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どこからがセクハラになる?セクハラ発言一覧と対処法を徹底解説
セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは、性的な言動によって他人を不快にさせる行為です。これには明確な性的な内容を含む発言だけでなく、性的な意味合いを含む可能性のある言動も含まれます。
当記事では、どこからがセクハラと言える発言なのかといった内容や、セクハラとなる発言の一覧を取り上げます。無意識のうちにセクハラ加害者になってしまわないためにも、ビジネスパーソンの基礎知識としてしっかり内容を押さえましょう。
どこからがセクハラと言える発言なのか
セクシュアルハラスメント(セクハラ)は、相手の意に反する性的言動を指し、1989年には新語・流行語大賞に選ばれるほど社会的に認知された問題です。
男性が女性に対して行うセクハラだけでなく、男性に対する女性からのセクハラ、同性間のセクハラも含め、幅広く取り上げられるようになっています。セクハラは相手の尊厳を傷つけ、安全で快適な職場環境を阻害する行為です。
厚生労働省では、セクハラ発言の判断基準について、以下のように示しています。
【セクハラ発言の判断基準】
● 継続性または繰り返しが要件となるものの場合、以下のケースは就業環境が害されていると判断し得る ・明確に抗議しているにもかかわらず放置された状態 ・心身に重大な影響を受けていることが明らかな場合 ● 被害を受けた労働者が女性である場合には「平均的な女性労働者の感じ方」を基準とする ● 被害を受けた労働者が男性である場合には「平均的な男性労働者の感じ方」を基準とする |
セクハラと認定される基準は、性的な言動が相手に不快感を与え、職場での苦痛や働く意欲の低下を引き起こす場合です。
一方で、セクハラを判断することは容易ではありません。昇進や降格などの不利益を条件とした性的要求を含む対価型セクハラは比較的判別可能です。一方で、職場内での発言や身体的接触、掲示物などによる環境型セクハラは、受け取り方に個人差があるため、判断がより難しいと言えます。
セクハラを含むハラスメント問題は、加害者と被害者間での認識のずれが大きく、軽い冗談が相手にとっては大きな苦痛となる場合があります。そのため、個々が普段の言動を振り返り、無意識にセクハラを行っていないか、自覚することが重要です。
セクハラとなる発言の一覧
セクハラを未然に防ぐためには、経営者や人事・労務担当者、管理職の方だけでなく、全従業員がセクハラとみなされるケースについて理解し、会社全体で啓蒙していく必要があります。以下では、セクハラとなる発言について具体例を紹介します。
性的な内容についての質問
発言例:
・子供はまだできないの? ・スリーサイズを教えて? ・フェチは何? ・お前童貞じゃないのか? ・初体験はいつ? |
性的な質問は個人の最もプライベートな情報に踏み込むものであり、プライバシーの重大な侵害を意味します。軽い気持ちや冗談であっても、口に出すのは避けましょう。
外見や身体的特徴についての発言
発言例:
・口臭がきついぞ ・太りすぎだ ・お尻が大きいね ・スタイルがいいね ・目が小さいね ・鼻が低いね ・貧乳だよね ・ムキムキでセクシーだね |
悪口に聞こえる発言だけでなく、たとえ褒め言葉であっても、外見や身体的特徴に関する発言は、特定の性別に対する偏見や差別につながります。たとえば、女性に対して「太ったね」のような発言は、女性は細いほうが良いというような偏見を助長しています。
また、外見や身体的特徴に関する発言は、相手を性的な対象として見ているとみなされる可能性があります。特に、容姿や体型を褒めるような発言は、性的魅力を感じているというメッセージと受け取られる可能性があり、セクハラとみなされるリスクが高くなる点に注意が必要です。
容姿を褒める発言
発言例:
・美人になったね ・いいにおいがするね ・スタイルがいいね ・可愛いね ・イケメンだね ・マッチョだね ・ダイエットした?見違えて見えるね |
