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Vol.14 The Decade of HR / HRの時代(続編)

Re-Designing HR 人事をリ・デザインする~米国発・最新事例研究レポート~14 COLUMN

 

これからはHR部門がスポットライトを浴びるようになると力強い宣言を発表しているHuman Capital Institute社の最新白書から、HR部門はどのように戦略的人材マネージメントを行えるようになるのか、その方法を前回に続いて紹介する。

 

データ志向であること

重要な決断を行い企業を正しい方向に導くためには、直感や伝統や利便性などといった曖昧なやり方に頼るのではなく、明白な事実をベースとしなければならない。ところがHRやHRBP(HRビジネスパートナー)は組織の他の部署同様に、企業の根幹に深く関与したシステマチックな組織になるのにこれまであまりにも多くの時間を費やしてしまった。

 

さらにその過程で行われてきた議論は、プロダクションライン、テクノロジーサイクル、あるいはファイナンスのリターンなどのようなデータドリブンな科学的な部門とはかけ離れたものであった。その結果、HRが担っている社員に関するデータはアクセシブルではないし、オブジェクト指向でもない、と考えられるようになってしまった。

 

さらにHR関係者は、言葉での表現は巧みであっても、数字での表現は苦手である、と一般に認識されている。資産に関する経営判断にはモデル化、リサーチ、メソドロジーなど様々な分析手法が一般的に用いられるが、いよいよHRにおいてもそうした手法が通用することを示すべき時がやってきたのだ。

ビジネスの結果を意識する

HRは外部から積極的に新しい価値を持ち込むように努力すべき。ただしそれは組織が目指すビジネスのゴールと戦略の話であり、HRのプロセスに関する話ではない。HRのビジネスパートナーたちはビジネスリーダーと同じアジェンダを受け入れるべきであり、すでに見てきたように多くの人が結果を目指して活動している。

 

もしもHRBPがその価値を増していると外部から評価されるようになれば、他のビジネスユニットのリーダーたち同様に、結果が期待できるようになってくる。そのためには収益の増加、出荷時間の短縮化、質的向上、コスト削減などに常に配慮する必要があり、人材獲得コストやトレーニングを受けた人数の把握にだけ熱心であるような旧時代的でHRセントリックな、ある種マニアックな認識は捨て去るべきだ。

コーチになる

HRBPという存在が受け入れられ、信頼を得て価値を持つようになってくれば、マネージャー、ディレクターなどビジネスユニットの中核リーダーたちに対するコーチとしても機能するようになってくる。

 

現代は毎日が新しい挑戦の連続であり、スピードの早い激しい変化にさらされている。そうした環境のなかで、このような開発的な役回りは今後ますます重要になってくる。またそれはHRBPが組織に対してもたらすことのできる、論理的な次ステップに向けた価値実現のためにも欠くことのできないものである。

 

コーチングは、安定した、激しい変化が起きないような時代にはそれほど必要とされることはない。しかし現在、成熟した産業においてすら、そんな状況はもう存在しないことは明らかだ。それゆえHRBPには次ステップにおいて信頼されるアドバイザーとなるための、新しいスキル、分析手法、経験、知恵が必要となっている。

VUCAの時代変化をナビゲートする

我々の時代の大きな特徴の一つとして、あらゆるタイプ、あらゆる伝統ある組織が直面している、無慈悲で耳障りな変化があげられる。実はそれを最初に指摘したのは軍隊だった。米軍は現在社会をVUCA(volatility/移り気, uncertainty/不確実, complexity/複雑, and ambiguity/あいまい)の時代と定義している。

 

多くのCEOたちは破壊的なイノベーション、VUCA、そして組織の変化について熱心に語るが、どうやら組織自体が変わるためには人が変わらなくてはならない、という基本的な事実を忘れているようだ。なぜならば、これまでたくさんの企業において数多く行われた組織変革において成功を収めているのはわずか20%に過ぎないからだ。そこに改良の余地がふんだんに残っているし、HRBPはそれをビジネスユニットのレベルで押し進めるべき存在だからだ。

 

そのためには、変化に対する合理的な理解というレベルに留まらない、変化の情緒的な側面にまで至る深い理解が必要とされている。そして組織改革に成功している事例に共通して見られるツールセットを、こちら側に持ち込む必要がある。

 

HRPBはビジネスユニットのリーダーたちと緊密に連携し、嵐の中を安全にナビゲートする役割を果たして行かなければならない。CEOたちは時には進化論者的立場に立ち「環境適者だけがサバイバルを許される」などと考えることもある。ただしこの場合、彼らにとっての適者とはすなわち強者を意味していることを忘れてはいけない。

 

もちろんこの認識は誤っている。たとえば太古の昔、恐竜は巨大であり力も強かったが、彼らは現在アニメ映画の中にしか存在しない。ダーウィンが指摘しているように、生き延びるために必要な能力は強さではなく適応力であり、それはすなわち人が変わることを意味している。もう一度言おう。HRBPの役割は嵐の中を安全にナビゲートするための活力源となることであり、組織のために持続可能な成功を創造する手助けをすることなのだ。

意味ある持続可能な企業文化を創る

組織において何かしらの決断がなされる場合、企業文化が大きな力を発揮する。特にだれもそこに注視していない場合にはそれが顕著になる。企業文化は確かにリーダーによって変わるものだが、決してリーダーだけに依存するわけではない。

 

実際、一つのパーソナリティあるいはプレゼンスによって作られた文化は長続きしないケースが多く見られる。すべての組織に何かしらの文化が存在するが、問題はそのデフォルトになっている文化が目指しているもの、志向しているものは何かということだ。さらに文化があまりにも巨大であったり、際立った特徴を持たなかったり、変わることが困難であったりすることも少なくない。

 

しかし非常にシステマチックなアプローチで、役員室内だけでなく組織そのものを阻害してしまっているような文化を変えることに成功した事例も見受けられるようになっている。そこから得られる価値は、単にポスターに書かれたスマートな言葉以上に、企業判断を行うための標識となったり、新しい才能を企業に呼び込むことにつながってきた。

 

ビジネスユニットのリーダーと連携したHRBPは、価値ある職場という文脈を背景として、企業文化を創造していくべきだ。このようなオプトインした文化は実際に企業と組織に大きな利益を生み出す。いわゆる「Vanguard Company / バンガードカンパニー / 前衛企業」(Vanguard = 軍事行動における先頭部隊)は、強い価値観あるいは意味ある目的を持たず、ただ決められたルールを遵守することだけに熱心な企業を、いとも簡単に打ち負かしてしまう、ということははっきりしている。あなたの会社がバンガードカンパニーとなれるかどうか、HRが企業の命運を握る時代がやってきた。

 

Human Capital Institute
http://www.hci.org/

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