企業研修

コンプライアンス研修とは?目的やネタの選び方・成功法を解説

コンプライアンス研修とは?

SNSが発達した現代社会において、コンプライアンス研修の重要度も増しています。モラルの欠如した不適切発言や、粉飾決算・データ偽装などの違法行為といったコンプライアンス違反が原因で倒産する企業は増加傾向にあります。コンプライアンスの失墜は、アルバイトや新入社員だけでなく、管理職や幹部の行動によっても多数発生するため、すべての社員に対してコンプライアンス研修は必要です。

この記事ではコンプライアンス研修とは何か、目的やテーマ・ネタの例、ネタの探し方や研修を成功させる方法について解説します。

コンプライアンス研修とは

コンプライアンス研修とは、法令や社会規範を遵守する重要性や、違反することで生じるリスクを社員に周知し、理解を深める取り組みです。コンプライアンスとは、直訳すると「法令遵守」を意味します。企業におけるコンプライアンスは、経営理念や就業規則のほか、法律、社会規範、社会道徳まで広く含む概念です。

コンプライアンス研修は、多くが以下のような目的を持って実施されます。

・各企業が目指すコンプライアンスの意図を明確にする
・企業運営に必要な法令やルール、マナーを共有する

企業コンプライアンスは業種によって重要となる法令や規範が異なります。自社の社員が何を守るべきなのか明確にし、浸透させるのが、コンプライアンス研修を実施する目的です。

コンプライアンス研修を実施すると、次のようなメリットがあります。

・社会通念や経営理念が社員に浸透する
・コンプライアンスを遵守する対象者に自覚が生まれる
・コンプライアンス違反によるリスクが回避できる

コンプライアンス研修の実施によって、社会人としてのマナーから各企業の経営理念、リスク管理まで全社員を対象とした社内共通認識を持てます。その結果、コンプライアンス違反の危険性を減らすことが可能です。

コンプライアンス研修が必要な理由

コンプライアンス研修は、下記のような理由から近年では特に重要とされている社員研修の1つです。

コンプライアンスの範囲が広くなっている
コンプライアンスの範囲は一定ではなく、社会の変化によって範囲が拡大します。コンプライアンスへの認識不足から、自覚のないまま違反するケースも多発しています。
SNSなどにより瞬時に不祥事が拡散される
SNSの普及により、情報伝達のスピードが格段に早くなり、コンプライアンス違反が起こるとあっという間に不祥事が拡散されます。
コンプライアンス違反が原因の倒産が増えている
粉飾や汚職、産地偽造といった業法違反や法令違反、脱税など、コンプライアンス違反による倒産が増加しています。

特に、SNSの発達を原因とするコンプライアンス違反の発覚・拡散は、企業に大きな打撃を与えるため、コンプライアンス研修の重要性が増しています。

SNSはさまざまな情報をリアルタイムで入手できるのがメリットです。しかし、情報伝達の早さから、従業員の問題行動や、ジェンダーギャップを感じさせるコメントなどがSNSによってあっという間に広がり、炎上する事例が多発しています。

ひとたび情報がSNS上に広がると、消去するのは不可能です。企業は、いつ発生するか分からず、対応の遅れが企業経営に大きなダメージとなる可能性のあるコンプライアンス違反に向き合わなければなりません。

コンプライアンス研修の目的

コンプライアンス研修は、形式的に実施するのではあまり意味がありません。社内におけるコンプライアンスへの意識不足を防ぐために、はっきりとした目的を掲げた研修を展開するのが効果的です。

コンプライアンス対策は、大きく分けて3つの目的で実施されます。下記では、コンプライアンス研修の3つの目的を解説します。

法令や社会的なルールを教育する

社員のコンプライアンス違反を防ぐために、まずは法令や社会的なルールを認識してもらうのが大切です。特に新入社員は、社会規範やマナーへの理解が不足しています。コンプライアンス教育により、社会人としてふさわしい行動を意識づけることが可能です。

また、コンプライアンス研修は、企業の一員として適切な情報発信を指導する場でもあります。個人でSNSを利用する場合とは異なるSNS運用が必要なこと、顧客情報や社内機密情報の管理に注意が必要なこと、などを指導する機会として有効です。

