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【具体例あり】ヒューマンエラーを防ぐための対策を10例紹介!

ヒューマンエラー対策

人間が作業をするときに、つい・うっかり正しい手順を守らなかったり、多忙などの理由からあえて手順を飛ばしたりすると発生するのがヒューマンエラーです。ヒューマンエラーが発生しても、ちょっとしたヒヤリハットで済む場合もあります。しかし、会社に数百億円規模の大損害を発生させる大事故の原因にもなるため、業務フローを作るにあたってはヒューマンエラーが起きづらい仕組みを考えるのが重要です。

この記事では、ヒューマンエラーの種類や起きる理由、重大な事故事例、およびヒューマンエラーを防ぐための対策について解説します。

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ヒューマンエラーとは

ヒューマンエラーとは

ヒューマンエラーとは、ある事柄に対する行動をする中で、確認不足や思い込みによって引き起こされるミスのことを指しています。ヒューマンエラーによる損害の規模は、リカバリが効く程度から、企業の経営に大きなダメージを及ぼすような事故の原因までさまざまです。ミスの発生を未然に防ぐためにもヒューマンエラーの詳細を把握し、対策を講じたり、現状の職場環境の改善に取り組んだりするのが大切です。

ここでは、ヒューマンエラーの種類について解説します。

ヒューマンエラーの種類

ヒューマンエラーには大きく分けて、「ついつい・うっかり」と「あえて」の2種類が存在します。

ついつい・うっかり意図的ではないヒューマンエラーです。業務内容や手順を正しく覚えていない「記憶エラー」と呼ばれるミスのほか、思い込みから誤った判断をする「判断エラー」などが該当します。
あえて決まりごとを守らない行為や、手抜き作業によって発生するヒューマンエラーです。業務に慣れたことを理由に手順を省いたり、確認を怠ったりして発生する意図的なミスが該当します。

※出典:厚生労働省「生産性&効率アップ必勝マニュアル」

2種類のヒューマンエラーの内、どちらが発生しやすいかは職場環境や現場の状況により異なります。それぞれに対する効果的な対策も場面によって異なるため、ヒューマンエラーが発生した際はその状況や原因を適切に把握するのが重要です。

ヒューマンエラーが起きる理由

ヒューマンエラーの発生原因

ヒューマンエラーが起きる理由として、下記のような状況が挙げられます。

・不慣れ
特に新入社員に多く見られるのが、作業に慣れていないことを原因とするミスです。業務知識・経験が不足していると、知らぬ間に確認漏れや手順の抜けが発生してミスにつながる場合があります。本人が理解しているつもりで作業を進めたり、指示漏れからミスにつながったりするケースです。

・確認不足
従業員間のコミュニケーション不足が原因となり、ミスが発生するケースもあります。「ほかの誰かがやっている・知っているだろう・いつも通りだろう」といった思い込みから確認や声かけをしない状況です。複数人が関わる業務では、情報の周知や申し送りをする意識が低下していると、特に発生しやすいヒューマンエラーと言えます。

・注意不足・集中力の低下
疲労の蓄積や睡眠不足、単純作業の繰り返しは、注意不足を招く原因です。無意識に意識レベルが低下し、確認漏れや見落とし、手順不足などが発生します。意識レベルの低下は作業者本人が自覚しにくく、その状態のまま作業を続けてしまう可能性があるため注意が必要です。また、気が散りやすい作業環境を放置した場合も、注意不足によるミスが発生する原因となります。

・多忙すぎる作業環境や強いプレッシャー
すばやく多数の物事をこなさなければならない環境が続くと、生産性や効率性を追い求めすぎた結果としてあえて手順を飛ばしたり、うっかり見落としたりするミスが発生します。また、プレッシャーが強すぎてパニックに陥った結果、通常ならミスしないようなところでミスが起こる場合もあります。特にマルチタスクを求められる場合、個別の作業への注意がおろそかになった結果、ヒューマンエラーが発生しがちです。

一つひとつのヒューマンエラーの原因は小さなものであっても、積み重なることで重大事故の原因になり得ます。ヒューマンエラーが起きたときは、「なぜそのような事故が起きたのか」を、個人の責任のせいにせず突き詰めて考えるのが大切です。

ヒューマンエラーが原因で起きた重大な事故の事例2つ

インシデント事例

ヒューマンエラーはどのような企業でも起こりうる事象です。小さなミスや事故、失敗で終わるケースもありますが、多額の損害を出すなど企業に深刻な状況を招く場合もゼロではありません。

