職場のモラハラに効く言葉は?加害者には復唱と意思表示を徹底

モラハラに悩んでいる場合、まずは自分自身を守るための適切な対策を取ることが重要です。「その言動は不適切です」「人事部に相談します」などと、できる限り毅然とした態度で対処するようにしましょう。

一方で、中にはそうした言葉をかけられない方もいるでしょう。その場合は、自分自身の健康と安全を最優先にし、必要なサポートを求めるようにしてください。自分だけで解決しようとせず、周囲の助けを借りることが、より良い解決につながります。

当記事では、職場でのモラハラにはどのような言葉が有効かについて解説します。

どのような行動が職場でのモラハラにあたる?

モラハラ(モラルハラスメント)とは、主に家庭内や職場での精神的虐待を指す言葉です。モラハラは、暴言、侮辱、無視、過度の支配や制御、感情的な無視、嫌がらせなど、相手の自尊心を傷つける行為です。これらの行為は、被害者に深刻な精神的苦痛を引き起こすことがあり、自己価値感の低下や抑うつ状態をもたらすこともあります。

※出典:厚生労働省 こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「モラルハラスメント:用語解説」

職場でのモラハラの例としては、以下の通りです。

・発言や連絡の無視
会議での意見が常に無視される、メールやチャットへの返信が故意に遅くされる、または完全に無視されるなど。

・精神的な攻撃
上司や同僚による公然とした侮辱、業務に関わる能力の否定、不当な非難や批判など。

・プライベートへの過度な干渉
個人的な時間や休暇の計画に対する不当な要求や、プライベートな情報(家族状況、恋愛関係など)への不適切な質問や干渉など。

・業務への妨害
必要な情報の提供を拒否する、業務に関する嘘や誤った情報を故意に流す、不当な業務量の増加や過度な期限の設定など。

モラハラは、被害者に精神的な苦痛を与え、職場の健全な環境を損ないます。企業は、被害者が声を上げやすい環境の構築など、適切な対策を講じることが重要です。

職場でのモラハラにはどのような言葉が有効か?

自分はもちろん、職場でともに働く周りの人がモラハラに悩んでいる場合も含め、モラハラに対してどのような言葉や態度で対応すればよいでしょうか。以下では、4つの例について紹介します。

相手の言葉を復唱

職場でのモラハラに対抗するためのコミュニケーション手法として「相手の言葉を復唱する」ことは、1つの効果的な手段です。

相手の言葉を復唱する効果
・相手の言ったことをそのまま繰り返すことで、発言者は自分の言葉がどのように聞こえるかを客観的に理解する機会を持てます。これにより、発言者が自分の不適切な言動を自覚し、改めるきっかけになるケースがあります。
・また、復唱することで、言葉の意味を確認し、誤解を防ぎやすくなります。誤った解釈や偏見に基づくハラスメントを防ぐ効果があります。
復唱の方法に注意する
・復唱する際には、相手を挑発したり、皮肉を込めたりしないよう注意する必要があります。言葉のトーンや表情が敵対的であると、反対に相手を怒らせる原因となりかねません。
・落ち着いたトーンで、事実を客観的に述べるようにしましょう。
・自分の感じたことや困っている点を穏やかに伝えることも有効です。
相手が怒った場合の対処法
・もし復唱によって相手が怒った場合、まずは相手の怒りの理由を穏やかに聞くことが大切です。これにより、相手の感情や立場を理解し、無用な誤解を避けられます。
・相手が理由を話したくない場合は、さらに感情を高めないよう注意し、他の対処法へと移行することが賢明です。たとえば、第三者を交える、一時的に話を中断して冷静になる時間を取るなどの方法が考えられます。

はっきりと意思表示する言葉

自己主張が苦手な人は、モラハラの標的になりやすいケースがあるため、自分の意思を明確に伝えることが重要です。

自己主張の重要性
・自己主張が苦手な人は、しばしば他人の要求や意見に流されやすく、自分の感じている不快感や反対意見を表明しない傾向があります。そのため、モラハラの加害者から簡単な標的と見なされやすいです。
・自分の意見や感情をはっきりと伝えることによって、自分の境界線を明確に示せます。モラハラ行為を未然に防ぐ、もしくはその影響を最小限に抑える効果があります。
具体的な意思表示の方法
・明確な意思表示は、具体的で直接的な言葉を使って行うことが重要です。たとえば、業務に関して「その仕事は担当範囲外なので、できません」と明確に伝えることで、無理な要求を断れます。
・言葉遣いや態度については、「その言い方は不適切です、やめてください」とはっきりと伝えることが効果的です。自分が不快に思っていることを相手に理解させ、適切な行動変更を促せます。
言葉遣いとトーンの注意点
・意思表示をする際は、攻撃的・反抗的ではなく、冷静かつ尊重のある言葉遣いを心掛けることが大切です。感情的になりすぎると、かえって状況を悪化させる可能性があります。
・自分の感じていることや望んでいることを、客観的で落ち着いたトーンで伝えることによって、相手に自分の立場を理解してもらいやすくなります。

