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その言葉はパワハラかも?NGワード一覧・裁判例・注意すべき態度も

この記事は2024.4.15に公開した記事を再編集しています
2026年3月30日更新
言葉によるパワーハラスメント(パワハラ)は、相手の人格や能力を否定する言葉や、仕事や職場からの排除を示唆する言葉、相手を過剰に責め立てるような言葉のことです。
パワハラは受け手に精神的な苦痛を与え、職場の健全な環境を損ないます。会社として、どのような言葉がパワハラに該当するのかを社員全員が理解し、発言に注意を払うように教育しなければなりません。
この記事では、パワハラとなる言葉の一覧について解説するとともに、実際に裁判にてパワハラと認められた判例についても紹介します。
目次
Toggleどのような言葉がパワハラになる?法律が定めるパワハラ認定の3要素

言葉によるパワハラかどうかは、「相手がどう感じたか」だけで決まるものではなく、法律で定められた3つの要素をすべて満たすかで判断されます。
具体的には、「優越的な関係を背景にした言動であること」「業務上必要かつ相当な範囲を超えていること」「その結果、就業環境が害されていること」が基準となります。勤務時間外の懇親の場や出張先であっても、業務との関連性が強ければ「職場」と判断され、パワハラに該当します。
適切な指導はパワハラに当たりませんが、言葉の強さや使い方次第で境界を越える可能性がある点には注意が必要です。ここでは、基準となる3点について詳しく解説します。
※出典:あかるい職場応援団 -職場のハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ)の予防・解決に向けたポータルサイト-「ハラスメントの定義」
優越的な関係を背景としていること
「優越的な関係を背景としている」とは、言動を受ける労働者が、相手に対して抵抗や拒絶をすることが難しい関係性にある状態を指します。典型的なのは上司から部下への言動ですが、それに限られません。業務上不可欠な知識や経験を持つ同僚からの言動や、複数人による集団的な言動も該当する場合があります。
重要なのは肩書きではなく、業務上の力関係です。立場や状況次第で、同僚や部下であっても行為者になり得る点に注意が必要です。
業務上必要かつ相当な範囲を超えていること
業務上必要かつ相当な範囲を超えているかどうかは、社会通念に照らして判断されます。業務と無関係な発言や、目的を大きく逸脱した言動、不適切な手段による指導は、この要件を満たす可能性があります。
判断にあたっては、言動の目的や経緯、頻度、継続性、業種や業務内容、労働者の属性や心身の状況などが総合的に考慮されます。たとえ部下に問題行動があった場合でも、人格を否定する発言などは正当化されず、パワハラに該当し得ます。
就業環境が害されていること
就業環境が害されているとは、言動によって労働者が身体的または精神的な苦痛を受け、業務に支障が生じる状態を指します。判断基準は個人の主観ではなく、「平均的な労働者がどう感じるか」という客観的な視点です。結果として能力発揮に重大な悪影響が出ていれば、要件を満たす可能性があります。
言動の頻度や継続性も考慮されますが、内容が極めて強い場合は、1回の言動でも就業環境を害したと判断される点を覚えておきましょう。
言葉でのパワハラは多くが「精神的な攻撃」にあたる

言葉によるパワハラは、その多くが厚生労働省が定める「パワハラの6類型」の中の「精神的な攻撃」に該当します。
直接的な暴力や身体的な接触を伴わないものの、言葉の力を利用して相手に精神的な苦痛を与える行為のことです。威圧的な言動や過度な批判、無視といった行為も含まれます。
また、過度にプライベートな情報に踏み込んだ発言の場合は、「パワハラの6類型」の中の「個の侵害」に当てはまる可能性があるでしょう。個人のプライバシーを不当に侵害するような言葉は、従業員の自尊心を損なったり、職場の雰囲気を害したり、生産性を低下させたりする可能性があります。
