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エンゲージメントとは?ビジネスにおける意味や高める施策を徹底解説
この記事は2023.11.14に公開した記事を再編集しています
2024.12.18更新
少子高齢化が進む日本社会において、企業が抱える課題に人手不足があります。例えば、中小企業では建設・製造・卸売・小売・サービス業の5業種すべてが人手不足を抱えており、働き方改革による長時間労働是正の影響もあって、人材確保が重要です。
※出典:中小企業庁「2023年版 中小企業白書・小規模企業白書」
特に若い世代の人材を確保するためにキーとなるのが、企業と従業員の間の信頼関係である「従業員エンゲージメント」です。
この記事ではエンゲージメントの意味や、従業員エンゲージメントを向上するメリット、測定方法や指標、向上する取り組みについて事例を交えながら解説します。
ビジネスにおけるエンゲージメントとは
エンゲージメントとは、もともと「婚約」「誓約」「約束」を意味する言葉です。ビジネスにおいては人と人、もしくは人と組織の深い結びつきを表す意味で用いられています。
企業がエンゲージメントを高められれば、従業員のモチベーションや顧客のロイヤリティが向上し、持続的な成長を促進できるでしょう。エンゲージメントは、特に人事領域やマーケティングにおいて重要視されている概念です。
人事領域におけるエンゲージメント
人事領域におけるエンゲージメントは、従業員と企業の関係性を示す指標です。「従業員エンゲージメント」や「ワークエンゲージメント」とも呼ばれ、従業員が企業に対して、どれほどの愛着や共感、貢献意欲を持っているかを表します。
企業が従業員のエンゲージメントを高めることで、従業員のモチベーション・生産性アップにつながり、離職率の低下や人材確保の強化が期待できます。そのため、エンゲージメント向上は、企業経営において非常に重要な課題の1つです。
マーケティングにおけるエンゲージメント
マーケティング領域でのエンゲージメントは、顧客との関係性を指す言葉として使われます。特にWebマーケティングでは、顧客がブランドや商品に対してどれだけ関与しているか、どれほどの愛着を持っているかを示す指標です。たとえば、SNSの「いいね」やシェア、ウェブサイトの滞在時間などが、エンゲージメントの具体的な測定方法として挙げられます。
エンゲージメントが高い顧客は、企業やブランドに対して強い信頼を持ち、リピート購入や口コミなどを通じてブランドの拡大に貢献します。そのため、企業は顧客満足度向上だけでなく、顧客エンゲージメント強化も目指し、長期的な関係を築かなければなりません。
従業員エンゲージメントとは
従業員エンゲージメントとは、企業と従業員との間に結ばれる信頼関係のことです。従業員が企業に貢献し、企業は従業員の貢献に対して報いるという関係性の強さを指しています。この概念は、従業員と企業がともに成長し、Win-Winの関係を築くための重要な要素です。
従業員エンゲージメントの高さは、従業員が職場に対してどれだけの愛着や誇りを持っているか、また仕事に対するモチベーションや成長機会の認識と密接に関係しています。エンゲージメントが高い従業員は、仕事への意欲が強く、企業に対する貢献意識も高いケースが一般的です。そのため、生産性が向上し、企業の成果にも大きく貢献します。
ただし、従業員エンゲージメントの定義は企業ごとに異なることが多く、一律に述べることが難しい点も特徴です。従業員エンゲージメントを高めるには、企業が独自の価値観や目標に基づいて、従業員とのつながりを深める施策を講じなければなりません。これは、日本の終身雇用制度の変化や、多様な働き方が広まる現代社会において、特に重要な課題です。
次に、従業員エンゲージメントとよく似た概念である、「モチベーション」「ロイヤリティ」「従業員満足度」との違いを解説します。
従業員エンゲージメントとモチベーションの違い
モチベーションとは、従業者の仕事に対する「意欲」を意味する言葉です。
従業員のモチベーションは仕事に一方的な影響を与える関係であり、モチベーションが高い従業員は積極的に仕事をします。モチベーションは従業員自身の状態によって決まるため、モチベーションの高低は日常的に変動する可能性があります。
一方で、従業員エンゲージメントは企業と従業員が相互に影響し合う関係です。モチベーションと違い、企業と従業員の関係性は日常的に変動するものではなく、適切な取り組みをすれば従業員エンゲージメントが高い状態を保てます。
従業員エンゲージメントとロイヤリティの違い
