企業研修

Z世代の離職を防止するフォローアップ研修|成功のポイントも解説

フォローアップ研修の模様

フォローアップ研修は、既に実施した研修の効果を高め、社員の成長を促進、ひいては企業の業績向上に貢献する重要な施策です。

研修で学んだ知識やスキルは、時間経過とともに忘れやすくなります。フォローアップ研修では、内容を振り返り、グループワークやディスカッションなどの実践を通して、研修の定着率を向上させることが可能です。

当記事では、フォローアップ研修とは何かといった基礎的な内容から、フォローアップ研修の目的・新入社員にフォローアップ研修をするメリットまで、詳しく解説します。

フォローアップ研修とは

フォローアップ研修とは

フォローアップ研修とは、研修で学んだ内容の定着を図ったり、その後の業務に生かされているかどうかを確認したりするために、研修後に再度受講者を集めて行う研修です。主に新卒社員の文脈で使われるケースが多いですが、中途社員や管理職などにおいてもフォローアップ研修を実施する機会は当然あります。

研修では、講義や演習などを通して知識やスキルを学びますが、時間経過とともに忘れてしまったり、実際の業務に生かせなかったりするケースがあります。そこで、フォローアップ研修では、研修内容の復習・定着の確認や今後の目標設定などを目的として、再度学習や振り返りを行います。

フォローアップ研修が重要な理由

企業にとって、フォローアップ研修を実施するメリットは多岐にわたりますが、以下では特に重要な4つのメリットについて解説します。

・スキルと知識の定着促進
実施した研修の内容をフォローアップすることで、従業員のスキルと知識がより確実に定着します。定着が不十分だと、研修コストが無駄になる可能性があります。

・業務パフォーマンスの向上
フォローアップ研修を通じて、従業員は学んだことを実際の業務により活用しやすくなります。業務の質と生産性が向上し、結果的に企業の業績にもプラスの影響を与えやすくなるでしょう。

・モチベーションと従業員定着率の向上
従業員に継続的に成長できる機会を与えることは、従業員のやる気とモチベーションアップにもつながります。それによって優秀な人材の定着率が高くなれば、ブランディングの強化や、採用コストの抑制が可能です。

・企業文化の浸透
フォローアップ研修で、企業の方針や価値観の浸透も図れます。従業員一人ひとりが企業文化を理解し、実践することで、組織力が高まるでしょう。

特に、新規学卒就職者の就職後の3年以内離職率は、32.3%であり、前年比でも+0.8ポイント増加しています。

※出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します」

新卒社員の定着においても、研修のフォローアップ機会は非常に大切と言えるでしょう。

【対象者別】フォローアップ研修の目的

新入社員のフォローアップ研修

フォローアップ研修の目的は、対象者によって異なります。以下では、新入社員、中堅社員、管理職それぞれの立場に合わせた、フォローアップ研修の具体的な目的とポイントを解説します。

新入社員

新入社員のフォローアップ研修の目的は、主に以下の通りです。

・社会人としての基礎知識・スキルの定着
社会人としてのマナー、ビジネスメール、時間管理など、研修で学んだ基礎知識・スキルの定着を図ります。

・業務へのスムーズな適応
研修で学んだ知識やスキルを、実際の業務にどのように生かすべきか、具体的な方法が分からない場合があります。例えば、フォローアップ研修で、ケーススタディやロールプレイングを行うことで、実際の業務に近い状況で実践的なスキルを復習・習得できるでしょう。

・課題や不安の解消
研修後の業務で直面した課題や不安を共有し、解決策を見つけることで、モチベーションを維持・向上につなげられます。また、先輩社員や上司からのアドバイスを受ける機会を設けることも有効です。

・仲間、同期との交流
新入社員にとって、同じ時期に入社した仲間との交流は、モチベーション維持や社内の情報収集にも役立ちます。フォローアップ研修では、グループワークやディスカッションを通して、仲間と交流する機会を設けることが可能です。

・将来のキャリアビジョンの明確化
研修で学んだ内容を踏まえ、将来的にどのようなキャリアを築きたいのかを考える機会を設けられます。キャリアプランや目標について考えることで、主体的なキャリア形成を促せるでしょう。