言葉によるパワハラは、一見目立たないことも多く、被害を受けている人が苦しみを表現しにくいことが特徴です。しかしその結果、精神的に病んでしまい、離職してしまうケースもあり、最悪の場合は離職では済まないようなケースも見られます。
言葉のパワハラは、職場の健全な関係性を維持するために適切に対処する必要があり、そのためには組織全体での意識改革と教育が不可欠です。
【言ってはいけない】パワハラとなる言葉の一覧

パワハラになる言葉の分類は、主に以下の通りです。
| ・相手を脅迫する言葉 ・侮辱にあたる言葉 ・相手の名誉を棄損する言葉 ・ひどい暴言 |
具体的にどのような言葉がパワハラになるのかについて、詳しく解説します。
解雇を匂わせる
| ・お前はクビだ ・さっさと辞表を書け ・明日から来なくていい ・お前の代わりはいくらでもいるんだぞ ・ここにお前の居場所はない ・もうここでの仕事は終わりだな ・ほかの職場を探したほうがいい |
解雇を匂わせる発言は、相手に大きな不安とストレスを与えます。急に職を失う恐怖を煽る言葉は、深刻な精神的ストレスを引き起こし、抑うつや不安障害などの健康問題につながる可能性があります。
| 実際の例 |
| 【事案】 ・上司が部下の提案した業務遂行方法を採用せず、事情を聞くこともなく叱責し、始末書を提出させました。始末書には、「今後このようなことがあった場合、どのような処分を受けても異議はない」という内容が含まれていました。 ・また、会議での発言に対しても、「やる気がない」と怒鳴りつけ、出勤停止を命じました。 ・別のケースでは、報告がなされていないことを理由に、「馬鹿野郎」や「給料泥棒」と罵り、始末書の提出を強制しました。 ・個人的な話題においても、上司が部下の配偶者を侮辱する発言をしました。 【結果】 ・被害者は抑うつ状態を発症。 ・外形的には指導の形をとっていますが、実質的には部下の人格を否定し、雇用不安を煽るものであり、社会通念上許容される範囲を超えていると判断されました。 ・結果、これらの行為は不法行為であると認定されました。 |
暴力をほのめかす言葉
| ・次ミスしたら殺すぞ ・死ね ・ぶん殴ってやろうか ・家に火をつけるぞ ・お前を許さない、しばくぞ ・肩パンするぞ ・手を出す前に会社を辞めろ |
暴力をほのめかす言葉は、相手に対して脅迫感や不安、精神的なプレッシャーを与えます。たとえ実際に暴力をふるっていなくても、精神的な攻撃としてパワハラに該当する可能性が高いです。
| 実際の例 |
| 【事案】 ・店長代行であるXが店長の仕事上の不備を指摘し、「処理しておきましたが、どういうことですか?反省してください」と日誌に記載しました。この記載を見た店長は、自身がさらし者にされたと感じ、Xに暴力を振るったことが発端となります。 ・その後のやり取りで、Xが管理部長Aと接触した際、AはXに対して「いいかげんにせいよ、お前。おー、何を考えてるんかこりゃあ。ぶち殺そうかお前。調子に乗るなよ、お前。」といった生命や身体に害を加える意図を含む発言をしました。 ・この発言は、XがPTSDないし神経症であること、その治療を受けている状況をAが理解していたにもかかわらず行われました。 【結果】 ・この一連の事案は、Xに外傷後ストレス障害を引き起こす原因となり、Xは会社および店長に対して、不法行為による損害賠償を求めることになりました。 ・裁判所は、店長による暴力行為とAの発言を共同不法行為として認定し、Xに対する損害賠償の支払いを命じました。 |
※出典:厚生労働省「【第52回】 「他の従業員からの暴行などが不法行為にあたると判断された事案」 ―ファーストリテイリング(ユニクロ店舗)事件」
相手を侮辱する言葉
| ・できそこない ・給料泥棒 ・能無し ・馬鹿 ・お前のせいで周りに迷惑がかかっているんだぞ ・やる気出せよ ・そんなこともできないの? ・新人のほうがもっと仕事できるぞ |
