エンゲージメントサーベイとは?メリットと実施法、質問項目を解説

エンゲージメントサーベイ

離職率が高いと、採用コストの増加、組織内のナレッジと経験の喪失、チームの士気の低下など、多くの問題を引き起こします。反対に、離職率を抑えればこれらのリスクを減らし、既存の従業員のスキルと経験を活用して組織の持続的な成長を支えることができます。

離職率を抑えるために重要なのが社員のエンゲージメントであり、それを測定するのが「エンゲージメントサーベイ」です。

当記事では、エンゲージメントサーベイの基礎的な内容から、エンゲージメントサーベイを行うメリット・手順まで詳しく解説します。

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エンゲージメントサーベイとは?

社内エンゲージメント

エンゲージメントサーベイ(従業員エンゲージメント調査)は、従業員が自分の職場にどの程度積極的に関与し、情熱や愛着を持っているかを測定するための調査です。従業員の満足度、モチベーション、忠誠心、職場での経験などに関する質問を行い、従業員が会社や仕事に対してどれだけポジティブな感情を持っているのかを測定します。

エンゲージメントサーベイの主な目的は以下の通りです。

● 従業員のモチベーションや帰属意識、忠誠心を把握する
● 組織の問題点を明らかにし、改善につなげる
● 離職率の低下や生産性の向上を目指す
● 従業員満足度を高める

エンゲージメントサーベイの結果は、組織の課題を発見し、具体的な施策を立てるための重要な情報源です。適切に活用されれば、従業員のモチベーション向上や組織の生産性向上につながります。

エンゲージメントと従業員満足度の違い

エンゲージメントと従業員満足度は、従業員の状態を表す指標として重要ですが、その意味合いが少し異なります。

従業員満足度は、従業員が自分の仕事環境、給与、福利厚生などの条件にどれだけ満足しているかを測定する指標です。従業員満足度が高いと、従業員は仕事を続ける意欲を持ちやすく、離職率を低く保つことにもつながります。しかし、従業員が仕事に満足していても、それが直接的に高い生産性や積極的な仕事の姿勢につながるとは限りません。

一方で、エンゲージメントは、従業員が仕事に対してどれだけ情熱的で積極的に関与しているかを示す指標です。つまり、「会社に貢献したい」という行動的な側面に焦点を当てています。エンゲージメントが高い従業員は、自分の仕事に深く没入し、創造的で生産的な成果を出す傾向があります。

近年の人材不足が進む中において、企業は従業員満足度とエンゲージメントの両方を高めることが、優秀な人材を確保し、長期的に在籍してもらう上で非常に重要です。

エンゲージメントサーベイを行うメリット

エンゲージメントサーベイのメリット

エンゲージメントサーベイは、従業員が自分の職場にどれだけ情熱を持ち、積極的に参加しているかを把握するための貴重なツールです。以下では、エンゲージメントサーベイを実施することにより得られる主な4つの利点を紹介します。

離職率が低下し、人材不足を解消する

エンゲージメントサーベイを活用し、従業員のエンゲージメントを改善できれば、離職率の低下につながるでしょう。

エンゲージメントが高い従業員は、会社への愛着や帰属意識が強く、やりがいを感じて仕事に取り組んでいるため、離職する可能性が低い傾向です。一方で、エンゲージメントが低い従業員は、不満を抱えやすく、新しい機会を求めて転職する可能性が高まります。これは、GALLUP社による調査でも明らかになっており、エンゲージメントが高い社員のほうが、離職率が低い傾向を示しています。

少子高齢化の影響により人手不足が深刻化している中、優秀な人材の確保と定着は企業にとっての課題となっています。特に人材不足が顕著な業界や地域において、離職率の低下は、人材不足の解消に有効な手段です。採用活動には多額のコストと時間がかかります。一方、既存の従業員のエンゲージメントを高め、離職率を低下させることによって、人材獲得にかかるコストや時間を大幅に削減できます。

