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営業研修|目的・スキルを伸ばす内容例と効果的に行うポイントを解説
社会が多様化・複雑化していくとともに、消費者それぞれが持つ背景やニーズも合わせて多様化・複雑化しています。これまでの営業活動では顧客のニーズに応えられない可能性もあるため、企業が今後成長していくには、営業担当者のスキルアップが重要です。また、今どきの新入社員世代であるZ世代の特徴を生かすためにも、営業研修を利用した教育が効果的です。
この記事では営業研修の目的やおすすめのカリキュラム、外部研修と内部研修の違い、営業研修を効果的に行うポイントを紹介します。
営業研修とは
営業研修の目的
営業研修を行う目的は、下記の通り複数あげられます。
・個々の社員の営業力を強化する ・組織・チーム全体の営業力を強化する ・営業方針や理念を共有する |
営業活動で成果をあげるためには、個々の社員が基本的な手法を身につけることが大切です。しかし、性格や特性が異なる社員に自己流でアプローチを任せるのみでは、成果につながらない人も出ます。成果が出せない状態が続くと、離職によって営業担当者そのものが減るおそれがあります。
成果を得るコツは、社員一人ひとりに営業活動の基本を理解させることです。営業研修でノウハウを伝授すれば、個々の社員の営業力強化が期待でき、そこから組織・チーム全体の底上げにつながります。
また、営業研修の内容は教育に限りません。チームメンバー全員に改めて営業方針や理念を共有する場としても、営業研修がおすすめです。共通認識をもって営業活動を行えば、顧客や案件ごとに対応に差が出たり、企業理念に反する方法をとったりする社員を減らせます。
営業研修が求められる背景
現在は時代の変化とともに、多くの企業で営業研修の重要性が注目されつつあります。各企業で営業研修が求められる理由は、営業担当者に求められるスキルが従来以上に複雑かつ高レベル化しているためです。
ここでは営業研修が求められる背景として、3つの要因を解説します。
商品やサービスの複雑化
1つ目の要因は、商品やサービスがあらゆる面で複雑化していることです。たとえば市場が複雑化・多様化している現代において、類似する特徴をもった商品は複数見つかります。
自社の商品やサービスを売るには、顧客のニーズを理解して的確にアプローチしなくてはなりません。しかし、現代は商品やサービスのみならず、顧客側が抱える課題も複雑化・多様化しています。必ずしも価格やデザインで勝負できるとは限らないため、まずは複雑化した顧客課題を洞察して、ニーズに合ったアプローチ方法を見つける必要があります。
ニーズに対してどのような営業活動が効果的なのか、見極める知識やテクニックを身につける目的に、営業研修が役立てられています。
顧客の購買行動の変化
2つ目の要因は、顧客のニーズのみならず購買行動も変化していることです。インターネットやSNSの急速な発達により、現代は誰でも自由に商品やサービスのリサーチができるようになりました。購入前のリサーチは顧客にとって今や当たり前の行動であり、来店・来社した時点である程度の知見をもっている状態です。
営業担当者は、顧客がすでにもっている知見に対して、正しく答えたり補足したりできる知識で商品やサービスをプロモートする必要があります。
加えて、近年は購買行動そのものも多様化しました。来店・来社が困難な顧客への非対面による営業活動など、新しいアプローチ方法に対するニーズも生まれています。営業担当者が過去に成功した方法に固執せず、顧客行動やニーズの変化に素早く応じられるよう、営業研修による継続的なスキルアップが重要です。
Z世代の特徴に合った教育の必要性
3つ目の要因は、Z世代の持つ「手本となる情報を欲しがる」特徴に合った教育が必要なことです。Z世代とは、1990年代半ばから2010年代序盤に誕生した世代を指す言葉です。生まれたときからインターネットが存在し、SNSの利用にも慣れたZ世代は、現在企業に入社してくる新卒社員の年代にあたります。
Z世代は、求める答えが動画やSNSなどで手軽に得られる環境で育っており、見せられた手本をもとに、自ら考えて行動することを得意とする世代です。標準化された手本をまず営業研修で見せ、OJTなどで実践の場を与えれば、Z世代の新入社員が成長しやすい環境が作れるでしょう。
Z世代の新入社員を営業部門へ配属するのであれば、OJTによる教育に加えて、標準的な手本となる営業研修の導入がおすすめです。
営業に必要なスキル6つを伸ばせる営業研修の内容例
適切な営業研修をすれば、営業活動に必要なスキルを伸ばして、顧客から信頼してもらえ、大きな成果をあげられる社員を育成できます。営業研修の分かりやすい成功事例としては、各社員の売上が前年比に比べて2~3倍に向上したというものがあります。
