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創考喜楽

第5回 <秀抜ビジネスマンは知っている片づけノウハウ>
モノの持ち方・手放し方

COLUMN

人はなぜモノを持ちたがるのか

 今回と次回は整理収納の基本=「知っていると楽になるノウハウ」についてお話します。オフィスでも自宅でも整理のプロセス自体は変わりません。最初は引き出しなど、小さなスペースから始めてみることをおすすめします。

 

 さて、少し前までモノは富と幸せの象徴でした。持てる者は勝者、持たざる者は敗者という古典的な構図です。ところがバブル経済が終焉を迎えた頃から、モノの豊かさに潜む「虚しさ」に気づく人々が増えていきました。断捨離を極めたい、必要なモノを必要なだけ持ちたいと考える、“所有分野の意識高い系”が現れたのです。社会の風潮として、モノに対する人のスタンスがその頃から変わってきたといえます。

 

一方、私はそんなに深く考えてモノと付き合っていない、ほしいモノ・必要なモノを何となく手に入れていたら何となくモノが増え、いまも散らかった家に自然体で住み続けているだけ……という“何となく派”の方も多いでしょう。

 

とはいえ、心理学的にも整理と心の状態は少なからず関わりがあるといわれています。TVでよく見るゴミ屋敷の映像を思い出してください。その家がゴミ屋敷になってしまった真の理由はたぶん、そこの住人が「モノを捨てられないから」「モノを拾ってきてしまうから」等ではありません。

ある時期から他者とのつながりがすべて絶たれてしまった。その不安と寂しさから自分の心を守るために、住人は“ゴミの城壁”を無意識のうちに造り上げた……という可能性もあるのです。

 

モノを溜めるという行為には、そのような自己防衛の意味も含まれるといわれます。つまり「モノを持ちたい、溜めたい」という所有欲求は、人間の本能にごく近い行為であるのです。

 

職場でも自分のまわりをモノでかためている人はいませんか? 周囲への何らかの防衛本能が無意識に働いているのかも知れませんね。

 

 

モノを擬人化して考えると関係性が見えてくる

 人が二人いればそこに人間関係が生じるように、モノと人との間にも関係性が生じています。整理収納アドバイザーの理論には、モノを擬人化して互いの関係を考えるという項があります。そのメリットは、「自分にとって必要か否か」が瞬時に浮き彫りになる点にあるのです。

身近なモノひとつひとつに向き合い、「自分はちゃんと使っているか」「相手(モノ)を活かしてあげられているか」を考えてみましょう。もし活用できていないなら、そのモノが必要とされ輝ける場に移して (=手放して) あげることを考えます。

 

 具体的には、確実に使ってくれる人に譲る、リサイクルに出す、ネットで売るなどの方法が考えられます。でも、あげられる人や場がないときは思い切って処分しましょう。人生の尾ひれのように、ガラガラと不必要なモノを引き連れて重い足取りで未来へ向かうのは賢明な選択とはいえません。

先延ばしにせず、「そのとき」に自身で決断し、手放す際に感じた胸の痛みをしっかり憶えておくことで、不必要なモノを買わない体質へと自然に移行できるはずです。

 

不必要なモノを手放すコツ

 目の前のモノに向き合って「自分はなぜそれを所有しているのか」「なぜ捨てられないのか」を考えるくせがつくと、自分の周囲がだんだんと片づいていきます。若干観念的な物言いになりますが、自分の執着を客観的に捉えられた時点で、モノの呪縛からすでに半分は解放されているのです。

 

 ひとつひとつ向き合うなんて時間がかかってかなわない!!と思われていることでしょう。でも、要・不要の判断に関しては誰でも必ず進歩するので、最初はひとつに30秒かかっていたのが、そのうち10秒、5秒、ついには0.5秒…とどんどん速くなります。

 「いまじゃなくていいや」と後回しにしてしまうと、また後日、同じプロセスをゼロからたどって再度考える時間が必要になります。より具体的な方法については次回お話しようと思います。

 

 整理も仕事も同じ。「いま」「ここで」「自分で」判断することが重要なのです。その意識が身に付けば、すっきりしたシンプルライフへの転換も夢ではありません。

 


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