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心理的安全性の高い職場を作る5つのポイント|ぬるま湯組織との違い
社内のコミュニケーションを活発に行い、アイデアが共有されやすくするためには、組織内の心理的安全性を高めることが大切です。Google社の調査によって注目を集めた「心理的安全性」は、高めることで生産性や業績の向上にもつながります。
当記事では、心理的安全性とは何か、高めるメリットや方法について詳しく解説します。心理的安全性を高めるときに導入したい制度も合わせて解説するので、職場の空気感を良くしたい方はぜひ参考にしてください。
心理的安全性とは?
心理的安全性とは、組織内で自分の考えや気持ちを安心して発言できる状態のことです。この概念は、米国ハーバード大学の組織行動学研究者エイミー・エドモンドソン教授によって、1999年に提唱されました。教授は心理的安全性を、「チーム内で対人関係上のリスクを取っても安心できるという共通の思い」と定義しています。つまり、率直に意見を述べたり、革新的なアイデアを提案したりしても、拒絶されることや罰を受けることへの恐れがない状態です。
心理的安全性は、単に雰囲気や人間関係がよいだけの状態や、発言にルールが定められた状態とは異なります。自由な発言が暗黙の了解として受け入れられ、誰もが安心して意見を交わせる雰囲気が重要です。企業の心理的安全性が高まると、従業員の学習意欲向上や生産性アップにつながります。
効果的なチームの要素
効果的なチーム作りにおいて、Google社の「プロジェクト・アリストテレス」では、心理的安全性がもっとも重要な要素とされました。同プロジェクトでは、他にも以下の4つの要素が重要だと挙げられています。
・相互信頼 相互信頼は、メンバー同士で「高品質の仕事を期限内に完成させる能力がある」と信頼し合う状態です。信頼感があると、メンバーは他人に責任を転嫁することなく協力し合えます。 ・構造と明確さ 効果的なチームでは、各メンバーが職務上の要求やその達成プロセス、行動の成果を明確に理解しています。目標設定は具体的で達成可能でなければなりません。 ・仕事の意味 チームメンバーは、仕事やその成果に目的意識を持つ必要があります。経済的な安定や家族の支援、チームの成功など、どのような意味を見出すかは人によって異なります。 ・インパクト メンバーが自分自身の仕事に意義を感じ、組織の目標達成に貢献していると認識することも重要です。仕事のインパクトが明確になると、チームの効果性が高まります。 |
心理的安全性の高いチームのメンバーは他のチームよりもパフォーマンスがよく、マネジャーからの評価も高いと分かっています。実際のところ上記の要素と組み合わさると、チームの生産性と効果性がより高まることが解明されました。
心理的安全性が低いことで生まれる不安
心理的安全性が低い職場では、メンバーがさまざまな不安を抱えることがあり、チームのコミュニケーションや業績に悪影響を及ぼします。特に代表的なのは、以下の4つの不安です。
無知だと思われる不安 | ||
メンバーに無知だと思われる不安があると、質問や相談を避けるようになります。結果として、疑問点をそのままにしたり理解のズレや懸念点が放置されたりして、クレームや重大なミスといったトラブルにつながるケースも多い問題です。 |
能力がないと思われる不安 | ||
能力が低いと思われる不安から、問題を解決するよりも、ミスを隠すことや失敗を認めないことを優先するようになります。これにより問題の発覚が遅れ、大きなトラブルや重大な事故に発展する可能性が高まります。また進捗の遅れが共有されず、チーム全体の業績に影響を与えるケースも珍しくありません。 |
邪魔をしていると思われる不安 | ||
自分の存在がチームに迷惑をかけているのではないかという懸念から、メンバーは発言を控えるようになる不安です。これにより、チームの効果的な課題解決が遠ざかる上、新しいアイデアや有意義な意見が出にくくなります。 |
ネガティブだと思われる不安 | ||
否定的な人間だという印象を持たれるのを恐れ、リスクや問題点についての発言を控えるようになる不安です。業務上で重要な問題であっても提案されないままだったり十分な議論が行われなかったりして、ビジネスチャンスを逃すケースが散見されます。 |
上記のような不安が募ると、組織内でのオープンなコミュニケーションが妨げられ、チームの学習機会が失われます。またメンバーは自由に意見交換ができないため、チームの創造性やイノベーションも阻害されるでしょう。
心理的安全性を高めるメリット
心理的安全性が高まると、チームのコミュニケーションが活性化し、生産性が向上します。また、メンバーのエンゲージメントやスキルの向上、ハラスメントリスクの減少などの効果も期待でき、組織全体の業績向上にも寄与するでしょう。
以下では、心理的安全性向上により得られるメリットを5つ解説します。
チーム内のコミュニケーションが活発になる
心理的安全性が高まると、チーム内のコミュニケーションが活発になります。メンバーが自分の意見を自由に表現するだけでなく、他者の声にも耳を傾けるようになるためです。メンバーがお互いの強みや弱みを理解し合い、それを生かしたチームワークを築けます。