コンプライアンス違反のリスクマネジメントをする

コンプライアンス研修は、コンプライアンス違反のリスクマネジメントをする役割があります。コンプライアンス違反が発生すると、社員個人だけの問題では収まりません。所属する企業が社会的責任を負うだけでなく、対応によっては企業イメージに重大な損害を及ぼす可能性もあります。

コンプライアンス研修は、実際にコンプライアンス違反が発生した状況を想定して、実際と同様の対応を演習する貴重な機会です。具体的なシミュレーションによって、コンプライアンスに対する社員への自覚を促します。

企業の価値を向上させる

コンプライアンス研修には、企業の価値を向上させる効果があります。企業に所属するメンバー全員がコンプライアンスに共通の価値観を持てば、安全管理の徹底や不正撲滅への意識が高い環境が生まれます。

コンプライアンスへの意識が低い企業では、正確性や安全性、透明性といった意識が社員やアルバイトに浸透しません。アルバイト社員によるいわゆる「バイトテロ」が原因で店舗が閉店に追い込まれるなど、意識の違いが企業ブランドを失墜させるといった事例が多発しています。

また、企業全体のコンプライアンス意識が欠如した結果、粉飾決算や助成金などの不正受給、談合、商品性能の偽装などが起き、経営陣が逮捕される事例も複数存在します。大手自動車メーカーのリコール隠しや、大手光学機器メーカーの500億円超の粉飾決算などは、有名な事例です。

企業を挙げてコンプライアンス意識を高めれば、築いてきた社会的な信頼を失うことなく、企業価値を上げられます。

コンプライアンス研修のテーマ・ネタの例

コンプライアンスの内容は年々増加しています。研修で取り上げるべきテーマも多岐にわたるのが実情です。ここからは、効果的なコンプライアンス研修を実施するために、どのようなテーマ選びが求められているかを解説します。

自社にとって重要な法令をテーマにする

業種によって必要となる法令は異なります。コンプライアンス研修では、自社にとって特に重要な法令をテーマにすることが大切です。

テーマを選ぶ理由企業運営に必要となる基本的な法令知識を学ぶため
主な研修内容・個人情報保護法
・労働基準法
・知的財産法
・著作権
・下請法

コンプライアンスを意識した体制を作るには、法令への理解が不可欠です。複雑になりがちな法令について、個別対応ではなく体系的に法令を学ぶ機会が必要になります。社員やアルバイトに興味を持ってもらうため、基本的な法令知識を伝える研修のほか、各部署に関連のある法令を学ぶ場を設けるのもおすすめです。

ハラスメント対策をテーマにする

コンプライアンス研修では、ハラスメント対策をテーマに取り上げることも重要です。ハラスメントには、さまざまな種類が存在します。企業に所属するメンバー1人ひとりが認識し、ハラスメントを防ぐと同時に、ハラスメントが企業に与える損害についても学ぶ場を作ります。

テーマを選ぶ理由企業運営にダメージを与えるようなハラスメントについて認識を深めるため
主な研修内容・ハラスメントの種類
・ハラスメントがもたらす影響
・ハラスメント予防
・ハラスメントが発生した場合の対処法
・ハラスメント行動チェック

ハラスメントは、加害者が自覚を持たないまま発生し、問題が深刻になるケースが少なくありません。ハラスメント研修では、参加者がイメージしやすい事例学習をメインとし、日常の行動から意識づけをするようなカリキュラムを設けるのがおすすめです。

ハラスメント予防研修


SNSコンプライアンスや情報セキュリティをテーマにする

コンプライアンス研修では、SNSへのコンプライアンスや情報セキュリティへの認識は欠かせないテーマの1つです。安易なSNS投稿や機密情報の取り扱いは、思わぬリスクに発展する可能性があります。

テーマを選ぶ理由SNSの不適切な投稿や情報漏洩のリスクを理解し、モラルや情報リテラシーを高めて炎上を防止するため
主な研修内容・不適切なSNS投稿や情報漏洩の危険性を知る
・具体的な不適切投稿の事例を検討する
・個人情報や機密情報の種類、保護の重要性を学ぶ
・炎上や情報流出が起きた場合の対応を理解する

