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創考喜楽

デザイン思考で世界を変える 第2回

Re-Designing HR 人事をリ・デザインする~米国発・最新事例研究レポート~17 COLUMN

イノベーションに不可欠と考えられるようになった「デザイン思考」について、その具体的なプロセスを伝える実践的ガイドブックの意訳&要約を行う第二回目の今回は、アイデア創出、プロトタイピング、テスティングという3つのモード(段階)についてお伝えする。

MODE:Ideate / モード:アイディエイト(アイデア創出)

アイディエイトというのは、アイデアを出すことに集中するあなたのデザインプロセスにおけるひとつの段階を指している。鋭いコンセプトや明快なアウトプットを得るために、焦点を絞るのではなく、むしろ意識的にどんどん広げる段階だ。アイディエイションが目指すのは、多種多様なアイデアが大量に出ていて、最適なソルーションを広い範囲から探索できるような状況。このアイデア保管庫の中で、あなたはユーザーとともにプロトタイプを創りテストできるようになる。

なぜアイディエイトなのか

問題を特定するというところから、ユーザーのためのソルーションを見つけ出すというところへと移行するために、アイディエイトが必要になる。様々な形のアイディエイションが考えられるが、それらはおもに次にあげるようなことに影響を与える。

 

  • 一般的なソルーションのレベルにとどまることなく、そのさらに先を追求することによって、ソルーションからイノベーションへとつながるような可能性を高める。
  • チームの集合知をひとつに収束させ、チームの持つパワーを強化する。
  • これまで考えることの無かった未開発部分を表に出す。
  • イノベーションのオプションとして、フリクエンシー(ボリューム)とフレキシビリティ(バラエティ)を追加する。
  • あなたの頭の中から明白なソルーションを引出し、チームにはそれを超えてさらに先へと進むようにドライブがかかってくる。

 

どのようなアイディエイションメソッドを用いているにしても、アイディエイションにおける最も基本的な原則は以下の通り。チームがアイデアの創出を行っており、あなたはアイデアの評価を行うという場合、その二つを一緒にするのは、そうすることを本当に強く意識したときだけにとどめ、そうでない場合には二つの行為を分離するということだ。

MODE:Prototype / モード:プロトタイプ

プロトタイピングとは、アイデアやリサーチした内容を頭の中から取り出して、いったん物理的な世界へと移すこと。その結果できあがるプロトタイプは物理的にいろいろな形式をとる。たとえば、壁一杯に貼られたポストイット、ロールプレイング・アクティビティ、空間やモノ、インターフェイス、さらにはストーリーボードなどもその一例だ。

 

プロトタイプから作られる結果はプロジェクトの進行に応じて作られている必要がある。探索の初期段階において、プロトタイプはきわめてラフな素早く作れるレベルのものになってしまうが、それはそこに潜んでいる無限の可能性を学び取るための方法だ。プロトタイプは、デザインチーム、ユーザー、その他の人々がそれを実際に体験し、それに触った時に大きな成功へとつながっていく。このような物理的な交流から学んだことが、より深い共感へあなたを導き、成功するソルーションを形作って行く。

なぜプロトタイプを作るのか

伝統的にプロトタイピングはモノの機能性をテストするために行われてきた。しかしここでは、時には相反するようなカテゴリーを含む、以下のようなたくさんの理由でプロトタイピングを行う。

 

  • 共感を得る:たとえプロジェクトに対する解決策が提示される前の段階であっても、プロトタイピングはデザインの場やユーザーをより深く理解するために行われる。
  • 探索:作りながら考える。作ることでたくさんの解決オプションを開発する。
  • テスト:プロトタイプを作り、現実の文脈の中でユーザーと共にソルーションを精緻化して行く。
  • インスピレーション:プロトタイプを使ってあなたのビジョンを見せることで、他の人々(チームメイト、クライアント、顧客、投資家など)をインスパイアする。

 

現実的には、プロトタイピングのゴールは上記4つの要素を併せ持つことが多い。さらに、

 

  • 学ぶ:一枚の絵が千の言葉と同じ力を持つとしたら、ひとつのプロトタイプは千枚の絵と同じだけの力を持っている。
  • 非同意状況の解消:プロトタイピングは曖昧さを排除し、アイディエイションをアシストし、誤解を取り除くための最強のツールとなる。
  • 会話をスタート:ひとつのプロトタイプがあることで、それまでとは異なる会話をユーザーとの間でスタートすることが可能になる。
  • 素早く安価に失敗する:簡単に作ることのできるプロトタイプでたくさんのアイデアをテストすることによって、多くの時間と資金が投入される前に失敗を確信することができる。
  • 解決策開発のプロセス管理:変数(変わる可能性のある要素)を明確にすることで、たとえ大きな問題であっても、テストすることが可能なレベルの小さな固まりにして、分析を進めることが可能になる。

 

MODE:Test / モード:テスト

テストはソルーションを精緻化しより良いものに練り上げるための絶好のチャンス。テストのモードにおいて、まだ未完成で未熟な状態にある解決策を、ユーザーの実際のくらしに沿った文脈の中で確認する段階。プロトタイプの段階ではたとえそれが正解であると確信していても、どこかに過ちがあるに違いないと考え直してから、テストに臨む方が良い。

なぜテストをするのか

  • プロトタイプと解決策を精緻化するため:テストによって次の段階のプロトタイプ作りへと歩を進める。しかし時には図面の段階へ戻ることもあり得る。
  • ユーザーについてより良く知るため:テストは観察とエンゲージメントを通じて、共感を構築する良い機会となる。時には思いもかけなかったインサイトがそこで得られることもある。
  • 視点を見直すため:テストは時には我々が解決策を正確に捉えていなかったことを教えてくれる。それ以上に、問題自体を正しく捉えていなかったことに気付かせてくれることもある。

 

さて、以上でモード編は終了。次回はデザイン思考者となるための様々なヒントについてお伝えする予定。

 

Hasso Plattner Institute of Design at Stanford University 
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