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必須営業スキル14種を徹底解説|新時代に必要なスキルを紹介
営業職の仕事は、顧客のニーズや課題を理解し、それに応える商品やサービスを提案して購入に結びつけることです。従来の営業スタイルでは、見込み客の獲得から商談成立後のフォローまでを一手に担う「オールラウンダー」が主流でした。しかし、近年ではデジタルツールを活用し、より専門的な役割を持つ営業スタイルが求められるようになり、求められるスキルも大きく変わっています。
この記事では、営業職に必須のスキルのうち、昔から求められていたスキル8つと今後身につけるべきスキル6つを解説します。
そもそも営業の仕事とは
営業職は、顧客のニーズや課題を把握してそれに応える商品やサービスを提案し、購入に結びつける仕事です。従来の営業マンは、見込み客の獲得から商談成立後のフォローまですべてを担う「オールラウンダー」でした。
しかし近年、営業スタイルは大きく変化し、営業職にも新しい形態が求められています。デジタルツールを駆使し受注までを担う「インサイドセールス」や、購入後のフォローアップを通じて顧客の成功を支援する「カスタマーサクセス」などが代表的です。
そのため、営業職には顧客との関係構築や問題解決能力に加えて、デジタルスキルやデータ分析能力が必須となりました。また、現代の営業職には、単に商品を売るだけでなく、顧客のパートナーとして課題を共有し、最適な解決策を提案するコンサルティング的な役割も期待されています。
営業に求められるスキル一覧
営業職として成功するには多岐にわたるスキルが必要です。営業スタイルに変化は起きていても、一般的に営業へ求められるスキルの基本は昔から変わりません。以下では、営業担当者にとって必須のスキルを8つ解説します。
コミュニケーション能力・交渉力
営業職にコミュニケーションスキルは欠かせません。顧客との対話を通じて信頼関係を築き、顧客の悩みや課題を理解する力が重要です。たとえば、日常的な連絡や会話を通じて顧客のニーズを把握し、その解決策を提案すれば顧客満足度を高められます。
また、交渉力も重要なスキルです。顧客の要望に応えつつ自社の利益も確保するには、バランスの取れた提案が必要になります。たとえば、顧客のコスト削減要求に対して、双方にメリットのある代替案を提示するのは交渉力の一例です。コミュニケーション能力と交渉力を兼ね備えた営業職は、顧客との長期的な関係を築きやすくなります。
ヒアリング力・傾聴力
ヒアリング力と傾聴力も、営業職に必須のスキルです。顧客のニーズや課題を的確に把握するには、話をじっくりと聞き出さなければなりません。たとえば、顧客が抱える問題や期待を理解する際は、オープンクエスチョンを活用して自由に話してもらうのが効果的です。
また、クローズドクエスチョンを使って具体的な情報を引き出すのも重要です。顧客が話しやすい雰囲気を作り、リラックスした状態で本音を引き出せれば、より顧客のニーズに合った提案ができるでしょう。営業職には、ヒアリング力と傾聴力を駆使して、顧客との信頼関係を深め、長期的なパートナーシップを築く力が求められます。
タイムマネジメント力
タイムマネジメント力は、営業職において重要な能力です。営業は日々多くのタスクをこなさなければならないため、時間を管理する能力が求められます。たとえば、顧客訪問のスケジュールを組む際、移動時間を最小限に抑えつつ複数の訪問を効率的にこなす工夫が必要です。
タイムマネジメントスキルを高めるには、優先順位をつけることが大切です。重要度や緊急度に応じてタスクを整理し、期限を設定して取り組むようにすると、効率的に仕事を進めやすくなります。また、モバイル端末やスケジュール管理ツールの活用も、仕事の効率化と時間短縮に有効です。
ロジカルシンキング
ロジカルシンキング(論理的思考力)は、営業職にとって不可欠なスキルです。顧客に提案を行う際、感情や直感に頼るだけでは不十分です。論理的に情報を整理し、納得のいく説明を行う力が求められます。たとえば、顧客の課題解決に向けて動く場合、提案する手段の根拠やメリットを明確に示せれば、顧客の理解と納得を得られるでしょう。
また、トラブルが発生した際にも、ロジカルシンキングが役立ちます。問題の原因を論理的に分析し、解決策を導き出すことで、迅速かつ効果的な対応が可能です。ロジカルシンキングを効果的に駆使できるようになれば、営業活動全般において信頼性と説得力を高められます。
プレゼンテーション力
プレゼンテーション力は、営業職にとって極めて重要です。顧客に自社の商品やサービスを効果的に伝えるには、分かりやすく、魅力的なプレゼンテーションが求められます。感情論ではなく、具体的なデータや事例を用いて、商品の利点や顧客にとってのメリットを明確に示すことが大切です。
