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創考喜楽

2020.05.29
KNOW-HOW

第8回: 偉い人とはどう付き合うか。
マキャベリ流の権力者懐柔術


昔から、一貰して「権力」を主要テーマとしてとりあげてきた学問分野に“政治学”があります。
古代のプラトン、アリストテレスから、『リヴァイアサン』を書いたホッブズ、権力の正統性の問題やカリスマ論を展開したウェーバーまで、政治学は、常に国家体制、統治機構、政治制度などと並んで、権力の問題に関心を向けてきました。

 

 

 

さらに、もっとリアルでなまなましいテーマとして、“パワーポリティックス”(権力政治術)というものもあります。それは政治の世界を超え、ビジネスや日常の生活までをひっくるめて、権力闘争の場としてとらえます。そして、パワーゲームさながらに、そこで勝つための戦略や身の処し方、かけひきのテクニックなどを論じるものです。
なかでも、権力者とどうつきあい、どう攻略するか。この考え方の大切さを説いてやまなかった政治学者の一人に、中世イタリアの人、マキャベリがいます。

 

 

 

マキャベリによる権力者との接し方

 

 

マキャベリは、権力者に対して、どのように接していけばよいかについてを考察しています。以下、具体的にみていきましょう。

 

 

 

第1に、野望があるときは“白痴”を装うということ。警戒されないための用心です。

 

 

 

第2に、自分より強い相手に勝ちたかったら、まず「あらゆる手段をつくして相手と友好関係をとり結ぶ」こと。例えば、相手の趣味に合わせ、また相手の喜びそうなことを一緒にやるなどということです。

 

 

 

第3は、権力者との距離のとり方について。

 

 

「君主のそばに接近しすぎると、君主が破滅したとき、まきぞえをくうおそれがある」

 

 

 

「かといって、離れすぎていると、万一君主が没落しても、そのあとがまとして名乗りをあげるのにまにあわない」。

 

 

 

 

したがって理屈では、つかずはなれずという中間距離が最善ということになりそうですが、マキャベリはこれをしりぞけて、次のように述べています。

 

 

「(つかずはなれずというのは)実際には実行不可能と思われるので、結局は右にあげた二つの方法、つまり、相手との距離をうんと広げておくか、さもなければびたりと相手の胸倉にくらいついているか、どちらかを選ばなければならない」。

 

 

 

 

第4は、反発や危険を招かない説得の仕方、意見の述べ方についてです。

 

 

「ものごとに対処する場合、中正な態度をとるように心がけ、自分の意見にむきになって固執するようなことがあってはならない。また、自分の意見を主張する場合にしても、感情にかられたりせずに、おだやかな口ぶりで説得につとめなければならない」。

 

 

 

「さらには、都市や君主を自分の意見になびかせるにしても、彼らがすすんでこちらの意見に従うようになったのであって、執拗な説得に屈したのではないという印象を一般に与えるように、心を配らなければならない」。

 

 

 

そのほか、大衆を信頼すること、時勢と事態の変化にたえず注目し、その対応を心がけるようにとアドバイスしています。実に適切な指摘ではないでしょうか。

 

 

 

すでに権力を握っている人間ヘ接近し、良好な人間関係をとり結び、その人間から評価、信頼されるようになり、その自分に対する信頼をもとに、最終的には、その人間を動かせるところまでいく。そのようにして、自分も力や実権を握っていくことができれば、私たちは、厳しいパワーポリティックスを制し、勝ち残っていくことができるはずです。

 

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