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離職防止ができる対策事例10選!若手社員の離職防止アイデアを解説

この記事は2024.5.15に公開した記事を再編集しています
2025年10月8日更新
少子高齢化の影響で労働人口が減少している近年、あらゆる業界が人手不足や採用難に悩まされています。また、長年働いた優秀な人材がよりよい給与・待遇を目的に転職するケースも多いでしょう。
企業にとって、離職率の改善は喫緊の課題です。できる限り多くの社員を確保するためには、離職率の平均や代表的な離職理由、さらに離職防止に向けた取り組みについて理解しておく必要があります。
当記事では、平均的な離職率・離職防止対策を怠った場合のリスク・企業が離職防止のためにできる取り組みを詳しく紹介します。
平均的な離職率とは

厚生労働省の調査によると、2023年の離職率(男女計)は15.4%で、前年は15.0%のため上昇傾向にあります。女性は妊娠・出産・育児といったライフステージの変化があるため、男性よりも離職率が高くなりやすいです。
なお、上記の離職率はパートタイマーを含むすべての労働者を対象としたデータです。パートタイマーを除外した一般労働者の平均的な離職率は12.1%(男女計)で、前年は11.9%のためこちらも上昇傾向にあります。
Z世代の若手・新卒社員の離職率
新卒入社した社員やZ世代の若手社員は、その他年代の社員と比較して離職率が高いことも特徴です。
【2021年卒・新規学卒就職者の事業所規模別就職後3年以内離職率】
※()内は前年比増減
事業所規模 | 高校(%) | 大学(%) |
5人未満 | 62.5%(+1.8) | 59.1%(+5.0) |
5~29人 | 54.4%(+3.1) | 52.7%(+3.1) |
30~99人 | 45.3%(+1.7) | 42.4%(+1.8) |
100~499人 | 37.1%(+0.4) | 35.2%(+2.3) |
500~999人 | 31.5%(▲0.3) | 32.9%(+2.2) |
1,000人以上 | 27.3%(+0.7) | 28.2%(+2.1) |
※出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します」
Z世代にあたる2021年卒の新卒社員の離職率は、事業所規模が小さいほど高くなる傾向が見られます。いずれの規模においても前年比で離職率は上昇しており、Z世代の職場定着の難しさが浮き彫りになっています。
離職率は、「期首から期末までの1年間」や「入社後1〜3年間」など一定期間における離職者数の割合を示す指標です。新卒者の採用人数が比較的少ない企業の場合、たった数名が退職するだけでも離職率は大きく跳ね上がってしまいます。
人材定着率にも悪い影響を与えてしまうため、大手企業や中堅企業はもちろん、企業規模が小規模であるほど若手社員の退職防止に取り組む必要があると言えるでしょう。
離職が発生する原因

離職への対策を行う場合には、なぜ離職が発生するのか原因を明確にする必要があります。下表では、2023年度における代表的な退職の理由をまとめました。
【代表的な退職の理由(2023年)】
退職理由 | 男性の割合(%) | 女性の割合(%) |
仕事の内容に興味を持てなかった | 7.4% | 5.0% |
能力・個性・資格を生かせなかった | 5.1% | 5.4% |
職場の人間関係が好ましくなかった | 9.1% | 13.0% |
会社の将来が不安だった | 5.2% | 4.6% |
給料など収入が少なかった | 8.2% | 7.1% |
労働条件が悪かった | 8.1% | 11.1% |
出産・育児 | 0.3 | 1.6 |
介護・看護 | 0.5% | 1.2% |
その他の個人的理由 | 17.3% | 25.1% |
特に注目すべきは「職場の人間関係」による離職で、男性の9.1%、女性の13.0%が該当しており、最も高い割合となっています。加えて「労働条件の悪さ」や「収入の低さ」も共通して上位に挙がっており、待遇面での不満が退職を後押ししている状況がうかがえます。
また、女性においては「出産・育児」や「介護・看護」といったライフステージに関連する理由も一定数を占めており、柔軟な働き方へのニーズの高まりが示唆されます。企業側には、これらの離職要因に対する理解と改善努力が求められています。
Z世代の若手社員が退職する原因

Z世代にあたる若手社員は、仕事や職場に対する価値観が多様化しており、離職理由も従来とは異なる傾向を示しています。厚生労働省の調査によると、年齢や性別によっても理由に差が見られます。
