エンゲージメントとは?意味から効果的な向上施策まで徹底解説

少子高齢化が進む日本社会において、企業が抱える課題に人手不足があります。例えば、中小企業では建設・製造・卸売・小売・サービス業の5業種すべてが人手不足を抱えており、働き方改革による長時間労働是正の影響もあって、人材確保が重要です。

※出典:中小企業庁「2023年版 中小企業白書・小規模企業白書」

特に若い世代の人材を確保するためにキーとなるのが、企業と従業員の間の信頼関係である「従業員エンゲージメント」です。

この記事ではエンゲージメントの意味や、従業員エンゲージメントを向上するメリット、測定方法や指標、向上する取り組みについて事例を交えながら解説します。

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エンゲージメントとは

エンゲージメントとは、「約束」「誓約」「婚約」を意味する言葉です。ビジネスにおいては人と人、もしくは人と組織の深い結びつきを表す意味で用いられています。ビジネスのエンゲージメントには、「従業員エンゲージメント」「ワークエンゲージメント」「顧客エンゲージメント」「SNSエンゲージメント」の4つがあります。それぞれの意味は下記の通りです。

・従業員エンゲージメント
従業員エンゲージメントとは、企業と従業員との間に結ばれる信頼関係のことです。従業員が企業に貢献し、企業は従業員の貢献に対して報いるという関係性の強さを指しています。

・ワークエンゲージメント
ワークエンゲージメントとは、従業員と仕事との関係性を示す言葉です。従業員の仕事に対する誇りややりがい、仕事への熱心さ、仕事から得られる活力の3つを高めることで、ワークエンゲージメントは向上します。

・顧客エンゲージメント
顧客エンゲージメントとは、企業と顧客の間における信頼関係のことです。顧客が企業のブランドや商品に親しみを持ち、企業が顧客と適切なコミュニケーションを取っている場合は、顧客エンゲージメントが高いと表現されます。

・SNSエンゲージメント
SNSエンゲージメントとは、SNS上での企業と顧客とのつながりのことです。企業から顧客に向けた情報発信、顧客からのフォローやコメントなどによって、SNSエンゲージメントは構築されます。

人事領域においては従業員エンゲージメントが特に重要です。従業員エンゲージメントの重視は業務効率の向上につながり、従業員の離職も防止できます。

以下では、ビジネスにおけるエンゲージメントの中でも「従業員エンゲージメント」について、さまざまなビジネス用語との違いを解説します。

従業員エンゲージメントとモチベーションの違い

モチベーションとは、従業者の仕事に対する「意欲」を意味する言葉です。

従業員のモチベーションは仕事に一方的な影響を与える関係であり、モチベーションが高い従業員は積極的に仕事をします。モチベーションは従業員自身の状態によって決まるため、モチベーションの高低は日常的に変動する可能性があります。

一方で、従業員エンゲージメントは企業と従業員が相互に影響し合う関係です。モチベーションと違い、企業と従業員の関係性は日常的に変動するものではなく、適切な取り組みをすれば従業員エンゲージメントが高い状態を保てます。

従業員エンゲージメントとロイヤリティの違い

ロイヤリティとは、従業員が企業に抱く「忠誠心」や「帰属意識」を意味する言葉です。従業員のロイヤリティを高めると、従業員が企業に愛着を持ち、意欲的に業務で成果を上げる効果が期待できます。

ロイヤリティは、あくまでも従業員の企業に対する関係のみを表していることが特徴です。企業と従業員を対等な関係に置く従業員エンゲージメントに対し、ロイヤリティは企業と従業員を明確な主従に置いている点に違いがあります。

従業員エンゲージメントと従業員満足度の違い

従業員満足度とは、従業員が労働条件にどの程度満足しているかを表す指標です。仕事内容や職場環境、給与・待遇などの条件によって、従業員満足度は変動します。

従業員満足度は、あくまでも企業の与えた条件を従業員がどう感じているかを示すものであり、従業員の労働意欲や貢献性を表すわけではありません。従業員満足度が高くても、従業員が企業に貢献したいと思わない可能性はあり得ます。