新入社員にとって、入社後の数か月間は、社会人としての基礎知識やスキルを習得し、新しい環境に適応していくための重要な時期です。しかし、多くの場合、入社直後の研修では、限られた時間の中で必要な知識やスキルをすべて習得することはできません。

そこで、研修後のフォローアップとして、定期的にフォローアップ研修を実施することで、研修内容の定着を図り、実際の業務へのスムーズな適応を支援できます。

中堅社員

中堅社員向けのフォローアップ研修は、主に既存のスキルの再確認と向上を目指すために実施されます。

中堅社員は一定の業務経験を積んでおり、基本的な職務遂行能力を身につけていますが、継続的な成長と効率化を図るためには、定期的なスキルの見直しと深化が必要です。

フォローアップ研修を通じて、以前に学んだ知識や技術が適切に活用されているかを確認し、さらに生産性を高める方法や、新たな業務改善策を自ら考える機会を提供できます。また、意見交換のセッションを通じて互いの経験から学び、問題解決能力を高めることも可能です。

管理職

管理職向けのフォローアップ研修では、特にリーダーシップとマネジメントスキルの強化に焦点を当てる内容が一般的です。

管理職にはチームや組織を率いる責任があり、単に業務を遂行するだけでなく、部下の育成や目標設定、業務の効率化など、より高度なスキルが求められます。フォローアップ研修では、これらのスキルを実践的に振り返り、目標設定の妥当性や人材育成プランの見直し、実務上の改善点を探ることで、より効果的なマネジメントができるように導きます。

また、リーダーシップ研修の内容を再確認し、現在の業務にどう適用していくかを深く考える機会を提供できます。

【事例付き】新入社員にフォローアップ研修をするメリット

フォローアップ研修のメリット

以下からは、新入社員フォローアップ研修に焦点を当てて解説します。

新入社員にフォローアップ研修をするメリットは多岐にわたりますが、ここでは主要なものを4つ紹介します。

「Z世代の新入社員研修とは?今どきの若手に最適な研修を解説」はこちら

同期との意見交換の場になる

新入社員は、入社直後からさまざまな課題や悩みに直面します。研修で学んだ知識やスキルを生かせない、周囲とのコミュニケーションがうまくいかない、仕事量が多くて辛い…など、人によってさまざまな悩みを抱えています。

フォローアップ研修の場では、同期同士であるからこそ、遠慮なく共通の課題や悩みを共有することが可能です。お互いの経験談を聞き、共感しあえば孤立感や不安を解消し、モチベーションを維持・向上できるでしょう。また、同期との交流を通して、仲間意識や企業への帰属意識を高めることもできます。

例えば、小柳建設株式会社が行っている新入社員のフォローアップ研修では、「同期に負けたくない」「同期の悩みを知れた」などの、ポジティブな感想が挙がっています。

※出典:小柳建設株式会社「新入社員フォローアップ研修を行いました!」

自分の得意なことや強みを再発見できる

新入社員のフォローアップ研修において、「自分の得意なことや強みを再発見できる」ことは、個々の成長だけでなく、企業にとっても大きなメリットです。

自分の得意や強みを認識することは、自己肯定感の向上にもつながります。これは、Z世代の社員にとっても重要で、Z世代は従来の世代に比べて自己肯定感が低い傾向があると言われています。内閣府の調査によれば、日本の若者(Z世代以外も含む、2018年11月~12月時点で満13歳~満29歳)は、アメリカ・イギリス・韓国などの外国の若者と比べて、自分自身を肯定的に捉えている者の割合が低い傾向にあると分かっています。特に日本の若者の自己肯定感の低さにおいて、「自己有用感の低さ(自分が役に立たないと感じている)」が関わっていることが明らかになっています。

※出典:内閣府「特集1 日本の若者意識の現状~国際比較からみえてくるもの~|令和元年版子供・若者白書(概要版)」

社員一人ひとりが自分の強みを生かして活躍できるようになれば、企業全体の競争力が向上します。そのためにも、新入社員のフォローアップ研修は1つの施策として効果的です。

