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その指摘、ロジハラかも?ロジハラの事例や起こりやすい場面を解説
ロジハラ(ロジカルハラスメント)は、正論を振りかざし相手を心理的に追い詰める行為のことを指します。職場でのコミュニケーションが重要視される現代において、ロジハラは職場環境を悪化させ、従業員にもストレスを与えます。組織全体の生産性低下にもつながるため、ロジハラへの正しい対処方法・予防方法を把握しておくとよいでしょう。
当記事では、ロジハラの具体的な事例と対策を詳しく解説するので、ハラスメントのない職場環境を目指している方はぜひ参考にしてください。
ロジハラとは?
ロジハラとは「ロジカルハラスメント」の略で、正論を振りかざして相手を追い詰める行為です。ロジハラは受け手に大きな負担となり、職場で行われるとパワハラ(パワーハラスメント)に認定される場合もあります。
ロジハラが増加している背景としては、主に働き方の変化や多様性の推進が挙げられます。テレワークの普及により、非言語的なコミュニケーションが減少し、より直接的な言葉のやり取りが必要になってきました。
また、多様な背景や価値観を持つ人々が一緒に働くことが増え、文化的な違いから誤解を招く場面が生じています。これらの変化は、言葉を明確に伝える必要性を今までよりも高め、ロジハラを引き起こす要因となっています。ロジハラによって優秀な人材の流出を招いたり、訴訟に発展したりするケースも少なくありません。
ロジハラと正論の違い
ロジハラとは、正論を相手の心理的状況を考慮せずに振りかざし、ストレスを与える行為です。本来、正論をしっかり伝えること自体は問題ありません。正しいことや達成すべきことを論理的かつ分かりやすく説明するのは、職場でも家庭でも非常に重要なコミュニケーションです。
ただし、いかに正論であっても相手の気持ちや状況を無視して一方的に押し付けると、ロジハラに該当します。上から目線の話し方をしたり大声で怒鳴り付けたりするのであればなおさらです。相手の受け止め方や心情を尊重できるか否かが、ロジハラと正論の大きな違いです。
どのようなケースがロジハラにあたる?
たとえ業務に関連した指導・教育を行っている場合でも、相手の事情や立場、感情を考慮せず過剰に正論を押し付けると、ロジハラに該当する場合があります。
たとえば、ミスをした部下に対して、ただ事実を指摘するのではなく「だからお前はダメなんだ」と責任を追及し、一方的に非難する行為はロジハラに当たります。人前で何度も叱責したり、長時間説教を続けたりした場合なども同様です。実際、責任感から行われた指導が過剰だったと判断され、ロジハラとして認められた裁判例もあります。
ロジハラは、受け手に大きな精神的負担がかかります。被害を受けた社員は自己肯定感が低下し、ストレスや過労が原因で、心身の健康が害されたり、仕事へのモチベーションを喪失したりすることも少なくありません。最悪の場合、自ら命を絶ってしまう可能性もあります。
また、チームの雰囲気が悪化して、職場全体の生産性にも悪影響が及ぶでしょう。正論自体が悪いわけではないものの、職場でのコミュニケーションには、お互いを尊重した建設的な意見交換が求められます。
ロジハラが起こりやすい場面
ロジハラは、さまざまな場面で発生する可能性がありますが、ビジネスの現場では特に以下の3つのシーンで起こりやすいとされています。
・ミスやトラブルが発生したとき ミスやトラブルが発生した際は、事実のみを淡々と把握して原因を明らかにし、対策方法を練らなければなりません。しかし、原因の究明や対策の検討過程でロジハラが生じる場合があります。 たとえば、「前にも同じ指摘をしたのに、まだ改善していないのか」「誰でもできる仕事なのに、どうしてお前はできないんだ」と相手の人格や能力を非難する言い方です。ミスを指摘する際に、攻撃的な言葉遣いをしたり結果だけを非難したりすると、相手は精神的に追い詰められてしまいます。 ・ミーティング中 多くの意見が出るミーティングでは、ときに激しく議論が交わされることもあるでしょう。しかし、「それはまったく意味がない」「お前の提案はいつも現実味がない」といった断定的な批判は、建設的な議論を阻害するだけでなく、ロジハラになりえる言い方です。他者の意見を押さえこんでしまう言動が続けば、他のメンバーも自由に意見を言いにくくなり、クリエイティブなアイデアは出なくなります。 ・情報共有のとき 情報共有はスムーズな業務遂行のために重要です。しかし、情報共有や相談を受けたときに「なぜできていないんだ」「こんなことも知らないのか」「分からないならこの仕事に向いてない」と批判的に言うのは、相手を不必要に追い詰めます。ロジハラが続けば報連相を綿密にする意欲が削がれ、重大なミスや事故を招きかねません。 |
ロジハラにはどのように対処すればよい?
