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【事例付き】AI時代に重要度を増すデジタルマーケティングとは?
デジタルマーケティングは、Webサイトやデジタル広告、マーケティングオートメーション(MA)ツールなどを活用して行うマーケティング活動全般を指します。従来のアナログなマーケティング手法とは異なり、デジタル技術を駆使して、より効果的かつ効率的に顧客にアプローチすることが可能です。AI時代に突入した今、デジタルマーケティングの重要性はますます高まっています。
この記事では、デジタルマーケティングの概要やメリット・デメリット、成功事例、主な手法について詳しく解説します。
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デジタルマーケティングとは
デジタルマーケティングとは、Webサイト・デジタル広告・MAツールなどを利用して行うマーケティング活動全般を意味する言葉です。従来のマーケティング活動は、看板・ポスティング・ポスターといったアナログ手段で行うことが主流でした。デジタルマーケティングではデジタル分野のあらゆる技術・手法を駆使し、マーケティング活動に取り組みます。
デジタルマーケティングの主な特徴は、以下2点です。
・オムニチャネルなマーケティング活動を行う ・データドリブンを重視する |
オムニチャネルとはECサイト・実店舗などの異なるチャネルを区別せず、顧客が自由に活用できる状態を作ることです。デジタルマーケティングではインターネットの世界とリアル世界を区別しないため、オムニチャネルなマーケティング活動を展開できます。
データドリブンとは、収集・蓄積したデータに基づいて経営判断を行うことです。デジタルマーケティングでは担当者の考えや先入観に依存せず、多種多様なデータに基づく意思決定を重視します。
デジタルマーケティングの主な仕事内容
デジタルマーケティング担当者の主な仕事内容は、以下です。
・デジタルデータの分析 ・分析結果に基づく施策の立案 ・施策の実行と検証 |
上記の業務の最終的な目的は、集客や売り上げにつながる仕組みづくりとリピーターの育成です。目的を達成するためにデジタルマーケティング担当者は広範なマーケティング知識を活用し、デジタルデータの分析や施策の立案・実行・検証に取り組みます。
デジタルマーケティングとWebマーケティングの違い
Webマーケティングは、デジタルマーケティングの一部にあたる概念です。デジタルマーケティングとWebマーケティングには、以下の違いが存在します。
デジタルマーケティング | Webマーケティング | |
目的 | デジタルを通じたビジネスモデルの創出・顧客との接点増加 | 顧客との接点増加 |
活動内容 | Webサイト・SNS・メールマガジン・ECサイト・AI・アプリ・VRなどデジタルに関連するサービス全般 | Webサイト・SNS・Web広告などWebサービス全般 |
主な活用ツール | CMS・MA・SFA・CRMなど | CMS |
WebマーケティングはWebサービスを訪問した顧客の動向に注目して課題の分析や施策の立案・実行・検証を行い、見込み顧客の獲得や売り上げアップを目指す手法です。デジタルマーケティングではより広範な視点から顧客の動向をとらえ、より多様なマーケティングツールも活用して、企業の利益につなげることを目指します。
デジタルマーケティングが重要になった理由
デジタルマーケティングの重要性が高まった理由は主に、以下3点です。
・技術の進歩によりデジタル機器が普及した ・顧客の意思決定がデジタル世界と不可分になっている ・AIの発達によりビッグデータの解析が容易になった |
総務省の公表データによると、2022年時点におけるスマホ保有世帯の割合は90.1%と、9割を超えています。同時点におけるSNSを利用している個人の割合は80.0%で、幅広い世代にデジタル化が浸透している状況です。
近年では多くの顧客が購買行動を取る前に、SNSやWebサイト上の口コミ・評価を確認します。情報収集手段や意思決定ルートが変化した顧客の購買意欲を後押しするためには、デジタルマーケティングによるアプローチが欠かせません。
