1on1とは?目的や会社組織を強化する効果的なやり方を解説

1on1ミーティングでは、部下に対して期待値をしっかりと明示し、これまでの業務や成果に対する賞賛を行うことが大切です。1on1が効果的に行えると、部下の自信と自主性が育まれ、エンゲージメントも高まります。

上司は、週1回程度で1on1ミーティングの時間を作り、部下の現在の状況を丁寧に傾聴できるとよいでしょう。また、上司任せになるのではなく、会社として1on1ミーティングの機会や文化を設計してあげることも大切です。

当記事では、1on1ミーティングの目的やメリット、導入する際のステップについて解説します。

1on1ミーティングとは

1on1ミーティングとは、主に上司と部下の間で行われる、定期的な個別ミーティングを指します。

1on1ミーティングの目的は、個人のパフォーマンスやキャリア計画、職場に対する懸念や提案などについてのフィードバックやコミュニケーションを促進することです。部下の成長を促したり、お互いの理解を深めたり、関係を強化したりすることが期待されます。また、定期的な1on1ミーティングを行えば、部下が抱える問題や懸念が早期に発見され、迅速に対処できます。

1on1と人事評価面談の違い

1on1ミーティング(以降、1on1)は、人事評価面談とは似て非なるものです。以下は、1on1と人事評価面談の違いをまとめた表です。

1on1人事評価面談
主体部下上司・会社組織
頻度週に1回、2週間に1回、月に1回など、組織やチームのニーズに応じて設定される。年に1回や半年に1回など、定期的に行われる。
関係性対話上下
話す内容日々の業務、チームの状況、キャリアステップ、悩みや課題など、幅広いトピック。プライベートの状況などの雑談を行うこともある。従業員の成果、評価に関する内容に関するフィードバックや、将来のキャリアパスや成長に向けた仕事に関する内容が中心。
そのほかの特徴・15分~30分程度の短い時間で行うことも
・あくまで部下の成長を促進することが目的
・上司には傾聴の姿勢が求められる
・会社としての正式な面談の場
・上司は、評価結果をしっかりと説明する責任がある

人事評価面談は、企業で行われる公式な面談の一種です。従業員の業績や成果、職務に対する態度、スキルの向上や挑戦などの働きぶりを評価するための場となります。

1on1は、人事評価面談・目標設定面談などとは異なり、もう少しカジュアルな場です。上司は指導ではなく、コーチングのような関わり方をするような面談となります。

1on1が注目される理由

近年、多くの企業で1on1が導入されている理由・注目されている理由として、主に以下の2つの理由が挙げられます。

社員一人ひとりの考え方が多様化している
VUCAの時代と呼ばれる現代では、多様な背景、価値観、期待値を持つ人が働いています。そのため、一律のアプローチやコミュニケーション手法では、すべての社員のニーズに応えることが難しくなっています。

1on1は、対話を通じて個々の社員の考えや悩み、期待を深く理解し、一人ひとりに合った対応ができるようになる点が大きなメリットです。1on1のような個別のコミュニケーションを通じて、部下のモチベーションを高めるとともに、組織への所属感やコミットメントを強化することが期待されます。
社会環境の変化が加速している
現在は、技術の進歩、グローバリゼーション、社会・経済の変動など、多くの外部要因が目まぐるしく変化します。また、人口減少・働き手不足による採用難や、働き方改革による残業時間の抑制などの背景もあり、従業員一人ひとりの労働生産性を向上させることが、どの企業にも求められています。

こうした現在のビジネス環境においては、変化に合わせて、自ら考え自ら行動できるような人材を育成しなければなりません。1on1では、部下の意識やモチベーションを醸成させ、自らの成長を促すアプローチを行うため、こうした側面からも注目されています。

1on1を行う3つの目的

1on1を行う目的は数多くあるものの、体系化して考えると主に3つの役割(業務支援・内省支援・精神支援)に分類できます。ここでは、各目的についての概要を紹介します。