侮辱的な言葉が飛び交う職場は、不健全であり、チームワークや協力関係も損なわれます。また侮辱された人は、不安・ストレス・抑うつなどの精神的な問題を抱えるリスクが高まります。長期間に及ぶほど、より深刻な健康問題につながる可能性が高いです。
| 実際の例 |
| 【事案】 ・相手を侮辱する言葉によるパワハラの事例として、A市役所の健康福祉部のB部長の行動が挙げられます。 ・B部長は、仕事に対する高い水準を部下に求める一方で、その指導方法が問題となりました。B部長の指導は、部下の個性や能力に配慮することなく、人前で大声で叱りつけるなど、感情的かつ高圧的なものでした。 ・朝礼などで「ばかもの」「おまえらは給料が多すぎる」といった侮辱的な言葉を使って部下を叱責することがしばしばあり、これによって部下は萎縮し、やる気をなくすという不満が広がりました。 ・この行動はA市役所内でも周知の事実となっており、自殺者が出ることを危惧する声も上がっていましたが、B部長の仕事上の能力が高く頼りにされていたため、改善されることはありませんでした。 【結果】 ・B部長のこのような行為は、部下に対する適切なフォローがないまま続けられ、職場内でのストレスや心理的な負荷を高める結果となりました。 ・結果として、B部長の行為は、典型的なパワハラに相当するものであると判断され、その程度も高いものと認識されました。 ・判決では、B部長の行為が部下たちに与えた心理的な負担が非常に大きいとされ、精神的苦痛に対する慰謝料の支払いが命じられました。 |
※出典:厚生労働省「【第46回】 「上司の部下に対する指導が典型的なパワハラに相当するものであり、その程度も高いものであったとされた事案」 ― 地公災基金愛知県支部長(A市役所職員・うつ病自殺)事件」
容姿や国籍・出自に関する差別的な言葉
| ・ハゲ、チビ、デブ、ブス ・ジジイ、ババア ・外人 ・(外国人の社員に向けて)日本語が分からないのか ・片親だから愛情が足りてないんだろう ・この〇〇人め ・肌が汚いぞ ・もっとダイエットしたほうがいいんじゃない? |
容姿や国籍、出自に基づく差別は、多様性と包括性を重視する職場文化の構築を妨げる行為です。自分ではどうすることもできない、生まれ持った特徴に対して人を評価し、その人格全体を否定することは、個人の自尊心を深く傷つけ、自己価値感を低下させます。
| 実際の例 |
| 【事案】 ・この事例では、従業員が同僚とのトラブルを理由に早めに出勤し、店長と話し合いを持とうとした際に発生しました。 ・退勤しようとした従業員に対して、店長は激しい口調で「ばばあ」と侮辱し、さらに「お前ふざけんなよ、この野郎、辞めてください、店に来んなよ、二度と来んなよ」と発言しました。 ・この発言により従業員は精神的苦痛を受けました。 【結果】 ・裁判所は、店長のこのような言動が従業員に違法に損害を加えたものと認め、従業員に対して損害賠償として5万円の支払いを命じました。 ・この判決は、職場において上司からの不当な発言が従業員の精神的な健康を害する可能性があり、そのような行為が違法なパワハラとして認識されることを示しています。 |
※出典:厚生労働省「【第61回】 「店長から労働者への発言が違法なものであったとして、会社に損害賠償義務が認められた事案」 ―シー・ヴィー・エス・ベイエリア事件」
自由や権利を奪うような言葉
| ・有給の取得は認めないぞ ・この業界に戻れないようにしてやる ・絶対に会社を辞めさせないぞ ・残業代を請求できるほど働いていないだろう ・もっと働け、仕事終わってないんだから土日も来い ・生理休暇なんてただのサボりでしょ?早く出勤して |
労働者には、有給休暇を取得する権利や適正な労働条件で働く権利が法律で保障されています。そのため、権利を否定する言動は、労働基準法の法的規定に反し、個人の法的権利を侵害する行為と判断されます。
| 実際の例 |
