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スメハラとは?日頃からできる対策と相手を傷つけない伝え方を解説
スメハラ(スメルハラスメント)は、職場や公共の場で無意識に他人に不快感を与えるニオイに関連する問題として注目されています。体臭や口臭、タバコ、香水、柔軟剤など、日常的に発生しうるニオイがスメハラの原因となり、コミュニケーションの障害や職場環境の悪化を引き起こしかねません。
特に職場では、スメハラが人間関係や業務パフォーマンスに深刻な影響を与えることがあり、対策が求められます。当記事では、スメハラの具体例や職場での問題、適切な伝え方、日頃からできる予防方法について詳しく解説します。
スメハラ(スメルハラスメント)とは?
スメハラとは、スメルハラスメントの略称です。明確な定義はありませんが「ニオイによる嫌がらせ」を意味しており、体臭やタバコのほか、香水などの香りも周囲の人に不快感を与えるニオイとして含まれています。一般的にいい香りに分類されるものでも、強すぎるニオイになると、周囲の人にとっては不快に感じるケースがあるのが理由です。
スメハラは、人間関係の悪化を招く恐れがある行為です。公共の場だけではなく、職場においても起こりうるハラスメントで、場合によっては業務の遂行に支障をきたす可能性がゼロではありません。
厚生労働省が2023年度に実施した職場のハラスメントに関する調査では、ハラスメント行為の1つとして、実際にスメハラが挙げられています。また、スメハラを含むハラスメント行為を自覚している、または指摘された経験があると回答した人は、20.1%との結果も出ているのが実状です。
スメハラになりうるニオイの具体例
下記は、不快だと感じる他人のニオイについて行ったアンケート結果を、男女別に分けた表です。
【不快だと感じる他人のニオイはなんですか?(複数回答)】
男性 | 女性 | |
体臭 | 53.8% | 69.6% |
口臭 | 55.1% | 56.5% |
汗臭 | 19.0% | 26.7% |
ワキガ臭 | 22.8% | 24.6% |
タバコ | 33.5% | 45.0% |
香水 | 22.2% | 26.2% |
柔軟剤 | 4.4% | 10.5% |
生乾きの洋服のニオイ | 10.1% | 13.1% |
靴を脱いだときの足のニオイ | 7.6% | 26.2% |
頭や頭皮の皮脂のニオイ | 4.4% | 22.0% |
飲食店に行った後のニオイ | 2.5% | 12.0% |
その他 | 1.9% | 0.5% |
スメハラになりうるニオイは、体から直接発するような体臭や汗臭などに限りません。生乾きの洋服や飲食店に行った後のニオイなど、日常生活を送る中で無意識についてしまったニオイも含まれることが分かります。
以下では、特にスメハラ行為として挙げられやすいニオイについて、3つのタイプに分けて解説します。
体臭・口臭
体臭は、スメハラになりうる代表的なニオイの1つです。体臭がきつくなる原因は、単純に風呂に入らないような生活を繰り返している場合のほか、本人の体質による場合も珍しくありません。例えば、本人の体質によるワキガや緊張による汗のニオイなどが挙げられます。加齢臭やストレスが原因のストレス臭のほか、疲労臭と呼ばれるニオイもあり、いずれも本人がニオイを発していることを自覚していない場合も多いと言われています。
口臭も体臭と同じく、スメハラに発展しやすいニオイです。口臭の原因は、喫煙後に口の中に残ったタバコのニオイや、飲酒後のアルコール臭などが挙げられます。アルコール臭は体臭としても現れやすく、全身からニオイを発してしまう場合もあるニオイです。
タバコ
タバコは、そのニオイが体や衣類に付着しやすい特徴をもっています。喫煙室などの分煙の環境で吸うように心がけていても、本人に染みついたタバコのニオイで、他者を不快にさせる可能性があるため注意が必要です。
近年は分煙の取り組みが進んでおり、タバコのニオイに敏感になっている人が増えています。喫煙者の中でも特にヘビースモーカーの人は、スメハラ行為に発展しないようにニオイの染みつきに気をつけなければなりません。
香水・柔軟剤
香水や柔軟剤は一般的に良い香りとされ、リラックス効果を得られることもありますが、使用量を誤ると香りが強すぎて周囲に不快感を与える可能性があります。香水や柔軟剤などの合成香料によって不快感が生じる状況は「香害」と言われており、スメハラ行為にあたる可能性がゼロではありません。
また、自分では好きな香水や柔軟剤の香りでも、単純にその香りを好ましく思わない人がいる場合も考えられます。香りは人によって好みが分かれるのを理解しておき、強烈なニオイとならないように適切な量を使用するのが大切です。
香水や柔軟剤以外に香りを身に纏う形となる製品として、化粧品やヘアオイルなども挙げられます。いずれも使用する際は、適切な量を使う心がけが必要です。
スメハラによって職場で起こりうる問題
スメハラはほかのハラスメントと同様に、一度発生すると職場に悪影響を及ぼしかねない行為です。業務の遂行に支障をきたすことも考えられるため、スメハラが起こるとどのような事態を招く可能性があるのか把握しておきましょう。