業務支援

業務支援は、部下がより効率的かつ効果的に仕事を進められるように、障壁や課題を解決するためのサポートを行うことが目的です。具体的には、部下が持っている業務やタスクに関連する悩みのヒアリングやアドバイスを行います。

業務支援の目的で確認する内容例
・現在進行中のプロジェクトやタスクの進捗状況の確認
・リソース状況の確認
・必要に応じて技術的な指導やアドバイスの実施
・タスクの優先順位の再確認や期限調整

1on1を通じて、上司やマネージャーは部下の業務の難しさや挑戦を直接理解でき、適切なサポートや指導を行えます。部下が一人で悩む時間も減らせ、結果的に業務の停滞を防げる点もメリットです。

内省支援

内省支援の目的は、部下が自分自身の価値観や目標、強みや弱点を理解し、それに基づいて自発的なキャリアの選択や計画を進められるようにサポートすることです。部下に自身の業務やプライベートであった出来事など客観的に評価させることで、自身への洞察を深められます。

内省支援の目的で確認する内容例
・これまでの業務の振り返り
・業務の良い面・悪い面の評価
・仕事の取り組み方の姿勢の評価
・仕事上の問題点の改善

1on1による内省支援を通じて、部下は自らを振り返り、課題を見つけ、主体性を持って業務にあたりやすくなるでしょう。

精神支援

精神支援の目的は、部下が職場の環境や人間関係、業務に関する不安や懸念を上司と共有し、部下の精神的な負担を取り除くことにあります。部下の精神的および感情的な健康や安定性をサポートすることが中心です。

精神支援の目的で確認する内容例
・仕事上負担に感じている点
・解決が難しいと感じている問題
・職場環境や人間関係の不安
・プライベートでの心配事

部下の中には、周りが知らないところで、職場・仕事に対するストレスやプレッシャー、人間関係の問題、ワークライフバランスの課題などを抱えている場合があります。上司は、1on1での部下との継続的な対話を通じて、部下の精神的な負荷を軽減させてあげることが大切です。会社としては、結果的に離職率の低下にもつながります。

1on1を行うメリット

1on1を行うと、当然上司・部下の双方の時間を取るため、そこにはコストが発生します。しかし、多くの企業で1on1を取り入れているのは、それ以上のメリットがあるからと言えるでしょう。

以下では、1on1を行う主なメリットを4つ紹介します。

上司と部下の信頼関係が構築される

1on1は、部下が悩みや意見、希望を共有できるプライベートな対話の場です。部下は自分の意見や問題点を上司に直接伝える機会を持つことができ、上司はそれに対して具体的なフィードバックやアドバイスを提供できます。また、1on1の中で双方が共有する情報や話題は、日常の業務の中でなかなか話題に上ることのない深い部分に触れることも多いです。そのため、1on1を通じて、お互いに対する理解や共感が深まりやすくなります。

結果的に、上司と部下の間の透明性が高まり、信頼関係が少しずつ築かれます。信頼関係が構築されると、部下は自分の意見や考えをより積極的に表現するようになり、上司は部下の能力や意見をより尊重する姿勢を持てるようになるでしょう。固い信頼関係が築けていると、チームのコミュニケーションの質や協力体制を向上させ、組織全体のパフォーマンスを高める要因にもなります。

部下のエンゲージメントが高まる

エンゲージメントとは、従業員が自らの仕事や組織に対して熱意や献身の思いを持ち、積極的な参加や協力をする意欲のことを指します。

1on1は、部下にとって自分の声が聞かれ、理解され、尊重されるような場です。自分の考え・思いなどが上司に直接伝えられる機会があることで、部下は自分が組織の一員として価値ある存在であると感じられるようになるでしょう。

また1on1の時間で、上司が部下の業績や成果を認め、具体的なフィードバックやアドバイスを提供することで、部下は自らの成長やキャリアの方向性に対して明確なビジョンや目標を持ちやすくなります。自分の仕事や課題に対する取り組みが、組織全体の目標やビジョンの達成に貢献していると感じられると、モチベーションや自己効力感が向上します。

