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ケアハラスメントとは?具体例から企業がとるべき対策までを解説
セクシャルハラスメント(セクハラ)やパワーハラスメント(パワハラ)をはじめ、時代の流れや価値観の変化とともに、さまざまなハラスメントが注目を集めるようになりました。高齢社会を迎える中で働きながら介護をする人が増えていることから、「ケアハラスメント」が問題になることもあります。
しかし、メディアなどであまり聞き慣れない言葉であるために、ケアハラスメントの意味や具体例が分からない方もいるでしょう。当記事では、ケアハラスメントの定義や事例、原因、対応策について説明します。
ケアハラスメントとは?
ケアハラスメント(ケアハラ)とは、働きながら介護する人へのハラスメント行為を指す言葉です。ここでは、介護従事者が利用者から受けるハラスメントではなく、一般的な職場で上司や同僚から受けるハラスメントについて取り上げます。
厚生労働省の調査によると、令和5年度において各ハラスメントまたは不利益取り扱いに関する相談を取り扱ったと回答した企業のうち「ケアアイテムに該当すると判断した事例がある」と答えたのは55.5%でした。令和2年度は21.9%であることから、3年間でケアハラスメントの件数は増加していることが分かります。
※出典:厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査 結果概要(令和5年度厚生労働省委託事業)」
社内でケアハラスメントが起きた場合、退職による人材流出や訴訟などの法的リスクのほか、企業イメージの低下や顧客からの信頼の失墜という悪影響が考えられます。従業員個人やその家庭、企業を守るためにも、ケアハラスメント対策は必須です。
ケアハラスメントに該当する事例
ケアハラスメントに該当する事例は、次の通りです。
・不快な発言や暴言、嫌味を言う ・介護休業制度や短時間勤務介護などのサポート制度の利用を妨げる ・介護を理由に解雇する ・雑務の押し付けや異動・降格・減給などを不当に行う ・不当に自宅待機を命じる ・不当な人事評価を行う ・不当な契約内容の変更・雇止めを行う |
内閣府の資料によると、介護支援制度利用者のうち、約20~30%の人がケアハラスメントを受けた経験があると回答しています。ケアハラスメントの事例ごとの割合は、言動による嫌がらせ・不利益な人事評価・減給などが高い結果となりました。
※出典:内閣府「介護離職の現状、介護休業・休暇に関する連合の考え方について」
雇用形態や勤務条件関連の不利益な扱いなどはもちろん、「奥さんがやればいい」「定時で帰れるから羨ましい」「業務が増えて迷惑している」など、相手を傷つける言葉もケアハラスメントの一種です。
ケアハラスメントが発生する原因
ケアハラスメントが発生する原因は、企業や組織だけでなく個人の要因も絡むため複雑です。ここでは、ケアハラスメントが発生する主な原因について紹介します。
制度や概念の認識不足
就業規則など社内でサポート制度を整備しても、運用ルールが十分に行き届いておらず、介護休業などの取得時に本人・上司・同僚が対応に困ることが、ケアハラスメントにつながっている場合もあります。所定外労働や時間外労働の制限、所定労働時間の短縮措置などを就業規則に記しているにもかかわらず、そうした支援制度が存在することを認知していないために、正当な理由でも周囲の人にとっては不当に見えることも考えられます。
また、そもそもケアハラスメントという概念が浸透しておらず、どの言動がハラスメントに該当するのか理解していないことも原因に挙げられます。上司や同僚の中には、相手のキャリアに配慮して制度の利用を思いとどまるように説得するなど、無自覚のうちにハラスメント行為をする人もいるかもしれません。
業務増加による不満
介護休業や時短勤務により、本人が対応できない分の仕事は、周囲の従業員に割り振られます。本来の仕事以外にも業務が増えることにストレスを感じ、相手に心ない言葉をぶつけてケアハラスメントが発生するケースも考えられるでしょう。
特に介護は終わりが見えず、いつまで続くのか業務の見通しが立てにくいことも、不満につながる要因の1つです。育児休業の場合は原則「子どもが1歳になるまで」と期限が決められていますが、介護休業の場合は介護者がいる限り終了時期は明確に分かりません。そうした不透明さが従業員の不満となり、本人に怒りの矛先が向かうこともあるでしょう。
性別に関する固定観念
