を認めていないと捉えられる呼び方もセクハラに該当するため注意が必要です。
職場におけるセクハラ対策が重要な理由
職場におけるセクハラは、被害を受けた従業員につらい思いをさせてしまいます。また、周囲の従業員や会社自体にもさまざまな悪影響があります。職場におけるセクハラはさまざまなリスクを伴うため、セクハラ対策を実施しておくことが重要です。
ここでは、企業にとってセクハラ対策が重要な理由を詳しく解説します。
【理由1】事業主としての責務があるため
男女雇用機会均等法により、企業にはセクハラ対策の実施が求められています。セクハラ対策に関する男女雇用機会均等法の内容は、下記の通りです。
<男女雇用機会均等法>
第11条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
※引用:厚生労働省「男女雇用機会均等法におけるセクシュアルハラスメント対策について」 引用日2023/07/21
企業側は、セクハラの予防措置や発生時の措置を講じなければなりません。企業のセクハラ対策は義務であり、違反した際は厚生労働大臣へ報告をした上で、助言や指導を受けることになります。
以下では、実際に企業が責任を負った判決例を紹介します。
【企業が責任を負った実例】
福岡地裁判決 1992年4月16日 | 上司Aは、「部下Bは異性関係が派手」「男女関係のもつれで取引先との取引がなくなった」など事実とは異なる噂を流しました。判決では、人権を侵害して職場環境を悪化させたとして、上司Aと会社に対して連帯して慰謝料と弁護士費用を支払うように命じました。上司Aのセクハラが業務中に行われたことが、会社側にも責任があると判断された理由の1つです。 |
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セクハラ発生時に会社が十分に調査しなかったり、被害者がセクハラを訴えたことで不当解雇や減給をされたりした際は、会社と加害者が連帯で責任を負わなければなりません。
【理由2】社会的信用を失う可能性があるため
セクハラの発生は、企業の社会的信用を失うリスクがあります。
セクハラの問題が報道されると、企業のイメージが悪くなり商品の売れ行きが悪くなったり取引先との取引が中止になったりする可能性があります。さらに、就職希望者の減少にもつながるなど、企業にとってのダメージは大きくなるでしょう。
従業員へのセクハラ対策はもちろん、就職希望者や取引先の方に対するセクハラが発生しないように十分な対策が必要です。
【理由3】従業員のモチベーション低下につながるため
セクハラが発生すると、周囲にいる従業員のモチベーションが低下する可能性があります。職場におけるセクハラが原因で、「会社への貢献意欲が低下した」「メンタルヘルス疾患を発症した」という方も少なくありません。
以下では、セクハラが従業員のモチベーション低下・職場環境の悪化につながった実例を紹介します。
【従業員のモチベーション低下・職場環境の悪化につながった実例】
海遊館事件 最高裁一小 2015年2月26日判決 | チームマネージャーと営業部課長代理の2人が、派遣社員Aを含む従業員に対してセクハラをした事案です。直接的にセクハラ被害を受けた従業員だけでなく、社内で業務にあたる従業員も不快感や嫌悪感を抱いたとして、不適切な行為と判断されました。 チームマネージャーは出勤停止30日、営業部課長代理には出勤停止10日の懲戒処分が下されました。 |
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※出典:厚生労働省「【第66回】「セクハラの加害者が会社による懲戒処分(出勤停止)等を不服として訴えたが、会社の懲戒処分等は有効であるとして、加害者の訴えが認められなかった事案」
従業員のモチベーションが低下すると、生産性の低下を招き売上減少につながりやすくなります。セクハラ発生時に企業がどのような対応を取るかによっても、従業員の意欲や会社への信頼度は大きく変わってきます。
職場におけるセクハラで企業側が負う責任とは?