| 【事案】 ・塾講師が上司から有給休暇取得を申請した際に、「今月末にリフレッシュ休暇を取る上に、6月6日にも有給を取るのでは心証が悪い」との理由で有給休暇取得を妨害され、さらに「こんなに休んで仕事が回るなら、会社にとって必要ない人間じゃないのかと上は言うよ」と発言されたことがありました。 ・このような言動により、塾講師は有給休暇の申請を取り下げざるを得なくなりました。 ・この事案では、塾講師が有給休暇を取得する自由や権利が侵害されたとして、上司をはじめ総務部長、会社代表者、会社に対して損害賠償を求める裁判が起こされました。 【結果】 ・裁判所は、上司の有給休暇取得妨害行為などを不法行為と認定し、塾講師への損害賠償を命じました。 ・特に上司の発言が、塾講師の権利行使を妨げるものであるとして違法と判断されました。労働者の自由や権利を侵害するような言葉がパワハラに該当し、それによる精神的苦痛などの損害に対して賠償責任が生じうることを示しています。 ・企業や組織においては、従業員の権利を尊重し、その権利行使を不当に妨害するような発言や行為に対しては厳しく対処する必要があります。 |
財産を侵害するような言葉
| ・ノルマが達成できないなら自分で補填しろ ・給料を返せ ・次に納期を達成できないなら罰金を払え ・ミスして会社に迷惑かけたから、罰金払ってね |
労働者に対して不当な圧力をかけ、精神的ストレスを増大させる言葉です。また、労働者に対してノルマ達成のための自己補填や、納期達成できない場合の罰金支払いを要求することは、労働法に違反する可能性が高いです。
| 実際の例 |
| 【事案】 ・会社役員からの日常的な暴行やパワハラ、退職勧奨などが原因で従業員が自殺したという事案で、遺族が会社と役員に対して損害賠償を求めた裁判がありました。 ・この裁判では、役員の言動が従業員に対する財産侵害を含むパワーハラスメントにあたると認定されました。 ・具体的には、「会社を辞めたければ7,000万円払え。払わないと辞めさせない」という退職強要や、「仕事のミスによる損害を弁償せよ、できなければ家族に払ってもらう」との発言が問題視されました。 【結果】 ・これらの言動により、従業員は激しい精神的圧迫を受け、自殺に至る深刻な心理的負荷を負わされたと裁判所は判断しました。 ・結果として、裁判所は会社と役員に対して、合計5,400万円余りの損害賠償支払いを命じました。 ・この事例は、財産に関する脅迫や不当な要求がパワーハラスメントにあたり、従業員の心理的な健康だけでなく、生命に対しても重大な影響を及ぼすことがあるという点を浮き彫りにしました。 |
※出典:厚生労働省「【第22回】「パワハラ、暴行等と自殺との間に相当因果関係有りとして高額の損害賠償」 ― メイコウアドヴァンス事件」
経歴や雇用形態に対する差別的な言葉
| ・三流大学しか出ていない ・高卒なのに正社員登用されると思うな ・派遣ごときが口を出すんじゃない ・Fランは本当使えないな ・これだからお前は正社員になれないんだよ |
経歴や雇用形態に基づいた差別的な扱いも、精神的な攻撃となり得ます。人はそれぞれ異なる背景を持っており、経歴や雇用形態はその人の価値を決定するものではありません。
| 実際の例 |
| 【事案】 ・大手自動車メーカーで働いていた若手社員が、上司からの経歴や雇用形態に関する差別的な発言により精神的苦痛を受け、結果的に自殺に至った事例があります。 ・この社員は地方大学出身で、東京大学大学院を修了後に同社に入社しました。しかし入社後、上司から「こんな説明ができないなら死んだ方がいい」「学歴ロンダリングだからこんなことも分からないんや」といったパワーハラスメントを受けるようになります。 【結果】 ・社員はパワーハラスメントを受けた後、休職し、その後復職しますが、仕事の重圧で手が震えるようになります。そして、自らの命を絶ちます。この悲劇の後、遺族は会社に対して責任を追及し、最終的に労災認定を受けました。 ・会社はこのようなパワーハラスメントの責任を認め、再発防止に努めることを約束しましたが、その実現には時間がかかるとの見解を示しています。 |
仕事上の失敗を極端に攻撃する言葉
| ・二度と同じ仕事を任せない ・失敗したことをみんなに謝罪しろ ・(ほかの労働者に向けて)こいつは仕事でミスをしたぞ ・客に土下座してこい ・あなたの失敗は、会社全体の足を引っ張っている |