相手を否定せず言いなりにもならない言葉

相手の要求や提案を完全に否定すると、対立を生む可能性があります。一方で、自分の意に沿わない要求を無条件に受け入れるのも避けるべきです。要求を受けた際には、まず相手の意図や要求の背景を理解しようとする姿勢を示し、その上で自分の立場や制約を明確に伝えましょう。

断り方の例:無理な仕事の依頼の場合
・誰かが「今日中にこの(大量の)報告書をまとめてほしい」と依頼してきた場合、最初から断るのではなく「今日中にそれを完了するのは難しいですが、明日の午前中までにはできます」といったように返答することも考えましょう。
・代替案を提示しながら、自分の能力や時間の制約を伝えることが大切です。
言葉遣いとトーンのポイント
・断る際には、相手に敬意を払いつつも自分の立場をしっかりと貫くことが大切です。
・攻撃的・防御的にならず、落ち着いたトーンとポジティブな言葉遣いで対応することが望ましいです。
・自分の感じていることや、なぜその依頼が困難であるかを、客観的かつ具体的に伝えることで、相手に理解されやすくなります。

強気な言葉

モラハラに対しては、毅然とした態度で対応することも時には重要です。その際、「その発言はモラハラです」「この件はしかるべき部署・機関に相談します」などと、明確にモラハラであると指摘し、必要に応じて相談や報告を行うことが効果的です。

相談先としては、まずは企業内の人事部門や専門の相談窓口(ハラスメント対策委員会など)に相談するのがよいでしょう。

モラハラに効く行動は?

最後に、自分や周りの人がモラハラ行為で悩んでいる場合に、どのような行動をとればいいのかについて解説します。1人で抱え込まず、まずは信頼できる人に相談するようにしましょう。

モラハラの証拠を集める

モラハラの証拠を集めることは、被害者が自らの立場を守り、問題の解決に向けた有力な手段となります。

また、モラハラの証拠を集める行為自体が、加害者に対する抑止力になる場合があります。加害者が自らの行動が記録されていることを認識すれば、ハラスメント行為を自重する可能性があるでしょう。

さらに、証拠があることで、被害者はより自信を持って問題を報告し、対処を求められます。

モラハラの証拠として有効なものの例
・メッセージアプリやメールの文章
・録音データ
・動画データ
・医師による診断書
証拠を集める際の注意点
・証拠を集める際は、法的な観点と倫理的な配慮が必要です。特に録音や録画は、プライバシー観点の問題があるため、慎重に行う必要があります。
・証拠集めによって、加害者からの報復を招くリスクもあります。安全を最優先し、必要に応じて専門家や相談窓口に助言を求めることも重要です。

社内の窓口や上司に相談する

モラハラに直面した場合、社内の相談窓口や信頼できる上司に相談することは、問題解決の第一歩です。

多くの企業では、従業員が職場での問題を安心して相談できる場を提供するために、パワハラやモラハラの防止を目的とした相談窓口が設けられています。相談窓口は、社内の人事部門や専門のカウンセラー、ハラスメント対策委員会などが担当することが多く、匿名での相談も可能なケースが多いです。

また、パワハラやモラハラが会社全体の問題となっている場合、社内での相談が難しいケースもあります。このような状況では、社外の機関に相談することが推奨されます。

まとめ

自分の周りにモラハラに悩んでいる人がいる場合、まずは共感とサポートの声かけをしてあげましょう。具体的な解決策を提示するのも良いですが、それ以上に安心して感情を表現できる環境を作ることが大切です。プライバシーを尊重し、その人が自らのペースで対処できるように寄り添ってあげましょう。

また経営者や人事・総務部の方など、企業内のモラハラを防止したいと考える方は、研修の活用も施策の1つとしておすすめです。以下のリンクをご参考にしてください。

「法的事例から学ぶ 管理・監督者向けハラスメント防止研修」はこちら

「最低限の知識と対処法を身につける ハラスメント予防研修」はこちら

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