ファシリテーターとは?役割と求められるスキル・うまくなるコツを解説

ファシリテーター

ファシリテーターは参加者一人ひとりの意見を尊重し、安心して発言できる環境を作りつつ、多様な意見を効果的に引き出して活発な議論を促進する存在です。

また、議論が脱線したり、結論が出ないまま時間だけが過ぎてしまったりしないよう、ファシリテーターは議論を整理し、適切なタイミングで結論を導き出すことも求められます。

当記事では、優れたファシリテーターの条件となる4つのスキルや、ファシリテーターが会議に参加するメリット、上手なファシリテーターになるコツについて伝えます。

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ファシリテーターとは

ファシリテーションの模様

ファシリテーター(facilitator)とは、会議や研修、ワークショップなどの場において、参加者全員が主体的に議論や作業に取り組み、より良い成果を生み出すための支援者的な存在です。facilitatorは、「facilitate」という動詞から派生した名詞で、facilitateは「簡単にする」「促進する」という意味があります。

現代社会では、多様な意見や考えを尊重し、チームで協力して課題を解決することがますます重要になっています。ファシリテーターは、参加者全員がそれぞれの力を発揮し、より良い成果を生み出すための重要な役割を担う存在です。

ファシリテーターの主な活躍の場としては、以下の通りです。

・会議
・研修
・ワークショップ
・プロジェクトチーム
・コミュニティ活動
・教育現場
… など

ファシリテーターと司会の違い

ファシリテーターと司会は、会議やイベントなどの進行役という共通点がありますが、役割や求められるスキルには以下のような違いがあります。

ファシリテーター司会
目的・参加者の意見を引き出し、議論を促進し、合意形成をサポートする・円滑な進行と時間管理
役割・参加者全員が意見を出しやすい環境を作る
・議論を深める質問をする
・意見をまとめて結論を導き出す
など
・時間通りに進行する
・参加者に分かりやすく説明する
・場を盛り上げる
など
活躍の場・会議
・研修
・ワークショップ
・結婚式
・イベント
・テレビ番組

まとめると、司会は、会議やイベントを円滑に進める役割で、ファシリテーターは、参加者の意見を引き出し、議論を促進し、合意形成をサポートする役割と言えます。

ファシリテーターの5つの役割

役割

ファシリテーターは、会議や研修の中で、主に以下のような役割を果たします。

・会議の目的設定と共有
・発言しやすい場づくり
・参加者の意見の整理
・合意形成に向けた支援
・タイムキーピング

各項目について、詳しく解説します。

会議の目的設定と共有

会議の目的設定と共有は、ファシリテーターの重要な役割の1つです。会議の目的が明確で参加者に共有されることで、会議は以下のような効果を得られます。

・参加者が会議に集中しやすくなる
・議論が脱線しにくくなる
・会議の成果が明確になる
・参加者の満足度が向上する

ファシリテーターは参加者全員に会議の目的を明確に伝える必要があります。これにより、参加者は会議の焦点を理解し、議論を効率的に進めるための準備ができます。目的がはっきりしていると、参加者は議論の途中で脱線することなく、目標達成に向けて集中することが可能です。

発言しやすい場づくり

ファシリテーターは安全で開かれた環境を作り出し、すべての参加者が尊重され、発言しやすいと感じるように努めます。発言しやすい場を作ることで、会議やワークショップは以下のような効果を得られます。

・多様な意見が活発にでる
・議論が深まる
・参加者の満足度が向上する
・チームワークが向上する

ファシリテーターは、会話の進行をリードし、全員が平等に話す機会を持てるように調整します。特に意見の相違が予想される場合や、参加者間で上下関係が存在する場合に重要です。また、積極的な聴き方や肯定的なフィードバックを促し、批判的な言動を避けることで、参加者が心地よく感じる雰囲気を醸成できます。

参加者の意見の整理

ファシリテーターは、会議やワークショップにおいて参加者から出された多様な意見や情報を分かりやすく整理する役割を担います。これにより、議論がより構造化され、参加者間での理解が深まりやすくなります。

また、異なる視点や意見が出た場合、それらを対比させながら、議論の全体像を明らかにし、参加者が共通の理解や合意点に達するのを助けるのもテクニックの1つです。さらに、ファシリテーターは、重複する意見を統合し、新たな洞察が生まれるように促す必要もあります。

ホワイトボードや付箋、模造紙などを使い、意見をまとめるのもよいでしょう。

合意形成に向けた支援

合意形成に向けた支援では、ファシリテーターは参加者間の異なる視点や意見を理解し、最終的にまとめる役割を担います。共通の目標や解決策に向けて全員が一致するよう努めることが必要です。

クロージングの段階では、ファシリテーターは会議やワークショップの成果をまとめ、合意点や未解決の課題、次のステップや行動計画の確認などを行います。

もしすべての参加者が完全に納得できる結論を出すことが難しい場合、参加者間で妥協点を見つけることが重要です。

意見の対立は、合意形成にとって必ずしも悪いことではありません。むしろ、より深い議論を促進する可能性があるので、発言を遠慮している参加者がいる場合は、積極的に発言を促してみましょう。