たとえ失敗が事実だったとしても、その伝え方やフィードバックには正しい方法があります。失敗を極端に攻撃することは、相手の尊厳を傷つけるため、パワハラに該当します。
| 実際の例 |
| 【事案】 ・生命保険会社のマネージャーが、上司から仕事上の失敗を極端に攻撃する言葉で叱責された事例があります。 ・このマネージャーは、社内での成績がほかの班に比べて芳しくなかったため、上司から「マネージャーが務まると思っているのか」「マネージャーをいつ降りてもらっても構わない」といった、その地位や能力を否定するような発言を受けました。 【結果】 ・これらの発言は、マネージャーの誇りを傷つけるものであり、管理職としての配慮に欠けるとして違法と判断されました。 ・また、このマネージャーが勤務していた支社長は、ほかの社員の前で不告知教唆の有無について問いただし、その方法にも配慮が欠けていたことから、これも違法とされました。さらに、マネージャーの承諾なく部署の分離を決行したことや、適切な説得をせずに部署分離を実施した点も違法と評価されました。 ・結果として、被告である生命保険会社及びその役員に対して、マネージャーに対する損害賠償責任が認められました。 |
プライベートに立ち入るような言葉
| ・借金があるようなだらしない人間は会社においておけない ・家族サービスのほうが仕事より大事なら仕事を辞めろ ・家族がだらしないから、お前は仕事ができないんじゃないか? ・子どもの授業参観に行ってる暇があったら、もう1件売ってこい |
仕事とプライベートは別物であり、プライベートに深く言及するような内容は、個の侵害としてパワハラに該当する可能性があります。
| 実際の例 |
| 【事案】 ・ある企業の研修終了後の懇親会で、本部長が役員や多数のサービスセンター長が揃った席上で、ある社員のプライベートに立ち入るような不適切な発言をしました。 ・この社員の妻が内緒で電話をしてきたこと、社員が「できが悪い」「何をやらしてもダメ」というように能力を否定する内容を、社員や上司が聞いている前で公表しました。 ・これらの発言により、社員は大きな心理的負荷を受け、「また死にたくなった」と家族に伝えた後、自殺に至りました。 【結果】 ・裁判所は、本部長の発言が社員に過重な心理的負荷を与えたものであり、業務上のストレスとは一線を画すものと判断しました。この発言は社員の精神障害を発症または増悪させる程度に過重な心理的負荷を有するものと解され、業務起因性の判断の際の要素として考慮すべきであるとされました。 ・結果として、この発言が社員の死亡に影響を与えたとして、企業には責任があると認定されました。 |
※出典:厚生労働省「【第45回】 「上司の発言が業務起因性の判断の際の要素として考慮された事案」 ― 国・奈良労基署長(日本ヘルス工業)事件」
明かされたくないプライバシーを暴露する言葉
| ・あの人実はゲイらしいよ ・中絶経験があるんだって ・前科があるくせにまともに扱われると思っているのか ・コロナにかかったのはだらしない生活のせいだ ・昔、水商売やってたらしいよ |
個人の性的指向、健康状態、過去の行動に関する情報などは、その人にとって非常にデリケートで私的なものです。プライベート情報を無断で暴露することは、プライバシーの重大な侵害であり、人権を無視する行為です。また、これらの私的な情報を理由として解雇や降格などをちらつかせることは、特に悪質なパワハラです。
| 実際の例 |
| 【事案】 ・幼稚園の教諭が未入籍の状態で妊娠したことを受けて、上司である園長が「妊娠したのは自己管理ができていないからだ」と伝え、中絶と退職を強要しました。 ・さらに、園長は未入籍の状態で妊娠した事実を教諭の両親、大学の就職部担当者に暴露しました。 ・くわえて、園長は職員に事実を伝えた上で、「園児や父兄から教諭のことについて尋ねられても、妊娠したと答えてはならない」と命令しました。 ・結果として教諭はプレッシャーから流産した上、解雇されることになりました。 【結果】 ・裁判所は妊娠を理由とする中絶の勧告、退職の強要および解雇は男女雇用機会均等法違反であり、不法行為であると判断しました。 ・また、園長は幼稚園の理事として不法行為に及んだため、幼稚園にも責任があるとして不法行為責任を負担するものとしました。 |
