とりあえず仕事が遂行できる場所であれば職場の環境はどうでもよい、という人もいるでしょう。確かに会社では「仕事ができればいい」のですが、副作用なく大きなメリットを社内にもたらしてくれる整理という良薬を試さない手はありません。
社内の整理が促進されるとどのような好ましい変化が起きるのか、想像するのはたやすいことです。整理の効果が企業内でどのように波及するかについて考えてみましょう。
一次的な効果としては、見た目がすっきりする、探し物がなくなる、社内業務がスムーズになる、掃除がいき届きやすくなる……などが挙げられます。
それらをきっかけに、よい環境で気分よく働ける、部署間の連携が取りやすくなり業務効率が上がる、取引先のフォローに時間を使える、社内での会話が増える……などの二次的な効果が現れます。
さらには、この二次的効果が持続することにより、社内の人間関係が良好になる、外部の人や情報が入ってきやすい、クライアントからの信頼が厚くなる……など、思わぬところにも整理の効果が三次的に波及していきます。
前述のように、整理の効果は多様なかたちで随所に表れます。それらは「時間的効果」「精神的効果」「経済的効果」の3つに分類することができます。
仕事にもっとも直結した効果といえば「時間的効果」でしょう。社内に毎日探し物ばかりしている人はいませんか? 会議の資料がない、契約書の写しが見つからない、ハンコがない……など、何かを探すことで大事な時間を消費しているのに、本人にその自覚はありません。
探し物に費やす時間は、人生でもっとも無駄な時間といわれます。経営者・管理職にとって、生産性の低下につながる探し物は“見えない敵”です。いままで探し物に使われていた多くの時間が正規の業務に活用されるだけで業績は自然に向上し、「経済的効果」をもたらします。
また、書類を共有するシステムを整備して個人の書類を減らせば、莫大な枚数の紙やコピーのコストを削減できます。業務内容を見直す過程で、その企業ならではの「経済的効果」につながるポイントをいくつも見出すことができるでしょう。
じわじわと効いてくるのが「精神的効果」です。オフィスが整い、必要な書類や資料、文房具などがサッと見つかることで、イライラやストレスが軽減されます。ストレスが減って気持ちに余裕が出てくれば、社員同士の人間関係も円滑になります。人間関係が良好で気持ちよく働ける職場であればES(従業員満足度)が向上し、社員の定着率も上がります。
ごく単純な例のみを挙げましたが、整理が無数のメリットをはらんでいることに賢明な皆さんはもう気づかれたことでしょう。
5S活動を含め、整理収納に企業が正面から取り組むと多くのよい変化が現れます。組織の無駄・無理をなくせば、困難な局面にもスピード感をもって柔軟に対応することができます。
人口減少と超高齢社会を迎え、以前のようにはモノやサービスが売れない日本でこれから先どう生き残っていくのか。より大きな市場を求めてどうグローバル化を進めるのか。
大企業に限らず、いま、すべての企業に難しい命題が課せられています。
企業内整理は、いわば「積極的な無駄の削ぎ落し活動」といえます。物理的・プロセス的にスリム化をはかることで、社会情勢に臨機応変に対応できるシンプルさと合理性を備えた強い企業へとリボーン(再生)できるのです。
整理には、そのような未曽有の可能性が秘められています。