また、プレゼンテーションの際には、話し方や資料の見せ方にも工夫が必要です。たとえば、視覚的に分かりやすいスライドを作成し、ポイントを絞って説明すれば、顧客の理解を深められます。事前にリハーサルを行い、話す内容を整理しておくと、スムーズなプレゼンテーションが可能です。
クロージング能力
クロージング能力とは、契約や受注の段階で確実に顧客に同意を得るためのスキルです。営業プロセスの最後の段階で、顧客の不安や疑問を解消し、購入や契約に結びつける力が求められます。たとえば、顧客が価格や納期について悩んでいる場合、その場で具体的な解決策を提示できれば、安心して契約を進めてもらえるでしょう。
クロージング能力があれば、営業成績の向上に直結します。クロージングにおいては、顧客との信頼関係の構築や心理状態の見極め、適切なタイミングでのアプローチが成功の鍵です。顧客の購買意欲を引き出す技術や効果的な説得方法を学ぶことで、クロージング能力は高められます。
トラブル解決力
顧客とのやり取りが多い営業職は、トラブルに直面することも少なくありません。トラブル解決力は、こうした問題を迅速かつ適切に処理するスキルです。問題が発生した際には、冷静に状況を把握して原因を突き止め、最適な解決策を見つける力が求められます。
たとえば、納品遅延や商品の不具合が発生した場合、早急に対応策を講じた上で顧客へ真摯に説明し、信頼を取り戻さなければなりません。トラブル解決力を養うためには、柔軟な思考と迅速な行動が重要です。また、上司やチームメンバーと協力しながら問題解決に当たるコミュニケーション力も欠かせません。
ストレスマネジメント能力
多忙でプレッシャーの多い営業職には、ストレスマネジメント能力も大切です。ストレスを適切に管理し、メンタルヘルスを維持すれば、長期にわたってパフォーマンスを発揮し続けられます。ストレスマネジメントスキルを高めるには、自己認識と自己管理が必要です。自分自身の限界を理解し、無理をせずに適切なタイミングで心や体を休めるようにしましょう。
たとえば、適度な休息やリフレッシュの時間を確保したり、趣味や運動を通じてストレスを発散したりするのが効果的です。また、上司や同僚に相談して助けや支えを頼むのも重要です。健全なメンタルを維持できれば、営業活動をより効果的に行えます。
営業が今後身につけるべきスキル6選
時代の変化に伴い、営業職に求められるスキルは変わってきています。従来の基本的なスキルに加えて、現代のビジネス環境に適応するための新たなスキルが求められるようになりました。以下では、今後の営業職に必要とされる6つのスキルを解説します。
デジタルスキル標準
デジタルスキル標準とは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に必要なスキルセットの定義です。DXリテラシー標準とDX推進スキル標準の2つに分かれており、前者はすべてのビジネスパーソンが身につけるべき基礎知識を指します。後者はDXを推進する専門家が習得すべきスキルです。
営業職がITツールやAIを使いこなせれば、効率的かつ成果の高い営業活動を行えます。例えば、SFAツールやCRMツールといった営業職向けのデジタルツールを使いこなせるか否かで、営業活動の効率は大きく変わります。デジタルツールにより、顧客データの分析を通じた精度の高いターゲティングや、見込み客に対する最適なタイミングでのアプローチなどが可能です。さらに、最新のデジタルツールには、AIがアプローチの遅れや競合の存在に気づき、アラートを出してくれるものもあります。
また、日常業務においても、書類作成やプレゼン資料作成、予算申請などを効率化するのにデジタルツールを使うのは当たり前です。業務の効率化のために、基礎的なデジタルスキルが営業職には必須となっています。
創造的問題解決能力
現代の営業職に求められるのは、単純に顧客課題を解決する力だけではありません。社会の隠されたニーズを探し、新たな仕事を創造するスキルも必要となります。創造的問題解決能力とは、従来の枠にとらわれず、新たな視点から問題や課題に取り組む力です。
このスキルを身につけるには、日常的にクリエイティブな思考を養うことが重要です。たとえば、異なる業界や分野の情報を積極的に取り入れると、新たなアイデアや解決策を見つけやすくなります。また、チームでのブレインストーミングやワークショップを通じて、多様な視点からの意見を取り入れるのも有効です。
創造的問題解決能力は、特に新しいプロジェクトや商品開発の場面で役立ちます。顧客からの要望を斬新なアプローチで解決できれば、顧客満足度の向上や長期的な信頼関係の構築が期待できるでしょう。