AIの発達によってビッグデータを解析し、ビジネスに役立てる取り組みが一般化したことも、デジタルマーケティングの重要性が高まっている一因です。多くの企業がAI技術を有効に活用し、ビジネス展開している時代の市場競争に勝つためには、経営戦略としてデジタルマーケティングに取り組むことが必要でしょう。
デジタルマーケティングのメリット・デメリット
デジタルマーケティングにはさまざまなメリットが期待される反面、いくつかのデメリットもあります。売り上げアップや収益拡大を狙う上では以下で紹介するメリット・デメリットを正しく理解し、デジタルマーケティングの特徴を把握した上、自社との相性を見極めましょう。
デジタルマーケティングのメリット
デジタルマーケティングの主なメリットは、以下3点です。
・顧客の行動を正確に分析できる デジタルマーケティングでは顧客の行動データを蓄積し、詳細に分析します。分析結果を見ると消費者インサイトを推測でき、施策のブラッシュアップにつなげることが可能です。 ・マスマーケティングと比較して費用がかからない デジタルマーケティングの広告手法は多くの場合、マスマーケティング(テレビ、ラジオCM・新聞広告・雑誌広告など)と比較して低コストです。ターゲットを絞ったデジタルマーケティング施策を実践すれば、広告費の削減を狙える可能性もあります。 ・AIの進化による恩恵を受けられる AI技術を活用すればビッグデータから顧客一人ひとりのニーズを的確に把握し、個別の対応を取ることも可能です。AI技術はキーワード選定やコンテンツ作成のサポートツールとしても活用でき、さまざまな方法で恩恵を受けられます。 |
デジタルマーケティングのデメリット
デジタルマーケティングへ取り組む際には、以下のデメリットもあることを意識しておきましょう。
・施策の即効性を期待しにくい デジタルマーケティング施策の効果が出るまでには通常、数か月以上の期間が必要です。採用した手法によっては効果が出るまでに、1年以上の期間がかかるケースもあります。 ・デジタルマーケティングと相性の悪い商材もある デジタルマーケティングは一般的に、広範囲の顧客層に対して行う施策で高い効果を期待できるマーケティング手法です。地域密着型商品・サービスのように対象となる顧客が狭い商材を扱う場合には、期待したほどの効果を狙えない可能性もあります。 ・手法ごとの知識やスキルが必要になる デジタルマーケティングを成功させるためにはさまざまな手法に精通し、十分なスキルを持つ人材の確保が欠かせません。自社の担当者が知識・スキル不足の場合にはデジタルマーケティングが有効に機能せず、コストを浪費するリスクがあります。 ・AIを使用する場合スパム認定されるケースもある AIをコンテンツ作成に活用する場合、自動生成された低品質なコンテンツをそのまま掲載すると、検索エンジンに「スパム」と判断されかねません。AIをコンテンツ作成に活用する場合は、アイデア出しやデータ分析に活用できる「サポートツール」と考えることが適切です。 |
【事例付き】デジタルマーケティングの主な手法6つ
デジタルマーケティングにはさまざまな手法があり、扱う商品やサービスに応じて、最適な選択肢は変化します。デジタルマーケティングの主な手法6つを理解し、自社に適した施策を検討しましょう。
SEOマーケティング
SEOマーケティングとは内部対策・外部対策・コンテンツ作成などを組み合わせて実施し、検索結果における上位表示を狙う手法です。
内部対策 | 検索ユーザーや検索エンジンがWebサイトの構造やコンテンツ内容を理解しやすくする対策 |
外部対策 | 他のWebサイトからのリンクをより多く獲得するための対策 |
コンテンツ作成 | 検索ユーザーのニーズに合う優良コンテンツを作成する対策 |
コンテンツ作成は、上記の中でも特に優先度が高い対策です。コンテンツ作成を重視したSEOマーケティングで成功した企業の代表例は、土屋鞄製作所です。
