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部下の成長を止める「NGな叱り方」とは?信頼を壊さずミスを正す管理職のための指導マニュアル

mtgの場を外し、上司が部下を叱っている様子

部下の叱り方に悩む上司や管理職は、近年ますます増えています。かつては当然とされていた指導方法が通用しにくくなり、「注意したつもりがパワハラと受け取られないか」「どう伝えれば部下の成長につながるのか」と戸惑う場面も多いのではないでしょうか。

しかし、叱らないことが必ずしも良い結果を生むわけではありません。適切に叱ることは、部下の成長を支え、組織の成果を高めるために欠かせない行為です。当記事では、「叱る」と「怒る」の違いを整理した上で、避けるべきNGな叱り方や、部下が前向きに変わる具体的な叱り方のポイントを分かりやすく解説します。

なぜ今「部下の叱り方」で悩む上司が増えているのか

部下をどう叱ったら良いのか悩む上司の様子

近年、部下の叱り方に悩む上司は確実に増えています。適切な伝え方をしたつもりでも、受け取り方次第で問題視される可能性があるため、注意や指摘をためらってしまうことも多いでしょう。

ここでは、部下の叱り方で悩んでしまう理由を詳しく解説します。

叱れない上司が増えている理由・背景

「注意したいが、どう伝えればよいか分からない」「指導がパワハラにならないか不安」など、同じような悩みを抱えている方も多いでしょう。近年は、若手世代を中心に丁寧で個別性のある指導が求められるようになり、従来の一律的な叱り方が通用しにくくなっています。

加えて、叱り方次第でパワハラと受け取られるリスクが高まり、関係悪化や離職につながることを恐れる方も少なくありません。その結果、指摘を控えてしまう管理職が増えています。

『あなたの指導は大丈夫?パワハラにならないための5つのチェックポイントと解決策』について詳しくはこちら

部下が叱られないことで起こりうる影響

誤解してはいけないのは、部下を叱らない上司が必ずしも良い上司とは限らない点です。注意や指摘がない状態では、部下は自分の課題や改善点に気づけず、成長の機会を失います。その結果、業務の質が低下し、周囲の負担が増える可能性もあります。

また、期待されていないと感じた部下が、将来性に不安を抱き転職を選ぶケースもあります。部下の成長と組織の安定のためには、正しく叱る姿勢が大切です。

「叱る」と「怒る」はまったく別物

冷静かつ的確に叱る上司と、感情的に怒る上司

部下指導でつまずきやすい原因の1つが、「叱る」と「怒る」を混同してしまうことです。両者は似ているように感じられるかもしれませんが、目的も意味も大きく異なります。

正しく部下を叱るためには、まずこの違いを理解し、感情ではなく意図を持って伝える姿勢が欠かせません。ここでは、「叱る」と「怒る」の本質的な違いを解説します。

叱るとは何か

叱るとは、部下の行動や考え方の問題点を指摘し、改善と成長を促すための理性的な行為です。目的は相手を責めることではなく、組織や本人の成果向上にあります。

この点を体現していた経営者として知られるのが、昭和を代表する経営者の松下幸之助氏です。松下氏は理念や方針に沿っているかを基準に叱り、感情で怒鳴ることはなかったとされています。また、「君ならできると期待していた」と期待を言葉にし、叱った後は必ず活躍の場を与えるなど、丁寧なフォローを行っていました。

叱るとは、相手を信じ、成長を後押しする行為です。

怒るとは何か

怒るとは、自分の不満や不快感を抑えきれずに感情をぶつける行為です。怒りは本能的な反応であり、コントロールが難しく、目的は自分の感情を解消することにあります。そのため、相手との関係は敵対的になりやすく、建設的な改善にはつながりません。

たとえば、部下のミスで自分の評価が下がることへの苛立ちから強く責める場合、それは叱るではなく怒るに該当します。怒られた部下は萎縮し、本音を言えなくなり、最悪の場合は離職を選ぶこともあります。部下育成を目的とするなら、感情に任せて怒るのではなく、冷静に叱る姿勢が不可欠です。

よくあるNGな部下の叱り方・注意の仕方

携帯電話越しに、部下を怒鳴り散らかす上司の様子

部下を思って注意しているつもりでも、伝え方を誤ると逆効果になることがあります。叱る目的は行動の改善と成長支援ですが、やり方次第では信頼関係を損ない、モチベーション低下や離職につながりかねません。

ここでは、管理職が陥りやすいNGな叱り方とともに、なぜその叱り方がダメなのかを解説します。

感情的に怒る

感情的に怒る叱り方は、部下指導で最も避けたい行為です。怒鳴る、大声を出す、強い口調で責め立てるといった行動は、問題点を伝えるどころか、上司の感情をぶつけているだけになってしまいます。

このような叱り方では、部下は内容を冷静に受け止められず、「怖かった」「理不尽だった」という印象だけが残ります。その結果、萎縮して意見を言わなくなり、主体性が失われます。また、感情的な叱責はパワハラと受け取られるリスクも高く、上司自身の評価を下げる要因にもなります。

