社員を即戦力にするオンボーディングとは?導入目的やポイントも解説

オンボーディングとは、入社した新入社員や中途社員がいち早く仕事に慣れて仕事ができるようにサポートを行うことです。オンボーディングは内定後から始まるのが特徴で、3か月~6か月、1年程度の期間を設けて内定者の早期定着・即戦力化を図ります。

当記事では、オンボーディングの必要性や目的、入社前後の施策例、導入方法などを紹介します。オンボーディングを導入するメリットや成功のポイントを知りたい方は、ぜひご覧ください。

オンボーディングとは?

オンボーディングとは新入社員の組織に対する適応を促し、企業の利益につながる人材へ育成する活動を意味します。新入社員にいち早く成長して実力を発揮してもらうためには一人ひとりの個性に応じた人材育成プランを作成し、実践する活動が不可欠です。オンボーディングはプランの作成から実施までのプロセスを体系化し、効率的に行うための手段と言えます。

オンボーディングの対象は、中途採用者を含むすべての新入社員です。社会人経験の有無にかかわらず組織に新規で参加した人はすべて、オンボーディングの対象と考えます。

世界的な大手IT企業の数社では早期からオンボーディングを導入し、一定の成果をあげてきました。近年では日本においてもオンボーディングへの関心が高まり、成功事例も多数あります。

オンボーディングの必要性

オンボーディングが注目されている理由の1つは、新卒採用者の早期離職率の高さです。厚生労働省の調査によると、2019年3月に大学を卒業して就職した人の3年以内の離職率は31.5%にも上ります。高校を卒業した人の場合は35.9%、短大などを卒業した人の場合は41.9%とより深刻です。

※出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)を公表します」

加えて近年では、働く人の価値観が多様化したことによる中途採用者の定着率の低さも問題視されています。

早期離職する採用者が増加するほど人材採用コストや人材育成コストはかさみ、企業側の損失につながります。そこで、定着率向上を図るための人材育成手法として、オンボーディングが注目されました。

新入社員研修やOJTとの違い

オンボーディングと似た概念の用語には、「新入社員研修」や「OJT」があります。オンボーディング・新入社員研修・OJTはいずれも人材育成を進める上での重要事項にあたるものの、下表の通り、ニュアンスが異なる点には注意しましょう。

オンボーディング新入社員研修OJT
主な目的組織に対する適応の促進社会人としての基本的なマナー・スキル習得業務における即戦力化
主な教育内容企業の基礎的情報やビジネスマナーなど企業の基礎的情報や社会人としての意識改革業務上必要な知識やノウハウ
サポート期間継続的(短くても3か月)一時的(3か月未満)一時的(3か月~1年、数日~1週間の場合も)

新入社員研修とは、新入社員を対象に社会人としての基本的なマナー・スキルを指導・育成する研修をいいます。OJTは、直属の上司や先輩社員が業務を通じて実践的なノウハウを新入社員に教育する活動です。

オンボーディングでは経営理念・行動指針・社風など、組織に適応するために役立つ基礎的な情報も教育します。新卒採用者に対しては身だしなみ・電話応対といった、ビジネスマナーを教育することも珍しくはありません。

一方の新入社員研修やOJTで教育する内容は多くの場合、オンボーディングと比較して限定的です。また、新入社員研修やOJTは入社直後の一時的な教育プログラムにあたり、オンボーディングほど長期的かつ継続的なサポートは行いません。

ただし、新入社員研修やOJTも広い視点で捉えると、「企業にとって有益な人材を育成する活動」です。そのため、新入社員研修やOJTをオンボーディング施策の1つとして考えることもあります。

オンボーディングの目的

オンボーディングの実施には一定の時間とコストがかかるものの、長期的に考えると、企業にとってのメリットは多くあります。以下では、企業がオンボーディングを実施する目的や、実施による企業側のメリットを紹介します。

新入社員・若手社員が即戦力になる

オンボーディングは、新入社員・若手社員の性格特性に合う形で即戦力化を狙うための良い手段です。近年の新入社員や若手社員は社会背景や教育環境の変化から、失敗から学習する経験や正解のない問題の解決に取り組む経験を多く積まずに成長してきた傾向があります。

また、一部の人は業務に取り組む中で不明点が生じた場合も「能力が低い」と思われることへの不安が強く、素直に質問できません。結果として状況を改善できず、成長のチャンスを逃すことがあります。オンボーディングによって人材育成施策のアップデートを行えば、より時代に即した形で新入社員や若手社員を育成し、即戦力化を図れるでしょう。

また、オンボーディングは中途採用者を即戦力化するためにも重要な活動です。中途採用者は前職で習得したノウハウにとらわれ、組織への適応が遅れることで、本来のスキルを発揮できないケースがあります。オンボーディングを通じて組織への適応を促せばいち早く、企業の利益につながる人材への成長を図ることが可能です。

社員の離職を防止できる

オンボーディングでは懇親会などの機会を有効に利用し、社員同士の関係性強化を図ることもあります。人間関係の悩みは、人材定着率を低下させる一因です。オンボーディングを通じて社員間コミュニケーションを活性化すれば、定着率の向上を図れます。