革製品を製造販売している土屋鞄製作所ではオウンドメディア内にブログを設置し、ものづくりに対する想い・企業理念・新商品のコンセプトなどを発信しています。ブログでは革製品愛用者の興味関心を引く情報も発信し、複数のキーワードで上位表示を達成しました。ブログの運営によって土屋鞄製作所は強力なファンを育成し、多くのリピーターも獲得しています。
コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングとは顧客にとって有益な情報を発信し、興味関心を引く手法です。コンテンツマーケティングでは基本的に相手の興味関心を引くまで、積極的な売り込みを行いません。
以下は、コンテンツマーケティングで扱うコンテンツの主な種類を示します。
・ブログ記事 ・プレスリリース ・メールマガジン ・動画 ・商品カタログ ・ホワイトペーパー |
SEOマーケティングのコンテンツ制作も、コンテンツマーケティングの一部に含まれます。
コンテンツマーケティングの取り組み事例としては、北欧雑貨を中心に扱うECサイト「北欧、暮らしの道具店」が参考になります。北欧、暮らしの道具店では訪問ユーザーに役立つブログ記事や動画コンテンツを継続的に制作し、強力なファンを育成しました。北欧、暮らしの道具店ではアプリ・SNSも有効に活用してファンとつながり、関係性を深めています。継続的な取り組みの結果として同サイトは単なるECサイトにとどまらないライフカルチャープラットフォームへ成長し、さまざまな事業を成功させました。
SNSマーケティング
SNSマーケティングとは自社のSNSアカウントを運用し、認知拡大・ファンの獲得・ブランディングを図る手法です。SNSマーケティングは比較的若い層がターゲットの商品・サービスと相性が良く、低コストで多くの人にアプローチしやすい特徴があります。
SNSマーケティングを活用すると、顧客と密なコミュニケーションを取ることも可能です。密なコミュニケーションを重視して対応すれば、企業への愛着や信頼を示す「顧客ロイヤルティ」の向上を狙えます。
双方向のコミュニケーションによる成功事例としては、文房具・オフィス家具などの老舗製造・販売企業「コクヨ」の取り組みが参考になるでしょう。コクヨではSNSアカウントへ届いた悩みに回答する形で、双方向のコミュニケーションを実現しました。
コクヨがデジタルマーケティングを行う際に重要視している視点は、「顧客の課題解決につながるか」です。コクヨではSNSマーケティングと合わせてコンテンツマーケティングにも取り組み、幅広い層の顧客へのアプローチに成功しています。
メールマーケティング
メールマーケティングとは顧客に応じた内容のメールを送信してコミュニケーションを取り、信頼関係を構築する手法を指します。メールマーケティングとメルマガの違いは、「送信相手を限定するか、しないか」です。
メールマーケティングでは「東京都に居住する40代」のように明確なターゲットを設定し、情報発信を行います。特定の条件を満たす人へ段階的にメールを送信する「ステップメール」やリマインドメールを送信する「リターゲティングメール」も、メールマーケティングの一種です。
メールマーケティングの運用方法によっては、専用システムの整備も必要です。通販型の自動車保険事業に取り組む「イーデザイン損保」では、保険料比較サイトからの見積もり依頼対応と契約者への各種案内をメールによって行っていました。自社システムでは大量のメールを同時送信できないことから専用システムを導入し、タイムリーに情報提供できる体制を整備しています。
データ分析
データ分析とは、属性データや行動データを収集してさまざまな角度から分析し、現状把握・課題の抽出・効果測定を行うことです。
属性データ | 顧客の氏名、性別、住所、年齢などの情報 |
行動データ | Webサイトやアプリ内における行動や購買活動に関する情報 |
膨大な量の情報を分析する際にAI技術を活用すると、スピーディーに高精度な分析結果の出力が可能です。
ケンタッキー・フライド・チキンを運営する「日本KFCホールディングス」ではAI技術を活用して、SNS上の口コミ・ハッシュタグの傾向・顧客の属性などを分析しています。同社では分析結果をもとに自社アカウントの投稿内容・タイミングを検討し、多くのファンを獲得しました。日本KFCホールディングスでは2022年度からデータマーケティングをより強化し、生活に根付いた「エブリデイブランド」への成長を目指しています。