【代表的な若手社員の退職の理由(2023年)】
退職理由 | 20~24歳・男性の割合(%) | 25~29歳・男性の割合(%) | 20~24歳・女性の割合(%) | 25~29歳・女性の割合(%) |
仕事の内容に興味を持てなかった | 5.8% | 14.1% | 3.9% | 9.0% |
能力・個性・資格を生かせなかった | 7.1% | 8.5% | 3.0% | 6.1% |
職場の人間関係が好ましくなかった | 7.5% | 6.4% | 13.3% | 14.8% |
会社の将来が不安だった | 4.9% | 7.3% | 8.7% | 3.7% |
給料など収入が少なかった | 10.5% | 11.7% | 9.1% | 7.2% |
労働条件が悪かった | 11.4% | 10.6% | 15.6% | 18.4% |
出産・育児 | 0.1% | 0.8% | 0.3% | 1.4% |
介護・看護 | 0.2% | 0.1% | 1.4% | 0.2% |
その他の個人的理由 | 22.9% | 19.7% | 25.1% | 17.7% |
若手社員の離職理由として「労働条件の悪さ」や「その他の個人的理由」が全体的に高い割合を占めていることが分かります。特に女性では「職場の人間関係」や「労働条件」に対する不満が顕著であり、20~24歳女性の15.6%、25~29歳女性の18.4%が労働条件を理由に退職しています。
一方、男性では年齢が上がるにつれて「仕事の内容に興味が持てなかった」という理由の割合が増加しており、仕事のやりがいやキャリアへの意識の変化が影響していると考えられます。このように、Z世代の離職には性別や年齢に応じた多様な背景があることがうかがえます。
離職する可能性が高い社員に見られる兆候

離職する可能性が高い社員には、行動や態度に共通した兆候が表れることがあります。日頃の様子を注意深く観察することで、早めのフォローや適切な対応が可能になります。以下に、特に注意すべき行動の例を紹介します。
仕事へのモチベーションが下がる
業務に対するモチベーションの低下は、離職を考えている社員に顕著に表れる兆候の1つです。これまで積極的に取り組んでいた仕事への関心が薄れ、業務の進捗が悪化するケースが多く見られます。具体的には、些細なミスが増える、報連相が減る、新しいプロジェクトに関わろうとしないといった変化が挙げられます。
また、会議での発言が減る、業務に対してどこか他人事のような姿勢を見せるなど、以前とは明らかに異なる態度が見えることも少なくありません。こうした変化の背景には、将来的な転職を見据えて今の職場への興味を失っている可能性があります。単なる一時的なスランプと見極めるのが難しい場合もありますが、声かけや面談を通して、仕事に対する不安や悩みに丁寧に向き合うことが大切です。社員のやる気の変化を早期に察知し、適切にフォローすることで、離職のリスクを下げられます。
コミュニケーションを取らなくなる
離職を考える社員には、周囲とのコミュニケーションが減少する傾向が見られます。業務中の発言が少なくなり、雑談や挨拶を避けるようになる場合は、職場への関心が薄れているサインだと考えられます。
また、愚痴や不満が増えることも特徴です。転職を意識し始めると、現職への不満が表に出やすくなり、日常的な会話がネガティブになる傾向にあります。加えて、飲み会や社内イベントなど業務外の付き合いを避けるようになるのも、離職準備の一環として見られる行動です。こうした対人関係の変化は、離職の前兆として現れやすいため、日々のコミュニケーションに目を配りましょう。
休みや早退が増える
離職を考える社員には、休暇取得や早退が目立って増えるといった行動変化が見られることがあります。特にこれまで計画的だった有給申請が直前になったり、突発的な休みが多くなったりする場合は注意が必要です。
急な早退や欠勤が続く背景には、転職活動や仕事へのモチベーション低下があるケースも考えられます。また、残業を避けて定時で帰るなど、職場への関わりを最小限にしようとする動きも兆候の1つです。こうした変化が見られた場合は、体調面の不安や悩みの有無を確認する場を設け、状況に応じて適切なサポートを検討する必要があります。
離職防止をしないと会社に起こること

適切な離職防止策を講じない限り、離職率は改善しないと言っても過言ではありません。それだけでなく、さまざまな不利益を被る可能性もあるでしょう。