職場におけるセクハラで企業側が負う可能性がある責任は、「使用者責任」「債務不履行責任」の2つです。また、厚生労働大臣による是正勧告に応じないと企業名を公表されるリスクがあることも理解しておきましょう。
※出典:e-Gov法令検索「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」
セクハラ対策を徹底するとともに、万が一セクハラが発生した際は、厚生労働大臣からの助言に従い速やかに是正報告をすることも重要です。
ここでは、職場におけるセクハラで企業側が負う責任について詳しく解説します。
使用者責任
民法第715条では、企業は民事法上の責任として使用者責任を負わなければならないと定めています。
従業員が他者に不当行為によって損害を与えた際は、企業は従業員とともに損害賠償責任を負わなければなりません。
職場におけるセクハラは不当行為に該当するため、企業はセクハラ被害を受けた従業員に対して、加害者と連帯で慰謝料や裁判費用などを支払う必要があります。慰謝料には、セクハラによる精神的苦痛に対する慰謝料の他、名誉を傷付けられたことに対する慰謝料も含まれます。
相当の注意をしたにもかかわらず損害を避けられなかったケースでは免責されるものの、実際に免責されたケースはほとんどありません。
債務不履行責任
民法第415条では、企業は従業員が快適に働けるように職場環境に配慮することが義務付けられています。
セクハラが発生する職場環境は従業員にとって快適に働ける職場環境とは言えず、企業は労働環境を整える努力を怠ったとみなされて、債務不履行責任に問われる可能性があります。
ただし、セクハラ被害の報告に対して企業側が適切な対応を取っていた際は、債務不履行責任を追及されない可能性が高いでしょう。企業のダメージをできるだけ抑えるためにも、セクハラ被害を受けた従業員に寄り添った適切な対応が必要です。
セクハラが問題となった事例
セクハラが問題となった事例はさまざまあります。セクハラ対策の実施やセクハラ発生時の対応に生かすためにも、新聞や雑誌、テレビなどで取り上げられた事例を把握することも大切です。
以下では、セクハラが問題となった事例を2つ紹介します。
【セクハラが問題となった事例】
・現役の女性自衛官がセクハラを訴えた事例 女性自衛官であるAさんは、先輩の男性隊員から性生活に関する発言をされたり身体的特徴をからかわれたりしたとして、相談部署や上司にセクハラ被害の相談をしました。 しかし、配属変更などの措置が取られることはなく、基地内の研修会ではAさんの実名のみを挙げて加害者を擁護する内容のセクハラ事例として紹介されました。 Aさんは、セクハラ行為だけでなくセクハラを隠蔽しようとした対応にも精神的苦痛を受けたとして、国に対して損害賠償を求める訴訟を起こしています。 ・就活セクハラの防止策を国に求めた事例 2019年、女子大生グループBが就職活動中の学生などに対するセクハラ防止を国に求めました。女子大生グループBは、OB訪問やインターン後の食事会などで交際相手の有無や結婚の可能性などを問うことはセクハラであると訴えました。 2022年3月以降、厚生労働省は就職活動中の学生などに対するハラスメント防止策を強化しています。 |
セクハラは、予防措置が不十分な職場で起こりやすくなります。ただし、セクハラの予防措置を講じている職場でも、正しく予防措置が機能していなければセクハラ被害を防ぐことはできません。
職場におけるセクハラの防止方法3つ
職場におけるセクハラを未然に防ぐには、まず事前対策を講じることがポイントです。厚生労働省では、企業向けにセクハラを防止するための予防的措置の内容を公表しています。
ここでは、厚生労働省が公表している雇用管理上講ずべき措置の内容を基に、職場におけるセクハラの防止方法を3つ紹介します。
会社の方針を明確にして周知する
セクハラ防止に取り組むにあたり、会社の方針を明確にして従業員に周知や啓発を行いましょう。
会社の方針を明確化して従業員に周知・啓発するポイントは、下記の通りです。