容姿を褒めることがセクハラとなるかどうかは、状況や相手との関係性によっても異なります。たとえば、親しい友人同士であれば、当然容姿を褒めることが許される場合もあります。しかし、職場や学校など、フォーマルな場では、たとえ親しい関係であっても、容姿を褒める発言は避けるのが賢明です。相手から好意を期待したり、性的な関係を迫ったりする意図があったりすると誤解される可能性もあるので、避けるべきでしょう。
容姿や服装について過度に指摘する発言
発言例:
・スカートが短すぎる ・最近太ったんじゃない? ・ガリガリすぎるから、もっと食べなさい ・おめかししてるけどデートでもするの? ・今日びしっと決まった服装だね、この後デートでもするの? ・最近垢ぬけたよね、何かあったの? |
容姿や服装は、個人の自由な意思で選択するものです。それを過度に指摘することは、相手のプライバシーを侵害する行為となります。業務上必要な指摘の場合は、感情的に言葉を発するのではなく、会社の指針に沿って言及すべきです。
性別や年齢についての偏見
発言例:
・女性はやっぱり気が利くね ・男ならこれくらいできなくてどうするんだ ・若いんだから酒くらい飲めるでしょ ・若い女は無責任で困る ・もう40すぎたんだから、老害だよね ・これだから男はダメなんだ |
性別や年齢についての偏見に基づいた発言や行動も、相手を不快にさせることがあります。性別や年齢に関係なくすべての人を対等に扱うこと、固定観念にとらわれず、多様な価値観を受け入れることが大切です。
性別や年齢・容姿に関する差別的発言
発言例:
・ジジイ、ババア ・おっさん、おばさん ・デブ、ブス、ハゲ ・ゲイ、おかま、ホモ ・チビ、のっぽ |
性別や年齢・容姿に関する差別的発言も、当然ハラスメントに該当します。会社でさまざまな人たちと仕事をする上で、冗談であったとしてもこのような言葉を発するべきではなく、会社として厳格な対処が必要でしょう。
性的な噂話
発言例:
・〇〇さんは不倫してるんだって ・〇〇は男遊びが激しいらしいよ ・〇〇と〇〇がホテルに行っているところを見かけた ・〇〇のあそこはでかいらしい |
根も葉もない噂話を会社内に広めることも、セクハラに該当します。たとえ事実であっても公の場でそのような話をすることは不適切であり、自分へのリスクも大きいので、避けるべきです。
職場でのわいせつな発言
発言例:
・あのお客さん、スカート短くていいね ・イライラしてるけど生理? ・この写真(卑猥な写真)を見てみてよ ・エロい体型してるよね ・あの女優がかわいいんだよね |
業務中だけでなく、宴会など無礼講の場であっても、わいせつな発言は当然セクハラとなります。
私生活に踏み込む発言
発言例:
・30すぎてまだ結婚しないの? ・彼氏はいる? ・最寄りの駅はどこ? ・週末は何しているの? ・彼女とどんなことして遊んでいるの? ・最近元気ないけど、もしかして別れた? |
誰かと交際しているか、結婚しているか、子どもがいるかなど、私生活に関する情報は、個人のプライバシーに関わる内容です。相手の許可なく、そのような情報を聞き出すことは、プライバシーの侵害となります。
また、職場において、上司が部下の私生活に過度に干渉することは、パワハラにつながる可能性があります。プライベートな時間に連絡を取ったり、プライベートな情報を開示させようとしたりすることは、部下の精神的な負担になる可能性があるので注意してください。
ちゃん付け・くん付け
発言例:
・〇〇ちゃん、〇〇くん ・ねえちゃん、新人くん |
女性に対する「ちゃん付け」は、女性を子ども扱いしたり、軽視したりするニュアンスが含まれます。また、女性は男性よりも弱い存在という考えに基づいているため、性差別とみなされる可能性が高いです。男性に対する「くん付け」も、男性を子ども扱いしたり、未熟な存在とみなしたりするニュアンスが含まれます。
現代社会では、男女平等やジェンダーフリーの意識が高まっています。 そのため、性差別的なニュアンスを含む「ちゃん付け」や「くん付け」は、時代錯誤な表現とみなされるでしょう。もちろん、相手との親密度や状況によっては、「ちゃん付け」や「くん付け」が問題ない場合もあります。 ただし、相手が不快な表情をしたり、嫌な反応を示したりした場合は、すぐに呼び方を変えるようにしましょう。
特にビジネスシーンでは、相手に敬意を込めて、男女関係なく相手の名前は「さん付け」で呼ぶことが推奨されます。
セクハラ加害者にならないための言葉遣いの例