相互理解が深まると、それぞれの専門知識や経験を存分に生かした、新しいアイデアや創造的な解決策が生まれやすくなります。また、誤解や衝突を招かずに多角的な視点からの議論が可能です。さまざまな意見が尊重される環境は、メンバーのモチベーションを高め、チーム全員が目標に向かって協力する意欲を促進します。
生産性が上がる
メンバー同士の情報共有が活発になり、結果としてチーム全体の生産性が向上するのも、組織の心理的安全性を高めるメリットです。安心感のある職場環境では、メンバーが自らの考えや情報を積極的に共有し始めます。必要な情報が迅速にチーム内で共有されれば、迅速な意思決定や問題解決が可能です。
また、オープンなコミュニケーションは、メンバー間の誤解や仕事の重複・無駄の削減にもつながります。メンバーが失敗を恐れずに新しい方法やアプローチを試み、革新的なアイデアや改善策を生み出しやすく生産性が高くなるのが、心理的安全性の高いチームの特徴です。
ワークエンゲージメントが高まる
心理的安全性が高まると、ワークエンゲージメントが向上するメリットがあります。ワークエンゲージメントとは、仕事への積極的な関与や情熱、熱意を意味する言葉です。メンバーが自分の仕事に責任感を持ち、積極的に取り組む状態を指します。
心理的安全性が高い職場では、メンバーが自分の意見やアイデアを自由に表現できるため、仕事に対する関心やエネルギーが増します。さらに自分の貢献が認められれば、仕事の意味や価値が実感でき、仕事へのやる気や生産性がより高まるでしょう。チーム全体のワークエンゲージメントが向上すれば、企業全体の業績向上や離職率の低下にも寄与します。
個人のスキルが高まる
心理的安全性が高まると不安がなくなり、チームメンバー一人ひとりのスキルがのびのびと発揮されるのもメリットです。メンバーが失敗を恐れずに新しいことにチャレンジしやすくなるため、新しいスキルの習得や既存スキルの向上が促されます。また、自分のアイデアや意見を積極的に表現する経験を積めば、問題解決能力も自然と高まるでしょう。
加えてコミュニケーションが活発になると、チーム内のノウハウや経験の共有が促進されます。職場で知識や技術を気軽に交換できる環境になれば、他のメンバーの経験やアイデアから学びを得る機会が増え、スキルアップのさらなる促進も可能です。ひいては、組織全体の競争力向上にも大いに期待できるでしょう。
ハラスメントリスクが減る
心理的安全性を高めると、ハラスメントリスクが減るというメリットもあります。双方向のコミュニケーションが活発な職場では、パワーハラスメントのような一方通行のコミュニケーションが生じにくいためです。
ハラスメントは、上位者から下位者への一方的なコミュニケーションや、相手の意見を聞き入れない環境で発生しやすい問題です。心理的安全性が確保された職場では、誰かの言動に問題があったときに忌憚なく指摘できます。上司や先輩に対しても意見が言いやすい関係性が築けているため、無自覚の問題行動が大きなトラブルに発展する前に、チーム全体で防ぐことが可能です。
ハラスメント対策を語る上で、心理的安全性の確保は欠かせない要素と言えます。
心理的安全性はどうすれば高まる?
心理的安全性を高めればチームや職場に多くのメリットをもたらしますが、実際に取り組むとなると、どこから手をつければよいか分からない方も多いでしょう。心理的安全性を高めるためには、チームや職場のコミュニケーションを活発化させ、相互の信頼関係を築くことが重要です。
以下では、心理的安全性を高めるためにチーム・職場で意識したい事柄を5つ解説します。
メンバーで話す機会を増やす
心理的安全性を高めるためには、メンバー間で話す機会を増やすことが重要です。特に雑談はリラックスしたコミュニケーションを促し、信頼関係の構築に役立つ方法です。
雑談を通じて相手のプライベートな面や共通の趣味などを知ると、親近感や信頼感が生まれます。信頼関係が築かれると、業務でも報告・連絡・相談がしやすくなり、チーム内のコミュニケーションがスムーズに行われるようになります。
意図的に雑談の時間を作ったり、定期的に1on1を実施したりして、メンバー間での対話を促進しましょう。相談や報告を受けた際に、内容ではなくその行動を歓迎するのも効果的です。
協力を重視する
互いに協力し助け合えるチームは、心理的安全性が高いと言えるでしょう。競争ではなく協力の精神を持ち、お互いの成功をサポートする姿勢をチーム内に根づかせなければなりません。失敗に対するプレッシャーを負わせたり責任追及が厳しすぎたりしなければ、信頼関係は築きやすくなります。
助けを求めやすく与えやすい環境を作るには、リーダーが積極的に弱みを見せるのも有効です。また新しいメンバーやミスをしたメンバーへの温かいフォローや、サポート体制の整備も行いましょう。互恵性に基づいた関係は、チーム全体の力を高めつつ個人の成長を促すことにもつながります。
ポジティブな思考を意識する
心理的安全性を高めるには、ポジティブな思考を意識するのも重要です。課題や問題に直面した際に、リーダーや上司が前向きな意見や行動を取ることで、メンバーもポジティブな思考を持つようになります。ネガティブな言葉を控え、意識して建設的な表現を選びましょう。