また、単に売上向上につながるだけでなく、社員が自信や誇りを持って仕事できるようになる効果も見込めるでしょう。たとえば、人見知りで人と話すのが苦手だった営業社員が、適切な営業研修によって大きく成長でき、顧客対応が得意になった事例もあります。
※出典:Wantedly「株式会社ユウマペイント 「お客様以上にお客様のことを考えている」営業成績が伸びたのは数字ではなく”暮らしを守ること”を追求したから」
営業研修は、顧客と接するために必須となるスキルを磨けるように、いくつかのカリキュラムが用意されています。それぞれのスキルについて紹介します。
営業の基本と心構え
営業活動における心構えとは、一方的に商品やサービスを売りつけるのではなく、顧客のニーズに応えて意思決定をサポートするのが営業活動であるという意識です。顧客に信頼され、求められる存在になるのが営業活動の目的だと自覚すれば、自然と仕事に取り組む姿勢も変わるでしょう。
また、顧客から信頼を得るには基本的なビジネスマナーを身につける必要が、実務を行う前には業務全体のプロセスを理解する必要があります。
主な対象者 | 新入社員・若手社員 |
---|---|
カリキュラムの内容 | ・営業活動における心構えの研修 ・ビジネスマナー研修 ・営業活動のプロセス研修 ・営業活動のロールプレイング研修 など |
提案力・クロージング
提案力やクロージングスキルも、営業活動では必須となるスキルです。営業活動を成功させるためには、顧客の本当のニーズや抱えている課題を把握し、最適な解決策を提案する能力が求められます。
提案力やクロージングスキルを学べる研修カリキュラムには、以下のようなものがあります。
主な対象者 | 若手社員・中堅社員・リーダー層 |
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カリキュラムの内容 | ・顧客の真のニーズを把握する研修 ・顧客と関係を構築するための研修 ・ヒアリングスキルを向上させる研修 ・提案書の書き方研修 など |
コミュニケーション力・交渉力
コミュニケーション力や交渉力は、営業活動で特に重要なスキルの1つです。顧客との関係構築には、これらのスキルが欠かせません。そのため、以下のようなカリキュラムでコミュニケーション力や交渉力について学んでもらうとよいでしょう。
主な対象者 | 若手社員・中堅社員・異動者 |
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カリキュラムの内容 | ・顧客本位の営業の考え方についての研修 ・現在の商談スキルを把握する研修 ・商談のロールプレイング研修 など |
マーケティング
マーケティングスキルを磨き、市場・顧客のニーズや、広告・宣伝の手法を学べば、商談を効果的に行えるようになります。顧客心理、競合他社の動向と自社製品の特長を結び付け、顧客のニーズに合った営業戦略を立てられるでしょう。マーケティングスキルを学べる研修は、主に以下のようなものです。
主な対象者 | 新入社員・若手社員・中堅社員・管理職 |
---|---|
カリキュラムの内容 | ・プロモーションの基礎研修 ・製品開発のためのマーケティング研修 ・Webマーケティング研修 ・文章力向上研修 など |
ロジカルシンキング
ロジカルシンキングとは、論理的に筋道立てて物事を考え、問題を解決する思考力のことです。商談や交渉にあたって説得力を高めたり、正しく意思決定をしたりするのにロジカルシンキングは必須と言えます。
ロジカルシンキングを学べる研修カリキュラムには、以下のようなものがあります。
主な対象者 | 若手社員・中堅社員・リーダー層・管理職 |
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カリキュラムの内容 | ・ロジカルシンキングの基礎研修 ・プロセスの整理方法に関する研修 ・仮説思考研修 ・フレームワーク思考研修 など |
ストレス耐性
営業担当者を育てる上で必要になるのが、ストレスやトラブルに耐えられるマインドセットです。営業活動では目標を達成するためのプレッシャーがかかる場合もあるほか、ときとして予期せぬトラブルやクレームに見舞われる場合もあります。そうした状況でもストレスを上手に受け流し、モチベーションを落とさずに働き続けるのは、社員に長く働いてもらうためにも大切です。ストレス耐性を学べる研修の例は、以下の通りです。
主な対象者 | 全社員 |
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カリキュラムの内容 | ・レジリエンス研修 ・ストレスマネジメント研修 など |
営業研修は内部研修と外部研修どちらがおすすめ?
