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離職防止に必見!子育てと仕事を両立できる職場を作る方法を徹底解説

子育てと仕事の両立

人手不足が深刻になり、倒産の原因ともなる今の社会において、優秀な人材の流出防止は企業の存続にもかかわる重要事項です。一方で、女性社員の4割超、男性社員の1割近くが育児と仕事の両立の難しさによって退職するという調査結果が存在します。

※出典:厚生労働省「令和2年度 仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業」

離職を未然に防ぎ、人材を確保するには子育てと仕事を両立できる職場作りが欠かせません。この記事では主に経営者や人事部門の方に向けて、子育てと仕事の両立を支援する公的制度や、企業が子育てと仕事を両立できる職場を作るコツを事例付きで解説します。



子育てと仕事を両立できる職場作りが大切な理由

ワークライフバランス

子育てと仕事の両立は、多様な人材の活躍や従業員エンゲージメントの向上といった点で欠かせません。育児が始まると仕事との両立が困難になるため、子育てを理由に離職・転職する人材は多くなります。

事実、日本能率協会総合研究所の調査では、「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさで辞めた」という退職理由が女性の41.5%、男性の7.1%を占めています。仕事と子育ての両立支援は、人材流出を防いで組織力を強化する観点からも重要です。

※出典:厚生労働省「令和2年度 仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業」

世界的にも、子育てと仕事の両立は重要なトピックとして注目されています。ハーバード大学のクラウディア・ゴールディン教授は、男女間の賃金格差が大きい理由などについて調査研究し、ノーベル経済学賞を受賞しました。ゴールディン教授は200年分のデータから、長時間労働などが理由で育児や家庭と仕事の両立が難しいことは、女性の就業率低下や賃金格差の最大の原因であると証明しています。

※出典:NHK「ノーベル経済学賞に男女間の格差是正など研究のゴールディン氏」

日本では、女性の社会進出といった世界的な流れも関係し、以下のような就業等に関する法律の改正が行われています。

育児・介護休業法が改正された

育児・介護休業法は、育児・介護と仕事の両立を促進するために改正され、2022年4月から段階的に施行されました。

改正の具体的な内容は、育休等が取りやすくなる環境の整備、休暇の要件緩和・分割取得、産後パパ育休の創設です。改正の目的は、従業員と配偶者が育休・介護休暇を取得しやすくなることです。企業側も改正に合わせて就業規則などを見直し、子育てや介護と仕事が両立しやすい雇用環境を整える措置が必要です。

国は、育児・介護と仕事の両立について、今後もさらなる支援拡充を目指し、法の見直しを行うことを決めています。

※出典:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」

パワハラ防止法の改正でマタハラ防止が義務になった

2022年のパワハラ防止法の改正により、中小企業でもパワハラ防止措置が義務化されたため、マタハラについての対策も必要です。マタハラとは、妊娠・出産・育児や妊娠等に関する制度の利用に関して、従業員が不利益な扱いを受けることを言います。

改正後のパワハラ防止法では、男女雇用機会均等法と育児・介護休業法にもとづき、職場でマタハラの防止策を講じるよう定められています。なお、マタハラはパワハラと被る部分や区別できない面もあるため、ハラスメントとして相談できる窓口や、相談を受けた際に調査を行う体制を整えることが大切です。

※出典:厚生労働省「職場における・パワーハラスメント対策・セクシュアルハラスメント対策・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策は事業主の義務です︕」

なお、マタハラについての詳細は下記の記事をご覧ください。

『マタハラ』について詳しくはこちら

子育てと仕事を両立できる職場作りのための公的制度

両立支援等助成金

子育てと仕事を両立できる職場の実現には、公的な支援制度を知っておくと、組織にもメリットがあります。ここからは、子育てと仕事を両立するための公的制度や助成金について、詳しく解説します。

両立支援等助成金

両立支援等助成金とは、仕事と育児・介護等の両立のため就業環境を整備した中小企業事業主に支給される助成金です。2024年度の両立支援等助成金は、雇用環境などの整備状況によって6つのコースが用意されています。

例えば、育児休業等支援コースは「育休復帰支援プラン」を作成し、プランに沿った休業取得・職場復帰などを行った従業員がいる場合、助成金が支給されます。なお、柔軟な働き方選択制度等支援コースは2024年度から新設されました。新設コースは、企業が「育児期の柔軟な働き方に関する制度」を2つ以上導入したプランを作成し、対象者が一定期間内に利用した場合に支給されます。

両立支援等助成金は、事業の規模や業種、種類によって適用範囲が異なります。また、コースによって対象者や必要書類が違うため、事前の確認と準備が必要です。

※出典:厚生労働省「2024(令和6)年度 両立支援等助成金のご案内」

企業主導型保育事業

従業員の多様な働き方に対応するために、企業主導で事業主と保護者が直接契約できる認可外保育サービスを提供するのが企業主導型保育事業です。企業主導型保育事業は、従業員が子育てしやすい環境を整えるのと同時に、地域の待機児童解消にも貢献します。

