- 人事・総務担当者の課題解決コラム
- HRトレンド
- ワークライフインテグレーションとは?意味やメリットを事例で解説
ワークライフインテグレーションとは?意味やメリットを事例で解説
ワークライフインテグレーションとは、仕事とプライベートを統合し、両方を充実させるという新しい働き方です。「ワークライフバランス」とは、仕事とプライベートを分けるのではなく、双方を調和させ、多様な働き方を実現することを目的としている点で異なります。
ワークライフインテグレーションの推進には、労働生産性の向上や離職率の低下、多様性の推進といった効果が期待されています。この記事では、導入事例を交えながらワークライフインテグレーションの意味やメリットについて解説します。
ワークライフインテグレーションとは
ワークライフインテグレーションとは、仕事とプライベートを統合して、両方を充実させながら生活しようという考え方です。
従来、仕事とプライベートは別物だと考えるのが一般的でした。対して、ワークライフインテグレーションは、仕事とプライベートの両方をうまく組み合わせ、個々人に取ってよりよい人生を生きるという新しい考え方とされています。
ワークライフインテグレーションとワークライフバランスの違い
ワークライフインテグレーションとワークライフバランスは、どちらも働き方について使われる言葉なものの、意味は大きく異なります。
ワークライフインテグレーションは、仕事とプライベートを組み合わせて両方を充実させる考え方です。一方、ワークライフバランスは、仕事に偏りがちな働き方を疑問視し、仕事とプライベートの時間を天秤にかけてバランスを取ることを指します。
ワークライフインテグレーションが仕事とプライベートの統合を図るのに対し、ワークライフバランスは仕事とプライベートを対立させる考え方と言えます。
例えば、育児に専念するために育児休業を取って仕事を休むのがワークライフバランスです。対して、育児をしながら少しでも在宅勤務できる環境を整備するのがワークライフインテグレーションです。
【事例付き】ワークライフインテグレーションのメリット
導入する日本企業はまだ多くないものの、ワークライフインテグレーションにはさまざまなメリットがあります。
ワークライフインテグレーションを実現するメリットについて、具体的な導入事例とともに解説します。
社員の時間の使い方にメリハリがつき生産性が上がる
ワークライフインテグレーションを導入することで、社員の時間の使い方にメリハリがつき、生産性向上に役立つ可能性が高まります。
仕事とプライベートの時間を自分の好きなタイミングで切り替えられると、心身ともにストレスなく働くことが可能です。また、勤務日数や時間、場所などを個人で決められる裁量が大きくなることで、キャリアプランやスキルアップについて主体的に考える人も多くなるでしょう。
成功事例として、ZOZOTOWNでは、週休3日やフルフレックスタイム制度などの多様な働き方に対応する制度を充実させたことが、生産性向上につながっています。週休3日制度を導入するために半年の期間を費やしたものの、週休3日を選択する従業員の残業時間が6割以上削減できました。一方で業務量は減らしていないため、生産性が大幅に向上していると言えます。
従業員側が柔軟性のある時間の使い方を考え、プライベートとのメリハリをつけることで、好循環を生んでいます。
D&I推進につながる
ワークライフインテグレーションの内容によっては、D&I推進につながる可能性もあります。D&Iとはダイバーシティ&インクルージョンの略で、多様な価値観を受け入れ、新しい価値の創造や個性を生かした形態を取ろうとする考え方のことです。
ワークライフインテグレーションに沿った考え方のD&I推進としては、働くママをサポートする時短勤務制度や、介護をする人の隔日勤務制度などの導入が考えられるでしょう。
実際にオリンパスでは、D&Iを推進する目的で、ワークライフインテグレーションの考え方を事業計画に取り入れています。
D&Iを推進する上でオリンパスが特に重視するのが、女性活躍です。そのために、オリンパスは育児・介護を抱える社員に向け、個人の能力を十分に発揮しつつ、キャリアを継続できる労働環境整備を約束しています。具体的には、在宅勤務制度や時短制度の導入、多様な働き方に合致した人事評価制度の整備を実施しました。
