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何気ない言葉もハラスメントかも?|エイジハラスメントにあたる事例を紹介
事業主によるハラスメント対策が義務化される中、ハラスメントにあたる事例について注目が集まっています。上の立場の人から不当な扱いを受けるパワハラや性的な言動により不快な思いをするセクハラは広く問題視されていますが、年齢いじりや年齢による呼び方の違いが「エイジハラスメント」にあたるケースもあります。
当記事では、エイジハラスメントとは何か、どのような言動がエイジハラスメントにあたるのかを詳しく解説します。無意識のうちに相手に不快な思いをさせないよう、ハラスメントについて正しい知識を身につけましょう。
エイジハラスメントとは?
エイジハラスメントとは、相手の年齢を理由として行うハラスメント全般のことです。具体的な年齢に絡めた言動のほか、世代に関連付けて行われるものもエイジハラスメントにあたる場合があります。
エイジハラスメントに対策するためには、まずハラスメントそのものを理解することが大切です。そもそもハラスメントとは、相手を不快にさせたり脅威を感じさせたりと、不利益や損害を与える言動を指します。金銭など物理的な損害がなくとも、相手の尊厳を傷つける場合はハラスメントに該当します。
エイジハラスメントの場合、年齢や世代を理由としており、性別に関係なく行われる可能性があることが特徴です。年下や部下が目上の人間に対して行う場合もあり、必ずしも上司や先輩側が加害者となるわけではありません。
ハラスメントの種類はさまざまで、中には空調の温度設定や専門用語の使用に関するものなど、人によっては意外に思えるものも含まれます。エイジハラスメント以外のハラスメント事例として、たとえばパワーハラスメントやセクシャルハラスメント、アルコールハラスメントなどがあげられます。
本人に悪意がなくとも、相手の受け取り方次第でハラスメントと判断されることもあるため、相手の尊厳や人格を傷つける言動は避けましょう。
エイジハラスメントの現状
エイジハラスメントは、エイジズム(年齢差別)により起こります。エイジズムとは、年齢にもとづいて行われる差別や偏見のことです。最初にエイジズムが提唱されたアメリカでは、1960年代より研究が始まりました。
※出典:The world’s largest collection of open access research papers「現代社会におけるエイジズムとジェンダー」
アメリカの研究では、エイジズムには否定的な差別のみならず、肯定的な偏見も含まれていると考えられています。たとえば高齢者に対して「人生経験が豊富で、知見が広い」「自由な時間が多く、幸せ」などステレオタイプなイメージは、言わば肯定的なエイジズムです。
一方、日本のエイジズム研究は1980年代以降に始まっており、アメリカよりも遅れている状態です。日本では高齢化が社会問題になっており、令和4年時点の調査で人口の29%となりました。
今後も社会における高齢者の割合が増え続けることを考えると、エイジズムにもとづいた差別や偏見のみならず、雇用問題も懸念されます。現在では、年齢によって雇用が制限されないように法改正が進められています。
実際に年齢差別はある?
年齢差別の経験について、内閣府が高齢者にアンケートを行ったところ、約4分の1にあたる人数が「年齢が原因で実際に困った経験がある」と答えています。加えて、すべての世代を対象にしたアンケートでは、半数以上の方が高齢者に対する差別や偏見があると感じていることが示されました。
※出典:内閣府「平成15年度 年齢・加齢に対する考え方に関する意識調査結果」
調査では当事者の60代や70代以上のみならず、20代や30代の若年層も高齢者に対する偏見や差別があると感じている割合が高いことが分かります。ただし上記の数字は平成15年度時点のものであり、現在は多少変化している可能性もあります。
エイジハラスメントにあたる事例
エイジハラスメントは、どの年齢層の方にも起こり得る問題です。年齢が高い方に向けたもののみならず、若い世代に向けたエイジハラスメントも存在します。
あらゆるハラスメント行為に対して慎重になっている職場でも、意図せず誰かが問題視される言動を行っていることがあるので注意が必要です。
ここではトラブルを避けるための参考として、エイジハラスメントに該当する言動の具体例を6つ紹介します。
年齢いじりをする
大人になると、人によっては年齢の話はタブーとなります。ちょっとした言動であっても、その場の勢いで年齢に絡めて相手をからかったり、評価したりすると、不快な気持ちにさせかねません。
たとえば下記の言い方は、年齢いじりに該当します。
・「その年になってまだ〇〇ができないのか」 ・「四捨五入すると30代」 ・「もうすぐアラサーだね」 |