無自覚のうちにセクハラ加害者にならないためにも、言葉遣いのポイントとして以下の点を押さえましょう。
・見た目に関する意見を述べない たとえば、「今日、肌の調子悪い?」「痩せた?かわいく見えるよ」などの発言は、たとえポジティブな意図で行われたとしても、相手によっては外見を評価されることにストレスを感じる場合があります。特に職場などの公的な場では、相手の能力や成果に焦点を当てたコミュニケーションを心がけ、外見に言及することは避けるべきです。 ・プライベートに踏み込まない 相手のプライベートに関する質問やコメントもセクハラとなり得ます。たとえば、「週末は誰と過ごしたの?」や「恋人はいるの?」といった個人的な生活に踏み込んだ質問は、相手によってはプライバシーの侵害と感じられる可能性があります。職場での会話は、仕事の内容や共通の趣味など、相手が快適に感じる範囲での話題にとどめることが重要です。 ・性別を理由にした発言をしない 性別に基づいたステレオタイプや偏見を反映した発言は、セクハラとみなされることがあります。たとえば、「女性は感情的になりがちだから」「男性は仕事が雑だよね」といった性別を一般化したコメントは、職場での性差別につながる可能性があるため避けるべきです。人はそれぞれ個性的であり、性別によって能力や性質が決まるわけではないことを理解し、尊重する態度が大切です。 |
これらのポイントに注意することで、セクハラ加害者になるリスクを減らせます。常に相手の立場に立って考え、尊重と配慮を持って言葉を選ぶことが重要です。
セクハラ被害のかわし方はない|セクハラへの対処法
セクハラ被害のかわし方はなく、かわす必要もありません。むしろ、一般的な職場において被害者がセクハラをかわしてしまうとさらにエスカレートする可能性があるため、以下のような対処をすることが大切です。
1 | 毅然とした態度で拒否する |
---|---|
2 | 信頼できる上司や社内の窓口に相談する |
3 | 外部の機関に相談する |
以下では、それぞれの方法について具体的に解説します。
毅然とした態度で拒否する
セクハラを受けたときは、毅然とした態度で拒否することが重要です。「ハラスメント行為を受けたことを明確に伝える」「ハラスメント行為をやめるように要求する」「今後そのような行為をしないよう警告する」ことを意識しましょう。
具体的な例としては、下記の通りです。
・「これはセクハラです。やめてください。」と、はっきり言う ・「不快です。二度としないでください。」と強い口調で伝える ・「あなたの行為は許せません。会社に報告します。」と警告する |
また、その場の状況や会話を記録しておくことも大切で、後に証拠として利用できる可能性があります。メールやメッセージのやり取りがあれば保存し、目撃者がいればその証言を得ておくことも有効です。
セクハラは決して許される行為ではありません。 毅然とした態度で拒否し、証拠を残して、適切な対応をしましょう。
信頼できる上司や社内の窓口に相談する
セクハラを受けた場合は、1人で悩まずに、周囲に相談しましょう。
会社は、労働者が安全に働ける環境を提供する義務があります。また、相談することで、セクハラを受けた事実を記録でき、後の対応に役立ちます。具体的な日時・場所・内容・加害者の言動などをメモしておくとよいでしょう。
信頼できる上司や人事部、あるいはセクハラ相談窓口など、問題を扱うための機関や人物に相談することで、事態が客観的に評価され、適切な対応が取られる可能性が高まります。
外部の機関に相談する
会社や上司に相談しても問題が解決しない場合、外部の機関に相談することで、会社や加害者に対してより強い対抗手段となります。各都道府県の労働局や都道府県労働委員会、法テラス、弁護士やNPO法人などの専門家は、セクハラ問題に関する豊富な知識と経験を持っており、被害者にとって最適な解決策を提案してくれます。
相談する際には、できるだけ詳細な情報を準備し、発生したセクハラの状況やこれまでの経緯を明確に伝えることが重要です。外部機関に相談することで、問題の公正な評価や、場合によっては法的手段を含む解決策を模索することが可能になります。また、女性の人権ホットラインなど、機関によっては匿名での相談や情報提供も可能な場合もあり、被害者が安全かつ信頼できる環境で相談できるようになっているので安心です。
【事例付き】会社がするべきセクハラへの対策方法
