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社員は辞めないのに組織は弱る?静かな退職が招く損失と企業の7つの対策

この記事は2024.10.23に公開した記事を再編集しています
2026年8月7日更新
「静かな退職」という言葉は、必要最低限の仕事だけをこなす働き方を指します。近年は仕事に対する価値観や働き方が変化しており、仕事への意欲があまりなく、求められる仕事のみを行う人も増えています。
当記事では、静かな退職がなぜ増加しているのか、原因や静かな退職が増えることによる影響、企業がどのように対処すべきかについて解説します。従業員が生き生きと働ける会社を作れるよう、制度や体制を整えることが大切です。
目次
Toggle静かな退職とは?

「静かな退職」とは、必要最低限の仕事だけを行い、積極的に働かない状態を指します。既に退職が決まっている社員・従業員のように、精神的にゆとりを持った状態で働く様子から、静かな退職と呼ばれています。
ここでは、海外だけでなく日本でも広がりつつある「静かな退職」について詳しく解説します。
日本でも広がる静かな退職
静かな退職は海外発の働き方の概念ですが、日本でも世代を問わず広がりつつあります。
アメリカでは2022年頃、TikTokに投稿された若手エンジニアの発信を契機に、昼夜・休日を問わず自分を犠牲にして働き続ける「ハッスル文化」へのカウンターとして、「必要以上に働かない」という価値観が若年層を中心に注目されました。コロナ禍によるリモートワークの普及やメンタルヘルス意識の高まりも背景となり、仕事中心の生活を見直す動きが世界的に拡大しています。
日本においても同様の傾向が見られ、若手だけでなく40代・50代の中高年層にも静かな退職の姿勢が広がっています。「会議で発言しなくなる」「業務範囲を限定する」などの行動は、企業に在籍しながら心理的距離を置く状態の兆候として指摘されています。
企業側は静かな退職に対して、年代を問わず起こり得る課題として認識する必要があります。
静かな退職が広まっている理由
静かな退職が増えている背景として考えられる理由は、以下の通りです。
| ・仕事に対する価値観の変化 仕事よりもプライベートの充実を求める価値観を持つ労働者が増えたことが、静かな退職という働き方が広まっている1つの要因です。日本には、高度経済成長期に代表されるように、プライベートの時間までも仕事に捧げる「ガムシャラな働き方」が流行した時代がありました。しかし、経済低迷や新型感染症による混乱を経験したことで、近年は仕事のために生きる働き方に疑問を持って「必要以上に働かない」選択をする人が増えています。 ・働き方の変化 時代とともに、働き方が多様化した点も静かな退職が増えている原因です。例えば、以前は、「終身雇用」という概念の下、生涯で1つの会社に勤める働き方が主流でした。しかし、現在ではより働きやすい環境を求めて転職を繰り返す人も増えており、キャリアアップや昇進に重きを置かない働き方も珍しいものではなくなりつつあります。ワークライフバランスがとれた働き方が支持される中で、「静かな退職」状態になる労働者が増えています。 ・先行きの不透明さ 人口減少や不安定な経済状況を背景とした先行きの不透明さも、静かな退職の広がりに拍車をかけています。企業の将来性や待遇に対して、希望を持てない人も少なくありません。将来に期待できないことでモチベーションが下がり、仕事に対して消極的になってしまうケースが見られます。 |
静かな退職を選びやすい人の特徴と年代別の傾向
静かな退職状態と言える人の特徴は、以下の通りです。
| ・業務に対する意欲が見られない ・求められている以上の仕事はしない ・会議中にほとんど発言しない ・ストレスなく働き続けることを重要視している ・現状に満足していて、期待や責任を背負うことを嫌う |
上記のような静かな退職状態と言える人は、20代から30代の若手世代に多く見られます。ただし、40代以上の働き盛りの世代の中にも、静かな退職を選択している人が少なくありません。
20代では、成長機会の不足やキャリアの見通しの不透明さが要因となり、挑戦意欲の低下や社内交流への消極性として表れやすい傾向があります。30代では、子育てや住宅購入、家族介護などのライフイベントと仕事の両立を重視し、業務への関与度が限定的になるケースが見られます。さらに40代・50代では、昇進機会の停滞や将来不安から責任ある業務を避ける行動や、組織方針への関心低下として現れる場合があります。
企業は年代ごとの違いを理解し、静かな退職の兆候を早期に把握することが大切です。
「静かな退職」による企業側のデメリット

静かな退職は実際に人材流出が起きる訳ではありませんが、企業に対してさまざまな問題を発生させる可能性があるため、注意が必要です。静かな退職の具体的なデメリットとして、次の3つを解説します。