デジタル広告
デジタル広告とは、以下のように多彩な種類の広告をインターネット上で配信し、商品やサービスの認知拡大や売り上げアップを図る手法です。
・検索広告 ・ディスプレイ広告 ・アプリ広告 ・動画広告 ・SNS広告 ・音声広告 |
デジタル広告には、マスマーケティングと比較して詳細なターゲット設定を行いやすい特徴があります。デジタル広告には広告の差し替えを行いやすい特徴もあり、マスマーケティングと比較して柔軟な運用が可能です。
デジタル広告の成功事例として、ひらまつの取り組みを紹介します。ひらまつでは時代に応じた形式で自社の魅力を伝えるための手段として、動画広告に注目しました。ひらまつが動画広告を作成する際に重視したポイントは、事業に対する熱い想いを伝えることです。
同社では動画広告と合わせて検索広告、ディスプレイ広告も運用し、予約数120%を達成しました。デジタル広告の配信後は十分な効果検証も行い、その後のマーケティング戦略に生かしています。
デジタルマーケティングを成功させるコツ
デジタルマーケティングにはさまざまなメリットが期待される一方、想定通りの成果が出ないケースもあります。デジタルマーケティングの成功率を高めるためには以下のコツを理解した上、実践すると安心です。
複数の部署で連携する
「マーケティング部門が獲得した見込み顧客リストを営業部門に引き継ぎ、売り上げにつなげる」といった流れが円滑に進まないと、デジタルマーケティングは機能しません。デジタルマーケティングを成功させるためには、複数の部署がスムーズに連携できる体制を構築しましょう。
複数の部署の連携を促す方法には、営業部門とマーケティング部門に共通の目標を与えるやり方があります。共通の目標を設定すれば複数の部署が同一の方向を向き、日々の業務に取り組めます。もしくは、コミュニケーションツールの導入などの手段で複数の部署が対話しやすい環境を提供する施策によっても、連携を促すことが可能です。
デジタルツールを導入する
デジタルマーケティングに取り組む上では、日常的なデータ測定・分析作業が欠かせません。データ測定作業や分析作業を効率化するためには、デジタルマーケティングの専門ツールを導入しましょう。
たとえば、データ分析ツールを導入すれば担当者の負担を軽減できる上、分析作業の精度が向上します。負担が軽減された分、担当者は施策の改善・戦略策定といったより高度な業務に時間を掛けられ、顧客ニーズに沿った対応を取ることが可能です。
人材を確保する
デジタルマーケティングを有効に機能させるためには、以下の知識やスキルに精通した人材を確保し、取り組みを牽引してもらうことも重要です。
・販売、マーケティング知識 ・コミュニケーションスキル ・情報収集能力 ・企画力 ・事務処理スキル ・マネジメントスキル |
※出典:job tag(厚生労働省職業情報提供サイト(日本版O-NET)「Webマーケティング(ネット広告・販売促進)」
デジタルマーケティングの重要性が高まっていることもあり、上記のスキルを備えた人材の確保はスムーズに進まないケースもあります。適任者を新規採用できない場合は自社の従業員に必要な研修を受講させ、デジタルマーケティングに役立つスキルを習得させる「リスキリング」に取り組みましょう。
まとめ
デジタルマーケティングは顧客の行動を正確に分析でき、マスマーケティングと比較してローコストで効率的にターゲット層へアプローチできます。AIが急速に発展する現代において、コンテンツ作成やデータ分析などの業務でAIの恩恵を受けやすい点もメリットです。
デジタルマーケティングでは、SEOやSNSマーケティング、デジタル広告などの多様な手法を組み合わせることで、より効果的なマーケティング戦略を構築できます。ただし、成功させるにはツールの導入や適切な人材の確保が必要です。今後の市場競争に勝つためにも、デジタルマーケティングを積極的に活用し、企業の成長を促進させましょう。
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