例えば、株式会社Tooの新入社員のフォローアップ研修では、will(やりたいこと)・can(できること)・must(やるべきこと)について考え、自分の得意なことや、自分の強みを言語化するセッションを実施しています。

「自己肯定感とは|Z世代社員の自己肯定感を高めるコツ4ヶ条」はこちら

主体的に今後の目標を定められる

フォローアップ研修で学んだ知識やスキルは、将来どのようなキャリアを築きたいのかを主体的に考えるのに役立ちます。従来の企業による画一的なキャリアパスではなく、自分らしいキャリアプランを描き、能動的に実現していくことが可能になるでしょう。

また、目標達成のために、必要なスキルや知識を自発的に学び、積極的に行動するように自然に促せるのもメリットです。研修で得た学びを生かし、自己研鑽を続けることで、より高い専門性を身につけられます。目標達成に向けた道筋の中では、当然さまざまな課題に直面する可能性があるでしょう。しかし、主体的に定めた目標であるからこそ、困難を乗り越えようと努力する強い意志が生まれます。

例えば、一般社団法人 東京都中小建設業協会では、「キャリアデザインすごろく」といった内容の新入社員のフォローアップ研修を行っており、仕事と将来の生活について考える機会を提供しています。

※出典:一般社団法人 東京都中小建設業協会「令和4年度フォローアップ研修を開催」

「主体性とは?社員の主体性を高める方法や自主性との違いを解説」はこちら

エンゲージメント向上を期待できる

エンゲージメントとは、従業員が会社や仕事に対して持つ愛着や熱意、関与の度合いのことを指します。新入社員のエンゲージメントを高めることは、定着率の向上や生産性の観点からも重要視されています。

フォローアップ研修を通して、同期や先輩社員と交流し、仲間意識や企業への帰属意識を高めることが可能です。自分が所属する組織の一員であると実感した社員は、より高いモチベーションを持って仕事に取り組めるようになるでしょう。特に、企業の理念やビジョンを理解し、心から共感できれば、より強い使命感を持てます。

また、先輩社員の体験談・座談会などもおすすめで、キャリアビジョンを描きやすくなり、会社に対する期待感が高まります。

「エンゲージメントとは?意味から効果的な向上施策まで徹底解説」はこちら

新入社員にフォローアップ研修をするタイミング

新入社員向けのフォローアップ研修を行うタイミングとして、3か月後、半年後、1年後の内容例をそれぞれ解説します。

3か月後● 新入社員は基本的な業務スキルや企業文化に対する理解を深めつつありますが、まだ実務経験が浅いため、基本的な業務プロセスや社会人としての振る舞いに不安を感じているかもしれません。
● 研修では、学んだ知識が実際の業務にどう生かされているかを振り返りながら、疑問点を解消し、さらなるスキル向上へとつなげる機会を提供しましょう。
半年後● 半年後の研修では、新入社員がこれまで学んできた内容をどれだけ業務に活用しているかを確認します。
● この時期には、新入社員も職場にある程度慣れ、基本的な業務は一人前にこなせるようになっています。
● 実際に現場で遭遇した問題や課題にどう対応しているかを確認しながら、FBの機会を設けましょう。
1年後● 新入社員が1年間の業務を通じて得た経験や知識を総括する重要なタイミングです。
● 新入社員も次のステップへ進む準備が整っているため、研修ではその1年間の行動や成果を振り返り、自己評価を促します。
● 後輩や部下ができる可能性もあるため、リーダーシップやOJTの仕方など、次のレベルのスキルに焦点を当てるのもよいでしょう。

可能であれば、同期全員で集まれる研修の場も用意することがおすすめです。同期間での経験の共有を促し、お互いの進捗を確認しながら、これからの業務での改善点やスキルアップの方向性をディスカッションできるとよいでしょう。

新入社員フォローアップ研修では何をするとよい?