生産性が低下する
静かな退職の大きなデメリットは、組織の生産性が低下する点です。静かな退職という働き方を選択する人は、求められている以上の仕事はしません。また、業務中やミーティングでの発言も少なめです。
静かな退職状態の社員が存在すると、部署・プロジェクトチームといった組織の士気が下がってしまう恐れがあります。業務上のコミュニケーションに積極的に参画する社員が減少することで、新しいアイデアが生まれにくくなり、企業全体の生産性低下につながる場合がある点も問題です。
職場の人間関係が悪化する
職場における従業員同士の関係性を悪化させる点も、静かな退職のデメリットと言えます。静かな退職状態の社員は、基本的に、与えられた業務範囲以外の仕事はしません。業務指示があるまで積極的に働こうとしない人がいると、どうしても周囲のメンバーの業務負担が増加してしまいます。
さらに、静かな退職状態の社員は組織への貢献意欲が低く、トラブルが発生しても見て見ぬふりをしてしまうケースも少なくありません。静かな退職状態の労働者に対して、周囲の不満が積み重なることで、人間関係や職場全体の雰囲気が悪化するリスクがある点を理解しておく必要があります。
優秀な人材がいなくなってしまう
静かな退職の問題を放置していると、優秀な人材が流出してしまう危険性があります。静かな退職が増えると、いくら仕事に対する意欲が高い人材でも、次第に組織への不満を抱くようになるでしょう。
「仕事に対するやりがいを感じられない」、「成長機会を逃す」などの理由で優秀な人材が離職してしまうのは、企業にとって大きな損失です。また、静かな退職に対処しないままでいると、新たに「静かな退職状態の社員」が増えてしまう可能性もあります。
「静かな退職」を防ぐために企業ができる対策

静かな退職に対処した上で、優秀な人材を確保し活気ある会社を実現するにあたって、いくつかの対処方法があります。具体的な方法として次の7つを解説するので、自社の労働環境を改善する際に役立ててください。
従業員エンゲージメントを把握する
静かな退職を防ぐには、従業員のエンゲージメントや本音を把握するのが重要です。従業員のエンゲージメントとは、従業員が自社や自社の商品・サービスに対して抱く愛着・信頼のことです。エンゲージメントが高い組織では、企業と従業員が、お互いの成長に貢献しようとする関係が見られます。
しかし、エンゲージメントが低い人材は仕事への意欲・積極性を失いやすく、静かな退職につながるリスクがあります。定期的な調査を行って従業員の本音に向き合うことで、職場に潜む問題を早い段階で発見し、エンゲージメント向上につなげるのが大切です。
具体的なエンゲージメント調査方法としては、個別面談やインタビューなどが挙げられます。従業員の声に耳を傾け、エンゲージメントが低いと分かった場合は、なぜそのような事態が起こったのかを分析して改善につなげる必要があります。
人事評価制度を見直す
静かな退職を防ぐためには、社員が感じている待遇面の不満を解消するのも重要です。社員を適切に評価することで、モチベーションアップにつながる効果が期待できます。評価の際は目に見える成果だけではなく、社員個人の貢献度・創造性といったプロセスを評価できる仕組みを導入するのも有効です。
ただし、評価に透明性が感じられないと、社員・従業員からの会社に対する信頼を失う可能性があるため注意が必要です。人事評価の評価項目や評価基準を明確に設定した上で、透明性・公平性の面で問題がないかも検討する必要があります。
規模が大きい会社の場合は、人事評価システムを導入するのも1つの方法です。また、評価者が一方的に評価して終わるのではなく、社員が評価を成長につなげられるようなフィードバックの機会を設けるのも大切です。
定期的な1on1ミーティングを実施する
定期的な1on1ミーティングの実施は、静かな退職を未然に防ぐために有効なコミュニケーション施策です。
近年では労働人口の減少や働き方の多様化により、従業員の状況を個別に把握し、心理的安全性を確保する必要性が高まっています。月1回や隔週など一定の頻度で30分前後の面談時間を確保し、業務報告ではなくキャリア志向や職場課題、モチベーションの変化を中心に対話を行いましょう。事前に簡易アンケートや議題シートを配布し、部下が話したい内容を整理できる環境を整えると、面談の質が向上します。
また、上司は評価者ではなく支援者として傾聴姿勢を示し、具体的な行動目標や成長課題を共に設定することが求められます。面談内容の要点は記録し、人事部門と共有して配置転換や育成施策に反映させることで、従業員エンゲージメントの向上と静かな退職の防止につながります。
管理職のマネジメント力を強化する
管理職のマネジメント力強化は、静かな退職の発生を抑える上で根幹となる施策です。