従業員エンゲージメントの改善につながる

エンゲージメントサーベイを通じて、従業員の現在のエンゲージメントレベルを把握し、課題を特定することが可能です。その上で、従業員のニーズに合った施策を立案・実行していくことで、従業員のエンゲージメントを改善できるでしょう。

従業員エンゲージメントの改善によって、以下のようなメリットが期待できます。

・組織への貢献意欲の向上
エンゲージメントの高い従業員は、自社の発展のために自発的に行動するようになります。

・生産性の向上
エンゲージメントの高い従業員は、自発的に業務に取り組み、成果を出すことが多くなるので、組織全体の生産性が結果的に高まります。

・優秀な人材の確保と定着
エンゲージメントの高い従業員は、自社への愛着が強く、他社への転職意欲も低い傾向なので、優秀な人材の確保と定着が期待できます。

・顧客満足度の向上
エンゲージメントの高い従業員は、顧客対応にも熱意を持って取り組む傾向にあるため、顧客満足度の向上にもつながります。

組織の課題を把握できる

組織改善とは、企業の文化や風土、従業員の意識や行動といった組織内部の課題を特定し、それらを改善することで組織全体の生産性や業績向上につなげていく取り組みです。

エンゲージメントサーベイを通じて、例えば以下のような組織の課題を把握できます。

● 経営方針や戦略に対する従業員の理解度
● 上司と部下の関係性
● 職場の人間関係や職場環境
● キャリア開発や能力開発の機会
● ワークライフバランスの状況
● 組織文化や価値観の共感度

エンゲージメントサーベイの結果を基に、組織は各種問題に対処するための具体的な行動計画を立てることが可能です。

生産性の向上につながる

エンゲージメントの高い従業員は、自ら主体的に業務に取り組み、高い成果を上げる傾向にあります。

厚生労働省の資料によれば、「仕事のエンゲージメントを向上させることは、個人の労働生産性の向上につながる可能性があると示唆される」とされています。また、労働生産性(マンアワーベース)の水準を見ても、正の相関関係があると示唆されており、労働生産性を1~2%ほど、上昇させる可能性があることが分かっています。

※出典:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について

生産性が向上すると、単に作業が速くなるだけでなく、品質の向上、顧客満足度の向上、最終的には企業の収益増加にもつながるでしょう。

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エンゲージメントサーベイを実施する手順

エンゲージメントサーベイを実施する手順は、主に以下の通りです。

1.実施目的を明確にする
まずは、なぜエンゲージメントサーベイを実施するのか、具体的な目的を明確にする必要があります。組織課題の把握や従業員のモチベーション向上など、狙いを明確にすることが重要です。
2.設問を決める
エンゲージメントサーベイの目的に基づいて、どのような情報を得たいかに応じて設問を決めます。設問の方向性の例としては、従業員のエンゲージメントレベル、職場環境に対する感覚、上司や同僚との関係性などが挙げられます。
3.エンゲージメントサーベイを実施する
設定した調査項目に沿って、従業員に対してエンゲージメントサーベイを行います。全従業員を対象とすることが理想ですが、予算や時間的制約がある場合は、一部の部門や職位などをサンプルにしても問題ありません。
4.結果を分析する
収集したデータを分析し、部門間の違いや、組織全体の課題を把握します。統計的な分析手法を活用するのがポイントです。
5.再度サーベイを行う
エンゲージメントサーベイは定期的に実施し、継続的な改善につなげていくことが重要です。従業員の意識変化を確認しながら、施策の効果を検証しましょう。

上記のようなステップを踏まえることで、エンゲージメントサーベイを効果的に活用し、組織の課題解決と生産性向上につなげられます。

エンゲージメントサーベイの質問項目は?