スメハラによって職場で起こりうる問題として、以下の3つが挙げられます。
人間関係の悪化につながる
ニオイによる不快感は、人間関係に悪影響を及ぼす恐れのある存在です。良好な関係だったとしても次第に亀裂が生じ、職場においては業務遂行に欠かせないチームワークが崩れる可能性があるのも否定できません。
例えば、不快感を避けるために、ニオイを発している本人から周囲の従業員が距離を取り始めることが考えられます。業務上必要なコミュニケーションが取りづらくなるほか、ニオイを発している本人が孤立感を感じ始める状況も招く事態です。
スメハラの改善に向けた取り組みや対策が行われず、ニオイによる不快感が職場内で続くと、陰口が広まったりいじめなどに発展したりする可能性もあります。良好で快適な職場環境を作るためにも、会社としてスメハラを予防する何らかの対策を講じるのが大切です。
周囲の従業員の体調に影響をおよぼす
不快感を伴うニオイは、体調不良を引き起こすケースもあります。ニオイを原因とする体調不良とは、気持ち悪さや吐き気、頭痛などの症状です。特に長時間不快なニオイが漂う作業スペースで業務を遂行しなければならない職場では、体の不調だけではなく精神的にも大きな負荷がかかります。症状が悪化すると、うつ病などの心理的な疾患を招く可能性もあるため注意が必要です。
スメハラを原因とするストレスが強い職場では、出社することに抵抗を感じて従業員が休みがちになり、人手不足に陥る恐れも考えられます。スメハラが原因で退職に至るケースもあるため、ニオイによる職場環境への悪影響は軽視できません。
パフォーマンスが低下する
不快なニオイは、周辺にいる人の集中力の低下を招きます。気になるニオイが漂う状態での業務は、従業員のパフォーマンスの低下につながり、職場全体の生産性に影響を及ぼすため注意してください。
人によっては不快なニオイから逃れようとして、離席しがちになることも考えられます。仕事へのやる気を持続させるのが難しく、ミスを誘引する可能性が高まる状況です。サービスの質の低下につながり、結果的に製品の精度を保証したり顧客からの信頼性を確保したりするのも難しくなりかねません。
パフォーマンス改善のために人材を増やすと、人件費の負担が増える可能性があります。コスト面が圧迫される悪循環に陥らないように注意しましょう。スメハラは、会社の成長に悪影響を及ぼす可能性があると把握するのが重要です。
スメハラは指摘が難しいと言われる理由
スメハラはニオイを発している本人が自覚していなかったり、体質などにより意図せずにスメハラ行為に発展していたりするケースが多いのが実状です。指摘の仕方を誤ると、スメハラを起因とした異なるトラブルにつながる可能性も考えられるため、慎重に対応しなければなりません。
実際にスメハラは指摘が難しいと言われており、その主な理由として以下の3つが挙げられます。
ニオイの感じ方は人によって異なるため
人によって香りの好みに違いがあるように、不快に感じるニオイの度合いも異なります。中には気に入らないほかの従業員に嫌がらせするつもりで、スメハラ被害を受けていると過度に主張する悪質なケースもゼロではありません。スメハラの加害者として名指しされた従業員が、ハラスメントの被害者になる可能性も考えられる状況です。そのため、スメハラに関しては1人の言い分だけを鵜呑みにせず、ほかの従業員にも話を聞き、実態を把握することが求められます。
しかし、大々的に実態を把握しようとすると、加害者とされた本人を傷つけたり、本当は責任がないのに悪い噂が広まったりしかねません。このように、ニオイの感じ方には個人差があり、実態の把握に困難な面があるのも、スメハラは指摘が難しいと言われる理由です。
本人に自覚や悪意がない場合が多いため
周囲の従業員が不快に感じるニオイでも、ニオイを発している本人にとっては日常的なもののため、自覚していないというケースが珍しくありません。自分が発するニオイに長時間接していることで、そのニオイに慣れてしまうのが理由です。
周囲の従業員がニオイに対するケアを求めていても、本人に自覚や悪意がないため、簡単に指摘やケアを促せず、不快なニオイが漂う職場環境の改善が難しくなります。
対応によってはハラスメントや名誉棄損のリスクがあるため
スメハラは個人が発するニオイを原因とする、プライバシー性の高い問題です。明確な悪意があるセクハラやパワハラなどのハラスメントと異なり、本人が不快なニオイを発している自覚がなく、もともとの体質によるケースもあります。伝え方によってはこちらがハラスメントの加害者になったり、本人の尊厳を傷つけたりして名誉毀損で訴えられる状況を招く恐れもある難しい問題です。
また、本人を傷つける状況や名誉棄損につながる可能性を避けるため、スメハラ被害を受けている側がニオイを我慢し続けて、辛い思いをするケースもあります。不快なニオイを我慢し続ける状況を改善するには、スメハラに対応するリスクを把握して、適切な伝え方を学ぶことが必要です。
スメハラを指摘する際の適切な伝え方
快適な職場環境を確保するには、スメハラへの適切な対応が必要です。誤った伝え方や方法でニオイを指摘すると、本人との新たなトラブルに発展する可能性が考えられるため注意しましょう。