さらに、入社前に実施するオンボーディングは、下記のギャップによる離職を回避するための重要な機会です。

・求人に記載された待遇と実際のギャップ
・自分自身が思い描いた仕事内容と実際のギャップ

入社後に感じるギャップが大きいほど、早期離職リスクは高まります。オンボーディングを通じてギャップを埋めた上で入社の日を迎えさせれば、リスク回避が可能です。

従業員満足度が上がる

従業員満足度とは、企業に対する社員の総合的な満足度のことです。従業員満足度は主に、下記の要素によって決定されます。

・企業理念やビジョンに対する共感度合い
・マネジメントへの納得感
・企業や社会に対する貢献の実感度合い
・人間関係の良好さ
・職場環境の快適さ

オンボーディングによって社員間コミュニケーションが活発化すれば組織における人間関係や職場環境は改善されて、従業員満足度が向上するケースもあります。従業員満足度の向上によって商品やサービスの改善が進めば、消費者満足度の向上も図れるでしょう。

オンボーディングの施策例

優秀な人材の定着化を図るためには入社前と入社後の両方でオンボーディングを実施し、適切な施策に取り組む必要があります。以下では、それぞれのタイミングで行う施策の具体例とポイントを解説します。

入社前に行うオンボーディング

入社前のオンボーディングでは内定者の疑問や不安の払拭と信頼関係の構築などを目的として、下記の施策を実施しましょう。

・入社前面談
・入社前研修
・既存社員との懇親会
・内定者交流会 など

入社前面談は採用担当者が内定者と個別に向き合い、企業の魅力を伝えることで内定辞退を回避するための重要な機会です。コミュニケーションを深める中で待遇面や仕事内容の認識合わせも行うと、入社後のミスマッチも回避できます。新卒採用者に対する入社前研修ではビジネスの基礎知識や企業の基本情報などを教育すると、社会人になることへの不安の軽減が可能です。

既存社員との懇親会はさまざまな人とのコミュニケーションを通じて、企業文化や社内の雰囲気を実感してもらうために重要な機会です。懇親会や内定者交流会で「同じ目標に向かって努力する仲間がいること」を実感させるとモチベーションが向上し、内定辞退のリスクを軽減できます。

中途採用者の場合は内定から入社までの期間が短いため、新卒採用者同様の施策をすべて行うことは困難です。中途採用者に対しては「社内報を送付して、企業の基本情報を伝える」などの施策を行うことを検討しましょう。

入社後に行うオンボーディング

入社直後の新入社員は大きな不安を抱えていることが多い一方、知識やスキルの習得意欲は旺盛です。入社直後に行うオンボーディングでは下記の施策を通じて不安の払拭を図るとともに、企業理念・組織独自のルール・業務知識などを教育します。

・懇親会
・ランチ会
・新入社員研修 など

懇親会やランチ会は、既存社員との交流を通じて関係性の構築を図る良い機会です。予算に余裕があれば入社式後に飲み物や簡単な食事を用意して、パーティー形式のイベントを開催する方法もあります。

新入社員研修ではマネジメント層もしくは先輩社員が登壇し、企業理念や企業の取り組むビジネスの全体像を説明します。そして、「どのような仕組みで企業が利益を上げているか」を理解させ、知識やスキルを発揮するための土台を形成することが重要です。

入社直後の不安が払拭された後にはOJTを実施し、実際に仕事にあたる上で必要な知識やスキルを教育する施策が検討されます。OJT期間も適時1on1ミーティングを実施し、新入社員の状況把握と信頼関係の構築を図りましょう。

オンボーディングの導入方法

オンボーディングを有効に機能させるためには正しい手順を理解した上で十分な準備を行い、実施することが重要です。オンボーディングの実施後には振り返りを行い、有効性を検証しましょう。

オンボーディングの導入から振り返りまでの大まかなフローは、以下の通りです。

STEP1オンボーディングの目標を設定する
STEP2プランを作成する
STEP3環境を整える
STEP4オンボーディングを実施する
STEP5振り返りを行う

以下では各フローで実施する内容の詳細を解説するため、自社で導入する際の参考にしてください。

オンボーディングの目標を設定する

オンボーディングは、企業の課題を解決して組織力を高めるために実施します。オンボーディングの目標を設定する際には前段階として、解決したい企業の課題を明確化しましょう。その上で「課題を解決するため、どのように新入社員を活躍させるか」を検討し、目標として設定します。

プランを作成する

オンボーディングでは通常、1年程度の長期スパンで目標の達成を目指します。プランを作成する際には1年を複数の期間に区切り、「1週間後や1か月後にはどこまで到達する必要があるか」といった段階ごとの理想状態を定義しましょう。

人事部やマネジメント層のみで作成したプランは現場の考えと乖離している可能性があるため、完成後に各部門へと共有し、フィードバックを受けることがおすすめです。フィードバックを受けた場合は現場の意見をもとにプランを再検討し、より良い内容へのブラッシュアップを行ってください。