『【診断問題有】怒りの衝動を鎮める!アンガーマネジメント「6秒ルール」のテクニック』について詳しくはこちら

一方的に決めつける

部下の言い分や事情を聞かずに、一方的に決めつけて叱るのもNGです。「どうせ考えていない」「また同じことをした」といった決めつけは、部下に強い不信感を与えます。現場では、上司が把握していない制約やトラブルが背景にある場合も少なくありません。

決めつけた叱り方を続けると、部下は説明する気力を失い、指示待ち姿勢が強まります。まず事実確認を行い、部下の話を聞いた上で指導する姿勢が、納得感と信頼関係を築く土台となるでしょう。

『その指摘、ロジハラかも?ロジハラの事例や起こりやすい場面を解説』について詳しくはこちら

抽象的な内容で叱る

「もっとしっかり」「ちゃんとやってほしい」といった抽象的な表現で叱ると、部下は何を改善すべきか分かりません。基準が曖昧な指摘は、行動修正につながらず、結果として同じミスを繰り返す原因になります。

また、部下は自分の判断に自信が持てなくなり、上司の指示を待つだけの姿勢になることにも注意が必要です。叱る際は、どの行動が問題だったのか、どう改善すればよいのかを具体的に示しましょう。明確な指摘が、成長につながります。

人格を否定する

叱る目的は行動の改善であり、人格や価値観を否定することではありません。「向いていない」「やる気がない」といった発言は、部下の自己肯定感を大きく損ないます。このような言葉は、改善意欲を奪うだけでなく、ハラスメント問題に発展する可能性もあります。

人格否定を受けた部下は、上司に対する信頼を失い、職場への帰属意識も低下します。叱る際は、あくまで事実と行動に焦点を当てる姿勢を徹底することが大切です。

『言ってはいけない言葉のパワハラ一覧!パワハラの判例についても解説』について詳しくはこちら

他の部下と比較する

他の部下と比較して叱る方法も、効果的とは言えません。「〇〇さんはできているのに」という言い方は、部下に劣等感や恥ずかしさを与え、反発心を生みます。

人にはそれぞれ成長スピードや得意分野があり、単純な比較は不公平と受け取られがちです。この叱り方はモチベーションを下げる原因となり、改善につながりにくくなります。比較するのであれば、過去の本人の状態と現在を比べ、成長点と課題を伝えるほうが建設的です。

大勢の前で叱る

大勢の前で叱る行為は、部下の自尊心を著しく傷つけます。恥をかかされたという感情が強く残り、指摘内容よりも屈辱感が記憶に残ってしまいます。また、その場にいる他の部下も萎縮し、職場全体の心理的安全性が低下します。

結果として、意見や提案が出にくい環境になってしまうため、叱る際は周囲に配慮し、1対1で落ち着いて話せる場を選ぶことが不可欠です。

長時間叱り続ける

長時間にわたって叱り続けると、部下は集中力を失い、要点を理解できなくなります。さらに、上司側も次第に感情が高まり、本来関係のない過去の話まで持ち出してしまうことがあります。この状態では、叱るが怒るに変わってしまい、建設的な指導とは言えません。

叱る際は、伝えるポイントを整理し、短時間で終えることが大切です。要点を絞った指導こそが、行動改善につながります。

部下が前向きに変わる上手な叱り方

上司に叱られて落ち込んでいる部下をフォローする上司

部下を叱る目的は、失敗を責めることではなく、行動を改善し成長につなげることです。そのためには、感情に任せるのではなく、伝え方や順序を意識した叱り方が欠かせません。上手な叱り方は、部下の納得感を高め、信頼関係を維持したまま前向きな変化を促します。

ここでは、管理職が押さえておきたい叱り方の具体的なポイントを順に解説します。

人前を避け適切な場で伝える

部下を叱る際にまず意識したいのが、場所とタイミングです。人前で叱られると、部下は内容よりも「恥をかかされた」という感情が強く残り、指摘を冷静に受け止められなくなります。その結果、反発心や不信感が生まれ、改善どころか関係悪化につながる恐れがあります。

この点でよく知られているのが清水次郎長の姿勢です。清水次郎長は「人前で叱らず、人前で褒める」ことを徹底し、叱るときは必ず個別の場で静かに諭したとされています。相手の面子を守ることで、言葉が素直に心に届きやすくなります。

叱る内容が正しくても、場を誤れば効果は半減します。落ち着いて話せる環境を整えることが、前向きな指導の第一歩です。

なぜ注意されているのかを明確にする

叱られた部下が最も戸惑うのは、「なぜ自分が注意されているのか分からない」状態です。理由が曖昧なままでは、不満や不信感が残り、行動改善にはつながりません。そのため、叱る際は理由を明確に伝えることが不可欠です。

まず事実を示し、次にその行動がどのような問題を引き起こすのかを説明します。たとえば「納期が遅れた」という事実に対して、「顧客の信頼を損なう恐れがあるから問題だ」と理由を伝えます。