言葉によるパワハラと認められた裁判の例

暴力を振るわず、言葉だけであってもパワハラであると裁判で認められるケースは多々あります。実際の裁判例を参考に、言葉によるパワハラの判断基準について詳しく解説します。
サントリーホールディングスのパワハラ事例
社員Aが、直属の上司からのパワーハラスメントによりうつ病を発症し、休職を余儀なくされました。社員Aは、上司Bから「新入社員以下だ。もう任せられない」「何で分からない、お前は馬鹿だ。」といった過度に否定的な発言を受けたことでの、精神的苦痛を裁判にて訴えました。
この行為は、注意や指導を超えた不法行為と認定され、社員Aのうつ病発症、および進行に影響を与えたと判断されました。社員Aは、サントリーホールディングス上司Bと内部通報制度運用担当の室長Cに対して、連帯して約2,400万円の損害賠償を請求。東京地裁は上司Bと、室長C、会社の責任を認め、治療関係費及び休業損害等の賠償を命じました。
A保険会社のパワハラ事例
社員Aに対して、上司Bが送信した業務指導メールが不法行為に該当するかが裁判で争われました。社員Aは課長代理として勤務しており、担当業務の成果が低いことから、上司Bから「意欲がない。やる気がないなら、会社を辞めるべき。当サービスセンターにとっても、会社にとっても損失そのもの。あなたの給料で事務職を何人雇えると思いますか。あなたの仕事なら事務職でも数倍の業績を挙げます」といった趣旨のメールを受け取りました。
メールは社員A以外の従業員に対しても送信されており、社員Aの名誉を傷つけるものであり、パワハラとして違法であると主張し、社員Aが損害賠償を請求しました。第1審では請求が棄却されましたが、控訴審では、メールの表現が社員Aの名誉感情を毀損するものであると認定し、不法行為を構成するとして損害賠償を認容しました。
※出典:厚生労働省「【第56回】 「上司が送ったメールの内容が侮辱的言辞として、損害賠償請求が認められた事案」 ―A保険会社上司(損害賠償)事件」
この事例では、丁寧な言葉遣い、かつ直接話すのではなくメールなどを使って叱責する形でも、内容や送り方によってはパワハラに認定されたという点が重要です。敬語を用いたとしても、相手を侮辱するような伝え方はパワハラとなるため注意しましょう。
日研化学のパワハラ事例
上司Bは「存在が目障りだ、居るだけでみんなが迷惑している。おまえのカミさんも気がしれん、お願いだから消えてくれ」「車のガソリン代がもったいない」「お前は会社を食いものにしている、給料泥棒」「肩にフケがベターと付いている。お前病気と違うか」といった人格を否定し、嫌悪感を示す発言を部下Aに行いました。
裁判では、上司Bの言動は、部下Aの精神障害発症と自殺の直接的な原因となり、業務上の心理的負荷となったと評価しました。結果的に、部下の自殺を業務起因と認定し、労災保険給付の不支給処分を取り消しました。
※出典:厚生労働省「【第54回】 「上司の言動により精神障害を発症し、自殺に及んだと判断された事案」 ―国・静岡労基署長(日研化学)事件」
「お前」など乱暴な言葉を使うとパワハラになる?

「お前」などの乱暴な言葉を使ったからといって、直ちにパワハラに該当するとは限りません。実際の判断では、発言に至った経緯や業務上の必要性、関係性などが総合的に考慮されます。たとえば、「お前、辞めろ」などの強い言葉が問題となった事案でも、状況次第では違法性が否定された裁判例があります。
一方で、乱暴な言葉遣いは相手に威圧感や萎縮を与えやすく、優越的な関係や就業環境の悪化が認められればパワハラと判断されるリスクが高まります。管理職としては、法的に直ちに違法でない場合があっても、不要な誤解やトラブルを避けるため、乱暴な表現を使わないように心がけましょう。
丁寧な言葉を使っていれば大丈夫?
