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創考喜楽

第2回 <会社の整理収納>
個人およびチームの整理をどう促進するか

COLUMN

集団で整理収納に取り組むことの難しさ

 会社とは個人の集合体であり、様々な考え方を持つ人々で構成されています。整理の得意な人もいれば、片付け全般が苦手な人やモノがなかなか捨てられない人もいるでしょう。周囲を観察してみると、常に机の上が書類や小物で埋まっている人、日に何度も書類を探す人、終業時にはデスクをすっきり片付けてから帰る人など、色々なタイプの人が見受けられるはずです。

 

 また、人によってその場が「散らかっている」と感じる度合いも異なるため、ある人が「散らかっていて乱雑だ」と感じる場所も、大らかな感性の人はまったく何も感じない……という事態が起こります。加えて、収納スキル(モノのしまい方や管理のスキル)に関しても、個人差は少なからず存在します。

 

 このように多様な個人差や条件が交錯する複雑な環境において、たまたま5S委員や美化委員に任命された人は大きな憂鬱の種を抱えることになりがちです。難しい課題だと悲観することなく、リーダーとなった人がいかに楽しく、前向きに取り組めるかが成果の大きさにつながるのも事実です。

 

「企業内整理を進めることは難しい」との前提を踏まえた上で、具体的な企業内整理のプロセスをさらっと見ていきましょう。

 

 

「黄門様の印籠」的特権の整備

 企業内整理に必要な第一歩は、組織の整理に臨む体制を整えることにあります。「組織として取り組んでいる」という姿勢を明確にしないと、多くの社員から協力を得ることはできません。
例えば社長直轄のプロジェクトとの位置づけにするなど、「協力しやすい」、あるいは「協力せざるを得ない」状況を作り出すことが大切です。

 

 誰もがひれ伏す役職の人をトップに据えれば、プロジェクトのスピード感は必然的に上がることになります。「そんなことが重要⁉」と驚かれる方もいるでしょうが、整理収納活動を業務の一環として捉えてもらうことがすべての出発点となるのです。

 

心に働き掛ける啓蒙活動の実施

 ひと昔前までは、「机が乱雑なのはよく働いている証拠」というような悪しき風潮もありましたが、いまや伸びている多くの企業のオフィスは美しく快適です。今後人材不足が加速度的に進む状況でもあり、働きやすい快適なオフィスであることは入社を決める条件の一つに数えられています。
ただし、オフィスの設備を充実させただけでは企業内整理は促進されません。そこで働く人々の心が新たな方向にシフトされない限り、新しいデスクの上にまた書類が積もるだけです。

 

 整理に対する新たな認識と前向きな気持ちの醸成には、講座やセミナーの実施が有効です。各人の先入観を取り払い、同じ目的を共有するためには、やはり「学びの時間」が必要なのです。
プロジェクトのリーダー以外に、専門の外部講師など「その道のプロ」の口から効果と実利について話してもらうと、素直に聞いてくれる方も多いのではないでしょうか。

 

 

チーム分けで整理の課題を「自分ごと」にする

 整理に関する共通認識ができたら部署などでチーム分けをし、リーダーの指示のもと、それぞれの問題点を洗い出します。リーダーは全体のバランスを見ながら、その上で各チームの短期目標と最終ゴールについて助言を行います。

 

 ここで大切なのは、社員の誰もが「整理は他人ごとではなく、自分ごとだ」と思えるよう参加意識を高めることにあります。そのために、自分たちでゴールを決めてもらうのもよいでしょう。
併せて、チームごとに成果を競わせたり、表彰の機会を設けたりするなどのアイディアで、モチベーションをいっそう高め、維持する工夫を演出することも必要となります。

 

 整理収納や片付けは、公私も年齢も問わず、すべでの人が一生関わり続けなくてはならない行為です。社内の誰もが「自分ごと」として考えられるようになれば、企業内整理はすでに半分成功したといえるかも知れません。

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