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創考喜楽

2020.05.22
KNOW-HOW

第7回: ウォルトの欠損こそがディズニーを生んだ!?


自分の人生を振り返るなかで、「ああいう体験ができなかった」「こういう能力に恵まれなかった」というような明らかな欠損はありませんか? こうした欠損は、実は成功の活力になるものです。

 

 

今回は現代エンターテインメントの世界で、権力の頂点をきわめた男をとりあげます。世界的に有名なアニメーター、ウォルト・ディズニーです。なぜ彼が生み出したアニメーションは、あれほどの美しさ、楽しさをそなえているのでしょうか。
もちろんこれには、ディズニーのスタッフのスキルやノウハウの力もありますが、ここではあくまでウォルト・ディズニー自身に焦点を当て、「欠損動機」という概念を中心において考察、解説していくことにしましょう。

 

 

空白の少年時代

 

 

「欠損動機」は筆者のつくった説明概念で、「ある重大な精神的または肉体的欠損によって生じる、強迫的で持続する思考、行動動機」です。
ウォルト・ディズニーは、少年時代、厳しい父親の監視下で、新聞配達をはじめとして、ほとんど働きづめに働きました。言い換えれば、普通の子どもたちが、遊んだり、友だちとふざけっこしたり、冒険したりして過ごす少年時代が、欠損していました。

 

 

少年にとって、少年らしい少年時代が空白になっているというのは、重大な欠損です。その欠損が、以後、長きにわたって、ウォルト・ディズニーの思考や行動の大きな原因になったと考えることができます。
しかし、このように説明したからといって、これを否定的なイメージで受けとめる必要はありません。逆に、私たちにとっては、それが幸いしたのかもしれません。なぜなら、この特異な欠損動機がなかったら、私たちの知っているような“エンターテイナー”、ウォルト・ディズニーは誕生しなかった可能性が高いからです。

 

 

 

ディズニーこそ、永遠の少年“ピーターパン”

 

 

彼は青年時代に自宣し、商業デザイナーの仕事からスタートしますが、いち早く動画に関心を向けます。そしてアニメーション映画で“ミッキーマウス”というキャラクターを生み出し、現代を代表するエンターテイナーとしての地位を確宣していきました。

 

 

 

彼はアニメーションの制作などをとおして、自ら作り出した世界の中に自分の少年時代の夢を表現し、失われていた少年時代をとりもどそうとしていたのかもしれません。少年らしい少年時代を経験しなかったという欠損動機が、ディズニーにとってきわめて大きなものだったからこそ、彼が作り出した世界は、ときに現実以上に美しく、楽しさにあふれたものになっているのではないでしょうか。

 

 

 

そうした少年の目線でつくられた作品の純度の高さが、ディズニーのエンターティンメントの魅力の1つです。彼が、非常にすぐれたエンターテイナーであるのは、彼が少年の心をいつまでも失わずに作品をつくり続けていたからこそといえるでしょう。

 

 

 

ウォルト・ディズニーの後半生も、この延長線上にあります。例えば、ディズニーランドの園内の景観も、子どもの眼から眺められた景観に思えてなりません。
このように、子どもの視点を死ぬまで持ち続けてきたことから、彼を永遠の少年“ピーターパン”ということができるかもしれません。だからこそ、彼がつくりあげたファンタジーの世界は、いまもなお、たくさんの子どもたちから愛され続けているのかもしれません。

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