特に、生成AIが進化する中で、定型的な業務の多くは自動化可能です。これまでの御用聞き的な営業活動では顧客の課題は解決できません。単に顧客の在庫が切れそうなタイミングでアポイントを取るような営業活動は、AIのほうが得意です。
例として、フォルクスワーゲンは自社の販売する車両の構成から契約締結まで、すべて自社の人間が直接かかわるのでなく、顧客がオンラインで完結できるように変更しました。これまで顧客と営業トークをしていたディーラーの仕事は「個人的で有能な顧客ケアを提供すること」になります。創造性を発揮して、顧客の課題を見つけ、適切なアドバイスを提供できる営業担当者を世界的企業も求めていることが、事例からも分かります。
※出典:CleanTechnica「Volkswagen Transitions To Online Sales For ID. Cars In Germany」
アート思考力
アート思考力とは、アーティストが「ゼロ」から「イチ」を生み出す際に用いる思考法で、常識にとらわれない自由な発想を意味します。ビジネスにおいても、独創的なサービスや商品を生み出すために注目されているスキルです。
アート思考力を身につけるには、日常の中で「自分視点」で自由に発想することが重要です。たとえば、作品を見ながら感じたことを掘り下げる対話型鑑賞法を活用し、自分の考えを言語化する練習を行います。
営業活動で顧客のニーズを超えた提案を行えば、他社との差別化が可能です。アート思考力によって生まれる革新的なアイデアが顧客の共感を得られれば、長期的な関係構築やブランド価値の向上につながるでしょう。
アート思考の重要性を受けて、NTTデータは東京大学と協力して「アート思考によるイノベーション創出手法に関する研究プロジェクト」を行いました。「自分を起点にする」「アウトプットする」「価値観を再定義する」の3点から、アート思考を公共社会基盤分野と金融分野の部署に生かしています。
※出典:NTTデータ DATA INSIGHT「アート思考~先行きが不透明な時代の思考法~」
オンラインファシリテーション力
オンラインファシリテーション力とは、オンライン会議やプレゼンテーションを円滑に進行し、参加者の意見を引き出して議論を活性化させる能力です。非言語コミュニケーションが制限されるオンライン環境では、声のトーンや言葉遣いなどで感情を表現する力が求められます。
参加者が意見を出しやすい環境を整えるために、事前のアジェンダ共有や目標・目的の明確化も必要です。ホワイトボードやチャット機能の活用により情報を可視化し議論を深められれば、効果的な意思決定や問題解決が促進されます。オンラインファシリテーション力は、リモートワークが増える現代において、チーム全体のパフォーマンス向上に欠かせません。
特に、営業活動において直接顧客と対面するだけでなく、ZOOMなどのコミュニケーションツールを使う機会は増えています。オンライン商談が当たり前になっている中で、営業担当者にとってオンラインファシリテーション力はさらに重要性を増しています。
データ活用力
データ活用力とは、大量のデータを分析し、ビジネスの課題解決に役立てる能力です。データサイエンスの基本を理解し、統計学やデータ分析手法を学ぶことが求められます。また、データエンジニアリングのスキルも必要です。データの収集・整理・分析結果の可視化を行い、具体的なアクションにつなげる技術を身につけなければなりません。
データ活用力を生かすことで、営業活動の効率化が図れます。たとえば、顧客の購買履歴や行動データを分析し、見込み客を特定すれば、ターゲットを絞った効果的なアプローチが可能です。データに基づいた提案をすれば顧客との信頼関係を築きやすくなり、リピート購入率の向上や新規市場の開拓にもつながります。
例として、大塚商会では5000万件の商談と12億件以上の売り上げ明細・販売サポートデータを活用して、社員数を増やすことなく売上を伸ばし続けています。各営業担当者が自分の力量以上の営業成果を上げられる理由は、データ分析の結果から営業担当者が商談する先の企業を提案し、営業活動を最適化しているためです。
※出典:dotData「AIが半年で7万件以上の商談を提案 高精度な分析力で営業担当者の信頼を勝ち得る
インサイト力
インサイト力とは、顧客自身が自覚していない潜在的なニーズや課題を発見し、それを解決するための提案を行う能力です。市場データやSNSの声、顧客からのフィードバックを収集して分析することで潜在的なニーズを見つけ出し、成果につなげます。