ロイヤリティとは、従業員が企業に抱く「忠誠心」や「帰属意識」を意味する言葉です。従業員のロイヤリティを高めると、従業員が企業に愛着を持ち、意欲的に業務で成果を上げる効果が期待できます。
ロイヤリティは、あくまでも従業員の企業に対する関係のみを表していることが特徴です。企業と従業員を対等な関係に置く従業員エンゲージメントに対し、ロイヤリティは企業と従業員を明確な主従に置いている点に違いがあります。
従業員エンゲージメントと従業員満足度の違い
従業員満足度とは、従業員が労働条件にどの程度満足しているかを表す指標です。仕事内容や職場環境、給与・待遇などの条件によって、従業員満足度は変動します。
従業員満足度は、あくまでも企業の与えた条件を従業員がどう感じているかを示すものであり、従業員の労働意欲や貢献性を表すわけではありません。従業員満足度が高くても、従業員が企業に貢献したいと思わない可能性はあり得ます。
従業員エンゲージメントには、従業員が自発的に企業に貢献したくなる関係性を目指す点で、従業員満足度との違いがあります。
従業員エンゲージメントが重要な理由
ミレニアル世代やZ世代の価値観に対応する必要があるため |
日本では、1981年~90年代半ば生まれのミレニアル世代や、1990年代後半~2010年生まれのZ世代と呼ばれる人々が企業で活躍するようになりました。 ミレニアル世代やZ世代の人々は、終身雇用や年功序列といった日本企業の慣習にあまりなじみがありません。働き方について新しい価値観を持っており、企業が自分に合っていないと感じた場合はすぐに転職する可能性があるでしょう。 企業がミレニアル世代やZ世代の人材をつなぎとめるには、従業員エンゲージメントを高めて従業員とのつながりを強くする必要があります。 |
能動的に動けるクリエイティブな人材が必要なため |
従来の日本企業では、会社側が与えるタスクを忠実にこなす従業員が高く評価されていました。 しかし、近年は日本経済全体が停滞しており、企業は既存の経営手法では成長を見込めなくなっています。企業が継続的な成長をするには、従業員一人ひとりが活躍して企業の成長に貢献できる体制を整えなければなりません。 能動的に動けるクリエイティブな人材を確保するために、従業員の貢献意識を高められる従業員エンゲージメントが重要となっています。 |
従業員エンゲージメントを向上するメリット
従業員エンゲージメントを向上すると、従業員に関するさまざまなメリットが得られます。企業全体としても組織が強くなり、業績向上にもつながるなどのメリットが得られるでしょう。
以下では従業員エンゲージメントを向上するメリットを4つ紹介します。
従業員のモチベーションと生産性が上がる
従業員エンゲージメントを向上すると、従業員は企業に高い信頼を寄せて「企業の成長に貢献したい」という意識を持ちます。労働の成果や努力が正当に認められていると分かり、仕事にやりがいや熱意を感じてモチベーションを高く保てるようになるでしょう。
従業員の仕事へのモチベーションや主体的な行動が生まれることで、企業全体の生産性も上がります。
従業員のモチベーションや生産性の向上は、商品・サービスの質にもかかわる要素です。結果として顧客満足度の向上につながり、企業の業績アップも期待できます。
従業員が健康になる
従業員エンゲージメントを向上する過程では、労働環境の整備や従業員の健康管理が欠かせません。仕事内容や職場に対して従業員がストレスを感じていると、従業員エンゲージメントを高められないためです。
労働環境の整備や従業員の健康管理を行うことで、従業員に過大な仕事量を割り振ったり、従業員の体調不良や過労を見過ごしたりするケースを防げます。従業員も自身の体調や能力に不安を感じなくなり、健康な状態で働けるでしょう。
従業員が健康的に働く職場は長時間労働や過労死といった問題が発生しにくく、企業の社会的な評価も高められます。
離職率が低下する
従業員エンゲージメントの向上には離職率が低下するメリットもあります。企業と従業員が強い信頼関係で結ばれたなら、従業員は安心して働けるようになって離職・転職を考えにくくなるためです。
反対に、従業員エンゲージメントが低い企業は離職率が高くなりやすい傾向があります。従業員が希望する労働条件や職場環境を用意できない企業では、従業員は働き続けることに不安を感じ、離職を考えやすくなるでしょう。
近年は労働人口の減少が深刻な問題となっており、企業は人材確保と同時に人材の定着にも注意を払わなければなりません。従業員エンゲージメントを向上する施策を打てば離職率の低下が期待でき、企業に貢献してくれる人材の定着を図れます。
人材確保につながる
従業員エンゲージメント向上のために行った取り組みは、ホームページ・SNSなどで発信することで社外に広く伝えられます。従業員自身が家族や友人に話すケースもあるでしょう。結果として多くの人が企業に魅力を感じ、人材確保につながります。
