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加害者・被害者になる前に!パワハラチェックリストの設問や項目を紹介

職場でのパワーハラスメント(パワハラ)は、加害者・被害者ともに自覚がないまま進行するケースが少なくありません。近年は、働きやすい職場環境を整える上で、パワハラの予防と早期発見が重要視されています。そこで有効なのが「パワハラチェックリスト」の活用です。
当記事では、チェックリストの使い方や活用事例を紹介しながら、パワハラへの理解と対応方法を分かりやすく解説します。正しい知識とツールを用いることで、職場の信頼関係を守り、より健全な労働環境を目指しましょう。
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パワハラチェックリストで職場のパワハラを確認しよう

パワハラ(パワーハラスメント)とは、職場内の優越的な関係を背景にして行われる、業務の適正な範囲を超えた言動により、相手の就業環境を害する行為です。
パワハラは、本人が自覚しないうちに加害者になっているケースも多くあります。パワハラの有無を確認する際は、「パワハラチェックリスト」を活用しましょう。パワハラチェックリストは、職場内での言動や人間関係について振り返り、ハラスメントに該当する行為がないかを客観的に確認するためのツールです。
リストを使用することで、たとえば「部下に対して日常的に強い口調で叱っていないか」「理不尽な要求をしていないか」といった自己チェックができます。また、「上司の言動に傷ついているのに、それを指摘できない」と感じている被害者側への気づきや、人事や管理職が社内にパワハラの温床となる雰囲気や構造がないかのチェックする際にも役立ちます。
パワハラは「見過ごさない」ことから予防が始まります。まずは一人ひとりがチェックリストを活用し、自身と職場の現状を把握することが大切です。
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厚生労働省が公表しているパワハラチェックリストの概要

厚生労働省は、ハラスメント対策を推進するため、パワハラの自己診断ができるチェックリストを公開しています。「ハラスメントで悩んでいる方」「ハラスメントと言われた管理職」「社内でハラスメントが発生した人事担当者」の3つの立場別に用意されており、それぞれの視点から状況を確認できます。
チェックリストでは「殴られたことがある」「ひどい暴言を浴びせられた」など、該当する項目にチェックを入れ、ハラスメントにあたる可能性があるかを簡易的に把握します。個人情報の入力は不要で、匿名かつ無料で利用可能なため、ハラスメントかどうか判断に迷ったときの第一歩として活用しやすいツールです。
パワハラで悩んでいる方向けのチェックリスト

職場で「これってパワハラでは?」と感じることがあっても、自分の受けている行為が本当にパワハラに該当するのか分からないという方は、「ハラスメントで悩んでいる方」向けのチェックリストを使用しましょう。
このチェックリストでは、該当する内容にチェックを入れることで、どの類型のパワハラ(例:身体的攻撃・精神的攻撃・人間関係からの切り離しなど)に当たる可能性があるかを自動で診断してくれます。
以下は、実際にチェックリストに登場する設問項目の一例です。
【チェックリストの項目例】
上司から同僚の前で無能扱いする言葉を受けた | |
他の社員との接触や協力依頼を禁じられた | |
先輩・上司に挨拶しても無視される | |
1人だけ別室で仕事をさせられている | |
毎日「ブス」「ハゲ」と呼ばれている |
日々の言動がどのようなハラスメントに該当するか確認することは、適切な対応をとる第一歩です。
ハラスメントと言われた!管理職の方向けのチェックリスト

部下や同僚から「それはハラスメントです」と指摘された経験がある管理職の方は、自身の言動を振り返る機会が必要です。自分では注意や指導のつもりでも、受け手にとってはパワハラとして受け取られている可能性があります。
管理職向けのチェックリストでは、「どのような行為が該当するか」を提示し、無意識のうちにパワハラをしていないかを確認できます。ここでは、チェックリストの設問項目の例を一部紹介します。
【チェックリストの項目例】
終業間際に過大な仕事を毎回押し付けている | |
部下から挨拶されても無視している | |
「帰れ」と言ったことがある | |
部下に「役立たず」「給料泥棒」と言ったことがある | |
職場で部下の性的なことを話題にしてからかった |
管理職の立場は、周囲に対しては適切な距離感と配慮が求められます。チェックリストを使って自身の行動を客観的に確認し、職場の信頼関係の再構築につなげましょう。
社内でハラスメントが発生!人事担当者向けのチェックリスト

人事担当者にとって、社内でハラスメントが起きた際の対応は重要な責務です。しかし、当事者からの申告内容だけで状況を正確に把握するのが難しいケースもあります。
人事担当者向けのチェックリストでは、過去や現在の社内の行為・風土がパワハラの6類型(身体的攻撃・精神的攻撃・人間関係からの切り離し・過大な要求・過小な要求・個の侵害)に該当するかどうかを確認できます。
【チェックリストの項目例】
同僚の前で、社員を無能扱いする言動がある | |
GPS付き携帯で社員の行動を監視しているとの噂がある | |
特定の社員だけ仕事を与えられず孤立している | |
「役立たず」「給料泥棒」といった発言が確認された | |
妊娠・出産に関する配慮の相談に対し、冷たい対応をしている |
社内の声や噂に耳を傾け、潜在的なリスクを可視化するきっかけとして活用しましょう。人事部門が積極的にチェックリストを使うことで、見過ごされがちな問題を早期に把握し、職場環境の健全化につなげられます。
職場でパワハラが見つかったときの対応方法

パワハラチェックリストを通じて問題の可能性が見つかった場合、企業としては適切な手順を踏んで対応することが不可欠です。
まず行うべきは、事実関係の調査です。相談者や関係者へのヒアリング、証拠資料(メール・録音・目撃証言など)の収集を通じて、具体的な言動の内容や背景を確認します。
収集した情報をもとに、「優越的な関係に基づく言動であるか」「業務上必要かつ相当な範囲を超えているか」「就業環境を害するものか」という3要素を満たすかを判断基準に、パワハラ該当性の有無を社内で判定します。
たとえば、「皆の前で無能扱いする」「終業間際に毎回大量の業務を押し付ける」「挨拶しても無視される」「掃除や草むしりなど明らかに不相応な業務を命じる」「私生活の詮索や身体的な暴力(髪を引っぱる・胸ぐらをつかむ)」といった行為は、パワハラに該当する可能性があります。判断結果は、必要に応じて調査報告書にまとめて社内共有しましょう。
被害者への対応としては、精神的ケアや業務上の不利益の回復、配置転換などの措置を講じるとともに、希望があれば加害者からの謝罪や面談の設定も検討します。一方で、加害者には懲戒処分や指導を行う必要がありますが、処分は就業規則や過去の処分歴などを考慮して、慎重に判断しましょう。
同時に、社内研修や制度の見直しなど、再発防止策を全社的に講じ、同様の問題が再び起こらない環境づくりも必要です。パワハラの早期発見と正しい対応は、信頼ある職場づくりの第一歩です。
まとめ
パワハラは、無意識のうちに加害・被害の関係が生まれやすく、放置することで深刻な問題へと発展する可能性があります。
厚生労働省のパワハラチェックリストは、自分自身や職場の状況を冷静に見直すための実用的なツールです。管理職・被害者・人事担当者といった立場ごとのチェック項目を通じて、問題の可視化や早期対応が可能です。
また、問題が判明した場合には、企業として適切な調査・対応・再発防止策を講じましょう。誰もが安心して働ける環境をつくるために、チェックリストを活用しながら、組織全体でハラスメント対策を進めることが大切です。
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