環境を整える

オンボーディングを実施する事前準備として、新入社員を受け入れる環境を整備します。新入社員研修の担当者と現場の指導者で教育方針に違いがある場合には、認識のすり合わせが必要です。新入社員の配属先に人間関係のトラブルがある場合は原因を追求し、解消しましょう。

新入社員のフォロー体制がない企業では環境整備の一環として、メンター制度を導入する方法もあります。メンター制度とは、新入社員に近い立場の既存社員が「メンター」を担当し、仕事や人間関係の悩みの相談相手になることです。メンター制度を導入すると新入社員に、些細な悩みも相談しやすい環境を提供できます。

オンボーディングを実施する

オンボーディングの実施中は定期的に新入社員と面談して、目標の達成度合いの確認とフィードバックを行いましょう。入社直後から1か月程度の期間は週単位など、比較的高い頻度で面談を行うことがおすすめです。入社から一定期間経過後は本人の様子を確認しつつ、面談の頻度を減らすこともできます。

オンボーディングは企業全体で協力し、実施することが理想です。新入社員へのフォローは現場に任せず、人事部も積極的に関わりましょう。

振り返りを行う

企業が成長する過程では定期的に採用活動が発生します。実施したオンボーディングプランをより良いものにブラッシュアップして次回に生かすためにも必ず、振り返りを行いましょう。

振り返りを行う際には新入社員の配属先・研修担当などの関係者から広く意見を収集して、評価点と改善点を明確化します。より企業の利益につながるオンボーディングプランの作成につなげるためには新入社員本人の意見も聞き、改善点を探ることがおすすめです。

オンボーディングを成功させるポイント

人材不足が深刻化する時代においてはオンボーディングの成否によって、企業の未来が変化する可能性もあります。オンボーディングを成功させるためのポイントを把握し、優秀な人材の育成と囲い込みを図りましょう。

以下では、オンボーディングを成功させるポイントを解説します。

組織全体でオンボーディングに関わる

既存社員の中にオンボーディングの重要性を理解していない人がいると新入社員へのアプローチに温度差が生じ、逆効果になるリスクがあります。オンボーディングを成功させるためにはすベての社員に新入社員を歓迎して、サポートする意識を持たせましょう。

組織全体としてオンボーディングに関われば新入社員が「大切にされている」ことを実感でき、帰属意識が高まります。同時に、既存の社員にも当事者意識が芽生えて組織の一体感がより高まる、好循環を狙えるでしょう。

人間関係のサポートを行う

新入社員が快適に働くためには、多方向からの支援が不可欠です。オンボーディングでは縦・横・斜め方向の人間関係を意識した対策を検討し、手厚いサポートを提供しましょう。

縦の人間関係とは、所属部署の上司や先輩社員とのつながりです。縦の人間関係では「質問のタイミングが分からない」「気軽に相談できない」といった悩みが生じやすいため、「報連相の時間を設定する」などの対策を検討できます。

横の人間関係とは、同僚とのつながりです。同僚とのつながりは、内定者交流会や新入社員研修を活用して後押しできます。斜めの人間関係とは直属以外で1〜2年程度上の先輩社員とのつながりを意味し、部署の垣根を超えて気軽に悩みを相談できる環境を整備することが重要です。

PDCAサイクルを重視する

オンボーディングプランの作り方には唯一の正解がありません。そのため、PDCAサイクルを重視して改善を繰り返し、自社にとって最適な方法を見出しましょう。

PDCAサイクルとは、「P(計画)」「D(実行)」「C(評価)」「A(改善)」を繰り返し、品質の向上を図る取り組みです。たとえば、オンボーディングの目標を達成するまでに想定以上の期間を要した場合には施策内容を見直し、ブラッシュアップを図る必要があります。そして、次回の採用活動ではブラッシュアップしたオンボーディングプランを実践し、再び評価・改善に取り組みましょう。

目標を細分化する

新入社員の早期戦力化を支援するためには、スモールステップ法を取り入れる方法もあります。スモールステップ法とは、短期間で達成できる小さな目標を複数設定し、最終的な目標の達成を目指す人材育成手法です。スモールステップ法を採用すると成功体験の積み重ねによって自分自身の評価が高まり、新入社員のモチベーションを引き出せます。

スモールステップ法を実践する際には、目先の目標を達成するたびに適切なフィードバックを行うことも重要です。目標の達成を目指す中で新入社員の課題が発覚した場合には対処法を検討し、解決をサポートしましょう。

まとめ

オンボーディングとは、新入社員・若手社員の組織に対する適応をうながし、企業利益に貢献できる人材に育成する活動のことです。オンボーディングには、新入社員・若手社員の即戦力化、社員の離職防止や従業員満足度の向上を図る目的があります。

入社前のオンボーディングは入社前面談、入社前研修、内定者交流会、入社後には懇親会やランチ会、新入社員研修などが挙げられます。オンボーディングを導入する際は、目標を設定した上でプランを作成し、新入社員を受け入れる環境を整備することが大切です。

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