従業員エンゲージメントには、従業員が自発的に企業に貢献したくなる関係性を目指す点で、従業員満足度との違いがあります。

従業員エンゲージメントが重要な理由

近年、企業の人事領域において従業員エンゲージメントは重要視されています。従業員エンゲージメントが重要視される背景には、2つの理由があります。

ミレニアル世代やZ世代の価値観に対応する必要があるため
日本では、1981年~90年代半ば生まれのミレニアル世代や、1990年代後半~2010年生まれのZ世代と呼ばれる人々が企業で活躍するようになりました。
ミレニアル世代やZ世代の人々は、終身雇用や年功序列といった日本企業の慣習にあまりなじみがありません。働き方について新しい価値観を持っており、企業が自分に合っていないと感じた場合はすぐに転職する可能性があるでしょう。
企業がミレニアル世代やZ世代の人材をつなぎとめるには、従業員エンゲージメントを高めて従業員とのつながりを強くする必要があります。
能動的に動けるクリエイティブな人材が必要なため
従来の日本企業では、会社側が与えるタスクを忠実にこなす従業員が高く評価されていました。
しかし、近年は日本経済全体が停滞しており、企業は既存の経営手法では成長を見込めなくなっています。企業が継続的な成長をするには、従業員一人ひとりが活躍して企業の成長に貢献できる体制を整えなければなりません。
能動的に動けるクリエイティブな人材を確保するために、従業員の貢献意識を高められる従業員エンゲージメントが重要となっています。


従業員エンゲージメントを向上するメリット

従業員エンゲージメントを向上すると、従業員に関するさまざまなメリットが得られます。企業全体としても組織が強くなり、業績向上にもつながるなどのメリットが得られるでしょう。

以下では従業員エンゲージメントを向上するメリットを4つ紹介します。

従業員のモチベーションと生産性が上がる

従業員エンゲージメントを向上すると、従業員は企業に高い信頼を寄せて「企業の成長に貢献したい」という意識を持ちます。労働の成果や努力が正当に認められていると分かり、仕事にやりがいや熱意を感じてモチベーションを高く保てるようになるでしょう。

従業員の仕事へのモチベーションや主体的な行動が生まれることで、企業全体の生産性も上がります。

従業員のモチベーションや生産性の向上は、商品・サービスの質にもかかわる要素です。結果として顧客満足度の向上につながり、企業の業績アップも期待できます。

従業員が健康になる

従業員エンゲージメントを向上する過程では、労働環境の整備や従業員の健康管理が欠かせません。仕事内容や職場に対して従業員がストレスを感じていると、従業員エンゲージメントを高められないためです。

労働環境の整備や従業員の健康管理を行うことで、従業員に過大な仕事量を割り振ったり、従業員の体調不良や過労を見過ごしたりするケースを防げます。従業員も自身の体調や能力に不安を感じなくなり、健康な状態で働けるでしょう。

従業員が健康的に働く職場は長時間労働や過労死といった問題が発生しにくく、企業の社会的な評価も高められます。

離職率が低下する

従業員エンゲージメントの向上には離職率が低下するメリットもあります。企業と従業員が強い信頼関係で結ばれたなら、従業員は安心して働けるようになって離職・転職を考えにくくなるためです。

反対に、従業員エンゲージメントが低い企業は離職率が高くなりやすい傾向があります。従業員が希望する労働条件や職場環境を用意できない企業では、従業員は働き続けることに不安を感じ、離職を考えやすくなるでしょう。

近年は労働人口の減少が深刻な問題となっており、企業は人材確保と同時に人材の定着にも注意を払わなければなりません。従業員エンゲージメントを向上する施策を打てば離職率の低下が期待でき、企業に貢献してくれる人材の定着を図れます。

人材確保につながる

従業員エンゲージメント向上のために行った取り組みは、ホームページ・SNSなどで発信することで社外に広く伝えられます。従業員自身が家族や友人に話すケースもあるでしょう。結果として多くの人が企業に魅力を感じ、人材確保につながります。

企業が市場における競争力を高め、経営の安定性を維持するには、優秀な人材の確保が欠かせません。従業員エンゲージメントの向上に取り組む企業には優秀な人材が多く集まるようになり、企業の将来的な成長に貢献してくれます。