ここからは、離職防止をしなかった会社に起こり得る3つの不利益について、それぞれ詳しく説明します。離職防止の重要性を理解するためにも、ぜひ参考にしてください。
1人あたり最低でも約50万円の損害が生まれる
株式会社マイナビが行った調査によると、2024年度の従業員1人あたり採用コストは「約56.8万円」でした。なお、これは1社ごとに採用費を入社予定人数で割った数値の平均値であり、具体的な採用コストは企業によっても大きく異なります。
※出典:マイナビキャリアリサーチラボ「2024年卒 企業新卒内定状況調査」
そして、産労総合研究所の調査では、2024年度の従業員1人あたり研修費用が「34,606円」と示されています。
※出典:産労総合研究所「2024年度 教育研修費用の実態調査」
採用にかける費用は単なるコストではありません。入社した社員がいずれ成長することでリターンが期待できるという、効率のよい「投資」とも言えます。
しかし、入社したての社員が1年も経たず即座に退職した場合、当然ながらリターンを得られないため、採用コストと研修費用はいずれも無駄なコストと化してしまいます。さらに、その社員が生み出す予定だった利益や教育を担当する社員の人件費も考慮すれば、損害はより大きくなるでしょう。ケースによっては、100万円以上の損害にもなり得ます。
既存社員の負担増加
退職者が出た場合、退職者が担当していた業務は周囲の既存社員が肩代わりしなければならず、実質的な負担が増加します。
負担の増加によってまず考えられる問題が、モチベーションやパフォーマンスの低下です。キャパオーバーによってミスも増え、そのミスが原因で評価が下がれば、向上心はさらに失われるでしょう。
加えて、「入社してきた社員がすぐに辞めていく」という環境は、既存社員にとっての企業イメージにも悪影響を及ぼします。結果として、これまで長く勤めていた優秀な人材の退職にも連鎖してしまう可能性があることに注意が必要です。
企業イメージの悪化
離職率が高い企業は、既存社員から「社員が辞めていくのに、何の対策もされない」「社員を大切にしていないのではないか」と不信感を抱かれます。また、取引先や顧客からも「労働条件が悪く、退職者が続出している」「ガバナンスが行き届いていない」といったネガティブイメージを抱かれる可能性があります。
離職者が多いことは、求人情報が繰り返し掲載されたり口コミサイトなどに書かれたりすると、自然に周囲に伝わってしまうため隠せません。離職率が高いまま放置すると採用活動が困難になり、取引にも悪影響を与えます。
【成功事例あり】企業が離職防止のためにできる対策

離職防止をおろそかにした企業は、大きな損失が生じます。人材流出の防止・優秀な人材の確保に向けては、企業がしっかりとコストをかけて自社を改革していくことが大切です。
離職防止のために企業ができる取り組みとしては、下記が挙げられます。
● 労働時間の管理と削減 ● 多様なワークスタイルの受け入れ ● コミュニケーションの改善 ● 透明性のある評価制度の導入 ● 人事部門によるフォローアップ ● ハラスメント対策の導入 ● 新入社員研修の活用 ● 長期的なキャリアアップ・スキルアップの支援 ● 上司や中堅層のマネジメントスキル育成 |
ここからは、それぞれの取り組みを企業事例とともに詳しく解説します。
労働時間の管理と削減
労働条件の悪さは、年齢・性別問わず多くの社員が退職を決意する要因となります。特に、長時間労働やサービス残業、休日出勤が常態化している環境は離職を引き起こしやすいことが特徴です。
また、近年では労働基準法の改正によって、従業員の労働時間の管理や有給休暇の確実な取得も義務付けられるようになりました。したがって、離職防止はもちろん、法令遵守の観点からも企業は社員の労働時間を適正に把握・管理し、必要に応じて削減する必要があります。
労働時間の管理と削減には、労働時間を見える化させられる勤怠管理システムの導入や、業務効率化が期待できる基幹システムの導入などが有効です。
例えば大手不動産会社のレオパレス21は、モチベーションや生産性を維持できる労働環境を整備すべく、社員研修の充実と人事評価制度の見直しを行いました。特に人事評価制度を見直すにあたっては「労働時間イコール評価ではない」ことを繰り返し発信しています。
結果として月あたりの残業時間は6時間減少し、新入社員の離職率を下げることに成功しています。
多様なワークスタイルの受け入れ
働き方改革に伴って、ワークライフバランスを充実させられる多様なワークスタイルが注目されつつあります。
労働者のワークライフバランスを大きく左右する要素は、「働く場所」と「働く時間」の2つです。近年では、従来の勤務形態から脱却し、社員のライフスタイルに合わせて在宅勤務や時短労働・フレックスタイム制といった幅広い働き方を取り入れるケースも多くあります。