社会常識や業務について、一定の年齢を超えたら知っていて当然、できて当たり前と思う方がいます。相手が特定の業務について知らなかったりできなかったりした場合、「〇〇歳にもなって」と年齢を理由に叱責すれば、エイジハラスメントになりかねません。
地位について話すときも、「もう40代なのに、まだそのポジションなのか」と言えば、エイジハラスメントです。
おじさん・おばさんのイメージがつくこともある30代や40代は、特に敏感になりやすい年齢とも言えます。「四捨五入で30代」「もうすぐアラサー」など、年齢を強調する言い方は相手を不快にさせることがあるため避けましょう。
年齢によって業務を変える
相手の年齢のみを見て業務を変える行為も、エイジハラスメントの一種です。たとえば下記の指示や配置を行っていると、エイジハラスメントと言えます。
・「若手は進んで雑用をこなさないと」 ・「若い子にこんな難しい業務は無理だから」 ・「シニアの人は〇〇担当で」 |
年齢が若い層に対して、力量や経験に関係なく「若いから」と特定の仕事を割り振る風潮は、エイジハラスメントです。年齢を理由に新人扱いしたり、経験が少ないと決めつけて雑用を押し付けたりしないように注意しましょう。
若い方のみならず、年齢が高い相手や定年間近の社員に対して、あえて専門的な仕事を割り振らないこともエイジハラスメントに該当します。業務の割り振りは、年齢ではなく適性やスキル、本人の希望を考慮して行う必要があります。
失敗を年齢のせいにする
業務などで失敗したとき、経験や力量ではなく年齢を理由にすることがあります。責めようと思って口にするときだけでなく、励まそうとしたときに無意識に言う場合もエイジハラスメントとなり得ます。
たとえば相手に対して、下記の言葉をかけていないでしょうか。
・「まだ若いから仕方ない」 ・「もう年なんだから無理しないで」 ・「若い子が頑張らないと」 |
上記は、若いうちは経験不足で失敗するものだ、と励ますつもりで口にしていても、相手によっては年齢のせいで軽視されているように感じる言葉です。年齢が高い方に上記の言葉を言えば、お年寄り扱いしているように受け取られかねません。
「最近は残業続きだったから、疲れているのでは」など、年齢ではなく行動を理由にあげて気遣ったほうが、スマートな言い方です。
年齢によって呼び方を変える
年齢の具体的な数字を言わずとも、相手の意に沿わない扱いや呼び方をすれば、エイジハラスメントと言えます。また、同じ職場で年齢によって呼び方を変えることも、相手を不快にさせるおそれがあるため、注意が必要です。
下記のような呼び方や言い方をしている場合、エイジハラスメントに該当する可能性があります。
・若い女性社員に対して「〇〇ちゃん」 ・「おじさん」または「おばさん」 ・「〇〇歳をすぎたらババア」 |
ほかの社員は「〇〇さん」と呼んでいる中で、若い女性社員に対してのみ「〇〇ちゃん」と呼ぶと、本人や周囲を不快にさせかねません。親しみを込めているつもりでも、人によっては馴れ馴れしいと感じる失礼な呼び方です。
また、「もうおじさんですね」「30代ならおばさんだね」など年齢を理由とした呼び方も、エイジハラスメントにあたります。
プライベートに言及する
年齢と同じく、プライベートに関することを根掘り葉掘り聞く行為も避けましょう。内容によっては、エイジハラスメントやほかのハラスメントに該当する場合があります。
たとえば下記の言い方は、プライベートに言及したエイジハラスメントです。
・「〇歳までには出産しておかないと」 ・「〇歳なんだから、そろそろ結婚しないとね」 ・「〇歳だし、恋人くらいいるでしょう」 |
プライベートなライフイベントに関する質問は、そもそも業務とは無関係です。単なる世間話のつもりでも、プライベートに踏み込んだ質問をすれば、セクシャルハラスメントにあたる可能性もあります。
さらに年齢も絡めて指摘すれば、エイジハラスメントにも該当します。年上や経験者からのアドバイスのつもりで言葉をかけていたとしても、相手が不快に感じれば円滑なコミュニケーションとは言えません。
世代でひとくくりにする
]世代としてひとくくりに考えたり、非難や攻撃したりすることも、エイジハラスメントと受け取られる場合があります。
世代でひとくくりにしたエイジハラスメントの例は、下記の通りです。
・「これだから、ゆとり世代は」 ・「いかにもZ世代って感じがする」 ・「団塊の世代ってそうだよね」 |
世代をあらわす言葉自体は、本来、ネガティブな意味は込められていません。あくまで誕生した時期ごとに分けた呼び方であり、どのような意味で使用するかによって印象は異なります。
世代を話題に取り上げるときは、エイジハラスメントにつながらないように、ネガティブな文脈で使用しないことが大切です。
エイジハラスメントが発生するのはなぜ?