人材の採用・育成には多くのコストがかかります。優秀な人材の確保につながる従業員エンゲージメントの向上は、人材採用・育成コストの低減も期待できるでしょう。

従業員エンゲージメントの3要素

従業員エンゲージメントを向上するには、従業員エンゲージメントの3要素を理解することが大切です。

従業員エンゲージメントの3要素とは「理解度」「共感度」「行動意欲」の3つであり、それぞれが企業と従業員の結びつきの強さを示しています。

理解度
理解度は、従業員が企業の理念やビジョンを正しく理解できているかの度合いを示します。
企業が従業員からの貢献を引き出すには、従業員に企業側の方針や意図を発信し、理解してもらう必要があります。理解度が高い従業員ほど、企業の経営・成長につながる主体的な活動をできるようになるでしょう。
共感度
共感度は、従業員が企業や仲間に対して帰属意識や愛着・誇りなどを持っているかの度合いです。共感度が高い従業員は組織の一員としての自覚を持てるようになり、企業に貢献したいという気持ちを抱きやすくなります。
共感度は従業員同士で影響し合う要素です。共感度が高い従業員は、周囲の従業員と積極的なコミュニケーションを取り、他の従業員の共感度を高めてくれます。
行動意欲
行動意欲は、企業の成長・発展のためにできることを、従業員自身が自発的に取り組もうとする意欲を持っている状態です。行動意欲の高い従業員ほど、自発的な行動を取れるようになり、企業に対して高い貢献をもたらしてくれます。

従業員エンゲージメントの測定方法

従業員エンゲージメントの測定方法としては、従業員エンゲージメントの3要素にかかわる質問を行うアンケート調査が挙げられます。アンケート調査は月1回や半年に1回のように定期的に行って、従業員エンゲージメントの推移を分析しましょう。

また、パルスサーベイも効果的な測定方法です。パルスサーベイとは、脈拍を打つように高い頻度で行われる従業員の意識調査のことです。1分程度で回答できる手軽な質問を、毎週や毎月のルーティーンとして行って、従業員エンゲージメントを測定します。従業員の状態を細かくチェックできる点が、パルスサーベイのメリットです。

従業員エンゲージメントの主な指標

従業員エンゲージメントの測定結果は、以下の3つの指標で分析します。

・エンゲージメント総合指標
エンゲージメント総合指標は、従業員が企業に抱いている印象や満足度についての総合的な評価です。代表的な評価項目には、企業を職場として友人や知人に勧められる推奨度を数値化した「eNPS」があります。

・ワークエンゲージメント指標
ワークエンゲージメント指標は、仕事への熱意や没頭の度合い、仕事から活力を得られているかどうかについての評価です。ワークエンゲージメント指標の高さは、共感度や行動意欲の高さを表しています。

・エンゲージメントドライバー指標
エンゲージメントドライバー指標は、今後の従業員エンゲージメントを向上させるであろう要因を表すものです。「組織ドライバー」「職務ドライバー」「個人ドライバー」の3項目で構成されていて、それぞれ下記の内容を示しています。
組織ドライバー職場の人間関係や労働環境について
職務ドライバー仕事の満足度や難易度について
個人ドライバー従業員の個人的資質が仕事に及ぼす影響について


従業員エンゲージメントを向上する取り組み

従業員エンゲージメントは、企業側が適切な働きかけをすることで向上が見込めるようになります。どのような取り組みが従業員エンゲージメントの向上につながるかを把握しましょう。

従業員エンゲージメントを向上する取り組みには、下記の5つがあります。

企業の理念やビジョンを従業員と共有する

従業員が企業のことを深く理解していないと、企業への愛着や貢献意識を持てません。企業の理念やビジョンを従業員と共有できれば、主体性を持つ従業員の増加につながります。

『主体性とは?社員の主体性を高める方法や自主性との違いを解説』について詳しくはこちら

理念やビジョンを共有するには、経営層から従業員全員に向けてのメッセージを伝えたり、行動指針・目標設定を明確化したりする方法が有効です。

事例を紹介すると、経済ニュースメディアを運営する株式会社ユーザベースは、従業員に向けて「7つのルール」という価値基準の策定をしました。企業の価値基準を明確に示したことで、従業員が企業と同じ目的を目指せるようになり、従業員エンゲージメントの向上を実現しています。

