企業研修

研修して終わりはNG!研修効果を見える化する方法と成功ポイント

研修模様

研修を実施する企業にとって、その効果を測定し、見える化することは重要です。単に研修を行うだけでは、従業員のスキルや知識が十分に定着しているかを確認することはできません。研修効果測定を行えば、研修内容の改善点が明確になり、従業員一人ひとりに応じた適切なフォローが可能になります。

当記事では、研修効果測定の基本から「カークパトリックモデル」を活用した方法、成功させるポイントまでを詳しく解説します。従業員のモチベーションアップや研修の精査によるリソースの効率化を図りたい方は、研修の効果測定方法を理解しておきましょう。

研修効果測定とは?

効果測定

研修効果測定とは、企業などが実施した研修について、その効果が十分にあったかどうか、さまざまな視点から測定することです。具体的な方法としては、研修後の満足度アンケートや、研修内容の理解度を測るテストなどが挙げられます。

研修効果測定が重要な理由

従業員のスキルを高めるために、研修制度を設けている企業は多いでしょう。しかし、ただ研修を行うだけでは十分な結果は得られません。研修は実施して終わりではなく、効果測定によって「研修の目的が達成されたか」を確認することが重要です。

研修効果測定には手間や時間がかかりますが、以下のような点から研修の成果を高め、企業の生産性向上にも役立ちます。

1.研修内容の改善点が分かる
研修効果測定を行うメリットは、その研修によって知識やスキルがどの程度定着したか、見える化される点です。理解度が足りなかった場合は、資料や講師、研修時間などを改善する必要があると分かります。

・研修後に適切なフォローができる
研修効果測定をすれば、その理解度に応じて個別フォローを行うことも可能です。フォロー内容としては、補講や追加課題のほか、ブラッシュアップ研修の実施やOJTによる教育も挙げられます。
2.研修後に適切なフォローができる
研修効果測定をすれば、その理解度に応じて個別フォローを行うことも可能です。フォロー内容としては、補講や追加課題のほか、ブラッシュアップ研修の実施やOJTによる教育も挙げられます。
3.従業員のモチベーションを高められる
研修効果測定は、従業員が研修内容を振り返る機会としても有効です。なんとなく理解した気になるのではなく、テストなどによって客観的に知識やスキルの定着度を測れるため、自身の課題が明確になります。効果測定の結果が適切に評価されれば、業務への意欲も高まるでしょう。
4.研修そのものを見直すきっかけになる
研修には会場代や設備代、人件費など、多くの費用がかかります。効果測定の結果、費用対効果が低かった研修については、実施自体を見直すきっかけになるでしょう。成果の出ない研修を精査することで、企業の貴重なリソースを有意義に使えます。

『戦略的な人材育成のための研修体系|作成の仕方や事例を解説』について詳しくはこちら

研修効果測定を見える化する方法「カークパトリックモデル」

可視化

研修効果を測定方法にはさまざまな手法がありますが、ここではもっとも有名な「カークパトリックモデル」を紹介します。カークパトリックモデルとは、アメリカの経営学者ドナルド・L・カークパトリックによって考案された研修効果測定の方法です。カークパトリックモデルでは、研修の効果をレベル1から4までの4段階で評価します。

さらに、この4段階測定モデルに1項目を加えた「ジャック・フィリップスモデル」も存在します。アメリカの経営学者ジャック・フィリップスが提唱した方法で、レベル5として投資対効果(ROI)の評価が含まれる点が特徴です。レベル1から4の内容に関しては、カークパトリックモデルと同様です。

レベル1:Reaction(反応)

カークパトリックモデルのレベル1では、研修内容に対する受講者の満足度を測ります。具体的にはアンケートやヒアリングの実施で、受講後すぐに行うのが一般的です。レベル1の測定は比較的容易に取り入れることができるため、多くの企業研修で導入されています。

アンケート調査に関しては、紙での集計はもちろん、近年ではタブレットを用いた事例が増加しています。株式会社日立総合経営研修所では、タブレット端末を用いてアンケートのペーパーレス化を行い、集計や管理の効率化を実現しています。

『レベル1の測定に活用できるアンケートツール』はこちら

レベル2:Learning(学習)