ここでは、実際に発生したヒューマンエラーによる重大な事故の事例を2つ紹介します。

みずほ証券:ジェイコム株誤発注事件

みずほ証券の担当者が、株式数と価格の数値を誤って入力したことにより発生した事件です。本来は「1株を610,000円」で売るつもりが、「610,000株を1円」として登録してしまいました。登録時に警告文は出ていたものの、担当者は「よくあること」と無視し、データ入力ミスに気づかないまま誤発注を完了させています。

誤発注に気付いた後、直ちに取り消し作業を試みたものの、処理中は取り消しできないプログラムになっていました。結果的に取り消しは失敗し株価が急落、みずほ証券は約400億円の損失を招く事態に陥ったと言われています。

頻出する警告を「いつもと同じ」と判断し発生したこの誤発注は、みずほ証券の財務面に大きなダメージを与えています。くわえて、株式市場にも大きな影響を与えたとされる事件です。

JR西日本:のぞみ34号重大インシデント事件

JR西日本が運行する新幹線のぞみで発生したのが、「のぞみ34号重大インシデント事件」です。インシデントとは、何らかのトラブルにより大きな事故が引き起こされる一歩手前の状況を指しています。

2017年に新幹線のぞみが博多から東京に向けて走行している最中に、異音・異臭が確認されました。しかし、直ちに点検されることはなく、しばらく走行したのち名古屋駅で運行停止となっています。名古屋駅で床下点検が行われた結果、台車に亀裂が入っている事態が発覚しました。幸い走行中に台車が破断する状況には至らなかったものの、運行停止の判断がさらに遅れていれば被害者が出ていた可能性のある事件です。

当時の関係者は下記のように認識していたとの話があり、思い込みや伝達ミスがあったことが把握できます。

・ 異音と異臭が関連していると思わなかった
・ ほかの担当者によって確認済みと判断し走行を続けた

ヒューマンエラーは自社だけではなく、顧客も巻き込む可能性もある存在です。事前に工夫や対策を講じ、ヒューマンエラーを発生させない環境を整えましょう。

【具体例あり】ヒューマンエラーを防ぐための対策10選

ヒヤリハット

ヒューマンエラーを完全に防ぐのは困難ですが、事前の対策により重大な事故を未然に防ぐ工夫をするのは可能です。

ここでは、ヒューマンエラーを防ぐのに有効な対策を10種類紹介します。

ヒヤリハットを見逃さない

ヒヤリハットとは、作業中にヒヤリとしたりハッとしたりする危ない状況が起きたものの、大きなミスには至らなかった出来事のことです。

ヒヤリハットを放置した場合、重大な事故につながる問題を見落とす可能性があります。有名な例が、「同じ人間が起こした330件の事故のうち、1件の重大事故に対して、29件の軽い事故と300件のヒヤリハットが起きている」というハインリッヒの法則です。

そのため、ヒヤリハットが起きた際は「ミスに至らなくてよかった」と安心して終わらせず、自身が体験した出来事を作業者間で共有するのが大切です。些細な体験でも報告し共有し合える環境を整えると、同じミスが起きないように都度対策ができます。

※出典:兵庫労働局作成「ヒヤリハット活動でリスクアセスメント」

フールプルーフを導入する

フールプルーフとは、人による誤操作を防ぐ機械や設備、システムの設計を指しています。誤った操作や特定の操作を検知すると、自動で警告したり機能を制限したりするため、ミスをしようとしてもできない、またはミスを最小限にとどめる仕組みづくりが可能です。

たとえば、機械を扱う場面が多い製造業では、誤操作による手の挟み込みや場合によっては切断に至るような危険性が存在しています。大きなケガや事故につながる可能性が考えられる現場では、フールプルーフは特に安全性の向上に貢献する設計です。そのため、フールプルーフは企業の作業環境だけではなく、日常生活に用いる設備などにも採用されています。

指さし確認などで注意喚起をする

指差し確認はアナログで簡単にできるチェック方法ですが、ミス発生防止に役立つ対策の1つです。製造業をはじめとする多くの業界で取り入れられています。

指差し確認で得られる効果は、下記の通りです。

・ より集中して対象物を確認する
・ 焦りによる確認漏れの防止
・ 意識レベルの向上を促す

指差し確認は、単調に行ってもミス発生防止の効果を得られません。対象物をしっかりと見て指差すのにくわえ、名称などを呼称するとより意識を向けられ、ヒューマンエラーの防止ができます。