丁寧な言葉遣いであればパワハラにならない、というわけではありません。敬語や一見穏やかに聞こえる表現であっても、内容が人格否定や過度な叱責にあたれば、パワハラと判断される場合があります。
実際に、年下の上司が年上の部下に対し、「ここは学校じゃないので、同じことを言わせないでください」「本俸に見合う仕事をしなさい」と敬語で発言した事案では、神戸地方裁判所がパワハラを認定しました。裁判所は、指導の必要性はあったものの、能力や給与を持ち出して非難する必要はなかったと判断しています。
言葉遣いの丁寧さだけでなく、伝える内容と相手への配慮が大切です。
言葉だけではなく話し方・態度にも注意が必要

パワハラの判断では、発言内容や言葉遣いだけでなく、話し方や態度、発言が行われた状況や経緯も重視されます。たとえ表現自体が強くなくても、感情的な言い方や威圧的な態度、公の場での発言などが重なると、就業環境を害すると判断される可能性があります。
管理職は「何を言ったか」だけでなく、「どのように、どこで、どのような意図で伝えたか」にも目を向ける必要があります。ここでは、特にパワハラと判断されやすい話し方や態度の代表例を解説します。
威圧的な態度を取る
威圧的な態度を伴う指導は、言葉の内容に関わらずパワハラに該当する可能性が高くなります。たとえば、声を荒げて叱責する、相手をにらみつける、話しながら机や物を叩くといった行為は、相手に恐怖心や強い精神的圧迫を与えます。これらは業務上必要な指導の範囲を超えていると評価されやすく、優越的な立場を利用した言動と受け取られがちです。
指導のつもりであっても、部下が萎縮して能力を発揮できなくなれば、就業環境を害していると判断されるおそれがあるので、冷静な態度で伝える姿勢が不可欠です。
人前で吊るし上げる
あえて大勢の前で部下を叱ったり、侮辱したりする行為も、パワハラに該当する可能性が高い行為です。業務上の注意や指導が必要な場面はありますが、人前で強く叱責すると、本人に恐怖や強い羞恥心を与えてしまいます。
特定の1人だけを同僚の前で叱る、大声で注意する、長時間立たせたまま指導するなどの行為は、指導の域を超えた精神的攻撃と評価されやすくなります。結果として職場全体の雰囲気を悪化させる点でも、管理職が避けるべき対応です。
執拗に嫌がらせする
同じミスを何度も蒸し返したり、過去の失敗を繰り返し話題に出したりする行為も、パワハラと判断される可能性があります。さらに、相手がミスをするように仕向ける、些細な失敗を執拗に指摘し続けるといった行為は、悪意のある嫌がらせと受け取られやすくなります。
悪意のある言動が継続すると、部下は強い精神的負担を抱え、業務への意欲や集中力を失いかねません。休職や退職につながるケースもあるため、指導と嫌がらせの線引きを意識することが大切です。
パワハラの未然防止には研修が重要
パワハラを未然に防ぐためには、全社員がハラスメントに関する教育を受けることが大切です。ハラスメント研修を受講することで、パワハラに該当する言動の理解を深め、社内での適切なコミュニケーション方法を学べます。
たとえば、全国に飲食店を展開するS社ではパワハラ問題に対処するため、800人の店長向けに丸1日の「心の研修」を実施しています。ほかにも、ダイバーシティマネジメント、イクボス研修(育児をする部下を持つ上司のための研修)などの研修によってパワハラ対策を徹底し、未然防止に取り組んでいます。
※出典:厚生労働省「職場のパワーハラスメント対策取組好事例集」
ハラスメント研修の定期的な実施はハラスメント発生のリスクを減らし、不適切な言動が起こりにくい、健全な職場環境を築くことにつながるでしょう。
まとめ
パワハラとされる言葉は、単に相手を傷つけるにとどまらず、その人の価値や存在自体を否定することで精神的なダメージを与えます。また、言葉によるパワハラの問題点として、加害者がパワハラであることを認識していないことが挙げられます。
パワハラの効果的な対策として、職場での継続的な教育や意識向上の取り組みが必要です。特に、経営者や人事部門による積極的な職場環境の整備がポイントと言えます。パワハラを未然に防ぐためには、すべての従業員が互いに尊重し合う職場の環境構築が不可欠です。
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