レベル2では、筆記テストや実技テスト、レポートなどを活用して、研修による学習の成果を測ります。レベル1での評価が高かったとしても、受講者が知識やスキルを習得していなければ、その研修は効果があったとは言えません。レベル2の測定は、研修当日もしくは数日以内に実施するのが一般的です。研修テーマに準拠したEラーニングやWebフォーマットを使えば、よりスピーディーにテストを集計できます。

確認テスト

※画像はアイ・イーシーのサービス「f-Learning」の確認テストページです。


NTTドコモでは、携帯電話を用いた研修後テストを導入しました。携帯電話による効果測定は、リアルタイムの集計を叶えるだけでなく、受講者が研修を振り返り、研修効果を高めることにもつながっています。

レベル3:Behavior(行動)

レベル3では、研修による学びが実務に反映されているかどうかをチェックします。レベル3を正しく測定するためには、数か月後に実施するなど、研修から一定期間を空けることが大切です。代表的なBehavior(行動)のチェック方法は、行動計画書の作成・実践とフィードバックです。計画書をもとに、研修後の行動がどう変わったかを、上司や後輩などが多面的に評価します。

また、研修前後で360度サーベイを行う方法もあります。360度サーベイは、上司や部下、他部署の同僚といった、職場のさまざまな立場の人から評価を受けるのが特徴です。研修前後に実施することで、自己評価と他者評価のギャップがどのように変容したかを測れます。

具体例としては、東北エプソン株式会社の研修体系が挙げられます。東北エプソン株式会社では、入社後に2週間の新入社員研修があり、その1年後にフォローアップ研修が設定されています。フォローアップ研修の主な内容は、1年間の振り返りや行動宣言の確認などです。

レベル4:Results(成果)

レベル4では、研修が組織全体にもたらした価値を測ります。レベル4の測定は、6か月から1年後に実施するのが一般的です。業績指標やデータ比較などが該当しますが、これには研修以外の要因が複雑に絡むため、純粋な研修効果を測定するのは困難です。

なお、研修のコストに対して効果がどの程度であったかを測るROIもここに含まれます。ROIにおける効果とは、研修の結果生じた利益を指します。

研修効果測定を成功させるポイント

ポイント

研修効果測定を成功させるためには、以下のポイントを押さえる必要があります。

1.研修および研修効果測定の目的を明確にする
研修を成功させるには、設計の段階で研修を行う目的を明確にする必要があります。研修の目的によって、必要な効果測定方法が異なるためです。たとえば、研修の目的が「知識を増やす」ことであれば、研修効果測定の方法はテストが有効です。受講者アンケートと併用すると「資料が分かりにくい」「講師の声が聞こえづらい」といった改善点も抽出できます。営業研修の場合は、目的が「1年後の売上を上げる」ことなのか「営業知識を身につける」ことなのかによって、効果測定方法が変わります。利益向上が目的の場合は、フォローアップ研修なども含めた長期的な研修体系を設計する必要があります。
2.測定可能な指標を用いる
アンケートやテストでは、測定可能な指標を用いることが大切です。アンケートの場合は、感想を自由に記述するのではなく、5段階評価などの形式を使うとデータ分析が容易になります。「モチベーションを高める」といった定性的な目標の場合であっても、なるべく成果が可視化できる方法を考えましょう。
3.研修効果測定のスケジュールを設定する
正しく研修効果測定をするには、4つのレベルを評価するタイミングも重要です。特にレベル4に関しては、結果が表れるまでに一定の時間を要するため、長期的な研修プログラムを予定しましょう。研修後のフォローや改善を迅速に行いたい場合は、アンケートやテストを受講直後に集計すると効果的です。Web上で効率的に集計すれば、結果を瞬時にフォローに反映できるでしょう。

まとめ

研修効果測定は、研修の目的達成度を見極めるための重要なプロセスです。「カークパトリックモデル」をはじめとする測定手法を活用すれば、受講者の満足度や学習成果、行動変化、そして組織全体の成果までを評価できます。

研修効果測定を適切に行うことで、研修の改善点が明確になり、従業員のモチベーションや業務効率の向上にも寄与します。研修効果測定を長期的な視点で設計し、得られたデータを研修の改善やフォローアップに生かして、戦略的な人材育成を進めましょう。

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