営業研修は、内部研修と外部研修のどちらもあります。各研修の違いを大まかにまとめると、下記の通りです。
内部研修 | 外部研修 | |
講師 | 社内の担当者 | 外部から招いた講師 |
費用 | 抑えられる | 費用がかかる |
リソース | 社内の人的・時間的リソースを使う | 社内の人的・時間的リソースを抑えられる |
研修の質 | 講師によりばらつきやすい | 一定の質が保たれる |
新しい知見 | 社内にある以上のものは得られない | 専門家による新しい知見が得られる |
以下では内部研修と外部研修、それぞれのメリット・デメリットに触れて、どちらがおすすめなのか解説します。
内部研修のメリット・デメリット
内部研修は、自社で対象の社員を集めて行う方法です。メリットは下記の3つがあげられます。
【メリット】
・自社特有の業務について教育ができる ・費用が安い ・柔軟な対応がしやすい |
講師側も社内の人間が務めるため、内部研修では自社特有の業務について詳しい教育を施せます。同じ「売る」行為であっても、企業の理念やルールが異なる場合、営業担当者が取るべき行動は変化します。自社の売り方や手順を身に着けさせれば、自社特有の業務を浸透させることも容易です。
内部研修では、講師の手配に特別な費用がかからない点もメリットです。外部から専門の講師を呼ぶとなると、利用料がかかります。社内の人間が講師を務める場合は最小限の費用で済み、日程や構成を柔軟に変更できます。
【デメリット】
・客観性を担保しにくい ・新しい知見を得られない ・質のばらつきが大きい |
一方で、内部研修には上記のデメリットもあります。社内で完結する研修は客観的な視点が入りにくく、新しいノウハウや知識の共有につながらないリスクがあげられます。
また、研修の質も講師の選び方でばらつく点に注意しましょう。毎年同じ人物が講師を務めると属人的な内容に偏り、最新情報のインプットにつながらないおそれがあります。
外部研修のメリット・デメリット
外部研修は、社外から専門的な講師を招いて行う方法です。近年は自社や合宿所に招くほか、インターネットで受講できるオンラインセミナータイプの営業研修もあります。
外部研修を選ぶメリットは、下記の通りです。
【メリット】
・一定の質が担保される ・専門家による新しい知識を得られる ・業務負担がかからない |
特定の分野に関する知識や経験を有する講師が多く、一定レベルの質が担保されます。専門会社やプロに依頼すると、研修自体にも慣れているため効果的なカリキュラムが期待できます。
新しい知識を得られることも、外部研修ならではのメリットです。社内にないノウハウやタイムリーな情報を得る方法として、社外から専門家を呼ぶ外部研修は適しています。
社内のリソースを最低限に抑えられ、関係者に業務負担がかからないメリットもあります。
【デメリット】
・対応の柔軟性が低い ・費用がかかる |
デメリットは、社外の人間ゆえに日程や研修内容に柔軟性が期待できないことです。また、プロの指導を受ける分、相応の費用がかかる点も覚悟が必要です。ただし見方を変えれば、対価を払うのみで効率的に社員を教育できるとも言えます。
内部研修・外部研修のどちらにもメリット・デメリットがあり、どちらがよいとは言えません。
カリキュラムを参考に分けると、それぞれ内部研修・外部研修に向いた内容は下記の通りです。
【内部研修・外部研修それぞれに向いたカリキュラム】
内部研修向けカリキュラム | 外部研修向けカリキュラム |
・社内の成功事例共有 ・自社特有の業務についての教育 ・業界に特化したスキルの教育 ・個別のOJT など | ・汎用・標準的な知識やスキルの取得 ・外部の専門家による新しい知識の獲得 ・業界のトレンドや最新情報 ・部署を横断した研修 など |