スメハラを指摘する際に意識するべき適切な伝え方や方法は、以下の通りです。
スメハラに関するガイドラインを作成する
ガイドラインを作成すれば、従業員に自分もスメハラ行為の加害者になりうることを意識させられます。
例としてガイドラインに記載する項目としては、下記が挙げられます。
・ニオイの強い飲食物を職場内に持ち込まない ・香水や柔軟剤の過度な使用を禁止する ・タバコの分煙と、喫煙後の消臭対策 |
個別ではなく全体に向けてガイドラインとして発表すると、直接本人に伝えなければならない状況を避けられます。間接的にニオイへの注意や対策・意識向上を促せるため、本人を傷つけたり名誉棄損につながったりするリスクの回避が可能です。
社員研修や周知を行う
ガイドラインの作成にくわえて社員研修なども行うと、スメハラによって発生する悪影響をより周知できます。スメハラに対する従業員間の意識向上につながり、不快なニオイを発する本人の自覚を促せる機会にもなりうる方法です。
社内にスメハラに関する知識を保有する人材がいない場合は、ハラスメント研修を専門とする外部サービスに頼る方法があります。専門のサービスを利用することで、社内だけでは気づけないようなポイントや、新たな知識が学べるためおすすめです。
慎重な言葉選びをした上で本人に伝える
スメハラは、プライバシー性が高く繊細な問題です。本人に直接伝える際は、言葉選びのほか伝える状況を慎重に決めた上での対応を心がけましょう。
下記の点に配慮して、伝えるのがおすすめです。
・同性から伝える ・周囲に人がいない状況で伝える ・強い注意や指摘とならないよう、柔らかい表現で伝える |
指摘する際は、伝える人とニオイを発している本人の関係性によって、伝え方や場面を工夫してください。例えば、ビジネスマナーとしてスメハラの話を持ち出したり、ランチなどの際にさりげなく伝えたりしましょう。より慎重に伝える場合は、職場全体の取り組みとして話題にするのも一案です。
日頃からできるスメハラ対策・ニオイの予防方法
自身がスメハラの加害者とならないためには、ビジネスマナーの1つとして日常的にニオイに関する対策や予防を意識することが大切です。
ニオイ対策や予防として日頃から効果的に取り組める方法は、下記が挙げられます。
制汗・デオドラント剤を使う |
お出かけ前に制汗・デオドラント剤でケアしておくと、ニオイ予防が期待できるためおすすめです。汗によるベタつきなども抑えて、ニオイ対策を行えます。制汗・デオドラント剤は、汗をかいた状態で使用すると十分な効果を発揮できません。汗をかく前に使用する、もしくはすでに汗をかいている場合は、汗を拭ってから使用しましょう。 |
勤務時間中の喫煙を控える |
タバコのニオイは、体や衣類に付着してしまいます。喫煙後も継続してタバコのニオイを漂わせてしまい、周囲の人に不快な思いをさせる場合があるため注意してください。勤務時間中は喫煙を控えると、職場内でスメハラとなるのを避けられます。また、喫煙はワキガのニオイのもととなる、アポクリン汗腺の働きを促す作用がある行為です。ニコチンの摂取によりニオイが強くなり、周囲に不快感を与えてしまう可能性が高まるため、ワキガ体質の人は特に喫煙を控えるのをおすすめします。 |
使用している香水や柔軟剤を見直す |
香水や柔軟剤は自分でいい香りと思っていても、周囲の人にとっては不快な場合もあることを意識しましょう。使用量に注意するだけではなく、使用する香りの種類にも気を配るなど、周囲への配慮を欠かさないのが大切です。 |
上記以外にも、毎日の入浴時に洗い残しをしないように徹底するのも、日頃から取り組めるニオイ対策と予防の1つです。ニオイ付きのヘアオイルなどを日常的に使用している人は、洗い残しがあると特に不快なニオイを漂わせてしまいます。しっかりと洗い流し、また髪の生乾きを避けるため、乾かし残しがないように注意しましょう。
くわえて、髪だけではなく洗濯物の生乾きも、ニオイの発生を招く原因です。洗濯後はなるべく早く干すように心がけると、雑菌の繁殖を防いで生乾き特有のニオイの発生防止に役立ちます。
なお、ニオイを発する体の部位によっては、手術によって原因を取り除くのも方法です。例えばワキガの場合、ワキ下の皮膚を切開し、アポクリン線を取り除く手法があります。病院や手術方法の違いによって、入院もしくは通院となるかなどの対応が異なる点は注意しておきましょう。どのような体制で手術するのか、事前に病院側と確認すると安心です。
まとめ
スメハラは、他人に不快感を与えるニオイに関するデリケートな問題です。適切な対応を怠ると、職場環境の悪化やパフォーマンスの低下につながる可能性があるため、予防と対策が重要です。日常生活の中でニオイに注意を払い、職場全体でのガイドライン作成や研修を通じて、スメハラのリスクを低減させましょう。
また、伝える際には慎重な言葉選びと配慮が求められます。快適で健全な職場環境を維持するために、一人ひとりが自覚を持って行動することが大切です。
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