理由が明確であれば、部下は感情ではなく論理として理解できます。叱る理由を言語化することは、上司自身が指導の目的を整理する意味でも大切です。

主観ではなく事実を元に話す

上手な叱り方では、主観的な評価をできるだけ排し、事実を基に話しましょう。「やる気がない」「意識が低い」といった主観的な言葉は、部下を防御的にさせ、対話を妨げます。

ここで参考になるのが、トヨタ自動車が重視する「5回のなぜ」という考え方です。問題が起きたときに「なぜ」を繰り返し、表面的な原因ではなく真因を特定する手法です。事実を積み重ねて原因を探ることで、的外れな指摘を避けられます。

事実に基づく指導は、部下にとっても納得しやすく、改善行動に結びつきやすくなります。

指摘内容を1つに絞る

叱る場面でやりがちなのが、関連する問題を一度にすべて指摘してしまうことです。しかし、指摘が多すぎると部下は混乱し、「結局何が一番問題なのか」が分からなくなります。その結果、改善意欲が下がり、指導効果も薄れます。

指摘内容は事前に整理し、最も優先度の高いポイントを1つに絞りましょう。テーマを限定することで、話が具体的になり、短時間でも深い理解が得られます。1つずつ改善を積み重ねるよう促す姿勢が、部下の前向きな変化を着実に引き出します。

具体的な改善行動を示す

叱る場面でありがちなのが、問題点を指摘しただけで終わってしまうことです。しかし、それでは部下は「何が悪かったか」は理解できても、「次にどう行動すればよいか」が分からず、同じ失敗を繰り返す可能性があります。部下を前向きに変えるためには、改善行動を具体的に示すことが欠かせません。

たとえば、営業成績が伸び悩んでいる場合に「もっと努力してほしい」と伝えるだけでは不十分です。「毎週〇件は新規訪問を行う」「商談後は必ず上司に報告し、改善点を確認する」といったように、行動レベルまで落とし込む必要があります。行動が明確であれば、部下は迷わず実行に移せます。

叱る目的は意識改革ではなく行動改善であることを意識し、再現性のある具体策を示しましょう。

押し付けず納得を促す

上司が正論を一方的に押し付ける叱り方は、短期的には従わせることができても、長期的な成長にはつながりにくいものです。人は、自分で考え、納得したことほど主体的に行動できます。そのため、叱る際には説得ではなく納得を促す姿勢が求められます。

具体的には、「どうすれば改善できると思うか」「今回の原因は何だったと思うか」と問いかけ、部下自身に考えさせる時間を設けます。上司は方向性を補足しながら、最終的な行動を一緒に決める役割を担います。対話型の叱り方は、部下に当事者意識を芽生えさせ、行動の継続性を高めます。

押し付けではなく合意形成を意識することが、前向きな変化を生むポイントです。

気持ちや期待を言葉にする

叱る場面では、問題点の指摘に意識が集中しがちですが、上司の気持ちや部下への期待を伝えることも非常に重要です。指摘だけが続くと、部下は「否定された」「期待されていない」と感じ、やる気を失ってしまいます。

たとえば、「今回のミスは残念だったが、それだけ期待していた」「これまでの努力を見ているから、次はできると思っている」といった言葉を添えることで、叱責は成長を願うメッセージとして伝わります。期待を言語化することで、部下は「叱られたが、見放されたわけではない」と理解できます。気持ちや期待を言葉にすることは、信頼関係を維持し、挑戦意欲を支える要素です。

最後にフォローを行う

叱った後にどのような関わり方をするかで、部下の受け止め方は大きく変わります。

歴史上では、徳川家康が「三度叱って一度褒める」姿勢を大切にしたと伝えられています。厳しさだけで終わらせず、改善した点や努力を認めることで人を育てました。また、豊臣秀吉は、人の長所を見つけて言葉にし、行動を引き出すことに長けていた人物です。

現代の職場でも、叱った後に改善が見られた際は必ず声を掛け、努力を評価することが大切です。フォローがあるからこそ、叱りは信頼につながり、部下の前向きな成長を後押しします。

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『RISK』と書かれたジグソーパズルと虫眼鏡

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また、「プロジェクト型仕事の進め方研修」は、変化の速い環境で求められるマネジメント力を強化する内容で、部下との関わり方や意思疎通の質を高めたい管理職にも適しています。知識と実践を結び付けて学ぶことで、叱り方への迷いを自信に変えられるでしょう。

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まとめ

部下の叱り方に悩む背景には、ハラスメントへの不安や世代間ギャップなど、現代特有の課題があります。しかし、叱ることを避け続ければ、部下は成長の機会を失い、組織全体のパフォーマンス低下にもつながりかねません。

大切なのは、感情的に怒るのではなく、事実と目的に基づいて冷静に叱る姿勢です。人前を避ける、理由を明確にする、指摘を絞る、具体的な改善行動を示すといったポイントを押さえることで、叱ることは信頼関係を損なう行為ではなく、成長を後押しする手段になります。

それでも実践に不安を感じる場合は、体系的に学べる研修や通信講座を活用するのも有効です。正しい叱り方を身につけることは、管理職自身の自信につながり、部下と組織の双方にとって良い成果をもたらすでしょう。

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