認可外保育園は、自治体への申込みが不要な点で、認可保育園よりも手続きがスムーズです。また、国からの助成金が出るため企業にとっては負担が小さく、従業員にとっては認可保育園と同程度の保育料に抑えられるメリットもあります。

また、子供のいる従業員から見ても、企業主導型保育事業は保育士の設置基準や運営基準などが国によって定められているため、安心してわが子を預けられます。

※出典:こども家庭庁「企業主導型保育事業等」

くるみん認定

くるみん認定は、厚生労働省から発行される「子育てサポート企業」の証です。次世代育成支援対策推進法に基づき一定の基準を満たした企業は、くるみん認定を受ける事ができます。

くるみん認定を受けた企業は、くるみんマークを利用可能です。くるみんマークは、 子育てと仕事の両立の程度に応じ、トライくるみんマーク・くるみんマーク・プラチナくるみんマークの3種類があります。

くるみん認定を受けるメリットは、以下の通りです。

・子育て支援に積極的な企業としてイメージアップを図れる
くるみん認定を受けた企業は厚生労働省のホームページで公表され、子育て支援に積極的な企業であると証明できます。また、認定企業はくるみんマークを広報活動に利用でき、イメージアップを図れます。

・従業員定着につながる
くるみん認定を受けたことを従業員に周知すれば、子育てを理由に退職することを事前に防げるため、従業員定着につながります。

・事業の規模によっては助成金を支給される
常時雇用する労働者が300人以下の中小企業の場合、最大50万円の助成金が支給されます。また、公共機関などが発注する工事・業務において、くるみん認定を受けた企業は落札で有利を得られる点もメリットです。

※出典:厚生労働省「くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて」

【事例あり】企業が子育てと仕事を両立できる職場を作るコツ

福利厚生

子育てと仕事を両立するには、従業員の子育てなどに対するニーズを知り、職場全体で支援する仕組み作りが重要です。ここからは、子育てと仕事を両立できる公的制度に加え、職場体制を整えるコツを紹介します。具体的な取り組みを行っている会社ごとの事例も紹介するため、自社で取り組む際の参考にしましょう。

会社が公的制度について周知する

会社側が公的制度について周知し、困ったことがあれば相談できる体制にすると、育休取得や職場復帰がスムーズです。妊娠や出産を機に離職を考える従業員は、公的制度を理解していない可能性があります。職場が育休制度や短時間勤務制度について周知していると、妊娠後も働くイメージを持てます。

なお、育休中の従業員に対して定期的な声掛けを行うことも大切です。例として、国内大手の自動車部品メーカーであるデンソーでは、育休中の社員と定期的なコミュニケーションを取り、職場復帰後の不安を取り除くことに成功しています。

デンソーでは、開発・研究部門の社員の妊娠が分かった際、休職前からサポート体制を整え、育休中の引き継ぎや復帰後の働き方について話していました。育休中は、上司によるメール報告や職場の同僚たちとの定期的な「雑談タイム」を設けます。コミュニケーションは、休暇中の孤立感やチームメンバー間の意識のずれを緩和し、負担なく職場復帰するために重要です。

子育てについての情報を発信する

子育てや育休についてのパンフレットなどを用いて情報発信することで、子育てと仕事の両立について理解が進みます。会社独自の支援制度情報を載せたパンフレットや公式サイトならば、従業員が育児などに関するサポートを身近に感じられます

例として、電気機器メーカーであるオムロンでは、自社の健康保険組合の被保険者のうち第1子を出産した方に向けて育児雑誌「赤ちゃんと!」「ラシタス」を無料配布しています。掲載内容は離乳食の作り方、子供の事故予防など、両親がともに育児に取り組み、子育てと仕事を両立できるよう支援するものです。

『子供のしつけが楽になる アドラー式・子育て講座』について詳しくはこちら

柔軟な働き方を支援する

子育て中のフレックスタイムやテレワーク制度といった多様な働き方を支援する制度を充実させると、妊娠や出産後も働きやすい職場になります。子育て中は、子供の体調による急な早退・欠勤が必要なケースも少なくありません。子供が産まれた後は、子連れ出社や在宅勤務制度などを活用し、臨機応変な働き方ができればキャリアを継続しながら子育てできます。

例として、中外製薬はフレキシブルな働き方ができるよう職場環境を整え、優秀な人材の流失を防いでいる企業です。制度の1つには、子供の送迎や家事などを理由として、一時的に仕事から抜けられるコアタイムのないフレックス制度があります。海外との取引のために深夜対応が必要な社員でも、夕方から夜にかけて仕事を抜け、子供を寝かしつけた後に仕事を始められる、などの形で仕事と生活の調和を図りながら働けます。

まとめ

子育てと仕事の両立を支援する職場環境の整備は、従業員の離職防止と組織力強化のために重要な事項です。育児・介護休業法やパワハラ防止法の改正により、企業は育休の取得やマタハラ防止策を強化する必要があります。

両立支援等補助金、企業主導型保育事業、くるみん認定など、国が用意した両立支援補助制度を活用しながら職場環境を改善しましょう。企業側が育休・産休などの制度や、子育てについての情報を積極的に発信するとともに、フレックスタイムやテレワーク制度など柔軟な働き方を許容するのも大切です。

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