ロジハラに遭遇した際、個人としてはまずロジハラしてくる人との関わり方を変え、接触を最小限にするとよいでしょう。また、本人に自覚がない場合も多いので、勇気を出してその行為がロジハラであることを伝えるのも1つの方法です。効果が見られない場合は、上司や人事部に相談して対策を講じることも有効です。
ただし、個人の努力だけでは限界があります。ロジハラを根本から防ぐためには、企業全体での取り組みが欠かせません。以下では、企業が組織として行うべきロジハラ対策を4つ解説します。
ロジハラをしやすい人の特徴を押さえておく
ロジハラ加害者となりやすい人には共通の特徴が見られます。たとえば、他者への優位性を保ちたい、自分が正しいと証明したいという思考を持っている人はロジハラをしやすい人に該当します。また、相手を無能な人間だと思っている、他者に共感できないといった傾向も見られます。
問題解決に強い意欲を持ちつつも、その方法として過度にロジカルなアプローチを取ってしまい、周囲への配慮を欠くケースも少なくありません。また、過去に自分が同様の扱いを受け、それが成長につながったため過剰に正論を使ってしまう場合もあります。
企業がロジハラをする可能性のある人物を早期に特定し、適切なトレーニングやカウンセリングを受けてもらうことで、ハラスメントの未然防止が期待できるでしょう。
ハラスメント研修を行う
コミュニケーションを促進させる
ハラスメント対策には、お互いを尊重したコミュニケーションが極めて重要です。コミュニケーションが活発だと社員同士が共感しやすくなり、攻撃的な言い方を避けるようになります。また、気になる伝え方があれば早期に指摘しやすくなるため、問題のエスカレートが防げます。
経営陣が社員と積極的に交流する、社内SNSや掲示板を設けるなど、企業がコミュニケーションを促進させる方法はさまざまです。定期的なコミュニケーション研修も有効です。
相談窓口を設置する
社内への相談窓口の設置も、ロジハラ対策として有効です。相談窓口があれば、ロジハラやそのほかのハラスメントに関する問題を早期に察知し、適切に対応できます。特にロジハラは加害者側が自覚しにくいため、第三者が介入しやすい環境を作るのが効果的です。
相談窓口を通じて匿名での通報や相談が可能になると、ロジハラ被害者や目撃した社員が声を上げやすくなります。社員の安全と健康を守り、相談者に信頼される職場環境を維持するには、相談窓口担当者の守秘義務の徹底と迅速な対応が欠かせません。外部機関と連携して、専門的なアドバイスや支援を受けるのもよいでしょう。
まとめ
ロジハラは、ただの厳しい指導ではなく、相手の心理状態を無視して正論を押し付け、精神的苦痛を与えることを言います。会社でロジハラが発生すると、個人のパフォーマンス低下やチームワークの破壊を招くだけでなく、法的な問題に発展するリスクも伴います。
企業はロジハラを未然に防ぐために、相談窓口の設置や適切なコミュニケーション方法の教育、そしてオープンで健全な意見交換が行える社内文化の醸成が必要です。定期的に研修を実施し、ハラスメントへの理解を深めながら、社員がストレスなく働ける環境作りを目指しましょう。
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