「介護は女性がするもので男がする必要はない」という性別に関する固定観念もケアハラスメントの原因の1つです。近年は女性の社会進出が進み、共働きの夫婦もめずらしくありません。国としても男女平等社会の実現に向けた取り組みを行っていますが、「介護は女の役割」という固定観念を持つ人は少なからずいるのが現状です。
特に、男性の従業員が介護を行う場合、「奥さんにやらせればいい」「男は働いていればいい」と、介護休業や介護休暇の取得を否定する人も見受けられます。男性の休暇取得に否定的な人の存在は、パタニティハラスメント(男性の育休を理由とした嫌がらせ)にも共通する課題です。
ケアハラスメントの予防対策
ケアハラスメントを放置すると、従業員の早期離職などさまざまな悪影響が及びます。そのため、ケアハラスメントが発生しないように予防対策を講じることが重要です。ここからは、社内でケアハラスメントを防ぐ方法を説明します。
方針の明確化と周知・啓発
企業からケアハラスメントに対する方針を明確に打ち出した上で、介護休業などのサポート制度やケアハラスメントに対する社内ルールを整備しましょう。その際、介護を必要とする場合は介護休業などのサポート制度を利用できること、介護休業に関する否定的な言動がハラスメントの原因になり得ること、そうしたハラスメントがあってはならないことなどを盛り込むと効果的です。
ケアハラスメントの多くは、企業・組織や個人の認識の低さが原因です。そのため、ケアハラスメント自体の啓発を行い、従業員の理解を深めることが大切です。就業規則などにケアハラスメントに関するルールを盛り込んで周知すると、方針の明確化と啓発を効率的に進めることができます。また、社内報や社内サイトなど、従業員のよく目にする場所にケアハラスメントに関する方針やルールを掲載する方法も一案です。
相談窓口の整備・運用
ケアハラスメント発生の恐れがある場合や、ケアハラスメントに該当するか微妙な場合でも広く対応できる相談窓口を設けるようにしましょう。相談窓口は、ハラスメント全般の相談を一元的に受け付けられるのが望ましいとされています。従業員が気軽に利用できるよう、面談以外に電話やメールなどでも相談ができる体制を整えた上で、窓口の存在を周知しましょう。
また、必要に応じて人事担当者や上司と連携できるようにするなど、ケアハラスメントの内容や状況に合わせた適切なフォロー体制を検討することも重要です。相談窓口の設置時には、相談を受けた際の担当者の対応方法をまとめたマニュアルをあらかじめ作成しておくと、誤った対応で問題がこじれてしまうのを防げます。社内で相談窓口を設けるのが難しい場合は、外部機関に委託することも検討しましょう。
ハラスメント要因の解消措置
介護休業などのサポート制度を利用できることや、ケアハラスメントが存在することなどを、定期的に研修を行って従業員の理解を深めるようにしましょう。そうすることで、認識不足・理解不足によるケアハラスメントを防ぐことが可能です。その際、周囲とコミュニケーションを取りながら状況に応じて適切に業務を遂行する意識を、介護をする本人に持ってもらうよう働きかけることも大切です。
研修を実施する際は、社内アンケートを通して現場の状況を把握する方法も有効です。社内アンケートで実態を把握すれば、ケアハラスメントの早期発見にもつながります。たとえば「一部の従業員に業務負担が偏っている」などの問題が見られる場合は業務分担の見直しを行うなど、問題が深刻化する前に手を打つようにしましょう。
ケアハラスメントが発生したら?
まずは事実関係を迅速かつ正確に確認し、調査報告書として記録した上で、被害者や行為者に対する措置を行いましょう。状況によっては、被害者と行為者の関係修復や、両者を引き離すために配置転換などを行い、問題解決を図ることもあります。
また、社内報や社内サイトを通じたケアハラスメントの全体周知、啓発するための研修や講習の実施などの再発防止策も講じます。相談窓口の運用やルールに不十分な部分があれば、拡充措置なども必要です。
まとめ
一般企業におけるケアハラスメントとは、介護しながら働く人に対する嫌がらせや不快な言動、不利益な行為などが該当します。ケアハラスメントが発生する原因には、介護休業などのサポート制度があること、そもそもケアハラスメントという概念が存在することを理解していないことが挙げられます。
そのため、従業員にケアハラスメントに関する周知・啓発を行い、介護休業などを円滑に取得できるよう制度を整えることが重要です。万が一ケアハラスメントが発生した場合に適切な対応が取れるよう、相談窓口も設けるようにしましょう。
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