企業が市場における競争力を高め、経営の安定性を維持するには、優秀な人材の確保が欠かせません。従業員エンゲージメントの向上に取り組む企業には優秀な人材が多く集まるようになり、企業の将来的な成長に貢献してくれます。
人材の採用・育成には多くのコストがかかります。優秀な人材の確保につながる従業員エンゲージメントの向上は、人材採用・育成コストの低減も期待できるでしょう。
従業員エンゲージメントの3要素
従業員エンゲージメントを向上するには、従業員エンゲージメントの3要素を理解することが大切です。
従業員エンゲージメントの3要素とは「理解度」「共感度」「行動意欲」の3つであり、それぞれが企業と従業員の結びつきの強さを示しています。
理解度 | ||
理解度は、従業員が企業の理念やビジョンを正しく理解できているかの度合いを示します。 企業が従業員からの貢献を引き出すには、従業員に企業側の方針や意図を発信し、理解してもらう必要があります。理解度が高い従業員ほど、企業の経営・成長につながる主体的な活動をできるようになるでしょう。 |
共感度 | ||
共感度は、従業員が企業や仲間に対して帰属意識や愛着・誇りなどを持っているかの度合いです。共感度が高い従業員は組織の一員としての自覚を持てるようになり、企業に貢献したいという気持ちを抱きやすくなります。 共感度は従業員同士で影響し合う要素です。共感度が高い従業員は、周囲の従業員と積極的なコミュニケーションを取り、他の従業員の共感度を高めてくれます。 |
行動意欲 | ||
行動意欲は、企業の成長・発展のためにできることを、従業員自身が自発的に取り組もうとする意欲を持っている状態です。行動意欲の高い従業員ほど、自発的な行動を取れるようになり、企業に対して高い貢献をもたらしてくれます。 |
従業員エンゲージメントの測定方法
従業員エンゲージメントを把握する方法として主に用いられているのが、「エンゲージメントサーベイ」です。主な測定手段はアンケート調査で、定期的に行う「センサスサーベイ」と、短いスパンで繰り返し行う「パルスサーベイ」の2種類があります。
パルスサーベイ | センサスサーベイ | |
目的 | 短期間で従業員の状況を把握し、早期に問題を特定して改善に役立てる | 長期的な視点で、詳細かつ多面的に組織全体の状態を把握する |
頻度 | 日次・週次・月次など短期スパン | 半年・年次など長期スパン |
規模 | 小規模 | 全社的な調査として実施する |
質問数 | 1~10問程度 | 50~150問程度 |
メリット | ・リアルタイムで従業員の状態を把握できる ・質問数が少ないため、従業員の負担が少ない ・頻繁に実施することで傾向の変化が確認しやすい ・問題解決に向けて迅速に動ける | ・包括的な情報を収集でき、多面的な分析が可能 ・時間をかけて施策を計画・実施できる ・長期的な改善策を立てやすい ・実施頻度が少ないため、企業側の負担が低い |
デメリット | ・得られる情報は限定的で、深い分析は難しい ・頻繁に実施すると負担が重くなる ・問題に対する改善施策を迅速に行わなければ、従業員が不満を抱く可能性がある | ・実施頻度が低いため、短期的な問題を把握しにくい ・集計や分析に時間がかかり、改善施策が遅れる恐れがある ・回答に時間がかかり、従業員の負担が大きい |
パルスサーベイは、短期間で従業員の状況を把握し素早く対応できる一方、詳細なデータを得るには向きません。センサスサーベイは、従業員エンゲージメントを多角的に把握できるものの、実施と分析に時間がかかるという課題があります。企業はこれらの特性を踏まえ、状況に応じて適切な方法を選択することが重要です。
従業員エンゲージメントの主な指標
従業員エンゲージメントの測定結果は、以下の3つの指標で分析します。
・エンゲージメント総合指標 エンゲージメント総合指標は、従業員が企業に抱いている印象や満足度についての総合的な評価です。エンゲージメント総合指標を調査する際に使われる質問には、「eNPS」や「Q12」があります。 ・ワークエンゲージメント指標 ワークエンゲージメント指標は、仕事への熱意や没頭の度合い、仕事から活力を得られているかどうかについての評価です。ワークエンゲージメント指標の高さは、共感度や行動意欲の高さを表しています。 ・エンゲージメントドライバー指標 エンゲージメントドライバー指標は、今後の従業員エンゲージメントを向上させるであろう要因を表すものです。「組織ドライバー」「職務ドライバー」「個人ドライバー」の3項目で構成されていて、それぞれ下記の内容を示しています。 |