自分に合ったワークスタイルを社員一人ひとりに選択してもらうことは、「自分らしい働き方と生き方を求める現代人にとっての働きやすい環境」を整備することにもつながります。社員の企業に対する愛着心や帰属意識も高まるため、離職防止には非常に効果的です。
サイボウズ株式会社では、多様なワークスタイルを受け入れるべく「働き方宣言制度」を導入しました。「100人の社員がいれば100通りの働き方がある」という考えにもとづき社員一人ひとりが望む働き方の実現を進めた結果、離職率が下がっただけでなく、採用・教育コストも削減できました。
コミュニケーションの改善
離職防止に向けた取り組みとしては、コミュニケーションの改善も非常に重要です。
日頃から社員同士や上司・社員間でのコミュニケーションが活発となっている職場であれば、社員は周囲に仕事内容や人間関係に何らかの不満・悩みを相談しやすく、スムーズな解決に導けます。気を遣わずオープンに困りごとを話せる環境を構築することによって、離職防止はもちろん、企業への愛着心や従業員エンゲージメントの向上にもつながるでしょう。
株式会社ビースタイルでは、社内コミュニケーションの改善を図るべく、上司と部下による1対1の定期的な面談を指す「1on1ミーティング」や、社員同士が感謝を伝え合う「バリューズアワード」を開催しました。社員たちの帰属意識が高まり、離職率を低下させることに成功しています。
透明性のある評価制度の導入
「自分の成果が正当に評価されている」という実感がなければ、職場への信頼は生まれません。
すでに評価制度を導入している企業は多く存在するでしょう。しかし、そのほとんどが透明性に欠けており、「上司の好き嫌いや感情が影響しているのでは」といった不平不満を抱えられやすくなっています。不信感が高まるほど離職も起こりやすくなるため、透明性の高い人事評価システムの導入が不可欠です。
サイボウズ株式会社では、「個々の能力を純粋に評価すべき」という考えにもとづき、従来の相対評価から透明性の高い絶対評価への切り替えを行いました。絶対評価への切り替えにあたって評価の目的が見直され、4段階評価の等級制度も廃止されています。
「透明性の高い評価制度の導入」と「給与の納得性を追求した評価軸の作成」によって、社員たちの評価・給与に関する不満が解消され、結果として離職率を低めることに成功しました。
人事部門によるフォローアップ
新入社員への教育は、その新入社員が配属する部門の教育担当者によって行われます。教育担当者として任命されるのは一定のスキルや経験のある社員となるため、OJTなどで新人教育をすべて現場に任せるケースがほとんどでしょう。
しかし、何らかの疑問や不満を感じた新入社員が、自身を教育してくれる担当者や上司に対して直接話すことはほとんどありません。溜め込んだ不安はやがて大きくなり、早期退職につながってしまいます。
そのため、人事部門が直接現状を把握し、異なる部門であるからこそできるサポートを提供することが大切です。こうした人事部門によるフォローアップは、早期離職者を減らすための取り組みとして非常に有効と言えるでしょう。
株式会社鳥貴族では、早期離職防止の一環として、入社後1か月前後は面接官が店舗に訪問するという取り組みを実施しました。入社して間もない社員の「店長や先輩社員には言えない悩みや不満」を人事担当者が早い段階でヒアリングし適切に対処することによって、早期離職者の減少に成功しています。
社員のアイデアを取り入れた制度の構築
どれほど給与体系や勤務環境がよくても、企業と社員のエンゲージメントに問題があれば離職率を最大限低下させることは困難です。そして、企業と社員の結びつきを強くするためには福利厚生を充実させることが欠かせません。
社員にとって福利厚生は、その企業に勤めることによって得られる、お金以外の利益です。単純に福利厚生を整えるだけでなく、社員のアイデアを取り入れたさまざまな制度を構築することで従業員満足度はより高まり、結果として離職防止に大きくつながるでしょう。
株式会社ジオコードでは、離職防止に向けた取り組みとして、福利厚生についてのアンケートの実施と、アンケート結果を反映させた福利厚生制度の導入・実施を行っています。オリンピックやワールドカップの時期に導入される「サッカー休暇制度」や、20分間の休憩とともに日替わりで軽食が支給される「無料軽食制度」は多くの社員から特に好評で、離職率改善だけでなくストレスの解消・コミュニケーションの活性化にも寄与しています。
ハラスメント対策の導入