意図せずエイジハラスメントを行う理由として、下記の4つがあげられます。
・コミュニケーションが不足している ほかの世代の人物とコミュニケーションを取る機会が少なければ、相手がどのような言動に不快感を示すか分からず、距離感を誤る可能性があります。幅広い世代とコミュニケーションを積極的にとり、ジェネレーションギャップを理解しておくことが大切です。 ・相手の立場に立てていない 何を言えば相手が不快感を抱くのか、どのような気持ちになるのかを想像できていないことも、エイジハラスメントの原因です。自分にとって問題ない言葉でも、相手にとっては不快な言い方となるケースもあります。口にする前に相手の立場で考えて、言い方は適切か不適切なのかを判断しましょう。 ・エイジハラスメントに対する理解が浅い そもそも、エイジハラスメントに対する理解が不十分な可能性も考えられます。たとえば「自分も言われてきたから」「自分は何とも思わないから」と安易に周囲と同じ言動をしてしまうケースです。ハラスメントは、言った本人の意図ではなく言われた側がどのように感じたかを基準としています。エイジハラスメントに対する理解が浅い場合、無意識のうちに相手を傷つけるおそれがあります。 ・会社の体制に問題がある エイジハラスメントに限らず、職場で起こるさまざまなハラスメントは、会社の体制が整っていれば防ぎやすくなります。ハラスメント対策として、経営層や管理職が取り組みへの重要性を理解して、相談窓口など積極的な施策を取っているかが大切です。 |
効果的なエイジハラスメント対策をするためには、個人個人が生じやすい場面を十分に理解した上で、意識的に行動する必要があります。
エイジハラスメントを防止するための方法
前述の通り、エイジハラスメントはさまざまな要因で生じます。場合によっては本人に悪気がないまま口にしているケースもあるので、単純に注意するのみならず、状況に応じた対策を取ることが大切です。
ここでは、エイジハラスメントを防止するための方法を4つ紹介します。
コミュニケーションの取り方を見直す
エイジハラスメントが生じる原因には、コミュニケーション不足による認識のズレが挙げられます。幅広い世代や異なる立場の社員と、普段からコミュニケーションを取れる環境を整えることで相互理解が進み、エイジハラスメントを防止できるでしょう。
コミュニケーションを取るとき、意識したいポイントは、下記の通りです。
・現状を把握する ・指示は明確に出す ・言葉に余計な形容詞はつけない ・気持ちはストレートに伝える |
指示出しを行うとき、まずは現状を正確に把握しなくてはなりません。たとえば、すでにエイジハラスメントが生じている場合は、本人はなぜそのような発言をしたのか把握した上で、注意や指示をする必要があります。何をしてほしいのか、どこを改善してほしいのか、指示を明確に出すことも大切です。
指示を出したり注意したりするときの注意点は、余計な形容詞をつけないことです。「まあまあ良かった」「今回は良かった」など余計な一言があると、誤解を招きます。「この企画はここのアイデアが素晴らしかった」「今の言い方は〇〇さんに失礼だと思う」とストレートに伝えましょう。
ハラスメント研修を行う
会社側が社員向けにハラスメント研修を行うことで、ハラスメントへの理解が深まります。ハラスメント研修では、講義によって具体的にどのような言動が問題となるかを社員全員に学んでもらいます。社内の担当者が行うほか、社外から専門家を呼んで実施する方法もあります。
ハラスメント研修が必要とされる理由は、ハラスメントが必ずしも悪意によって生じているとは限らないためです。自分自身の経験をもとに、無意識のうちにエイジハラスメントを行ってしまう可能性もあります。励ますつもりでかけた言葉で相手を不快にさせていることもあり、必ずしも悪意があって行われているとは言い切れません。
まずはハラスメント研修で、どのような言動が問題なのかを理解してもらう必要があります。具体的な事例や問題点、改善の必要性を学んでもらえば、悪気なく行われていたエイジハラスメントのリスクを軽減できます。
社内制度を整える
企業全体でハラスメント防止のための制度を整えることも大切です。すでに法令では、パワーハラスメント防止措置をとることが義務化されています。エイジハラスメントや、ほかのハラスメントを防止できるよう、法令も遵守しつつ社内を整備しましょう。