組織ドライバー | 職場の人間関係や労働環境について |
---|---|
職務ドライバー | 仕事の満足度や難易度について |
個人ドライバー | 従業員の個人的資質が仕事に及ぼす影響について |
従業員エンゲージメント調査の質問内容例
従業員エンゲージメントの調査では、従業員の企業への愛着や信頼度を測るために、さまざまな質問が用いられます。代表的な調査方法は、「eNPS」と「Q12」です。
・eNPS(Employee Net Promoter Score)
eNPSは、「自分の会社を他人に勧めたいか」という質問を中心に、従業員のエンゲージメントを測定する手法です。
【質問例】
・今の職場を友人や知人にどの程度おすすめしますか?(0~10段階) ・現在の職場に満足していますか? ・あなたの上司はあなたをサポートしていますか? |
・Q12(ギャラップ社の12の質問)
Q12は、ギャラップ社が開発した12の質問から成る調査方法で、従業員エンゲージメントの要素を網羅的に評価します。
【12の質問】
Q01.私は仕事の上で、自分が何を期待されているかがわかっている。 Q02.私は自分がきちんと仕事をするために必要なリソースや設備を持っている。 Q03.私は仕事をする上で、自分の最も得意なことをする機会が毎日ある。 Q04.この1週間で、良い仕事をしていることを褒められたり、認められたりした。 Q05.上司あるいは職場の誰かが、自分を一人の人間として気遣ってくれていると感じる。 Q06.仕事上で、自分の成長を後押ししてくれる人がいる。 Q07.仕事上で、自分の意見が取り入れられているように思われる。 Q08.会社が掲げているミッションや目的は、自分の仕事が重要なものであると感じさせてくれる。 Q09.私の同僚は、質の高い仕事をするよう真剣に取り組んでいる。 Q10.仕事上で最高の友人と呼べる人がいる。 Q11.この半年の間に、職場の誰かが私の仕事の成長度合について話してくれたことがある。 Q12.私はこの1年の間に、仕事上で学び、成長する機会を持った。 |
※引用:GALLUP「Q12®を使って従業員エンゲージメントを測る」 引用日2024/10/22
eNPSとQ12は、それぞれ異なるポイントから従業員のエンゲージメントを測定し、企業が従業員の満足度や信頼度を把握するための強力なツールです。
従業員エンゲージメントを向上する取り組み
従業員エンゲージメントは、企業側が適切な働きかけをすることで向上が見込めるようになります。どのような取り組みが従業員エンゲージメントの向上につながるかを把握しましょう。
従業員エンゲージメントを向上する取り組みには、下記の5つがあります。
企業の理念やビジョンを従業員と共有する
従業員が企業のことを深く理解していないと、企業への愛着や貢献意識を持てません。企業の理念やビジョンを従業員と共有できれば、主体性を持つ従業員の増加につながります。
『主体性とは?社員の主体性を高める方法や自主性との違いを解説』について詳しくはこちら
理念やビジョンを共有するには、経営層から従業員全員に向けてのメッセージを伝えたり、行動指針・目標設定を明確化したりする方法が有効です。
事例を紹介すると、経済ニュースメディアを運営する株式会社ユーザベースは、従業員に向けて「7つのルール」という価値基準の策定をしました。企業の価値基準を明確に示したことで、従業員が企業と同じ目的を目指せるようになり、従業員エンゲージメントの向上を実現しています。
人事評価をより公平なものにする
企業の人事評価が不公平な状態では、従業員は仕事への熱意ややりがいを失い、モチベーション低下や離職を招きます。企業が従業員からの信頼を獲得するには、人事評価をより公平なものにしましょう。
公平な人事評価制度を作るだけではなく、評価する側が正しくフィードバックをしたり、コーチングしたりできる運用体制を整えることも重要です。
事例を紹介すると、テーマパーク運営を主な事業とする株式会社オリエンタルランドでは、従来は多岐にわたっていた評価指標を3個に絞る変更を行いました。仕事で何を頑張ればよいかを従業員が理解しやすくなり、従業員の主体的な行動につながっています。
ワーク・ライフ・バランスを整える
従業員が仕事と生活を両立できるよう、ワーク・ライフ・バランスを整えることも重要です。
従業員に過剰な労働を求める職場では、従業員の心身に大きな負担がかかります。自分の時間を持てずに働く意味が分からなくなり、離職する方も増えるでしょう。
特に新しい価値観を持つZ世代の従業員に対しては、従業員エンゲージメントを高めるためにワーク・ライフ・バランスの整備が必要になります。