エンゲージメントサーベイの質問内容

エンゲージメントサーベイの質問項目としては、主にいくつか定型化されたものがあるので、一度参考にしてみるのがよいでしょう。

従業員のエンゲージメントの現状を評価し、改善が必要な分野を特定する際にぜひ役立ててください。

組織についての質問

従業員が自身の職場の文化、組織の方向性、組織のリーダーシップに対してどのように感じているかを理解するための設問です。組織に関する設問を確認することで、以下のようなメリットが期待できます。

● 経営層と従業員とのコミュニケーションの状況が把握できる
● 組織の目標や方針に対する従業員の理解度が確認できる
● 組織文化や価値観の共有度合いを把握できる
● 部門間の情報共有や連携状況の課題が特定できる
設問例
● 自社の経営理念や事業目標を理解しているか
● 上司や経営層の方針や意思決定プロセスが明確か
● 部門間の情報共有やコミュニケーションが十分か
● 会社の将来への期待や愛着を感じているか
● 自社の組織文化や価値観に共感しているか

特に、経営層と従業員とのギャップや部門間の連携不足など、組織内部の課題を浮き彫りにすることが重要です。

人事評価についての質問

従業員が自社の人事評価制度をどのように捉えているかを把握するための設問です。人事評価に関する設問を確認することで、以下のようなメリットが期待できます。

● 人事評価制度の公平性や納得性を確認できる
● 昇進・昇格の機会や基準の明確さを把握できる
● 上司による部下のフィードバックの状況が分かる
● 能力開発や育成への取り組みを確認できる
設問例
● 人事評価の基準が明確で公平だと思うか
● 自身の業績や能力が適切に評価されていると感じるか
● 昇進や昇格の機会が得られていると感じるか
● 上司からのフィードバックが建設的で役立つものか
● 自身の能力開発や育成に取り組んでいると感じるか

評価の公平性や昇進機会の状況を確認することで、従業員のモチベーションや定着に直結する重要な示唆が得られます。

業務内容についての質問

従業員が自身の業務に対してどのような意識を持っているかを把握するための設問です。業務内容に関する設問を確認することで、以下のようなメリットが期待できます。

● 従業員の仕事に対するやりがいや満足度が把握できる
● 業務の適正な配分や効率化の課題を特定できる
● 自律性や裁量権の程度を確認できる
● 成長機会の有無や課題を明らかにできる
設問例
● 自身の業務内容に満足しているか
● 仕事のやりがいや達成感があるか
● 業務量やタスクの配分は適切だと感じているか
● 業務遂行に必要な裁量権や自律性が与えられているか
● 新しいスキルを習得したり、成長したりする機会があるか
● 得意分野を活かせる業務に従事できているか

やりがいや成長機会の状況を確認することで、業務を通じたエンゲージメントの向上につながる要素を把握できます。

人間関係についての質問

従業員が職場の人間関係をどのように捉えているかを把握するための設問です。人間関係に関する設問を確認することで、以下のようなメリットが期待できます。

● 上司・部下関係の良好さを把握できる
● 同僚との協力体制や信頼関係が確認できる
● コミュニケーションの活発さや活性化の状況が分かる
● 職場の雰囲気や風通しの良さを確認できる
設問例
● 上司との良好な人間関係が築けているか
● 同僚との協力体制や信頼関係が感じられるか
● 職場のコミュニケーションは活発で、風通しがいいと感じるか
● 職場の人間関係に満足しているか
● 職場の雰囲気は活気に満ちていると感じるか
● 上司からの適切なフィードバックを受けられているか

職場の人間関係が良好であれば、従業員のエンゲージメントが高まりますが、問題がある場合は、ストレスの蓄積や離職につながる可能性があります。

その他の質問

エンゲージメントサーベイの質問項目には、前述した「組織」「人事評価」「業務内容」「人間関係」以外にも、さまざまな側面を確認するための設問が考えられます。

たとえば、「ワークライフバランス」や「健康面・メンタルヘルス」など、従業員のウェルビーイングに関する設問などを取り入れるのもよいでしょう。

設問例
● あなたの親族・友人にこの会社への入社を勧められるか
● 適切に休めているか
● いまの職場に満足しているか
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エンゲージメントサーベイの参考に使える調査方法