インサイト力は、顧客や業界に関する深い知識と洞察力が求められるスキルです。日常的な観察や対話を通じて、相手の状況や課題を理解しなければなりません。インサイト力の発揮により、顧客との関係が強化できる上、競合との差別化が図れます。顧客満足度の向上やリピート購入率の向上、新しい市場の開拓も期待できるでしょう。
例として、ライオン株式会社は洗濯用コンパクト液体洗剤「トップ ナノックス」により、前年同期比で1.6倍の売り上げを達成しました。大ヒット商品を生み出した理由は、洗濯洗剤の効果を確かめるときに、顧客は見た目以上に臭いを重視しているという顧客の無自覚なニーズを発見したためです。
※出典:日経XTECH「第5回 定性調査で引き出した主婦の「コンパクト」「におい取り」欲求」
営業にこれからの時代を生き抜くスキルを身につけさせる方法
営業担当者にこれからの時代を生き抜くスキルを身につけてもらうには、企業が組織的に営業戦略作りへ取り組む必要があります。担当者それぞれの営業スキルが向上すれば、営業チームのパフォーマンスと企業全体の成長が促進されるでしょう。以下では、営業スキルアップに効果的な4つの方法を紹介します。
社内でのナレッジ共有
営業のスキル向上には、社内でのナレッジ共有が有効です。ナレッジ共有は、成功事例や失敗事例を全員で共有して学び合うことで営業経験値の低い社員の成長を促進し、組織全体の営業力を底上げするスキルアップ方法です。たとえば、全社員がアクセスできる情報共有プラットフォームの導入などがあります。
NTTコミュニケーションズ株式会社では、営業ツールを導入するにあたって、各社員がツールを活用できるようお互いに教え合う「セールス・イネーブルメント」を推進し、社内でのナレッジ共有を成功させています。同社は複雑な新規商材を売るために、SFAやMA、インサイドセールスなどの営業ツールをフル活用し、高精度のデータを収集しました。その上で、成功事例を共有するシェアリングサクセスを実施し、全社員が参加しやすいラーニングカルチャーを構築しています。これにより、全社員が自発的に学び、営業力向上を実現しました。
研修によるリスキリング
リスキリング研修の実施により、営業職は変化する市場や顧客ニーズに対応する力を身につけることが可能です。リスキリング研修では単なる知識の習得にとどまらず、実践的なスキルの向上を目指します。また、デジタル技術の進化や業務の複雑化に対応するために、新たなツールや手法を学ぶ機会を用意しなければなりません。
日立製作所では、リスキリングの一環として常時約1,300講座を展開する社内大学「日立アカデミー」を設立しました。ビジネススキル・ITスキル・プロジェクトマネジメントなど、さまざまな分野でのスキル向上を図れる制度です。これにより、社員は新たなビジネスチャンスを見つけ出し、会社の成長に貢献する力を養っています。
1on1面談による学ぶ機会の創造
1on1面談は、上司が部下と定期的に対話をすることで、部下の内省を促し成長を支援する人材育成の手法です。リモートワークの普及により、上司が部下の状況を把握しにくくなっている現代において、1on1面談の重要性はますます高まっています。
Yahoo!では、2012年から1on1面談を全社的に導入しています。導入当初は、時間の確保の問題や「愚痴のはけ口になるのでは」との懸念もあった制度です。しかし組織全体でのマネジメント強化という目的の明確化と、外部の専門家を交えたカリキュラムのブラッシュアップが功を奏しました。現在では約6,000人の社員が1on1を実施しています。
資格取得支援制度の導入
資格取得支援制度は、営業職にとって重要なスキルを体系的に身につける手段です。営業に国家資格は必須ではありませんが、資格があれば顧客からの信頼を得やすくなり、業務の幅が広がります。また、資格取得は自己研鑽や自己啓発の一環としても有効です。
クリエイト株式会社では、「ビジネス会計検定試験」を導入し、営業職の財務知識を向上させています。この検定試験は、財務諸表の理解・分析を通じて、ビジネスに活用する力を養うのが目的です。クリエイト株式会社では、社員のみならず、内定者に対しても「自己啓発支援規定」として教材費や受験費用を補助しています。また、経営層も積極的に受験し、学びの姿勢を示すことで、社内全体の学習意識を高めています。
まとめ
現代の営業職には、昔から求められるコミュニケーション能力や交渉力、タイムマネジメント能力に加え、デジタルスキルやデータ活用力などの新しいスキルも不可欠です。これからの時代を生き抜くためには、社内でのナレッジ共有やリスキリング研修、1on1面談、資格取得支援制度の導入など、組織的なスキルアップの取り組みが重要となります。
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