新しいアイデアや提案に対しては、まずその行動自体を歓迎し、賞賛することが大切です。これにより、チームメンバーは新しいことへの挑戦を恐れずに取り組みやすくなります。失敗した場合でも、その経験を次に生かすための前向きなフィードバックをすると、ポジティブな思考につなげられます。
評価の仕方を見直す
評価の仕方を見直すのも、心理的安全性を高めるには有効です。成果主義の場合、競争が起こったり他のメンバーと比較したりしてしまうため、心理的安全性を高めたい場合には向きません。
そこで注目されているのが、「ノーレイティング」という評価方法です。ノーレイティングでは、メンバーのランクづけをせず、年度ごとの評価もしません。代わりに、上司は部下に対して定期的にフィードバックをして、現実に即した目標を設定する方法です。部下は心理的なプレッシャーを感じにくく、評価に対する納得感も得やすくなります。
さまざまな価値観を尊重する
心理的安全性を高めるには、異なる意見や考え方に対して「世の中にはそういう考えもあるね」と一度は受け止める姿勢を持つことが重要です。メンバーが自分の個性や考え方を尊重されていると感じられれば、アイデアを提案するハードルが下がります。
お互いの違いや強みを認め合う風土を作ると、職場の多様性が促進されるのもメリットです。新しい価値観がもたらされることで新たなアイデアや解決策が生まれやすくなり、組織の成長や競争力の強化に貢献します。メンバーのモチベーション維持や離職率の低下にも寄与するでしょう。
心理的安全性を高めるための制度
心理的安全性を高めるためには、具体的な制度の導入が効果的です。職場への導入で心理的安全性を高められる制度はいくつかありますが、中でも1on1やOKR、ピアボーナス、心理的安全性研修などが代表的です。
以下では、心理的安全性を高めるための制度を4つ紹介します。
1on1
1on1は、上司と部下が1対1で定期的に行うミーティングです。1on1では業務の内容だけでなく、個人の感情やキャリアに関する話題も扱います。1on1を通じて、部下は自分の思いや意見を率直に伝えられ、上司は部下の成長を支援する機会を得ます。
1on1を成功させる鍵は、双方の信頼関係の構築です。互いに関心を持ち率直に話し合うことで、メンバー間の信頼が深まり、チーム全体の心理的安全性が向上します。上司は積極的に自己開示を行い、部下の価値観を尊重する姿勢を示さなければなりません。対話を通じて、部下は自分の行動や意見が受け入れられるのを実感し、チームに貢献したいという意欲が高まります。
OKR
OKRは、組織やチームの目標(Objectives)と、それを達成するための主要な成果(Key Results)を定める目標管理手法です。OKR導入により、メンバー間のコミュニケーションが活発になり、協調性が向上します。
目標や成果が数値化されることで達成度が明確になり、チーム内での進捗共有や支援がしやすくなります。共通の目標に向けた取り組みがメンバーの信頼関係を深め、心理的安全性を高めるのに効果的です。また、個々のメンバーが自らの役割を明確に理解し、自分の仕事がチームや組織の目標達成にどう貢献しているかを認識するのにも役立ちます。
ピアボーナス
ピアボーナスとは、メンバー同士が互いに報酬を贈り合う制度です。この制度では、メンバーたちが日々の業務での行動や成果を認め合い、感謝の気持ちを形で表します。メンバーがお互いにポイントを贈り合い、特定の報酬や特典と交換できる仕組みが一般的です。
ピアボーナスでは、メンバーは上司からの評価だけでなく同僚からの承認や感謝を直接受けられるため、自分の価値が認められていると実感できます。互いの強みや貢献を称え合う文化が形成されれば、メンバー間の相互理解も深まり、協力的な関係が構築されます。これにより職場全体の心理的安全性が高まると、生産性向上の効果も期待できます。
心理的安全性研修
心理的安全性研修は、組織内の全員が心理的安全性の重要性を理解し、実践するためのトレーニングです。心理的安全性研修では、心理的安全性を学問的見地から理解し、組織内で正しく活用するための知識を学びます。特にリーダーやマネージャーがこの研修を受けると、チームや企業風土に変革をもたらせるでしょう。
メンバーがお互いの意見を尊重し、新しいアイデアや解決策を提案しやすい環境が整えば、健全で生産性の高い企業文化が育まれます。心理的安全性に向けた行動は、実用的で実践的でなければなりません。研修の効果を最大限に発揮するためには、継続的な取り組みが必要です。
まとめ
心理的安全性とは、組織内に自分の考えを不安なく共有できる状態を言い、心理的安全性を高めることで意見を言いやすくなったり、革新的なアイデアが生まれやすくなったりします。心理的安全性が高い環境下では、生産性が上がる・ワークエンゲージメントが高まるなどさまざまなメリットがあるため、企業の業績向上にもつながります。
心理的安全性を高めるには、1on1やピアボーナスなどの制度を導入しましょう。研修で、リーダーやマネージャーなどの従業員に心理的安全性を高める大切さを共有することも有効です。
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