企業内の機密情報や、顧客などの個人情報が瞬時に共有できる社内システムを利用している企業は少なくありません。テレワークの普及に伴い、社内セキュリティの保護下から離れて業務を進めることが増えたため、情報漏洩の危険性は増しています。在宅勤務を取り入れている企業では特に、社員1人ひとりが情報管理への関心を高められる個人情報保護研修が意味を持ちます。

また、SNSは今や身近な情報共有の手段です。気軽に投稿できるからこそ、投稿内容には十分にコンプライアンスを意識する必要があります。たとえば、アルバイト社員が業務用冷蔵庫内にふざけて入った光景を撮影し、SNS上に投稿した事例では、店舗が閉店に追い込まれています。また、企業の取締役が女性への差別発言をSNS上で行い、解任されるなど、SNSのコンプライアンス違反はアルバイトや新入社員だけの問題ではありません。若い世代だけでなく、管理職や幹部に対してもSNSコンプライアンス研修は必要です。

情報セキュリティ&メールのマナー研修


自社の規定や社内ルールをテーマにする

自社の規定や社内ルールをテーマにすることも、コンプライアンス研修の主眼です。社内規定や就業規則は、企業内の労働者にとっての指針であり、労使間のトラブルが生じないように定められています。

テーマを選ぶ理由社内ルールを共有し、労使間のトラブルを回避する
主な研修内容・企業理念や就業規則、服務規律、賃金規定などの社内ルールを共有する
・規定が守られなかった場合のリスクを知る
・社員やアルバイトとしての権利を確認する

労働時間や賃金規定、人事、服務規律など、どのような規定があるのかを共有することは、労働者個人の権利と義務を明確にします。その結果、社員としての自覚が生まれ、社内のコンプライアンス強化にもつながります。

コンプライアンス研修のネタ選びの方法

コンプライアンス研修に取り上げるべき研修テーマは幅広く、どのような内容を研修に選ぶべきか迷う状況も多くあります。コンプライアンス研修の題材選びに困ったら、以下のような点を考慮して選択することが大切です。

同業他社の事例から選ぶ

コンプライアンス研修の題材を、同業他社の事例から選ぶのは手軽で確実な方法です。同業他社であれば、同じような問題やリスクを抱えているためです。関心のあるテーマを研修の題材にすると、受講者の学習意欲が高まり、効果的な学びが得られます。

また、特に起こりそうな事例を交えて研修すると、実務に応用しやすいというメリットがあります。社員のコンプライアンス意識を高められるように、身近な事例から学ぶ機会を作るのがおすすめです。

省庁や関係団体から探す

コンプライアンス研修の題材として、省庁や関係団体からテーマを探すのも得策です。省庁や関係団体では、コンプライアンスに関する情報がホームページで公開されています。

まずは、どのようなコンプライアンス違反事例が掲載されているのかを確認してみましょう。自社でも起こり得るような内容を研修に取り入れると、受講者に分かりやすく、関心を持たれるような研修内容を組むことができます。

専門家からアドバイスを受ける

専門家のアドバイスを受けることは、効果的なコンプライアンス研修への近道です。やみくもに研修を実施しても、有効な研修にはつながりません。研修を主催する会社やコンサルタントなどの専門家に相談すると、専門家ならではの意見を交えたアドバイスがもらえます。

専門家を交えると、企業の実情に合ったポイントから研修のテーマを組めるのがメリットです。また、経営者視点では得られない最新の研修内容や、有効な研修方法などの情報を得られる場合もあります。

