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創考喜楽

Vol.13 The Decade of HR /
HRの時代

Re-Designing HR 人事をリ・デザインする~米国発・最新事例研究レポート~13 COLUMN

HRがスポットライトを浴びる時代

「The Decade of HR / HRの時代」という力強い言葉は、「戦略的人材マネージメントのためのグローバルアソシエーション」を標榜するHuman Capital Institute(HR)が2014年3月に発表した白書のタイトルである。その冒頭で、同社のChief Learning OfficerであるDavid Forman氏は「2020年代には企業のHR部門がスポットライトを浴びるようになる」と宣言している。今回次回と2回にわたって、同社白書の一部をご紹介する。

 

企業の販売活動や生産活動に直接的に関与することの少ないHR部門は、他の部門からは「コスト」という認識を持たれることも少なくない。そのためこれまで長年にわたりそうした部門からの信頼を獲得するための努力や、正しく認識されるための活動を続けてきた。その努力は次第に認められるようになってきたものの、いま大きく社会環境が変わるなかで、HRこそが他社との「差異」を創り出すことのできる部門である、と認識されるケースも見受けられるようになっている。それはHR部門がコントロールできるわけではないが、強い影響を及ぼすことのできる「てこ」が存在するという、以下のようないくつかの事実によるものだ。

HRをとりまく注目すべき事実

*企業の83%までが、才能ある人材の獲得競争において、他社に負けていると感じている。

 

*株式公開企業において、企業が有する様々な無形資産は企業価値を創り出す最大要素となっており、知的財産、ブランド強化、パートナーネットワーク、顧客サービスの質的向上、さらにはそうした戦略を実施する際のマネージメントに強く関係している、と認識されている。

 

*企業の経費に関して最も大きなものは人件費に関連するものであり、そうした「人」関連コストは全体の60~70%にも達している。

 

*各分野のリーディングカンパニーにおける人材教育への投資は、競合企業と彼らとを分ける一つの明確な差別ポイントになっている。これはすでに90年代マッキンゼーによって指摘された事実だが、その後もタワーズ・ワトソン、ボストンコンサルティング、ギャロップ、そしてIBMなどによって何度となく繰り返し指摘され続けている。

 

*意識や関与度の高い労働力は、低い離職率、高い生産性、売上の増加、高い品質、高い利益率を企業にもたらせる。

 

*リーダーシップや戦略的なポジションへ人材を送り込むことのできる有効なパイプラインを持つ企業においては、財務や顧客サービスなどのパフォーマンスも改善され、さらに一層優れた人材を引き付け、維持できるようになる。そうした仕組みを備えた企業としては、GE、マクドナルド、サウスウェスト航空、P&G、ジョンソン&ジョンソンなどがあげられる。

 

*広範なコラボレーションは社員のエンゲージメント率を向上させ、企業にイノベーションをもたらせる。そうした企業の代表的存在は、ハーバードビジネスレビュー誌などでもそのクリエイティブレベルが高く評価されているプロダクトデザイン企業のIDEO(アイディオ)である。

 

*今日多くの組織が巨大な変化の波の直撃を受けている。変化への対応能力をつけることは企業の生き残りのための最大かつ唯一の決定要因である。しかし企業自体が姿を変えて生まれ変わるためには、まず社内の人材が変わらなくてはならない。

 

*強い企業文化は最も効果の高い統治システムでもある。企業文化は社会に対する企業の存在価値、倫理観、パフォーマンス、エンゲージメントのレベルを強化し明確にする。

コストからアセットへ

前述してきたような事実が意味しているのは、社員こそがビジネスにおける成果を創り出すエンジンである、ということだ。それゆえにHRのなすべき仕事はマネージメントと強いパートナーシップを結び、社員をコストとしての存在からアセットとしての存在へと変えて行くことだ。

 

それはちょうど、企業のCEOがファイナンスに関する問題解決をCFOに託し、売上に関する説明責任はセールス担当VPが担い、技術的なソルーションが必要な場合にはCIOに尋ねるのが当たり前になっているように、社員と職場のパワーアップに関してはHRを頼るのが当たり前、という時代になってきたことを意味している。