実際に、日清食品と慶應義塾大学大学院は、従業員のエンゲージメントを高めるマネジメントに関する共同研究を行っており、1on1を適切な頻度で実施することは、従業員のエンゲージメント向上に非常に有効であると明らかにしています。

※日清食品「「従業員のエンゲージメントを高めるマネジメントに関する共同研究」 日清食品と慶應義塾大学大学院が「1on1ミーティング」の有効性を実証」
https://cdn.nissin.com/gr-documents/attachments/news_posts/10213/9eeec07152b593f1/original/20220124-3.pdf

『エンゲージメントとは?意味から効果的な向上施策まで徹底解説』はこちら

離職率が低下する

部下が組織を離れようと感じる理由の多くは、職場の環境や人間関係、キャリアの将来性への不安、仕事の評価や報酬への不満などが挙げられます。1on1を通じて、上司は部下の離職につながる問題や懸念を早期に捉え、適切な対応やサポートを行うことができるため、不満が大きくなる前に対処することが可能です。

1on1によって、部下の組織への所属感やコミットメントを強化できれば、結果的に離職の動機を減少させる要因となり、部下の急な退職も防げるでしょう。

個人と会社がともに成長する

部下にとって、1on1は自分の仕事の成長やキャリアの方向性を明確にする場となります。上司からのフィードバックやアドバイスを受けることで、自身の強みや弱点を再認識し、どのようにスキルや知識を向上させるかのアクションを考えるきっかけにもなるでしょう。

一方、会社にとっては、1on1によって個々の信頼関係が構築されれば、チームワークが向上し、結果的にチーム全体の生産性やパフォーマンスが向上するでしょう。エンゲージメントの高い社員が多数いることで、ネガティブな状況が発生したとしても、従業員が一丸となって迅速に対応できるような体制が築かれます。

また会社にとって、1on1は部下の直面している課題やニーズをリアルタイムで知る貴重な機会・情報源となるのものメリットの1つです。

1on1を導入するやり方4ステップ

1on1を会社として導入する際のやり方は、大まかに以下の通りです。

STEP11on1のゴールを設定する
STEP2テストとして小規模に導入する
STEP31on1のルールを作る
STEP4社内に周知し全社的に導入する

ここからは、それぞれのステップについて詳しく紹介します。

1on1のゴールを設定する

まずは、組織全体が1on1の意義と重要性を理解し、一貫した方針で取り組めるようにするために基盤を築くことが必要です。

全社的に導入するとなると、現場としては「ただでさえ忙しいのに、面談の時間を取らないといけないのか」「普段から関係は良好だし、コミュニケーションもとっているので、形式的にやる必要はないのでは?」といったネガティブな声が挙がる可能性もあります。現状どのような課題があってその上でなぜ1on1を行うのか、従業員に期待する変化や成果は何か、といったように、ゴールを明確に設定することが求められます。

1on1のゴールや導入目的を設定することで、ミーティングの形式や内容、頻度などの具体的なフレームワークが明確になります。参加する従業員が、1on1の目的や方向性に沿って対話を進めやすくなるでしょう。また、ゴールや目的が明確であれば、導入後の1on1の効果や成果を評価し、必要に応じて改善や調整を行う際の基準にもなるでしょう。

テストとして小規模に導入する

1on1が実際の組織の環境や文化にどのように適合するかを確かめるために、まずは試験的に導入してみましょう。

組織全体に導入する前に、最初は限られたチームや部門で1on1を実践することで、具体的な課題や障壁、予期しない問題点を発見できます。試験的な導入によって、上層部や経営陣だけでなく、実際に1on1を行うマネージャーや従業員からのフィードバックを得ることが可能です。

また、この段階で得られた知見や経験は、全社で導入する際のガイドライン作成にも役立ちます。たとえば、ミーティングの頻度、時間、話題の選び方やフィードバックの方法など、さまざまな要素を振り返り、組織に最も合った形にカスタマイズするとよいでしょう。