マニュアルを整備する

定期的に更新されているマニュアルは、思い込みやうっかり、確認漏れなどのあらゆるミスを防ぐのに役立ちます。

マニュアル整備をする際は、下記のポイントを意識しましょう。

・ 業務の目標やゴールを明確に記載する
・ 古い手順と新しい手順の違いを記載する
・ 手順は書き連ねず1つの工程ごとに区切るなど、視認性を高める
・ 具体例を記載し、確認の重要性などを記載する

マニュアルは、特に複雑な作業をする際に役立つ存在です。イラストや図、写真を挿入するほか、可能であれば動画なども活用すると、作業に不慣れな人でも理解しやすくなります。

より簡潔な業務フローに見直す

複雑な業務フローは分かりづらく、作業に慣れるまでに時間がかかります。ミスを招く原因になるほか生産性の低下にもつながるため、複雑な業務フローは簡潔になるように内容を見直しましょう。

たとえば、誰が・いつ・どのタイミングで何を実行するのか不明瞭な記載や、用語が統一されていない内容は、そもそも理解するのに時間を要します。間違って理解してしまい、勘違いによるミスを誘発する可能性も考えられる状況です。そのため、担当者以外の誰が見てもスムーズに作業の流れが掴めるように、業務フローはシンプルに仕上げましょう。

業務を自動化する

複雑な作業がなくパターン化しやすい業務は、自動化すると人による手作業を減らしミスの発生防止を図れます。

自動化できるとされる主な業務は、下記の通りです。

経理仕訳や伝票入力・入出金管理
人事・総務勤務時間管理・報告書作成
倉庫検品・発注・在庫管理
営業営業メール送信・見積書作成

業務を自動化すると、誤った設定をしない限り入力ミスや漏れを防げます。品質向上につながるだけではなく複数人による確認も不要となり、業務効率の向上にも期待できます。

チェックリストを作る

チェックリストを活用すると作業の抜けがないか、また正しく作業が実行されているか「見える化」ができます。記憶に頼って作業を完了させるよりも、作業一つひとつを明確に捉えてチェックできるためミスの発生防止に効果的です。複数人が関わる作業でも、人によって認識違いが起きたり品質が変わったりする状況を防げます。

チェックリストは、可能であれば電子化するのがおすすめです。紙に書き出す手間を省いてデータ管理できるほか、メールなどの活用により複数の作業者への共有が楽になります。

ただし、ヒューマンエラーが発生したからと言ってチェック回数やチェック項目を増やすと、一つひとつの項目をしっかりとチェックできなくなり、効果が薄れます。不要なチェック項目はできるだけ減らし、最低限見るべきところだけを複数の異なる視点から確認するリストにするのが大切です。

発生したヒューマンエラーについて共有する

同じミスを繰り返さないためにも、発生したヒューマンエラーは作業者間で共有するのが大切です。共有によって業務フローに見直せる点はないか、ミスが起きやすい手順はないかなどの、作業の改善点を見つけるのに役立ちます。ほかの作業で同じようなミスが起こる可能性を考慮するのにも役立つため、ヒューマンエラーを欠かさず共有できる環境づくりを意識しましょう。

発生したヒューマンエラーは、過去の失敗事例として記録するのがおすすめです。対策や改善点も併せて記録すると、今後の経営に生かせるヒントになる可能性があります。

危険予知訓練を行う

危険予知訓練とは、作業内に潜むミスを誘発する事柄や、事故を引き起こす可能性のある危険な要因を発見・解決する力を高める訓練です。5~6人を1つのチームとして編成し、実際の作業や話し合いによる訓練を実施します。

訓練では、イラストや動画なども活用されるのが特徴です。チームで同じ状況を把握し、どのような危険点があるか発見・確認と絞り込みを行います。続いて、危険点の解決に向けた意見を出し合い、対策を実践に移せるように目標設定することで、ヒューマンエラーへの認識を高めます。

※出典:厚生労働省「危険予知訓練(KYT)」

ヒューマンエラー研修・教育を行う

ヒューマンエラー研修を実施すれば、人為的ミスが発生する原因の理解や予防、対策を身につけられます。ヒューマンエラーが発生するメカニズムを我がこととして認識・理解することで、致命的なミスを避けるための環境づくりに役立つでしょう。