自社や業界に特化したスキル・情報を主に共有したい場合は、内部研修が向いています。客観的な視点や新しい情報も交えつつ教育したいのであれば、外部研修もおすすめです。
営業研修を効果的に行うポイント
営業研修を社内で行うにしても、社外で行うにしても、人的リソースや時間的リソース、費用などをかける必要があります。同じコストをかけるのならば、効果的に営業研修を行えるよう、以下の3つのポイントを意識してカリキュラムを組むことが大切です。
研修のゴールを設定する
営業研修を行うときは、まず目指したいゴールを設定します。営業研修の目的は、組織やチームの営業力を強化させることです。目的を達成するために、現状の営業組織や各人材をどのように成長させるべきか考えて、ゴールを設定しましょう。
営業活動は、顧客と直接やり取りを行う担当者のみならず、サポートを行う社員の力も必要です。営業担当者の交渉力を向上させたいのか、サポートを行う社員の専門性を高めたいのか、目的によっても研修内容は異なります。ゴールを明確化できれば、研修を誰に依頼するのか決めやすくなるメリットもあります。
営業研修のゴールを決めるときのポイントは、メンバー個人とチーム全体でそれぞれ設定することです。研修後にそれぞれの社員にどのようなスキルを身につけてほしいのか、チーム全体でどのように成長したいのかを明確化すれば、効果的な研修が行えます。
ロールプレイングや事例を活用する
営業研修は、知識やノウハウを情報として共有するのみならず、実践できるようになることが大切です。学んだことを現場で活用できるように、ロールプレイングで理解度を高めましょう。
また、実際の営業活動に沿った内容となるように、事例を活用したカリキュラムもおすすめです。たとえば成功事例に加えて失敗事例も体験しておくと、どのように対処すれば良いかを体で覚えられます。
メンバーや上司とロールプレイングで学んだことを反復練習して、次回の商談の席など現場で自然に生かせるようにするのが大切です。
外部研修を行う場合は、一般的な内容ではなく、自社に合うカリキュラムを依頼しましょう。自社の特徴を踏まえた研修内容のほうが、高い効果が期待できます。
長期的視座から研修に取り組む
営業研修は1度行って終わりにせず、継続して定期的に学びなおす機会を社員に与えることが大切です。
自社の現状に合った営業研修を行っても、学べるのはその時点で最適化された営業手法です。変化するスピードが加速している現代社会では、過去に学んだ手法がいつまでも通用し続けるとは限りません。忙しくないときに散発的な研修を行うのではなく、定期的な研修から常にチームのスキルをアップデートするのが重要です。
また、長期的に営業研修を繰り返すと、初期の営業スタイルとの比較で成長が実感でき、チーム全体のモチベーションアップにも期待できます。
しかし、中には「忙しくて継続的な営業研修の参加が難しい」と悩む社員もいるのではないでしょうか。継続的な参加に支障がある場合は、e-ラーニングの活用もおすすめです。
まとめ
営業研修では、営業活動の基礎だけでなく、提案・クロージングスキル、コミュニケーション力、マーケティングスキル、ロジカルシンキング、ストレス耐性などを学べます。新入社員に限らず、中堅社員・リーダー層・管理職向きのカリキュラムも多く、そうした社員が改めてスキルアップするのにもぴったりでしょう。
営業研修には内部研修と外部研修の2種類があります。どちらを選択する場合でも、研修のゴールを先に設定しておき、ゴールに沿ってカリキュラムを選んでください。ロールプレイングや事例を取り入れ、学んだことを実践できる場作りも重要です。長期的な視座から研修に取り組み、継続して学べる場を提供しましょう。
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