 

ハーバードなどのMBAプログラムにおいては、価値が低く見られがちになっているが、実は大きな可能性を秘めた部門を探し出すような作業が多く行われるが、HRはまさにそれにピッタリのテーマである。そこには現実的で実行可能なアクションが多く存在しており、そこからインパクトある驚くような結果を導き出すことができる。

 

ではなぜHRの時代が2020年というタイミングで始まろうとしているのだろうか? 人材開発が企業にもたらせるインパクトはすでにずっと昔に証明されていた。しかし人々の認識が変わるためには長い時間が必要とされる。現在そのインパクトが創り出した結果(意見や認識ではなく)が数多く見受けられるようになり、しかもそれが非常に魅力的であるために、誰も無視できないものになっているのだ。HRの時代を創り出すためには、優れたCEOの出現を期待するのではなく、このチャンスを逃がさず捉えてワークフォースを改良し、組織全体がより生産的により大きな成功を収められるようにすることだ。

センターオブエクセレンス

HRの組織や構造には様々なスタイルがある。特にグローバルレベルでオペレーションする企業などの場合を考えればわかるように、企業のサイズという要素はHRに大きく影響する。しかしHRがどのような構造を持つかということとは無関係に、単にゼネラリストの集団が肥大化した組織としてのHRはすでに時代にそぐわないものになっている。むしろ現在では、より強い機能を備え、改良されたクライアントサービスを提供し、管理や運営機能をテクノロジーの高度な活用によって合理化する、という方向へ向かう一つの大きなムーブメントがある。

 

そうした新しいHRにおいては、スリム化したリーダーシップチーム(Center of Excellnece / センターオブエクセレンス / COE)が存在し、シェアードサービスプラットフォーム / Shared Service Platform / SSP)が活用され、そうした環境のなかでHRビジネスパートナー(HRBP)の周辺にHRが位置づけられることが多くなっている。(図表参照)

 

COEは特定分野のエキスパートの集合体を意味しており、組織の活性化には不可欠な存在だ。たとえばワークフォースのプランニング、アナリティクス、報償プログラム、人材開発、キャリアパス開発などにCOEが活躍する。COEに属するエキスパートが担う役割としては、その分野に対する深い知識をもち、他の組織を研究し、テクノロジーを活用したいくつかの代替案を確認し、業界のベンチマークに親しみ、組織全体に適応可能なシステムを開発すること、などがあげられる。つまり、COEは組織の進むべき道を示し、組織を常にリーダー的存在として維持する。

 

SSPはテクノロジーを活用することによって、ワークフォースに対して必要な情報を与えディレクションし、それによって社員が自分自身で意思決定できるようにデザインされなければならない。SSPは数多くの優位性を備えている。例えば、管理業務を効率化し、社員がより効率的に働けるようになるツール類を提供し、HR要員がより戦略的になれるような時間的ゆとりを創り出し、そうしたツールやシステムの効果に関するアナリティクスも与えてくれることで、管理作業に利益をもたらせてくれる。その他のHR作業プロセスにおいてSSPが役立ちそうなものは、報償プログラム、給与管理、個人プロフィール管理、キャリアプランニングなど。ガートナー社の調査では効果的なセルフサービスのシステムはHR業務を30~50%も削減すると報告している。

 

HRBPは企業本部にいるのではなく、彼らが担当するビジネスユニットに配属されている。HRBPはオペレーショングループとCOEとSSPによって組織される人々の間をつなぐ皮膚のような役割をする。HRBPの仕事は、それぞれの才能がうまく機能するようにビジネスユニットを最適化すること、彼らから信頼されるアドバイザーとなること、ビジネス上で発生する様々な問題を解決すること、改善された結果とパフォーマンスに対して説明責任を持つことである。ちなみにHRBPの戦略的な効率強化は、社員のパフォーマンスを21%、社員の定着率を26%、売上を7%、利益率を9%、それぞれ増加させるというデータがある。

 

(次号につづく)

 

Human Capital Institute
http://www.hci.org/

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