タイムキーピング

ファシリテーターは各議題やアクティビティに割り当てられた時間を管理し、全体のスケジュールを守らせます。これにより、会議の目的が達成され、参加者の時間が無駄にならないようにできます。

タイムキーピングを行うためには、以下の点に注意しましょう。

・事前に時間を設定する
各議題にどのくらいの時間を割くのか、事前に計画しておきます。

・時間を可視化する
ホワイトボードやタイマーを使って、参加者全員が目視できる場所に時間を表示します。

・時間内に議論をまとめる
議論が脱線しそうになった場合は、ファシリテーターが軌道修正を行います。

・参加者に時間を意識させる
適宜、残り時間などをアナウンスします。

進行が遅れている場合、ファシリテーターは必要に応じて議論を加速させる、スケジュールを調整する、などの方法で柔軟に対応します。また、参加者が時間内に意見を述べられるように、発言時間を公平に配分することもタイムキーピングの重要なポイントです。

ファシリテーターに求められる4つのスキル

本質

ファシリテーターが役割をこなすためには、場の雰囲気を観察した上で発言しやすいよう場を整え、要点を捉えた質問をして意見を引き出す必要があります。ファシリテーターに求められるスキルは、主に以下の4つです。

・観察力
・論理的思考力
・傾聴力
・質問力

以下では、各スキルについて詳しく解説します。

観察力

観察力とは、会議やワークショップなどの場において、参加者の様子や場の雰囲気を客観的に観察し、理解する能力です。観察力が重要である理由は以下の通りです。

・参加者の本音を引き出すため
参加者の表情や声のトーン、ジェスチャーなどを観察することで、発言の裏にある本音を読み取れます。

・場の雰囲気を把握するため
参加者の表情や発言の頻度などから、場の雰囲気が盛り上がっているのか、停滞しているのかを把握できます。

・適切なファシリテーションを行うため
参加者の様子や場の雰囲気を把握することで、その場に応じた適切なファシリテーションを行えます。

観察力があるファシリテーターは、参加者の非言語的なサインや、議論の流れの変化を敏感に察知できます。たとえば表情や声のトーンから、参加者が議論を理解しているか、興味を持っているか、不安を感じているかなどを読み取ることが可能です。観察をもとに、ファシリテーターは適切なタイミングで介入し、議論を調整したり、参加者を励ましたりすることが求められます。

論理的思考力

論理的思考力とは、複雑な問題を要素に分解し、筋道を立てて考える能力です。論理的思考力が重要である理由は以下の通りです。

・問題の本質を見抜くため
論理的に考えることで、問題の本質を見抜き、解決策を見つけられます。

・議論を整理するため
論理的に考えることで、議論を整理し、結論を導き出しやすくなります。

・参加者全員に理解してもらうため
論理的に話すことで、参加者全員に理解してもらいやすくなります。

論理的思考力を持つファシリテーターは、複雑な情報を整理し、参加者が理解しやすい形で情報を提示できます。議論が本質的な問題に焦点を当てられるように導かれ、より生産的な対話が促進されます。

傾聴力

傾聴力とは、相手の話に耳を傾け、理解しようとする能力です。傾聴力が重要である理由は以下の通りです。

・参加者の信頼を得るため
参加者の話をしっかりと聞き、理解することで、参加者はファシリテーターに信頼を寄せるようになります。

・参加者の本音を引き出すため
参加者の話を否定せず、受け入れることで、参加者は安心して本音を話せるようになります。

・場の雰囲気を作るため
ファシリテーターが参加者の話を真剣に聞いていれば、参加者同士も互いに話を聞き合うようになります。

傾聴力があるファシリテーターは参加者からの発言を真摯に受け止め、それぞれの意見について深く理解できます。言葉の意味だけでなく、背後にある感情やニュアンスも捉えられ、参加者間の信頼関係構築にもつながるでしょう。

質問力

質問力とは、相手から必要な情報を引き出し、考えを促すための能力です。質問力が重要である理由は以下の通りです。

・参加者の考えを引き出すため
適切な質問をすることで、参加者の考えを引き出し、議論を活性化できます。

・問題の本質を見抜くため
質問をすることで、問題の本質を見抜き、解決策を見つけやすくなります。

・参加者全員を巻き込むため
質問をすることで、発言を遠慮している参加者に対してもフォローができます。

質問力を持つファシリテーターは、適切なタイミングで、効果的な質問を通じて参加者の知識・経験・意見を引き出すことが可能です。よい質問は、参加者に内省の機会も与えられます。

ファシリテーションがうまい人がいるメリット

メリット

ファシリテーションがうまい人がいると、会議やワークショップなどの場がより良い方向へ導かれ、さまざまなメリットが生まれます。ここでは、特に重要な3つのメリットについて解説します。

合意形成により建設的な会議ができる

ファシリテーションがうまい人がいると、参加者間の合意形成を促進し、結果としてより建設的な会議が実現するでしょう。

ファシリテーターは、参加者それぞれの意見を丁寧に聞き取り、共通点や相違点を明確にすることで、参加者全員が納得できる結論を導き出す役割を担います。具体的には、以下の点を意識してみましょう。