コンプライアンス研修を成功させるためのおすすめのやり方

コンプライアンス研修を実施する時は、事前準備が必要です。一般的に以下のようなフローで実施します。

1.コンプライアンスに対する意識を調べる
社員がコンプライアンスに対してどの程度の意識を持っているのかを確認します。社員の関心度を理解することで、より有効な研修内容の実施が可能になります。
2.研修に盛り込むべき内容を決める
意識調査をもとに、コンプライアンス違反のリスクがあるテーマを洗い出し、優先的に研修に盛り込みます。同時にコンプライアンスへの関心が高い分野もピックアップしておくと研修に役立ちます。
3.研修のカリキュラムやスケジュール、予算を決定する
研修内容が定まったら、部署、役職、階層に合わせた研修カリキュラムを決定し、研修資料を作成します。年単位のスケジュールを立てたり、関係各所と予算をすり合わせたりすることも重要です。
4.研修を実施する
研修カリキュラムやスケジュールに合わせて、コンプライアンス研修を計画的に実施します。
5.振り返りを行う
研修を終えた後は、アンケートやフィードバックの体制を整えて研修内容を振り返ります。

コンプライアンス研修を成功させるには、形式的な研修を実施するのではなく、組織全体が研修による成果を実際の業務に生かすことが大切です。

受講者が「やらされている」といった受け身の印象を受けると、コンプライアンス研修の効果が得られません。ここからは、研修を成功させるためのおすすめの実施方法を紹介します。

社内規定やルールの整備を事前に行う

コンプライアンス研修を成功させるためには、事前に社内規定やルールを整備することが重要です。従業員が判断に迷わないよう、細かな事項まで明文化するように心がけます。また、形骸化している規定やルールがないかを確認し、内容を明確にします。

社内のコンプライアンスを管理する体制を構築すると、スムーズな運用が可能になります。定期的な研修プランも立てやすくなり、従業員への教育体制をしっかりと確立できるのがメリットです。

対象者別に異なるテーマで研修を行う

コンプライアンス研修は、従業員の部署、階級、役職など対象別に異なるテーマで研修を実施すると、より効果を発揮します。コンプライアンスは対象者によって必要となる内容が異なるためです。

新入社員には、コンプライアンスの基本的な定義や社内ルールを伝え、コンプライアンス対策に広く関心を持ってもらうことが重要です。一方、中堅社員には管理職を見据えたコンプライアンスへの意識づけが必要になります。対象者に合わせて社外の講師や社外研修を活用するのも方法の1つです。

コンプライアンス基礎研修

リスクマネジメント研修

受講者に当事者意識を持たせる

コンプライアンス研修では、受講者に当事者意識を持ってもらうことが重要な目的です。受講者が研修内容に興味を持てないと、実務の場で効果が発揮できず、コンプライアンス違反が発生する危険性が高まります。

研修では、受講者が日々の業務に役立つような身近なテーマを選定するのが必須です。曖昧なテーマでは、受講者の学習意欲は高まりません。また、研修のゴールを明確にする点も大切です。研修後はフィードバックやフォロー体制を作り、コンプライアンス学習を研修時間のみで終わらせない工夫が必要になります。

e-ラーニングも活用する

コンプライアンス研修を成功させるために、気軽にできるe-ラーニングによるオンライン研修を活用するのは効果的な方法です。研修を受ける時間や場所を選ばず、手の空いたタイミングで手軽に受講できるのが受講者にとってのメリットです。また、e-ラーニングは何度も見直せることから、教えられる側は負担なく研修内容を振り返れます。

e-ラーニングによるコンプライアンス研修は、実施する側にもメリットがあります。受講者が学習を進めるごとにレベルを確認でき、受講進度の確認や、受講結果の集計も簡単です。

舞台創造シミュレーション研修

まとめ

社会全体の道徳意識が高まり、SNSなどでコンプライアンス違反が速やかに拡散する現代社会では、企業価値を維持し、高めるためにコンプライアンス研修が欠かせません。

研修の際には事例を挙げて伝えると伝わりやすくなります。同業他社の事例や省庁・関係団体に掲載された事例を探し、資料を作りましょう。外部の専門家からアドバイスを受けたり、講師として招聘したりするのもおすすめです。

コンプライアンス研修を行うときには、受講者に「やらされている」という印象を与えないのが重要です。事前に社内ルールを整備するほか、当事者意識を持たせ、対象者ごとに異なるテーマの研修を行ってください。研修の際にe-ラーニングも併用すれば、教える側・教えられる側双方の負担を減らせます。

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