・就業規則などの文書にセクハラをしてはいけない旨の方針を規定する ・職場におけるセクハラとはどのような内容なのかを周知する ・性別役割分担意識による言動がセクハラの原因になることを周知する ・社内報やパンフレット、社内ホームページなどに方針を記載し、配布などを行う |
不快感や嫌悪感を抱く基準は人によって異なるため、どのような言動がセクハラとなるのか基準を示すことが大切です。また、セクハラ加害者への処分も社内規則などに記載しましょう。不公平なく適切な処分を下せるだけでなく、従業員一人ひとりがセクハラ防止に対する意識を高めるきっかけにもなります。
相談しやすい環境を整える
セクハラ被害を受けた従業員が悩みやつらい気持ちを伝えられるように、相談しやすい環境を整えておくことも大切です。
相談しやすい環境の整備で意識すべきポイントは、下記の通りです。
・相談に対応する部署や担当者を決める ・窓口となる部署や担当者を従業員に周知する ・担当者はマニュアルに沿って対応する ・担当者向けに相談対応の研修を実施する |
セクハラの相談を受けた部署や担当者は、人事部門と連携を図って適切に対応します。セクハラ発生時に限らずセクハラの疑いがある段階でも気軽に相談できるように、利用しやすい環境を目指しましょう。
プライバシーの保護を徹底する
職場におけるセクハラ防止には、プライバシー保護の徹底も必須です。
プライバシー保護のために押さえておきたいポイントは、下記の通りです。
・プライバシー保護に関するマニュアルを作成する ・担当者はマニュアルに沿って対応する ・プライバシー保護に必要な研修を実施する ・プライバシーが保護されていることを従業員に周知する |
プライバシー保護への不安があると、被害者は「相談したことが相手にバレるかもしれない」「相談したら制裁を受けるかもしれない」などの感情を抱く可能性があります。
被害者からの相談対応やセクハラの事実確認をするにあたり、加害者・被害者のプライバシーの保護は徹底しなければなりません。
職場でセクハラが発生した際の適切な対応
万が一職場でセクハラが発生した際は、迅速かつ正確に対処する必要があります。
セクハラ発生時の適切な対応の流れは、以下の通りです。
事実確認を行う |
セクハラに関する相談があった際は、まず事実関係を把握します。セクハラ被害を受けた従業員だけでなく、加害者とされる従業員や関係者にも事情を聞きましょう。事実確認では、中立な立場で話を聞くことがポイントです。セクハラの有無や程度を正しく把握し、セクハラが事実であれば被害者の安全を確保します。正確な確認が難しければ、第三者機関に対応を委ねることも可能です。 |
加害者の処遇を決める |
加害者のセクハラが事実であれば、加害者の処遇を決める必要があります。具体的には、配属変更・降格処分・解雇処分などが挙げられます。会社の方針に沿って迅速に処遇を決定しましょう。処遇の判断に迷うケースでは、顧問弁護士や社会保険労務士などにアドバイスを求めることも1つの方法です。 |
セクハラの事実を社内に公表する |
セクハラの事実は、再発防止の意味も含めてホームページや社内報で公表しましょう。事実のみを端的に公表するのではなく、「なぜセクハラをしてはならないのか」「セクハラはどのように処罰されるのか」などが伝わるように工夫が必要です。 |
セクハラ発生時の対応では、加害者へのフォローアップや再発防止のための取り組みも求められます。経営者のメッセージを伝えたり従業員向けにセクハラ対策の研修をしたりすることも効果的です。
まとめ
セクシャルハラスメント(セクハラ)とは、「必要がないのに身体に触れる」「不快になる性的な言葉かけをする」といった性的な嫌がらせのことです。セクハラを未然に防ぐためにも、企業側は適切な予防的措置を取り、セクハラ発生時には迅速かつ適切な対応を取ることが重要です。
セクハラ防止に取り組むにあたって、企業側は方針を明確化した上で従業員に周知・啓発を行います。従業員が悩みやつらい気持ちを伝えられるように、相談窓口を設置するなど相談しやすい環境を整えましょう。
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