ハラスメント対策の導入も、離職防止に向けた重要な取り組みの1つです。
近年、職場におけるハラスメントは非常に問題視されています。特に、Z世代の若手人材はハラスメントへの耐性が比較的低いと言われており、ハラスメント対策をおろそかにする企業は若手社員の早期離職が続出するおそれがあるでしょう。
また、ハラスメントが横行する企業は社内が殺伐とした雰囲気になりやすく、ハラスメントを受けていない社員にも少なからず悪影響を及ぼします。最悪の場合、離職者が続出するだけでなく経営にも大きな打撃を受ける可能性があるため、ハラスメントが起こらない職場環境を常に整えることが重要です。
実際に、規模問わず多くの企業では定期的なハラスメント研修の実施のほか、内部通報制度の導入、社員への定期的な聞き取り調査などを行っています。
新入社員研修の活用
人材の入れ替わりが多くなかなか定着しないという場合は、新入社員研修を導入するのも一案です。
離職防止に向けて新入社員研修を実施すれば、現場での実務を行う前から最低限の適性・スキルを身につけてもらえるほか、同期同士のつながりや連帯感を深められます。同期とのつながりが深まった新入社員は、慣れない仕事に苦痛を感じたときも仲のよい同期と励まし合うことで、離職を思いとどまってくれる可能性があります。
株式会社アイネットでは、新入社員同士の一体感の醸成や能力の育成、さらに配属のミスマッチ防止を目的に、これまで2か月間と定めていた新入社員向けの研修期間を6か月間に延長しました。
研修中に社内インターンとして全部門の業務をひと通り経験させ、適性に応じて配属先を決定したことによって、「社員同士の関係性が悪く居心地がよくない」「業務に適性がなく意欲が湧かない」という理由での早期離職を大幅に減少させることに成功しました。
長期的なキャリアアップ・スキルアップの支援
従業員が将来のキャリアに不安を感じると、仕事への意欲が低下し、離職のリスクが高まる傾向があります。長期的なキャリア形成を支援する制度を整えることは、離職防止において重要な対策の1つです。
たとえばコクヨでは「会社の目標とつながった個人目標」と「能力に応じた能力伸長目標」の2軸で目標設定を行い、上司との対話を通じて主体的な成長を促しています。キャリア希望を表明できる「キャリアチャレンジ制度」や、行動変化に応じてマイルが貯まる福利厚生制度「PLAY WORK マイレージ」も導入しているのも特徴です。年次に関係なく努力が報われる絶対評価制度も備え、公平な人事運用が行われています。
会社が成長の後押しをしてくれると感じられれば、従業員は今の職場で安心して長く働き続けようという意欲を持てるようになります。
上司や中堅層のマネジメントスキル育成
従業員の離職には、上司との関係性やマネジメントへの不満が影響するケースも少なくありません。上司や中堅層のマネジメントスキルを向上させることは、組織全体のエンゲージメント向上と離職防止に直結します。
たとえば山脇学園では、学年部長に対するマネジメント研修を3日間にわたって実施し、リーダーとしての強み・弱みを自己認識しながらスキル向上を図っています。受講前は不安を抱えていた参加者も多かったものの、研修を通じて相互理解と信頼が深まり、学年部長同士が弱みを共有できる関係性にまで発展しました。また、中堅教員に対しては「自分たちが学校をつくっていく」という意識醸成を目的とした研修を行い、主体性やリーダーシップの向上が見られたと言います。
このように、管理職や中堅層に対する研修は、評価のバラつきを防ぐだけでなく、メンバーの意欲を引き出すマネジメント力の育成にもつながります。適切な関わり方ができる上司の存在は、職場に安心感をもたらし、従業員の定着率向上に寄与します。
まとめ
離職率とは、「期首から期末までの1年間」や「入社後1〜3年間」など一定期間における離職者数の割合を示す指標です。社員の人数が少ないほど、1人が離職するだけでも離職率に大きな影響を及ぼすほか、場合によってはやむを得ず離職するケースもあるため、離職率が各企業の評価に直結するわけではないことも覚えておきましょう。
離職が発生する原因の多くは、「労働条件の悪さ」「人間関係の悪さ」です。また、若手社員の場合は「仕事の内容に興味が湧かなかった」ことで退職を決意するケースもあります。
離職防止をおろそかにする会社は、大きな損害が生じるほか、既存社員の負担増加や企業イメージの悪化といったリスクが伴います。自社を順調に成長させるためにも、適切な離職防止施策をできることから進めていきましょう。
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