体に触れる・わいせつな発言をするといったセクハラは、本人が気づいていない場合もあり、全社的に対策をする必要があります。本人が自分のセクハラ行為に気づくためには、他者との感じ方の違いを認識するのが重要です。
他者とのハラスメントの「感じ方」の違いを認識するツール「Gapgraph」について詳しくはこちら
以下では、会社が行うべきセクハラへの対策方法について解説します。
ハラスメントへの対策方針を明確にする
会社がセクハラへの対策として取り組むべきことの1つは、ハラスメントへの対策方針を明確にすることです。従業員にセクハラに対する会社の姿勢を明確に示せる、セクハラを受けた従業員が安心して相談できる環境を作る、セクハラ行為を抑制する効果があるといったメリットがあります。
まずは、以下のような点を、対策方針に盛り込みましょう。
・会社のセクハラに対する基本的な考え方 ・セクハラを受けた場合の相談窓口 ・セクハラを行った場合の懲戒措置 ・セクハラ防止のための教育・啓発活動 |
たとえば、東京エコサービス株式会社では、コンプライアンスハンドブックを通じて、セクハラを含むハラスメントの定義と禁止される行為について詳細に説明しています。ハンドブックでは、相手の立場で考えることの重要性を強調し、具体的なパワーハラスメントの例を挙げて、社員が理解しやすいようにしています。
※出典:東京エコサービス株式会社「コンプライアンスハンドブック その1」
このように、ハラスメントへの対策方針を明確にし、具体的な事例を示すことで、社員一人ひとりがハラスメントを行わないという意識を啓蒙できます。職場環境の維持に努めることが、セクハラを未然に防ぐ上で極めて効果的です。
ハラスメント対策窓口を設ける
会社は、セクハラを防止するためにハラスメント対策窓口を設けることが重要です。ハラスメント対策窓口は以下の役割を担います。
・セクハラを受けた従業員からの相談を受け付ける ・相談内容を調査し、事実確認を行う ・必要に応じて、会社として対応を取る ・相談者のプライバシーを保護する |
専門知識を持った担当者による適切なアドバイスや、必要に応じた迅速な対応を行うことで、問題を早期に解決へと導くことが可能です。
たとえば、第一三共グループでは従業員の相談のしやすさを考慮して、社内外に複数の窓口を設置しています。具体的には本社の人事部に「専門担当」を設置し、顧問弁護士と連携した対応を行っています。これにより、当事者(相談者・行為者)にとっても信頼性の高い調査が行え、顧問弁護士との連携によって客観的・公正な判断ができるというメリットがあります。
社員にハラスメント研修を受けさせる
社員に対するハラスメント研修を定期的に実施することで、社員一人ひとりがハラスメントに対する正しい認識を持ち、ハラスメントを予防・対処するスキルを身につけられます。また、企業が積極的にこのような研修を行うことは、セクハラに対する企業の姿勢を社員に示すとともに、健全な職場環境の構築に向けた具体的な行動を示すことにもなります。
たとえばエクスプライス株式会社では、eラーニングと集合型の研修を組み合わせることで、ハラスメントに関する本質的な理解を深め、従業員がルールに縛られることなく、自然体で職場での対応ができるように努めています。ロールプレイングを取り入れた研修は、理論だけでなく実践的な知識の定着を促し、従業員一人ひとりが最大限の能力を発揮できる職場環境を実現することを目標としています。このような取り組みにより、社内では「安心して働けるようになった」という声が増え、正しい知識の浸透が、ハラスメントの予防だけでなく、円滑なコミュニケーションの促進にも寄与していることが分かります。
まとめ
直接的な性的な内容を含む発言(「スリーサイズを教えて?」や「どんな下着を着ているの?」)や、身体的な特徴に関する不適切な発言(「胸が大きいね」「その服、セクシーだね」)は、セクハラ発言に該当します。
セクハラは被害者の感じ方によって定義されるため、意図的でなくてもセクハラとみなされることがあります。したがって、性的な内容を含む発言や、他人の性的自由や尊厳を侵害する可能性のある言動は控え、相手に敬意を払うことが大切です。
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