研修・教育は、社内でマニュアルやプログラムを作成し実施する方法と、外部講師に依頼する方法が存在します。ヒューマンエラーに対する全体的な知識の学習や、より特化した教育機会を得たい場合には外部講師への依頼がおすすめです。

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ヒューマンエラーが起きづらい職場環境の作り方

職場環境

ヒューマンエラーを防ぐには、職場環境の改善も重要です。主に下記に挙げる2点に着目し、自社の職場環境を見直しましょう。

・心理的安全性の確保
心理的安全性とは、組織の中で周囲の影響を受けず、安心して自分の意見を発言できる状態のことです。自分の気持ちや物事への考え方が少数派の意見であったとしても、拒絶や罰せられることがないと確信して発言できるため、本音での話し合いがしやすくなります。反対に心理的安全性がない職場では、自分の発言や行動による失敗や否定される状況を恐れるあまりミスが誘発される可能性が高く、注意が必要です。

・長時間労働の防止
長時間労働によって疲労が蓄積すると、それ以上の負担が長続きしないように人間の脳は小休止を取ろうとします。自然と労力を抑えて行動するように力が制限されるため注意力が落ち、見落としや見逃しが発生しやすくなります。

心理的安全性があり長時間労働がない職場は、心身ともに負担が少ないと言える環境です。ミスが少ない職場を目指すのであれば心理的安全性が保たれており、かつ長時間労働がない環境を整えられるよう意識しましょう。

「心理的安全性の高い職場を作る5つのポイント|ぬるま湯組織との違い」について詳しくはこちら

企業によるヒューマンエラー対策の事例

ヒューマンエラー対策事例

適切なヒューマンエラー対策を実行できれば、ミスを誘発しにくい環境を整えるのに役立ちます。どのような対策が自社に効果的か判断に迷う場合は、他社の事例を参考にするのがおすすめです。

ここでは、ヒューマンエラーを効果的に防いでいる3つの企業の事例を紹介します。

トヨタ自動車

トヨタ自動車は、異常が生じたら機械が自動で停止したり、ランプで知らせたりする機能を活用して「ポカヨケ」と呼ばれるヒューマンエラー対策を行っています。部品の締め忘れなどのチェックも、機械に任せて人の手作業を減らすことで、不良品の発生防止を図っています。こうしたヒューマンエラーを抑止する方法は、「ニンベンのついた『自働化』」と呼ばれており、人が機械の見張りをする必要をなくす目的でグループ創始者の豊田佐吉が考案したものです。

また、トヨタ自動車には失敗を財産として扱い、失敗を認めやすい環境にするルール「失敗は見える所に置け」があります。ミスが発生しても自分だけで解決しようとせず、言い出しやすくなる環境が整うため、周囲の助けを得やすくなります。

一の湯

老舗旅館の一の湯は、IoTシステムの導入により、特にヒューマンエラーが多かった温泉施設の制御設備の操作ミスへの対策を行い、顧客サービスの品質向上を図っています。

導入しているのは、従業員によるバルブ開閉の操作記録が残っていないと、自動的に担当者に通知が届くシステムです。システムのチェックと通知によって操作漏れが把握できるため、水道費・光熱費の無駄や、お客様への温泉提供の遅れを未然に防げるようになりました。

富士フイルムテクノプロダクツ

富士フイルムテクノプロダクツは、医療機器の製造を担っている企業です。1つのミスが機器の不良を引き起こし、誤診につながる可能性も考えられるため正確な製造が欠かせません。

厳しい規格を設けてはいるものの、より正確な機器の製造を目指すため、トラブル発生時には自動的に作業が停止するシステムを活用しています。たとえば、ネジを締める順番が間違っていれば速やかにミスが検知される仕組みです。ミスが発生したまま作業が進むのを防げるため、そもそも「間違えられない」環境が作られています。

まとめ

ちょっとしたヒューマンエラーでも、放置されているうちに重大な事故に発展する可能性もあります。何かしらのヒューマンエラーが発生した場合は共有し、フールプルーフの導入や指差し確認、業務フローの簡素化・自動化を取り入れる形でマニュアルを更新しましょう。また、チェックリストを導入するのも有効です。ただし、確認に手間がかかりすぎる非効率的なチェックリストはかえってチェックを飛ばすヒューマンエラーのもとになるため、簡素化を心がけてください。

対策方法を浸透させるためにも、危険予知訓練やヒューマンエラー研修・教育を導入し、それぞれの従業員にヒューマンエラーを減らす意識を持たせましょう。

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