キャリアプラン

ここでは、新入社員のフォローアップ研修を効果的に行うための4つのポイントと、それぞれのポイントで行うべき具体的な内容について解説します。

新入社員が自身の学びを振り返り、将来のキャリアについて具体的に考え、さらなる成長を促せるような内容を設定しましょう。

学んだ内容の振り返り

新入社員研修では、基本的な社会人としての心構え、ビジネスマナー、職種に関する専門知識などを幅広く学びます。しかし、入社から数か月経過すると、内容を忘れてしまったり、理解が深まっていなかったりすることがあります。

フォローアップ研修では、まずは学んだ内容を全体像として振り返る時間を設けましょう。具体的には、以下のような方法が考えられます。

・講義形式
研修担当者が、新入社員研修で学んだ内容を体系的に説明します。

・グループワーク
新入社員同士でグループになり、学んだ内容を共有し、理解度を確認します。

・eラーニング
新入社員研修の講義動画や資料を視聴・閲覧できるようにします。

学んだこと・成功したことのプレゼンテーション

新入社員研修で学んだことを実際に業務で生かしているかどうか、また、入社してからどのような成果をあげたかを、一人ひとりプレゼンテーションさせましょう。

プレゼンテーションを行うことで、以下のような効果が期待できます。

● 学んだことをアウトプットすることで、理解度が深まる
● 自分の経験を振り返り、成長を実感できる
● 他の新入社員の事例を聞くことで、学びを得られる

プレゼンテーションのテーマとしては、「新入社員研修で学んだことをどのように業務に生かしているか」「入社してから担当したプロジェクトで成功したこと」「今後の目標」などが考えられます。

振り返りについてのディスカッション

新入社員自身が、入社してからこれまでの経験を振り返り、課題や改善点を見つけることが重要です。

ディスカッションでは、以下のような点をテーマに、活発な意見交換を行うように促しましょう。

● 仕事内容や職場環境について、どのようなことにやりがいを感じているか
● 反対に、どのようなことに困っているか、課題を感じているか
● 今後のキャリアプランについて

ディスカッションの場を設けることで、新入社員同士が互いに刺激を受け合い、新たな気づきを得られます。

キャリアプランの作成

新入社員が、将来どのようなキャリアを築きたいのか、具体的な目標を設定できるように支援しましょう。

キャリアプランを作成する際には、以下のような点を踏まえ、具体的な行動計画を立てることが大切です。

● 自分の強みや弱みを理解する
● 興味のある職種やキャリアパスを調べる
● 目標達成のために必要なスキルや経験を明確にする
● 具体的な行動計画を立てる
キャリアプランの作成は、新入社員が主体的にキャリア形成を進めていくための指針となります。研修担当者は、新入社員一人ひとりに寄り添い、キャリアプランの作成をサポートしましょう。

新入社員フォローアップ研修を成功させるポイント

フォローアップ研修の成功ポイント

新入社員フォローアップ研修をせっかく実施しても、効果が出なければ意味がありません。以下では、新入社員フォローアップ研修を成功させるために特に重要な3つのポイントを解説します。

・事前に目的を明確にする
研修を成功させるためには、まず目的を明確にすることが重要です。どのような課題を解決したいのか、新入社員をどのように成長させたいのかを具体的に定めましょう。

・新入社員本人や直属上司に調査をする
研修内容を決定する前に、新入社員本人や直属上司に調査を行い、どのような課題やニーズがあるのかを把握することも大切です。アンケートやインタビューなどを活用し、業務内容、直面している課題や悩み、習得したいスキル、研修に対する期待などの情報を収集しましょう。

・必ず効果を測定する
アンケート調査、インタビュー、業務成績の比較などの方法で効果を測定し、結果を分析すれば、研修のよかった点と改善点を見つけられます。

新入社員フォローアップ研修は、単発で実施するのではなく、継続的に実施することが重要です。定期的に新入社員の状況を把握し、必要なサポートを提供すると、より効果的な研修になります。

まとめ

新入社員のフォローアップ研修では、それぞれの部署や職種で異なる経験をしている同期同士が意見交換できるような機会を設けることがおすすめです。多様な視点から、各々が持つ課題の解決策を考えられます。

また、切磋琢磨する仲間とコミュニケーションできる機会があることで、お互いのモチベーションが高まり、成長意欲が刺激されます。異なる部門の同期とも交流できれば、将来的な横のつながりも生まれ、協力関係が築きやすくなる点もメリットです。

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