調査方法

エンゲージメントサーベイの質問項目や回答方式には、参考として活用できる代表的な方法もあるので、困ったときは参考にするとよいでしょう。

ここでは、従業員のエンゲージメントを効果的に測定し、改善策を立案するのに役立つ、調査方法を3つ紹介します。

eNPS

エンゲージメントサーベイの参考に使える調査方法の1つとして、eNPS(Employee Net Promoter Score)があります。eNPSは、従業員の職場への推奨度を数値化し、エンゲージメントを測定する指標です。

eNPSの調査方法は以下の通りです。

【内容】
従業員に「あなたは知人や友人に、この会社を就職先として紹介したいですか?」といった内容を尋ねる。

【算出方法】
推奨者:9点と10点の回答者
中立者:7点と8点の回答者
批判者:6点以下(0点から5点)の回答者

eNPSスコアは、推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値で算出する。

eNPSは、シンプルな質問で回答しやすい、他の指標と比較しやすいというメリットがあります。

Q12

Q12は、世界的なコンサルティング会社のGALLUP社が開発した、従業員のエンゲージメントを測定するための12の質問項目です。

Q12の主な特徴は、主に以下の通りです。

● 12の質問項目で構成されており、従業員の基本的な要求から、上位レベルのニーズまでを網羅している
● 質問項目は「仕事理解」「成長機会」「承認」「職場からのケア」「所属感」など、従業員エンゲージメントの中核的な要素を測定する
● 業界平均などとの比較も行えるため、自社の強みや課題が明確になる

GALLUP社の詳細な研究とデータに基づいており、実際にエンゲージメントと組織の成果との関連を確認しながら、結果を分析することが可能です。

UWES

UWES(Utrecht Work Engagement Scale)は、オランダのユトレヒト大学の研究チームが開発した、従業員のエンゲージメントを測定するための尺度です。

UWESの特徴は、主に以下の通りです。

● 活力(Vigor)・献身(Dedication)・没入(Absorption)の3つの要素で構成されている
● 17の質問項目から成る
● 標準化された信頼性と妥当性が確認されている

UWESは、従業員のエンゲージメントの多面的な把握に適した調査手法と言えます。エンゲージメントの3側面の特徴を捉えることで、組織課題の分析や改善施策の立案に役立てられるでしょう。

エンゲージメントサーベイの活用事例

エンゲージメントサーベイの活用事例はさまざまあるものの、結果を確認するだけではエンゲージメントは当然向上しません。いかに改善していくかが重要であり、改善施策の浸透には、研修の実施も効果的です。

サーベイを活用した研修の成功事例はこちらから

以下では、エンゲージメントサーベイの活用事例について解説します。

東京海上日動火災保険株式会社

東京海上ホールディングスでは、パーパスの浸透度の測定やD&Iの推進を目的に、カルチャー&バリューサーベイを毎年実施しています。

また、社員のエンゲージの状態を確認するために、エンゲージメントサーベイも全社員に対して行っています。社員区分やジェンダーなどによる差異、および課題の把握に役立てており、同社のエンゲージ面と数値は高水準で推移しているのが特徴です。

※出典:東京海上ホールディングス「Human Capital Report」

また、東京海上日動火災保険株式会社では、従業員エンゲージメントの状態を把握するために、組織改善クラウドも導入しています。

※出典:東京海上日動火災保険株式会社「組織改善サービス「モチベーションクラウド」の導入」

株式会社リクルート

株式会社リクルートでもエンゲージメントサーベイを行っており、結果を元に職場で対話、および改善のためのアクションを実施しています。

また、従業員サーベイも別途実施しており、個人が持つ特性がポジティブ時、ネガティブ時にどう表出するのかについて言語化し、マネジメントやチームの相互理解に役立てられています。

※出典:株式会社リクルート「エンゲージメント」

まとめ

エンゲージメントサーベイで得られたデータからは、従業員のエンゲージメントレベルの高い点と低い点、改善が必要な領域、従業員の期待に応えている部分などが明らかになります。結果を見ながら、実際の職場改善につながる具体的な戦略を導き出しましょう。

また、エンゲージメントサーベイは一度きりで終わるものではありません。組織が成長し、変化するにつれて、従業員のエンゲージメントも変化します。そのため、定期的にサーベイを実施することで、改善策が効果を上げているかを評価し、新たな問題が生じていないかをモニタリングすることが重要です。

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