・意見の対立を恐れず、活発な議論を促進する
・中立的な立場を保ち、公平な議論をサポートする
・論点の整理と共通認識の形成を促す
・適切なタイミングで結論を導き出す

上記のスキルによって、会議は単なる意見交換の場ではなく、建設的な問題解決の場へと変わります。結果として、より効果的な意思決定が行われ、組織の目標達成に寄与する建設的な会議が可能になります。

参加者のモチベーションが上がる

スキルのあるファシリテーターは、参加者一人ひとりが積極的に発言できるような環境を作れます。まずは、以下のようなポイントを意識してみましょう。

・参加者全員に平等な発言機会を与える
・発言を否定せず、尊重する
・意見を可視化し、メンバーに共有する
・議論を活性化し、参加意欲を高める

上記のような環境下では、参加者は自身の意見が尊重されていると感じ、積極的に会議やワークショップに参加しようというモチベーションが高まります。結果として、より多くのアイデアが生まれ、より深い議論へと発展します。

新しいアイデアが生まれやすくなる

優れたファシリテーターは、単にアイデアを出すだけでなく、それらを結び付け、発展させるための技術を持っています。

以下のようなポイントを意識することが重要です。

・多様な意見を尊重し、かけ合わせる
・思考の枠を外し、自由な発想を促す
・アイデアを具体化し、実行可能なプランに落とし込む

上記の点を押さえることで、集団の知恵を活用し、個々のアイデアを超えた新しい解決策や創造的な提案が形成されるような会議が、少しずつ作れるようになるでしょう。

上手なファシリテーターになるコツ

グループワーク

ファシリテーションは、経験を積むことで上達します。積極的にさまざまな場面でファシリテーターを務め、経験を積み重ねましょう。以下では、優れたファシリテーターになるために意識すべきことを4つ紹介します。

中立的な立ち位置を保つ

ファシリテーターは、特定の意見や立場に偏ることなく、中立的な立場を保つことが重要です。参加者全員の意見を平等に扱い、公平な議論を促進する必要があります。

まずは、以下のようなポイントを意識しましょう。

・自分の意見は控え、参加者の意見に耳を傾ける
・参加者同士の議論をサポートし、介入しすぎない
・論点の整理と共通認識の形成を促す
・結論を誘導せず、参加者自身で結論を導き出す

ファシリテーターが中立的な立場を保ち続けたなら、参加者は安心して意見を述べることができ、より活発な議論が期待できます。

中立的な立ち位置を保つためには、自己認識力を高めることも重要です。自らの先入観や偏見に気づき、それらがファシリテーションに影響を与えないように注意深くマネジメントすることが求められます。

議論の状況を可視化する

議論の状況を可視化することで、参加者は議論の流れを理解しやすくなり、より深い思考へと導かれます。

そのために、以下のようなポイントを意識しましょう。

・ホワイトボードや付箋などを活用して、意見やアイデアを書き出す
・議論のポイントをまとめ、共有する
・参加者の理解度を確認し、必要に応じて補足説明を行う

ホワイトボードやブレインストーミングツールなどを利用し、議論を可視化することで、参加者同士の共通認識が形成されやすくなり、合意形成が促進されます。

視覚的に示された情報は、参加者が以前に議論した内容を思い出すのに役立ち、新たなアイデアを生み出す際のインスピレーションとなることがあります。参加者は達成された進捗を具体的に見られるので、モチベーションの向上にもつながるでしょう。

ファシリテーター向けの資格を取得する

ファシリテーター向けの資格を取得することで、ファシリテーションに関する基礎知識やスキルを体系的に学べます。

ファシリテーターに公的な資格は存在しません。しかし、ファシリテーター資格認定講座(CTF)やFITファシリテーター資格認定講座などの民間資格を通じて、スキルを体系的に学び、能力を証明することが可能です。

会議やワークショップを進行させる基本的なテクニックから、参加者のエンゲージメントを高める方法、対立を建設的に解決する戦略まで、幅広い知識とスキルを学べます。

ファシリテーション研修に参加する

ファシリテーション研修では、経験豊富な講師から実践的な指導を受けることが可能です。ロールプレイやグループ演習などの実践的な活動を通じて、理論を実際の状況に適用する経験を積めます。実践的なスキルを習得するだけでなく、自身の課題を発見し、克服するための機会となるのでおすすめです。

また、ファシリテーション研修に参加することは、異なる背景を持つ他の参加者と交流し、経験を共有する貴重な機会にもなります。このような交流は、新しい視点を学び、自身のスキルセットを広げるのに役立つでしょう。

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まとめ

ファシリテーターとは、会議やワークショップなどで参加者の対話を促進し、目的達成に導く役割を担う人のことです。ファシリテーターの主な役割は、効果的なコミュニケーションの場を築き、全員が意見を自由に表現できる環境を作り出すことです。

そのためには、観察力・論理的思考力・傾聴力・質問力といったスキルが求められます。これらのスキルを持っている人は、参加者間の意見を平等に取り扱い、建設的な議論を導くことができるでしょう。

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