ハラスメント行為を防止するための施策として、たとえば下記の方法があげられます。
・掲示物などによる社内周知 ・朝礼で経営層からの周知 ・社内相談窓口の設置 ・社内規則の整備 |
まずは企業レベルで積極的に対策へ取り組むと、掲示物や社内メールなどで周知しましょう。掲示物やメールを作成するときは、厚生労働省が配布している無料のリーフレットなどが参考になります。一方的な通知のみでは情報が行きわたらない場合もあるため、朝礼などで経営層から口頭説明することも大切です。
実際にハラスメント行為を受けた社員がいつでも駆け込めるように、社内相談窓口の設置や社内規則の整備も合わせて行います。
定期的にアンケートを実施する
ハラスメントが発生しているかどうか、現状把握のために定期的にアンケート調査を行うことも大切です。正確な解答を1件でも多く得るには、匿名性を重視した方法でアンケート調査を行う必要があります。
アンケートを実施するときは、Webアンケート機能を利用したり、匿名の調査票を配布したりしましょう。社内アンケートに盛り込むと良い質問内容の例は、下記の通りです。
・勤務先の人間関係は良好か ・過去数年以内(3年など)にハラスメントを受けたことがあるか ・どのような被害があったか(暴行・脅迫など) ・ハラスメントを見たり相談を受けたりしたことがあるか ・ハラスメントに対してどのような行動をとったか |
本人のみならず、周囲でハラスメントを受けている社員はいるかどうかも回答できる内容にしましょう。
社内アンケートの実施から結果のまとめ・分析までには1か月半~2か月程度の期間がかかります。調査仕様やアンケート内容などを吟味し、状況の改善に活用できるアンケートを実施しましょう。
もしエイジハラスメントが発生したら?
どれだけ対策していても、職場でエイジハラスメントが発生することはあります。エイジハラスメントは企業イメージの悪化にもつながるため、放置せず早い段階で解決に向けて動き始めましょう。
万が一、エイジハラスメントが発生したときは、下記の手順で対応します。
(1)ヒアリングを行う | まずは、事実確認と現状の把握が必要です。エイジハラスメントの被害を訴えてきた社員に対して、担当者が下記内容をヒアリングしましょう。 ・なぜエイジハラスメントが起こったのか ・根本的にどのような問題があったのか 加害者とされる側にもヒアリングを行うときは、事前に被害者側の同意を得ておきましょう。 仮に加害者と被害者の意見に食い違いがあるときは、より正確に自体を把握するために、第三者への聞き込みも必要です。 |
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(2)外部・内部の相談機関を利用する | エイジハラスメント被害者が安心して相談できるように、環境を整備します。必要に応じて、弁護士や社会保険労務士など社外の専門家への相談も検討する必要があります。 社内に相談窓口を設けるときは、事前に個人の秘密は厳守されること、ささいな内容でも気軽に利用できることを周知しておきます。 |
発生したエイジハラスメントの事例を参考に、人事や担当者と相談して社内規則や社内体制を見直すことも大切です。たとえば社内規則にハラスメントに対する具体的な罰則を記載したり、目撃した第三者が報告しやすいように内部通報制度を導入したりする方法があります。
エイジハラスメントを放置すると、社員から企業が使用者責任を問われるリスクも生じます。優秀な人材の流出や離職率の増加にもつながるため、放置せず早急な対応策の実施が必要です。
まとめ
エイジハラスメントとは、年齢や世代を理由にして行われるハラスメントのことを言い、エイジズム(年齢差別)が原因で発生します。エイジズムは無意識に行っている場合も多く、何気ない一言がエイジハラスメントに当たる可能性もあります。
たとえば、本人の実力やスキルを無視して年齢によって業務の割り振りを行ったり、ライフイベントへの言及を年齢を絡めて行ったりすることはエイジハラスメントです。企業は、何がハラスメントに該当するのか、研修や社内周知によって社員にしっかり説明した上で、もし実際にエイジハラスメントが発生した時にスムーズに相談できる環境を作る必要があります。
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