マネジメントとは、組織の目標達成に向けて人材や業務、リスクを適切に管理し、成果を最大化するための総合的な活動を指します。マネジメント力を向上させるためには、まず、新任管理職向け研修や階層別教育を通じて、役割認識や評価・育成スキルの基礎を体系的に習得させることが重要です。さらに、360度評価や従業員満足度調査を活用し、マネジメントの現状や課題を可視化することで、具体的な改善行動につなげられます。
現場では目標設定面談や業務レビューを定期的に行い、進捗確認と課題解決を繰り返す運用が求められます。こうした取り組みを継続することで、職場の信頼関係が強まり、組織全体の生産性向上にも寄与します。
業務量や役割分担を見直す
業務量や役割分担の見直しは、静かな退職の背景となる業務過多や不公平感を解消するための実践的な対策です。業務過多の状態が続くと、従業員の集中力低下や疲労の蓄積により、仕事の質や生産性が低下する可能性があります。
実務ではまず、各部署で業務棚卸しを行い、タスクの目的や頻度、所要時間を洗い出して可視化しましょう。その結果をもとに、不要な会議の削減や報告業務の簡素化、重複作業の統合など業務プロセスの改善を進めます。
また、標準化されたマニュアルの整備やナレッジ共有の仕組みを導入することで、特定の社員に業務が集中する状況を防げます。同時にプロジェクト管理ツールを活用し進捗や工数を共有すると、適切な役割分担が可能になるでしょう。
必要に応じてアウトソーシングや人員配置の見直しを行い、無理のない業務体制を整えることが、従業員の主体性を高める環境づくりにつながります。
キャリア支援・リスキリングの機会を提供する
キャリア支援やリスキリング機会の提供は、従業員が将来の成長を実感できる環境を整え、静かな退職を防ぐ有効な施策です。
社内公募制度やキャリア面談制度を導入し、従業員が自らキャリアの方向性を選択できる仕組みを整備しましょう。また、オンライン研修や外部セミナー受講支援、資格取得補助などを組み合わせることで、継続的なスキル向上を支援できます。さらに、教育訓練休暇制度や短時間勤務制度を活用し、学びの時間を確保する運用も効果的です。
管理職が日常的にキャリア志向を確認し、人事評価や配置転換に反映させることで、従業員の主体性や帰属意識を高められます。こうした総合的な支援体制は、静かな退職の防止だけでなく、企業の競争力向上にもつながります。
多様な働き方を認める制度を整える
多様な働き方を認める制度整備は、従業員が自分の生活環境や価値観に応じて働ける環境を構築し、静かな退職の抑制につながります。
企業ではまず、テレワークやフレックスタイム制、時差出勤、短時間勤務などの制度を段階的に導入し、対象者や評価基準を明確に定めましょう。また、副業制度やワーケーション制度の導入により、従業員が多様な経験を積める環境を整えることも効果的です。
制度導入後は利用状況や満足度を定期的に調査し、現場の課題に応じて改善を行う運用が求められます。柔軟な働き方の選択肢が広がることで、離職防止や採用競争力の向上、さらには生産性向上といった組織全体のメリットが期待できます。
「静かな退職」対策には通信講座・研修の活用もおすすめ
静かな退職への対策としては、管理職やリーダーの育成を目的とした通信講座・研修の活用も有効です。
たとえば「メンバーのやる気を高め、成長を促す1on1研修」では、リーダーシップの基本理解から始まり、コーチングスキルを活用した1on1面談の進め方を実践的に学習できます。ロールプレイやケーススタディを通じて現場での運用イメージを具体化できる点が特徴です。
『メンバーのやる気を高め、成長を促す1on1研修』について詳しくはこちら
また「組織を引っ張るリーダーのためのエンゲージメント研修」では、心理的安全性を高めるコミュニケーション手法や目標面談の進め方、信頼関係を構築する行動習慣などを体系的に習得できます。
『組織を引っ張るリーダーのためのエンゲージメント研修』について詳しくはこちら
こうした研修を継続的に導入し、管理職の行動変容や職場風土の改善につなげることで、従業員の主体性や組織への愛着を高め、静かな退職の予防に寄与します。
まとめ
「静かな退職」の状態に陥っている人を放置しておくと、組織全体の生産性や従業員同士の関係が悪化するリスクがあります。また、優秀な人材が他社に流出してしまう可能性もあるので、企業は静かな退職に対して正しく対処する必要があります。従業員が積極的に業務に取り組めるよう、企業は従業員のエンゲージメントを把握し、人事評価制度を見直したり、多様なキャリアパスを提供したりしましょう。
従業員の本音に向き合い、働きがいを生み出すことが、長期的に優秀な人材を引き留める鍵となります。
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