名刺管理サービスを提供するSansan株式会社の事例では、7~9月の間に連続で3日間の休暇が取得できる「チャージ休暇」という制度を開始しました。チャージ休暇の導入により、従業員の健康を向上させ、仕事への意欲を高めることができています。
コミュニケーションを活性化させる施策を打つ
企業への帰属意識や愛着・誇りは、従業員同士の良好な関係性によっても培われます。社内イベントの実施や社内SNSの整備など、従業員がお互いにコミュニケーションを取れる施策を打ちましょう。
住宅設備メーカーの株式会社LIXILの事例では、エンゲージメント向上施策の一環として従業員がコミュニケーションを取りやすくする体制作りが行われました。オフィスをコミュニケーションの場として位置付ける、情報共有システムを導入する、管理職向けのフォローアップミーティングを定期的に行う、などが施策の例です。結果として、企業のトップ主導でなく、従業員がお互いに自発的にアイデアを出せる職場環境が生まれました。
従業員同士がアイデアを出し合ってコミュニケーションが活性化され、チームの結束力や企業への貢献意識向上につながっています。
コミュニケーションを活性化させる施策としては、1on1ミーティングの導入も効果的です。1on1ミーティングとは、上司と部下の2人だけで行う対話のことです。心理的安全性を確保しながら1on1ミーティングを行えば、活発なコミュニケーションが期待できます。
従業員がスキルアップ・キャリアアップする機会を作る
従業員自身が成長を実感でき、成長に見合った働き方ができる企業ほど、従業員の企業に対する貢献意識を高められます。従業員の成長レベルに合わせた研修制度の整備など、スキルアップ・キャリアアップする機会を作ることが大切です。
研修に参加した従業員は、「企業が自分の成長をサポートしてくれている」と感じられます。研修によって能力が向上するだけでなく、高いエンゲージメントと主体性を持ち、企業を支える存在として活躍してくれるでしょう。
例を挙げると、メディア事業などを手がける株式会社サイバーエージェントでは、従業員の挑戦を応援する「キャリチャレ」というキャリアアップ施策を実施しています。従業員の成長を促す人材育成制度により、従業員の働きがいを高めることに成功しています。
従業員エンゲージメントを高めるのに成功した企業事例
従業員エンゲージメントを高めることに成功すれば、従業員の満足度向上だけでなく、業務効率化や企業業績アップ効果も得られるケースが大半です。以下では、スターバックスコーヒージャパンとサントリーホールディングスの事例を紹介します。
スターバックスコーヒージャパン
スターバックスコーヒージャパンは、従業員エンゲージメント向上施策で知られる企業です。同社では、従業員一人ひとりが自発的に考え、行動できる環境を提供することを重視しています。そのため、スターバックスは「マルチステークホルダー方針」として以下をWebサイトに掲載しています。
1.従業員への還元 当社は、従業員(以下、パートナー)のエンゲージメント向上や能力開発を行うことを通じて、持続的な成長と生産性向上に取り組み、付加価値の最大化に注力します。その上で、生み出した利益を原資に、マーケット動向を踏まえた昇給予算を確保し、適切な賃金の引上げを行います。それ以外にも、更なるエンゲージメントや生産性の向上に資するよう、人材投資を中心に積極的に取り組むことを通じて、パートナーへの持続的な還元を目指します。 |
具体的な施策として、接客にはマニュアルを設けていません。スターバックスの象徴とも言える、ドリンクカップへの手書きのメッセージは、従業員の自主的な発案によるものです。
また、優れた行動を取った従業員を表彰する制度も整備されており、従業員のモチベーションアップの要因となっています。従業員が自分の成長と企業の発展を両立させられる環境が整っていることが、スターバックスの強みです。
サントリーホールディングス
サントリーホールディングスは「人本主義経営」を経営理念の1つとする企業で、従業員エンゲージメントを高めるために、多様な人材育成プログラムを展開しています。特に「キャリアビジョン面談」や「寺子屋」など、従業員が自らのキャリアについて考え、成長できる仕組みを導入している点が特徴です。さらに、毎年「組織風土調査」を実施し、その結果を基に企業の施策を改善し続けています。
このような取り組みの結果、2023年には従業員の約85%が「サントリーグループで働くことに誇りを持っている」と回答しました。離職率も0.9%と低く、従業員が長期的に安心して働ける環境が整っていることが伺える結果です。
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