1on1のルールを作る

1on1の社内ルールを作成することで、各マネージャーや従業員が1on1をどのように実施すればよいかが分かり、ミーティングの品質や内容の一貫性を全社的に保ちやすくなります。結果的に、1on1がただの形式的なものではなく、具体的な成果や変化をもたらすコミュニケーションのツールとして機能するようになるでしょう。

ルールは、下記のような項目を最低限定めておくことをおすすめします。

・ミーティングの目的
・進行方法
・時間
・開催頻度
・会話のトピック
・期待されるアウトプット
・上司として避けるべき行動や言動
・フィードバックの方法
・ミーティング後の記録方法

社内に周知し全社的に導入する

1on1の導入を成功させるためには、上層部からの明確な説明を通じて、1on1の意義や方法、組織全体での取り組みが従業員全員に伝わっていることが不可欠です。実際の導入に当たっては、組織内のコミュニケーションツールやミーティング、研修セッションなどを利用して、1on1のガイドラインやルール、期待される効果やメリットを共有する場を設けましょう。また、既に1on1を試験的に導入していた部門やチームの経験や成功事例を共有することで、他部門やチームの参考にもなります。

初期の段階では、特定のメンターやコーチを配置するのもおすすめです。各マネージャーや従業員が1on1を効果的に進行するためのサポートを提供できると、より効果的に浸透しやすくなります。

1on1を成功に導くためのポイント

1on1を導入したとしても、運用が現場任せになってしまうと、ゆくゆくは形骸化する恐れがあります。1on1を導入してから組織にしっかりと浸透させるまでに、会社として注意しておきたいポイントを紹介します。

上司に必要なスキルを身に着けてもらう

1on1は、単なる日常的な打ち合わせや進捗の確認の場ではありません。部下の成長やモチベーションアップにつなげるためにも、上司は以下のようなスキルが求められます。

・傾聴スキル
・コーチングスキル
・問題解決スキル
・リーダーとしてビジョン、ミッションを言語化できるスキル
・話しやすい雰囲気、親しみやすさ

一方で「上司であれば、最低限部下を育成するスキルを持っておくべき」といった考え方をするのはよくありません。会社として、上司や管理職に対して研修の場を設けることも、大切です。

1on1研修


定期的かつ短いスパンで実施する

部下と上司が信頼関係を築いていくためには、コミュニケーションの機会を多くすることが大切です。長くじっくり話す機会を数回作るのではなく、週1回15分~30分でもいいので、コンスタントに開催するほうが効果的です。

部下の悩みや考えていることは日々変わります。その時その時の部下の気持ちに寄り添って、適切な支援ができれば、信頼関係も自然と強固になっていくでしょう。

心理的安全性を確保する

心理的安全性とは、個人が大きなリスクを取ることなく自分の意見や感情、質問や悩みをオープンに表現できる状態を指します。

1on1は、部下が自分の考えや感じていること、直面している問題や懸念、キャリアの展望などを上司に対してオープンに話す場です。そのため、部下が自分の気持ちを正直に、恐れることなく表現できる環境を作らなくてはなりません。

心理的安全性が確保されていると、部下は自分の本音を話すことができ、その結果、上司との間に深い信頼関係が築かれ、1on1の効果が最大化されます。

心理的安全性を確保するためには、まず、上司が部下の意見や相談を真摯に受け止め、無条件で尊重する態度を持つことが求められます。また、部下の意見に対して批判や否定の反応を避け、部下が話す際に傾聴の姿勢を持つことも重要です。

ほかにも、1on1の中での対話は基本的に秘密厳守にすることを事前に伝えておき、業務外の内容はほかの人に話さないことを約束しましょう。

まとめ

1on1を行う目的は、部下の業務支援・内省支援・精神支援を行うことです。上司と部下の信頼関係が構築される・部下のエンゲージメントが高まるといったメリットをはじめ、会社にとっては離職率が低下する・生産性が向上するといったメリットも挙げられます。

一方で、1on1はただ時間を取って面談すればいいのではなく、効果的に部下を支援するためには、上司側にも一定のスキルが必要です。上司が部下の成長をしっかりとサポートできるように、マネジメント研修などの機会を会社として設けてあげるのもよいでしょう。

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