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Vol.10 America’s Workforce / アメリカ労働者意識調査

Re-Designing HR 人事をリ・デザインする~米国発・最新事例研究レポート~10 COLUMN

America’s Workforce

米国の労働者(America’s Workforce)が現在の労働環境や上司との関係などに対する意識を調査したデータがある。労働者たちが仕事や会社についてどのように考えているのかを知り、またマネージメント層に対する彼らの思いを導き出すことで、リーダーたちが企業のおかれている状況を客観的に理解できるように、調査結果を分析しわかりやすく整理し直したデータだ。
調査に参加しているのは、広範な産業分野、企業、職種、ポジションから任意に抽出された1,000人を超える米国労働者。調査の主眼がおかれたのは、リーダーシップ、マネージメント、コミュニケーション、チームワーク、社員教育などのエリアである。
この調査から導き出されたまとめとしてあげられたのは「労働者達の仕事に対する情熱は、多くの分野において改善することが可能と考えられる。そして改善はマネージャーとのリレーションシップの強化と信頼感の向上とによってもたらされる。」というものであった。

仕事について

下の図1)は「先月行った仕事を思い出し、それに対してどのような印象を抱いたか」という問いについて答えたもの。もっとも多かった答えは「フラストレーションを感じた」で54%。一方「十分にコミットできた」とポジティブに考えた人は46%、「ハッピーだった」のは43%、「困惑した」が36%、「やるだけやった」と感じた人は28%、エキサイティングだったと感じたのは26%となっている。そして「怒りを感じた」という人も25%いる。
さらにこのグラフには出ていないが年齢別に整理分類されたデータもあり、18歳~34歳、および45歳以上の層の答えを比較すると、いずれの場合も若い層でその数値が低くなることが注目される。たとえば「十分にコミットした」と答えた34歳以下は40%であるのに対して、45歳以上は50%、また「やるだけやった」と答えたのは同じく23%に対して31%であった。

 

マネージメントについて

次の図2)は、自分の上司が社内の他の部署とコミュニケートする際に、正々堂々と、心を開いて正直に語り合っていると感じることはどのくらいあるか、という質問に対する答え。社内に向けてマネージャーが行うコミュニケーションに関しては、大部分が好感を持って眺めている様子が見えてくる。
ただし別の調査では、自分たちのリーダーは能力を引き出せるよう部下をインスパイアすることよりも、自分自身のことで精一杯だと感じている社員が68%もいることがわかる。このあたりから、企業のリーダーと社員との間の溝が生じるのだろう。また面白いことにこのような答えは女性よりも男性に多く見られる。(男性71%、女性65%)
また、仕事をよりスムースに遂行したり、責任感を持って仕事をする、リスクをとっても仕事にチャレンジしたくなるよう部下をインスパイアする、といった能力を、はたして自分の上司が備えているかどうかという問いに対しても疑問視する人が多い。そして43%までが、上司ではなく、個々の社員こそが企業文化に大きなインパクトを与えると考えている。
社員達がリスクを抱えることの無い、ほどほどの範囲でしか仕事をしていないことについて、67%までがその具体的な理由を挙げられるとしているが、その最大のものは「上司から十分なサポートを受けられない」ことだ。
企業が掲げるミッションを実現するためには、役員やマネージャーと社内の他の部門との間に、もっと明確で強力なコミュニケーションが必要とされているようだ。組織の掲げるビジョンやミッションの実現に向けて、シニアエグゼクティブクラスの人間が真剣に取り組んでいる、と考える社員は48%。さらにマネージャークラスの人々が企業のゴールや戦略について理解している、と考える社員は40%。しかし所属する企業のビジョンに関して、誰からもまったく説明を受けたことが無いという社員が40%もいることから、コミュニケーション不足が誤解の主な原因となっていることが推測される。

 

チームワークについて

おそらくは上司や上層部から必要なサポートが常に得られるわけではないという状況が強く影響すると考えられるが、大部分の労働者は自分のチームメイトととの間により強い関係を築いている。下の図3)は、自分の仕事が何に貢献しているかを調べたもの。調査に参加した労働者の84%までが、自分が担っている仕事が何かしら役に立っていると感じている。
実際、何に役立っているかをあらためて考えてみると、自分が所属するチームや部署が成功するため(69%)、あるいはチームや部署の幸せのため(46%)という答えが最初に上がってくる。会社の利益のため(43%)という答えはようやく3番目に出てくる。
半分以上(54%)の労働者たちが自分の会社について、うまく機能していない社内プロセスを見直すことよりも、他社において機能しているアプローチを真似ることに熱心、と感じている。そして56%は、自社はそうした方法をとるときの方が成功する確率が高い、と考えている。
しかしながら自社の中でどの部門、あるいはどのようなプロセスが問題となっているのかを尋ねると、それを具体的に指摘できるのはわずか32%に過ぎない。

 

インプルーブメント

ベストプラクティスを企業に持ち込むためには、社員たちは仕事に密接に関係したオンザジョブ・トレーニングを受ける必要がある。しかしながら、26%は現時点で彼らのためにそうしたトレーニングが用意されていないと答えている。さらに悪いことに、62%までが、用意されたトレーニングが現在の仕事にとって限定的な関連性しか無い、あるいはまったく無関係なものである、と考えている。
それゆえ過去半年の間に、作業を遂行するために不可欠とされるような技能を持っていない、と一度でも感じたことのある人が14%存在する。つまりオンザジョブ・トレーニングに対する社会的なニーズは依然として増加し続けている。彼らは仕事に対する知識や技能をもっと身につけたいと考えている。
図4)は、仕事に関する知識や技能を習得する際に、どのような方法をとりたいかという問いに対する答え。図表には出ていないが、女性は男性よりも(65% vs 58%)バーチャルな存在ではない実際の人間によるトレーニングを好む傾向がある。
社内にトレーニングの機会がある社員と、そうした機会のない社員とにわけて以下の質問が行われた。過去4週間の仕事を振り返ってみて、ハッピーだったと答えた人はトレーニングありが45%、そしてなしが37%。さらに、充実していたと答えたのはトレーニングありが31%、なしは21%。エキサイティングだったと答えたのはそれぞれ30%、14%というように、いずれも大きな差がついた。
つまり長期的に見た場合、トレーニングはエンプロイー・エンゲージメントをアップさせる最も良い方法であることが、この調査でも証明されたと考えて良いだろう。

 

この調査は2012年12月~2013年1月にかけてKelton Global社によって行われたもの。フルタイム、パートタイムを問わずに米国内で就労している1,061人が参加し、オンラインで実施された。

 

Kelton Global 
http://keltonglobal.com/

 

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