人事評価をより公平なものにする

企業の人事評価が不公平な状態では、従業員は仕事への熱意ややりがいを失い、モチベーション低下や離職を招きます。企業が従業員からの信頼を獲得するには、人事評価をより公平なものにしましょう。

公平な人事評価制度を作るだけではなく、評価する側が正しくフィードバックをしたり、コーチングしたりができる運用体制を整えることも重要です。

事例を紹介すると、テーマパーク運営を主な事業とする株式会社オリエンタルランドでは、従来は多岐にわたっていた評価指標を3個に絞る変更を行いました。仕事で何を頑張ればよいかを従業員が理解しやすくなり、従業員の主体的な行動につながっています。

ワーク・ライフ・バランスを整える

従業員が仕事と生活を両立できるよう、ワーク・ライフ・バランスを整えることも重要です。

従業員に過剰な労働を求める職場では、従業員の心身に大きな負担がかかります。自分の時間を持てずに働く意味が分からなくなり、離職する方も増えるでしょう。

特に新しい価値観を持つZ世代の従業員に対しては、従業員エンゲージメントを高めるためにワーク・ライフ・バランスの整備が必要になります。

名刺管理サービスを提供するSansan株式会社の事例では、7~9月の間に連続で3日間の休暇が取得できる「チャージ休暇」という制度を開始しました。チャージ休暇の導入により、従業員の健康を向上させ、仕事への意欲を高めることができています。

コミュニケーションを活性化させる施策を打つ

企業への帰属意識や愛着・誇りは、従業員同士の良好な関係性によっても培われます。社内イベントの実施や社内SNSの整備など、従業員がお互いにコミュニケーションを取れる施策を打ちましょう。

住宅設備メーカーの株式会社LIXILの事例では、エンゲージメント向上施策の一環として従業員がコミュニケーションを取りやすくする体制作りが行われました。オフィスをコミュニケーションの場として位置付ける、情報共有システムを導入する、管理職向けのフォローアップミーティングを定期的に行う、などが施策の例です。結果として、企業のトップ主導でなく、従業員がお互いに自発的にアイデアを出せる職場環境が生まれました。

従業員同士がアイデアを出し合ってコミュニケーションが活性化され、チームの結束力や企業への貢献意識向上につながっています。

コミュニケーションを活性化させる施策としては、1on1ミーティングの導入も効果的です。1on1ミーティングとは、上司と部下の2人だけで行う対話のことです。心理的安全性を確保しながら1on1ミーティングを行えば、活発なコミュニケーションが期待できます。

従業員がスキルアップ・キャリアアップする機会を作る

従業員自身が成長を実感でき、成長に見合った働き方ができる企業ほど、従業員の企業に対する貢献意識を高められます。従業員の成長レベルに合わせた研修制度の整備など、スキルアップ・キャリアアップする機会を作ることが大切です。

研修に参加した従業員は、「企業が自分の成長をサポートしてくれている」と感じられます。研修によって能力が向上するだけでなく、高いエンゲージメントと主体性を持ち、企業を支える存在として活躍してくれるでしょう。

例を挙げると、メディア事業などを手がける株式会社サイバーエージェントでは、従業員の挑戦を応援する「キャリチャレ」というキャリアアップ施策を実施しています。従業員の成長を促す人材育成制度により、従業員の働きがいを高めることに成功しています。

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まとめ

人事領域において、企業と従業員との間に結ばれる信頼関係である「従業員エンゲージメント」は特に重要です。従業員エンゲージメントは自発的に企業に貢献してくれる人材を生み出し、モチベーションアップや離職率低下、人材確保につながる重要な概念です。

従業員エンゲージメントを高めるには、企業の理念やビジョンを従業員と共有し、それに合わせて人事評価制度の公平化やコミュニケーションの活性化に努める必要があります。また、ワーク・ライフ・バランスを整え、従業員がスキルアップする機会として研修制度やキャリアアップ制度を作るのも重要です。

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