ほかにも、仕事と不妊・がん治療を両立する制度の導入や託児所の開設など、手厚いサポート体制を取りました。結果として、オリンパスの管理職の⼥性⽐率は7%を超え、管理職候補でもある係⻑の⼥性⽐率15.4%、従業員の⼥性⽐率20.6%と、女性が活躍しやすい企業に成長しています。
離職率の低下につながる
ワークライフインテグレーションを導入することで、離職率低下も期待できます。
育児や介護のために、フルタイムの勤務やオフィスへの出勤が困難で退職しなければならない人も珍しくありません。あらかじめ時短勤務制度や隔日勤務制度などを整備しておけば、優秀な人材を手放すリスクを軽減できます。
また、リモートワークや在宅勤務制度の導入も、離職率低下につながる1つの方法です。場所を問わず働けるため、家庭の事情で出社が難しい人のほか、地方在住の優秀人材の労働力を確保するのにも役立ちます。
例として、サイボウズ株式会社ではワークライフインテグレーションを推進した結果、離職率が3~5%まで低下した実績があります。
サイボウズ株式会社の過去の離職率は28%と、高い数字を記録していました。ワークライフインテグレーションにあたる制度として、短時間勤務制度やテレワーク制度、最長6年間の育児・介護休暇制度などを整備することで、離職率低下に成功しています。
ワークライフインテグレーションのデメリット・注意点
ワークライフインテグレーションの導入はメリットが多いものの、実施にあたっては社員の意識と会社の制度の両方を変える必要があるため、注意が必要です。何も変えないままワークライフインテグレーションを導入すると、失敗する可能性が高まります。
ワークライフインテグレーションの導入を成功させるため、あらかじめデメリット・注意点についてチェックしましょう。
社員の主体性が必要になる
ワークライフインテグレーションの導入後、うまく運用していくには、社員の主体性が不可欠です。
多様な働き方を叶えるワークライフインテグレーションは、働く日数や時間、場所などを対象者が自分で決めなければなりません。一見、自由に働けることをメリットに感じられるものの、働き方を自分で決められる分、仕事の成果を追求して生産性向上に努める意識が求められます。
社員の主体性・自主性が薄い、生産性向上に向けた意識が低い会社だと、まずは社員の意識改革から始めることがワークライフインテグレーションを成功させる鍵となるでしょう。
人事評価制度を変える必要がある
ワークライフインテグレーションについての企業と個人のあり方
ワークライフインテグレーションを目指すと、自然に企業と個人のあり方も変わります。
企業の視点から見ると、社員個人の意識向上や離職率低下など、多くのメリットがあります。一方、働く社員個人の視点から見ると、キャリアアップをあきらめずに私生活を充実できる点がメリットです。
仕事とプライベートを分けた考え方は、優先順位をつけながら両方のバランスを取らなければならないストレスを生み出します。各々の自由な働き方を推進し、多様な働き方を受け入れることで、新しい価値観や成果を生み出し、企業と個人双方にとってメリットのある相乗効果が発生します。
結果として、仕事と人生をどちらも尊重するという考え方が生まれ、優秀な社員が結婚や出産、介護などで退職せず、長く働き続けられる職場が作れるでしょう。
まとめ
仕事とプライベートの両方をうまく調和させようとするワークライフインテグレーションは、個人と企業双方に多くのメリットをもたらします。
仕事とプライベートを分けた考え方は、「仕事のためにプライベートをないがしろにする」「プライベートのために仕事を退職する」という状況につながるのが欠点です。ワークライフインテグレーションを推進すれば、優秀な社員が自分の人生と仕事の双方を大切にし、長く働き続ける環境を作れます。
ただし、この新しい働き方を成功させるためには、社員の主体性を育みつつ、人事評価制度を見直すことが必要です。研修や適切な制度設計によって、ワークライフインテグレーションが効果を発揮する職場を作りましょう。
関連記事
Related Articles
自己肯定感とは|Z世代社員の自己肯定感を高めるコツ4ヶ条
Z世代の新入社員や、ミレニアル世代の中堅社員の中に、失敗やミスを過剰に恐れる社員が目立つと感じる人事担当者の方もいる...
HRトレンドエンゲージメントアンコンシャス・バイアスとは?意味や具体例・職場への影響を解説
「上司よりも先に部下が帰るのは失礼だ」「事務職や保育士・看護師と聞くと、女性を思い浮かべる」「外国人労働者は、日本の...
HRトレンドエンゲージメント